平成24年司法試験の結果について(1)

受験者合格率、反転

平成24年司法試験の最終結果が公表された(法務省HP)。
最終合格者数は、2102人。
受験者ベースの合格率は、2102÷8387≒25.0%だった。
ちょうど、4人に1人が受かる試験だった。

以下は、合格者数と合格率の年別推移である。

 

合格者数

合格率

18

1009

48.2

19

1851

40.1

20

2065

32.9

21

2043

27.6

22

2074

25.4

23

2063

23.5

24

2102

25.0

合格者数も合格率も、昨年より増加している。
特に、合格率は、これまで一貫して下落を続けていた。
それが初めて、増加に転じた。
合格率の増加は、文科省の掲げる2つの成果目標の一つである。

「法科大学院教育改善プラン」について(平成24年7月20日文部科学省)より引用、下線は筆者)

2.本プランにおいて目指す成果目標

 文部科学省としては、当面、下記3.に記載する具体的な改善方策に取り組むことを通じて、次に掲げる成果目標の達成を目指すこととする。

〔目指すべき成果目標〕

1.法曹資格を有する法科大学院修了生を中心に、法曹のみならず、民間企業や国・地方の公務部門など社会の様々な分野で活躍できるよう、その支援体制を整えるとともに、その状況を広く社会に発信すること。

2.司法試験について、平成23年試験の合格率である23.5%から大幅な増加を目指す

 

3.具体的な改善方策

1 法科大学院教育の成果の積極的な発信

 (略)

2 課題を抱える法科大学院を中心とした入学定員の適正化、教育体制の見直し等の取組の加速

(1) 課題を抱える法科大学院における取組の促進

○ 課題を抱える法科大学院に対し、中教審の調査等で明らかになった課題に対する改善計画の提出の要請、ヒアリング、公表などの措置を講じる。

 【平成24年度から国立大学法人より速やかに実施】

○ 今後実施される認証評価で不適格認定を受けた法科大学院に対して、不適格と判断される原因となった事項の改善が図られるまで、改善状況の報告・確認を徹底し、必要に応じて指導等の措置を講じる。 

 【平成24年度から速やかに実施】

(2) 法科大学院に対する公的支援の更なる見直し

○ 現行の公的支援の見直しについて、入学者選抜における競争倍率と司法試験合格率の指標に加えて、入学定員の充足状況を新たな指標として追加する。

 【速やかに見直し、平成26年度予算から適用】

(3) 組織改革の加速に向けた取組

○ 各法科大学院における共同教育課程や連合大学院、統合等の自主的・自律的な取組が促進されるよう、組織見直しに向けたモデル及びそのための推進方策を提示する

 【平成24年度中に提示】

3 法学未修者教育の充実

 (略)

4 法科大学院教育の質の改善等の促進

(1)入学者選抜の改善

○ 適性試験管理委員会と協力し、適性試験の結果と法科大学院入学後や司法試験の成績との相関関係を含め、その内容等について検証を行い、その結果を踏まえて各法科大学院や適性試験管理委員会に対して改善に向けた取組を促すなど必要な措置を講じる。

 【平成25年度前半までに検証を実施】

(2)質の高い教育環境の確保 

 (略)

(3) 認証評価結果の活用を通じた改善 

○ 今後行われる法科大学院の認証評価について、実施状況やその結果を踏まえて認証評価の仕組みが適切に運用されているかどうかを検討し、必要に応じて更なる改善方策を講じる。

 【平成24年度から認証評価の実施状況を検証】

(引用終わり)

合格率向上の具体策として、統廃合と入学者選抜・成績評価の厳格化。
これを、補助金や教員派遣等の支援の見直しを使って、ローに迫っていく。
適正試験との関係では、最低ラインの設定が議論されている。
これらは、いずれも受験者数を減少させる取組みである。

合格率は、合格者数と受験者数の割り算で決まる。
現状では、分子である合格者数の増加は見込めない。
だから、文科省は、分母の受験者数を減らす戦略を採っている。
今後、三振によって人数の多い年度の修了生が退場する。
そのことは、さらなる分母の減少となる。
従って、これからは、合格率は上昇傾向となるだろう。
今のところ、文科省の狙いどおりに推移している。
司法試験は、受かり易くなっていく。
しかし、それは反面で、ローに入学し、修了するまでのハードルが高くなる。
そういうことでもある。
これまでは、司法試験で落とされていた層。
そのうちの一定程度が、本試験受験以前の段階でふるい落とされる。
それだけのことである。
毎年の合格者数が劇的に増加しない限り、全体の受かり易さは変わらない。
そういう見方も、可能である。

予備を考慮した2100人基準か

今年の合格点は、780点だった。
なぜ、この点数だったのか。
以下は、平成21年以降の合格点前後の累計人員分布である。
(太字が合格点)

平成21年

得点

累積受験者数

775

2240

780

2140

785

2043

790

1967

795

1884

 

平成22年

得点

累積受験者数

765

2263

770

2155

775

2074

780

1984

785

1886

 

平成23年

得点

累計受験者数

755

2231

760

2145

765

2063

770

1978

775

1903

 

平成24年

得点

累計受験者数

770

2276

775

2186

780

2102

785

2023

790

1952

近年は、5点刻みで2000人を超えた得点。
これが、合格点になっていた。
しかし、今年は、その基準が当てはまらない。
仮にその基準によると、785点が合格点になっていたはずだ。
この場合、合格者数は2023人で、例年どおりという感じになる。
しかし実際には、それより5点下の780点で、2102人を受からせた。
今年はむしろ、2100人が基準になっているようにみえる。

なぜ、そうなったのか。
一つの仮説として、2023人が微妙に少なかったからだ。
そういう考え方がありうる。
これまで、下2桁は、43、74、63で推移していた。
今年、仮に2023人とすると、下2桁は、23となる。
これはちょっと少ない、と感じたのかもしれない。
そこで、1つ下の780点で2102人受からせた。
この考え方からは、来年は例年どおりに戻る可能性がある。

もう一つの仮説として、予備組の存在がある。
今年は、初めて予備組が参入した年だった。
予備組は、95人が出願して、85人が受験している。
大雑把に言えば、100人程度である。
この予備組によって、ロー生が圧迫される。
法科大学院関係者からは、そういう懸念の声が挙がっていた。
これを考慮して、100人分枠を増やしたのではないか。
予備が全員受かっても、ロー生にはこれまでどおり合格枠がある。
これなら、文句はないだろう、ということである。
こう考えれば、来年以降も、この傾向が続くと予想できる。
この場合、ロー生は、「予備のせいで落ちた」という言い訳が効かない。

論文の出来、改善傾向へ

以下は、論文の全科目平均点の推移である。
なお、かっこ書は、最低ライン未満者を含む数字である。

全科目
平均点

前年比

18

404.06

---

19

393.91

−10.15

20

378.21
(372.18)

−15.70

21

367.10
(361.85)

−11.11
(−10.33)

22

353.80
(346.10)

−13.30
(−15.70)

23

353.05
(344.69)

−0.75
(−1.41)

24

363.54
(353.12)

+10.49
(+8.43)

これまで、一貫して平均点は下落を続けていた。
昨年は、それがやや下げ止まった。
今年になって、ついに上昇に転じた。
これは、新司法試験史上、初の出来事である。

これも、前記の母集団の絞込みの効果といえる。
ただ、合格率は、分母を減らせば自動的に増加する。
他方、この数字は、自動的に上昇するものではない。
優秀な人を、適切に絞り込む必要がある。
その意味では、平均点が、合格率と同じような上昇傾向となるのか。
そこは、もう少し慎重に考える必要がある。
特に、近時は弁護士の就職難等がさかんに報道された。
そのため、優秀な志願者が減っているとも言われている。
そうなると、合格率は上がっても、全体の出来は悪いまま。
そういうことも、あり得ることになる。

これを左右するのは、ロー段階での適正な選抜である。
定員削減や入学者選抜等の厳格化が、司法試験の成績に相関してくるか。
この点が、重要な要素になる。
現在のところ、既修者選抜については、相関がある。
未修と既修の合格率の差をみれば、明らかだろう。
そして、既修者選抜の成績評価と、ローの期末試験等の成績評価。
その方法は、そこまで大きく違わないだろう。
だとすると、ローの成績評価も、本試験の試験科目については、相関してくるだろう。
そうなると、成績評価の厳格化は、本試験の論文の成績を上昇させそうだ。
(この点に関する最近の詳細な調査報告として、平成22年度新たな法曹養成プロセスの有機的連携に関する調査研究、研究成果報告書(PDF)参照。)

すなわち、文科省の対策は、今後も一定の効果がある。
そういう予測が、可能である。

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