平成24年司法試験の結果について(3)

予備組の結果と、合格率の均衡について

今年は、予備試験合格者が参入した初めての年だった。
結果は、85人受験して、58人合格。
受験者合格率は、68.2%だった。
全体の受験者合格率は25%だから、大きな差が付いている。
このことは、メディアでも、比較的大きく取り上げられた。

読売新聞2012年9月12日配信記事より引用)

司法試験、「予備試験」通過者は合格率68%

法務省の司法試験委員会は11日、今年の司法試験合格者を発表した。

 合格者は前年比39人増の2102人。法科大学院修了生の合格率が24・62%にとどまる一方で、法科大学院を修了しなくても受験資格が得られる予備試験を通過した受験生は68・23%と高い合格率を記録した。構想段階で7〜8割の合格率が想定されていた法科大学院に対し、一層失望感が広がる可能性がある。

(引用終わり)

 

読売新聞WEB版2012年9月12日15時24分配信記事より引用)

予備試験組の合格率7割、法科大学院に不信感

 今年度の司法試験では、法科大学院を修了しなくても、受験資格が得られる予備試験をパスした大学生26人が合格した。

 本来、経済的な事情で法科大学院に通えない人などを想定したルートだが、学生の人気ぶりに、資格予備校や大学も予備試験対策を始めている。

 (中略)

 「狭き門だからこそ、合格できれば優秀さの証明になり、法律事務所の就職で有利になるかもしれない」。今年、予備試験に初挑戦した早稲田大法学部2年の男子学生(19)は期待する。司法試験合格者は2008年度、2000人に達した後、頭打ちになった。一方、合格者の質低下や新人弁護士の就職難が、学生の法科大学院不信を深めている。

 今年の司法試験では、法科大学院修了生の合格率が平均25%に対して、予備試験を通った受験者の合格率は68%に上った。資格予備校「伊藤塾」(東京)の佐藤修一執行役員(45)は「予備試験の受験は難関法科大学院の入試準備にもなり、積極的に挑戦する価値があると受講生に話している」という。

(引用終わり)

 

毎日新聞WEB版2012年09月11日21時15分配信記事より引用)

司法試験:合格率25.1% 新試験導入後、初めて上昇に

 法務省は11日、法科大学院修了者と予備試験合格者を対象とした司法試験の合格者を発表した。合格者数は06年に始まった新試験では過去最多の2102人(昨年比39人増)。全体の合格率は25.1%(昨年比1.6ポイント増)で新試験導入後、初めて上昇に転じた。

 (中略)

 新試験が導入されてから、新旧両試験が並行実施されてきたが、旧試験は昨年で終了。新試験7回目となる今回は予備試験の合格者が初めて新試験に挑み、58人が合格。合格率は68.2%だった。

 一方、法科大学院修了者は2044人が合格し、合格率は24.6%。政府の規制改革会議(当時)は09年、「予備試験合格者と法科大学院修了者の合格率を均衡させる」と提言しており、次回は予備試験自体の合格者数を増やすなどの調整がされるとみられる。

(引用終わり)

上記の毎日新聞で、合格率均衡のことが触れられている。
記事では、規制改革会議の提言ということになっている。
これは、やや不正確である。
実際には、その提言を受けて、閣議決定までされているからである。

規制改革推進のための3か年計画(再改定)(平成21年3月31日閣議決定)より引用、下線は筆者)

 法曹を目指す者の選択肢を狭めないよう、司法試験の本試験は、法科大学院修了者であるか予備試験合格者であるかを問わず、同一の基準により合否を判定する。また、本試験において公平な競争となるようにするため、予備試験合格者数について、事後的には、資格試験としての予備試験のあるべき運用にも配意しながら、予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させるとともに、予備試験合格者数が絞られることで実質的に予備試験受験者が法科大学院を修了する者と比べて、本試験受験の機会において不利に扱われることのないようにする等の総合的考慮を行う。
 これは、法科大学院修了者と予備試験合格者とが公平な競争となることが根源的に重要であることを示すものであり、法科大学院修了者と同等の能力・資質を有するかどうかを判定することが予備試験制度を設ける趣旨である。両者における同等の能力・資質とは、予備試験で課せられる法律基本科目、一般教養科目及び法律実務基礎科目について、予備試験に合格できる能力・資質と法科大学院を修了できる能力・資質とが同等であるべきであるという理念を意味する。

(引用終わり)

ロー生の合格率と、予備組の合格率。
これを均衡させるには、ローを絞り、予備を広げる必要がある。
現在、ローの定員削減、成績評価の厳格化の促進によって、ローの方は絞られている。
ある意味、文科省は先読みで、ローを絞る施策を採ってきたともいえる。
とはいえ、そのスピードは緩やかである。
また、上記の閣議決定は、例の3000人計画を含んでいる。
これが、「あってないようなもの」であることは、もはや誰もが知っている。
だから、上記の合格率均衡も、そのまま実現されるとは、考えにくい。

ただ、予備の合格者が増加傾向になる可能性はあるだろう。
その予兆ともいえるのが、来年の予備試験の会場公募である。
法務省は、「平成25年司法試験予備試験試験会場の公募について」を公表している。
それによれば、論文における収用可能人員の総数は、3300名程度となっている。
これは、今年の公募時の2100名程度と比較すると、1200名分多い。
上記が公表されたのが、今年の9月10日。
すなわち、司法試験の結果発表の前日である。
この時点で、法務省は予備組の合格状況を把握していたはずだ。
これを受けて、多めに会場を確保した可能性はある。
今年の短答は、1711名が合格している。
公募時の収用人員の総数より400名程度少ない数である。
同様に考えると、来年の短答は2900名程度受かることになる。
一つの仮説としては、ありうる予測である。
もっとも、平成23年は、公募時3000名に対し、短答合格者は1339名だった。
それを考えると、まだ期待するには早いともいえる。

今後は、予備の合格率は、下がっていくだろう。
なぜなら、今年不合格だと、来年も受かりにくい。
その法則は、予備組にも妥当するはずだからである。
すなわち、予備組の再受験者の存在によって、予備全体の合格率は下がる。
従って、今年の68.2%という合格率。
これは、後から振り返ったとき、異常値だったということになるはずである。
その意味では、今年の結果をあまりに重視することは、適切でない。

予備組の内部でも明暗

予備組については、法務省は詳しい属性情報を出している。
(「予備試験合格者参考情報」参照。)

以下は、世代別の合格率等をまとめたものである。

年代

受験者数

合格者数

受験者
合格率

20代

35

34

97.1%

30代

30

15

50.0%

40代

15

46.6%

50代
以降

40.0%

20代が、圧倒的であることがわかる。
20代では、落ちたのは、たったの1人である。
他方、30代以降になると、40%〜50%程度。
20代とそれ以外で、はっきり明暗が分かれている。

短答段階では、予備は1名を除いて全員合格した。
だから、この差は、ほぼ全て論文で生じている。

論文は若手に有利だと、旧試験時代から言われ続けてきた。
そのことを、改めて実感させられる結果である。

この原因は、主に2つある。
1つは、若手には余計な知識がない、ということである。
論文の合格ラインは、平均的な一応の水準である。
平成24年司法試験の結果について(2)参照。)
若手は、これを超える知識をあまり持たない。
そのため、特に意識しなくても、一応の水準を守る答案を書く。
他方、長期受験者は、余計な知識を持っている。
○○先生の連載や標準的でない体系書、演習書を読んでいたりする。
そこで知った知識を、どうしても書きたい。
そのために、一応の水準に必要な事柄を、省略してしまう。
その結果、一応の水準にも達しないと判断されて、落とされる。

もう1つは、集中力の差である。
論文は、時間制限が厳しい。
瞬時に答案構成を終え、書き始める必要がある。
将棋や囲碁、チェスなどでいえば、超早指し、早碁なのである。
感覚的には、1手20秒くらいの秒読み、という感じだ。
ゆっくりと考えてから判断する時間はない。
そこでは、集中力の差がものをいう。
ところが、20代を過ぎると、集中力に急激な衰えが出る。
20代まではテキパキとできた作業が、30代を過ぎると、できなくなる。
思わぬ見落とし、読み落としも、多くなる。
これが、結果に影響する。

上記を踏まえた30代以降の受験生の対策も、2つである。
1つは、基本知識さえ書けば受かる、と開き直ること。
余計な勉強は、しない。
学生でも書けそうなことに絞って、正確な理解、記憶を心がける。

もう1つは、構成を直感的にできるようにすることだ。
理論的にどうか、ではなく、配点があるか。
そこを基準にして、答案に書くかを感覚的に判断する。
配点のなさそうなところは、意図的に落としていく。
そういった、大局観で構成する。
あまり頭を使わずに、無難な構成ができるよう、訓練するとよい。
集中力の衰えはいかんともしがたいが、その分、老獪な戦略を採るべきである。

これらによって、ある程度不利を解消できる。
今回、40代、50代が4割の合格率を維持していることは、その証左でもある。
本来であれば、40代、50代の合格率は、もっと低くてもおかしくない。
(予備試験では、40代以降は惨敗している。「平成23年司法試験予備試験口述試験(最終)結果について」参照。)
やはり、予備を突破するだけの、ノウハウを持っているということだろう。

他方で、今年不合格だった人は、注意しなければならない。
論文は、「受かりにくい人は、いつまでも受からない法則」があるからだ。
早く合格答案のイメージを、作りかえる必要がある。
「新試験は、予備試験や旧試験とは全然違う試験だ」などと思ってはいないか。
「一般論を書いてはいけない。個別具体的検討だけを書けば受かる」などと思ってはいないか。
「考査委員のハイレベルな問題意識に答えないと受からない」などと思ってはいないか。
上記のようなことは、巷でよく言われているが、誤りである。
基本的な発想としては、旧試験や予備と同じである。
ただ、問題文が長いだけだ。
基本的な論点を抽出し、論証して、当てはめる。
その作業の繰り返しで、受かる。
この点を、多くの人が誤解している。

予備の合格者は、新試験に換算すると、1000番台の実力がある。
平成24年予備試験短答式の結果について参照。)
本来、「受かりにくい人」には該当しないはずである。
これまでどおりの力を発揮すれば、優に合格答案だ。
新試験は、見せかけの難しさがある。
しかし、書くべき中身は、旧試験や予備試験と少しも変わらない。
基本事項を拾うだけである。
(例えば、司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(民訴法)参照。)
ここに気付けば、予備合格者にとって、新試験の論文は少しも難しくない。
現に、20代は、ほぼ全員受かっている。
逆に、これに気付かないと、予備合格者といえども、危ない。
おそらく、不合格になった人は、変な気負いがあったのだろう。
「新試験だから」という理由で、いつもと違う答案スタイルを採った。
そういう人は、それが敗因である。
これまでどおりのスタイルで、過去問を答案化する作業をしてみるとよい。
「なんだ、何も変わらないじゃないか」と気付くはずである。

「法科大学院修了」のカテゴリは三振者か

今回、「法科大学院修了」のカテゴリで、3人が受験している。
そして、全員論文で落ちている。
直感的には、これは三振者だろうと思える。
すなわち、ロー修了後に三振し、予備で復活した者ということである。

しかし、結論的には、そのように断定はできない。
確かに、予備合格前にローを修了し、いまだ三振していない者は、予備の資格で受験できない。

新司法試験に関するQ&Aより引用、下線は筆者)

Q18 受験資格法科大学院課程の修了又は予備試験合格)を取得後,新司法試験を受験しましたが,その後,更に別の受験資格(法科大学院課程の修了又は予備試験合格を取得しました最初の受験資格に対応する受験期間内に,後から取得した受験資格で新司法試験を受験することはできますか?

A できません。新司法試験を受けた者は,その受験に係る受験資格に対応する5年間の受験期間内においては,他の受験資格で新司法試験を受験することはできません(法第4条第2項前段)。
  図解資料 (3) [PDF]

(引用終わり)

 

司法試験法4条(下線は筆者)

司法試験は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める期間において、三回の範囲内で受けることができる。
一 法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。)の課程(次項において「法科大学院課程」という。)を修了した者 その修了の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間
二 司法試験予備試験に合格した者 その合格の発表の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間

2 前項の規定により司法試験を受けた者は、その受験に係る受験資格(同項各号に規定する法科大学院課程の修了又は司法試験予備試験の合格をいう。以下この項において同じ。)に対応する受験期間(前項各号に定める期間をいう。以下この項において同じ。)においては、他の受験資格に基づいて司法試験を受けることはできない。前項の規定により最後に司法試験を受けた日後の最初の四月一日から二年を経過するまでの期間については、その受験に係る受験資格に対応する受験期間が経過した後であつても、同様とする

従って、ロー修了者が後から予備の資格で受験する場合。
それは、三振した後、ということになる。

問題は、ロー修了と予備の資格を同時に取得する場合である。
(両者の受験資格は共に今年の4月1日に発生する(司法試験法4条1項各号)。)

この場合、出願時はロー修了見込者ということになる。
その者は、どちらの資格で受験したことになるのか。
出願状況をみると、ロー修了の受験資格が優先するようにもみえる。

(「平成24年司法試験の出願状況について」より引用、下線は筆者)

 平成24年司法試験の出願状況は,下記のとおりです(平成24年1月13日現在)。
 なお,最終的に受験予定者数が確定するのは,法科大学院における修了認定後となります。

 (中略)

(2) 受験資格

ア 法科大学院課程修了の資格に基づいて受験する者   11,164人

(ア) うち修了見込者   3,692人
(イ) うち修了者   7,472人

イ 司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者   95人

ウ 法科大学院課程修了見込者で,同課程修了の資格に基づいて受験するが,同課程を修了できなかったときは司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者   6人

(引用終わり)

しかし、上記は飽くまでロー修了の資格に基づいて受験する場合である。
最初から予備の資格を使うことは、できるのか。
司法試験法上は、この点に直接の規定はない。
だとすると、どちらか受験者が選べる、というのが素直である。
そして、法務省のHPの説明も、そのようになっている。

新司法試験に関するQ&Aより引用、下線は筆者)

19 同一年度に,法科大学院課程の修了及び予備試験合格によって二つの受験資格を取得しました。その後,一方の受験資格で新司法試験を受験しましたが,当該受験資格に対応する受験期間内に,他方の受験資格で新司法試験を受験することはできますか?

A できません。新司法試験を受けた者は,その受験に係る受験資格に対応する5年間の受験期間内においては,他の受験資格で新司法試験を受験することはできません(法第4条第2項前段)。
  図解資料 (4) [PDF]

(引用終わり)

 

(上記図解資料(4)より引用、下線は筆者)

 上記具体例の場合,どちらの受験資格でも受験可能です(出願時に選択)。ただし,一方の受験資格で受験した場合には,その受験に係る受験資格に対応する5年間の受験期間内においては,他の受験資格で司法試験を受験することはできません。

(引用終わり)

ローの修了見込者は、予備の資格を選択して受験できる。
その者は、正式な修了後は、予備の資格で受験したロー修了者となる。

以上から、「法科大学院修了」のカテゴリの者。
ここには、三振者と、同時取得して予備の資格を選択した者の2類型が含まれる。
そうだとすると、同カテゴリの3名が三振者だとは、断定できない。

三振者と同時取得者は、正反対の属性を持っている。
これらが同一の区分とされたことが、分析をやりにくくしている。

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