平成24年度新司法試験の結果について(5)

年齢構成

以下は、合格者の平均年齢の推移である。

年度

短答
合格者

短答
前年比

論文
合格者

論文
前年比

短答論文
の年齢差

18

29.92

---

28.87

---

1.05

19

30.16

+0.24

29.20

+0.33

0.96

20

30.36

+0.20

28.98

−0.22

1.38

21

30.4

+0.04

28.84

−0.14

1.56

22

30.8

+0.4

29.07

+0.23

1.73

23

30.7

−0.1

28.50

−0.57

2.20

24

30.9

+0.2

28.54

+0.04

2.36

ほぼ、安定していることがわかる。
受控え又は不合格となった者は、再受験時には1つ歳をとる。
そのため、滞留者が生じると、平均年齢は上昇傾向となる。
ただ、新司法試験では、三振制度がある。
滞留者は、最大でも5年を過ぎると、退出する。
このことによって、平均年齢の安定化が図られている。
三振制度は、期待された機能を果たしている。

今年は、初めて予備組の参入があった。
しかし、そのことは、平均年齢にはほとんど影響がない。
予備組の受験者は、85人しかいないからである。

まず、短答段階で考えてみる。
今年の短答合格者は、5339人である。
そのうち、予備組は、84人。
だとすると、短答合格者全体の1歳は、

5339÷84≒63.5

予備組の63歳に相当する。
すなわち、予備組の平均年齢が63歳上昇して初めて、全体の平均年齢が1歳上昇する。

次に、論文段階をみてみる。
今年の論文合格者は、2102人である。
そのうち、予備組は、58人。
そうすると、論文合格者全体の1歳は、

2102÷58≒36.2

予備組の36歳に相当する。

確かに、予備組は、論文段階で圧倒的に20代前半が合格している。
仮に、それが予備組では7.2歳の若返り効果を持っていたとしよう。
それでも、全体でみると0.2歳の押し下げ効果しかない。
予備の参入による影響は、その程度のものである。

気になるのは、短答・論文で生じる年齢差である。
すなわち、論文段階で生じる若返り効果だ。
これが、平成19年以降、わずかながら確実に増加傾向を示している。
論文は、短答と比べて、若手に有利である。
(その原因については、平成24年司法試験の結果について(3)を参照。)
その傾向が、わずかではあるものの、強まっている。
これは、基本部分への配点の傾斜が、より強まっていることによると推測できる。
20代後半以降の受験者は、この点に注意すべきである。
基本以外の知識は、書いても点になりにくい。
答案構成を理詰めでやろうとすると、瑣末な検討に時間と労力を奪われる。
基本部分に徹して、構成を大局的、俯瞰的に行えるよう、訓練すべきである。

三振者は1415人?

現在法務省が公表している資料では、今年の受験で三振。
すなわち、3回の受験で資格喪失に至った者の数はわからない。
しかし、報道によると、その数は1415人であるという。

SankeiBiz2012.9.11 20:43配信記事より引用、下線は筆者)

新司法試験合格者は過去最多の2102人 予備試験の合格者も初めて受験

 法務省は11日、法科大学院修了者などを対象とした平成24年新司法試験の合格者を発表した。合格者は昨年より39人増えて過去最多の2102人。合格率は過去最低だった前年を1・6ポイント上回る25・1%で、初めて上昇に転じた。

 (中略)

 新試験には法科大学院修了から5年以内に3回という受験制限があり、今回の試験で3回目の不合格となった1415人が受験資格を失った

(引用終わり)

ただ、これが正確な数字かは、わからない。
資格喪失者には、新試験の受験のみの場合と、旧試験との合算による場合がある。

平成24年司法試験に関するQ&Aより引用、下線は筆者)

Q21 法科大学院修了前の旧司法試験の受験歴は,司法試験の受験回数制限の対象となりますか?

A  法科大学院課程修了の資格に基づいて司法試験を受けようとする者が,その受験前に旧司法試験第二次試験を受けたことがある場合には,旧司法試験第二次試験の受験は当該受験資格に基づいた司法試験の受験とみなされて,回数制限の対象として算入されることになります。ただし,法科大学院課程修了前に受けた旧司法試験第二次試験については,その修了前2年間に受けたものが算入の対象となります(附則第8条第2項)。
  図解資料 (5) [PDF]

Q22 司法試験(新司法試験)を受験後,旧司法試験を受験しました。司法試験(新司法試験)受験後の旧司法試験の受験歴は,司法試験の受験回数の対象となりますか?

A  法科大学院課程修了の資格に基づいて司法試験を受けた者が,その受験後に旧司法試験第二次試験を受けた場合には,旧司法試験第二次試験の受験は当該受験資格に基づいた司法試験の受験とみなされて,回数制限の対象として算入されることになります(附則第8条第3項)。

(引用終わり)

 

司法試験法4条1項、下線は筆者)

 司法試験は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める期間において、三回の範囲内で受けることができる
一  法科大学院(学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項 に規定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。)の課程(次項において「法科大学院課程」という。)を修了した者 その修了の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間
二  司法試験予備試験に合格した者 その合格の発表の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間

(司法試験法改正附則平成14年12月6日法律第138号第8条、下線は筆者)

 平成十八年から平成二十三年までの各年においては、法務省令で定める手続に従い、あらかじめ選択して出願するところにより、新司法試験又は旧司法試験のいずれか一方のみを受けることができる。
 新法第四条第一項第一号の受験資格(同号に規定する法科大学院課程の修了をいう。以下この条において同じ。)に基づいて新司法試験を受けようとする者が、その受験前に旧法の規定による司法試験の第二次試験又は旧司法試験の第二次試験の受験(当該新司法試験の受験に係る受験資格を得る前の受験については、当該受験資格を得た日前二年間のものに限る。以下この条において「旧司法試験等の受験」という。)をしているときは、その旧司法試験等の受験(次項の規定により他の受験資格に基づく新司法試験の受験とみなされたものを除く。)を、当該受験資格に基づいて既にした新司法試験の受験とみなして、新法第四条第一項の規定を適用する
 前項に規定するもののほか、新法第四条第一項第一号の受験資格に基づいて新司法試験を受けた者については、当該新司法試験の受験前の旧司法試験等の受験及び当該新司法試験の受験後の旧司法試験の第二次試験の受験を、当該受験資格に基づく新司法試験の受験とみなして、同条の規定を適用する

法務省は、両者を区別して集計している。
下記は、両者の年別の推移である。
平成18〜22年新司法試験受験状況平成23年新司法試験受験状況を元に算出)

旧試験受験を含む
三振者数

新試験受験のみの
三振者数

18

---

19

47

---

20

241

172

21

571

493

22

872

806

23

1382

1324

24

1415?

1415?

平成18、19年は、新試験のみで三振ということはありえない。
そのため、「---」と表記している。
このように、両者の数字は、微妙に異なっている。
そして、マスコミは、この区別をあまり理解していない。
そのため、どちらの数字かを区別しないで、報じていたりする。
平成20年には、社によって報じる数字が異なるということが起きた。

(毎日新聞WEB版平成20年9月11日20時9分配信記事より引用、下線は筆者)

 法務省の司法試験委員会は11日、法科大学院の修了者を対象とした3回目の新司法試験の合格者を発表した。合格者数は2065人(男性1501人、女性564人)。合格率は33.0%で初めて3割台に落ち込んだ。委員会が今年の目安とした2100〜2500人を下回り、合格者ゼロも3校に上った。また、新司法試験の受験資格は「法科大学院修了から5年で3回」と制限されており、172人が初めて受験資格を失った

(引用終わり)

(NIKKEI.NET平成20年9月12日2時21分配信記事より引用、下線は筆者)

 合格者数の平均年齢は28.9歳、最高齢は59歳。新試験は法科大学院修了から5年以内に3回という受験制限がある。今回、修了者の172人が計3回の新試験を不合格となり、受験資格を失った

(引用終わり)

(読売新聞WEB版平成20年9月12日配信記事より引用)

 合格者増がこのままのペースでは、あと2年で目標の年間3000人に到達できるかどうか微妙。法科大学院修了生には5年間で3回しか司法試験を受験できない制限があり、今年不合格となって受験資格を失った人は241人に上った。「高い学費を払っても合格できない」として法科大学院を敬遠する空気が広がり、多様な人材の確保が難しくなる懸念もある。

(引用終わり)

172人と、241人で、数字が割れている。
上記の表のとおり、前者は新試験のみ、後者が旧試験を含む数字である。

上記のうち、日経は一応正確に報じている。
「『計3回の新試験を』不合格となり」と限定しているからだ。
しかし、これだけでは、他に旧試験も受験して三振した人がいることがわからない。
また、読売も、間違っているとはいえない。
確かに、三振者の総数は241人で正しいからである。

そして、上記今年の三振者が1415人である旨の記事をみると、どちらともとれる。
「新試験には・・制限があり・・3回目の」という部分。
これに着目すると、新試験のみの数字のようにも読める。
しかし、断定はできない。
正確な数字は、法務省の正式な資料が公表されるのを、待つほかない。

それから、上記の数字は、飽くまで3回受験して資格を喪失した者である。
従って、3回受験せずに5年を経過して資格を失った者は、含まれていない。
実際の資格喪失者数は、上記の数字より、多いということになる。

今のところ、資格喪失者数は増加傾向にある。
では、今後はどうなるのか。

そもそも、現在の資格喪失者数が、増加傾向なのはなぜか。
それは、かつて受験者数が増加傾向だったからである。
かつての受験者が、3年から5年をかけて三振していくわけである。
今後、受験者数は減少に向かっていく。
そうすると、3年から5年後に、これを反映して、資格喪失者も減少する。
さらに、今後、受験者数の減少に応じて、合格率が上昇する。
これによって、三振者の生じる割合も、減ってくることになる。
このことも、資格喪失者数の減少に寄与する。
従って、資格喪失者数は、今後数年でピークとなり、減少に向っていく。

修了生7割の再確認とマスコミの誤報の意図

新司法試験は、単年度の合格率が70%になるはずだった。
それなのに、現在の合格率は低すぎる。
かつては、ほぼ全てのメディアがそのように報道していた。
当サイトでは繰り返し、その誤りを指摘してきた。
今回改めて、そのことを整理しておきたい。

そもそも、この7割という数字は、司法制度改革審議会の意見書に起源を持つ。

司法制度改革審議会意見書より引用、下線は筆者)

 法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7〜8割)の者が新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。

(引用終わり)

これを受けて、閣議決定されたのが、規制改革推進のための3か年計画である。

規制改革推進のための3か年計画より引用、下線は筆者)

 法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し、厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提とした上で、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7〜8割)の者が新司法試験に合格できるよう努める。

(引用終わり)

※「厳格な成績評価及び修了認定が行われる」という「不可欠の前提」がある。
また、「法科大学院では・・努める」となっている。
すなわち、主体は飽くまで法科大学院である。
しかも、努力目標に過ぎない。
司法試験委員会や法務省が、7割合格させる義務は、初めから存在しない。
この点も、細かいが、マスコミ等が全く無視していることである。

ここで注意すべきは、「修了者の」7割から8割となっていることだ。
すなわち、100人の修了者がいれば、70人から80人が合格することを意味する。
この場合、合格していない20人から30人の修了者は、三振したか、撤退した者である。
そうである以上、これが、単年度の合格率を意味しないことは明らかである。
仮に初年度に10人しか合格しなくても、2振り目で60人合格すれば、7割達成だからだ。
このように累積で考える以上、単年度の合格率は、7割を下回る。
これは、当たり前のことである。

司法制度改革審議会における議論でも、上記のことは既に指摘されていた。

平成13年4月24日司法制度改革審議会第57回議事録より引用、下線は筆者)

【北村敬子委員】 75%といって、落ちた人が次の年に受けて、また3回まで受けられるということになると、最後の年は50を切るんですね。今すぐには計算が出てこないんですが、これは非常に厳しい試験だなというふうな感じもするんですね。だから、75というのはごまかしの数字で、これは初年度が非常に有利なのであって、だんだん厳しくなっていくという計算になっているなというふうな感じがするんです。だから、そこのところを、3年、4年以降は同じだと思うんですが、3回までであったら、ということで。

 (中略)

【北村敬子委員】 そうなんです。だから、75というのが一人歩きして、何か全部、毎年75%の人が合格していくなというような試験ではないんだということを、ちょっと認識しておいていただいた方がいいかなということです。

(引用終わり)

当初から、単年度合格率が7割を下回ることは、わかっていた。

では、修了生7割を維持するための単年度合格率は、どのくらいなのか。
以下では、やや単純化した試算をしてみることとする。

まず、修了生の特定の年度の合格率が、受験者合格率と等しいと仮定する。
受験者合格率は、各年度で変わらないこととし、これをPとする。
そして、修了生の全てが、3回受験するとする。
その場合、修了生は3回とも不合格にならない限り、最終的に合格することになる。
各年度に不合格になる割合は、上記仮定の下では(1−P)である。
そうすると、修了生が最終的に新試験に合格する割合は、

1−(1−P) 

となる。
これを基礎に、受験者合格率と修了生が最終的に合格する割合(以下、「修了生合格割合」という。)をまとめたのが下の表である。

単年度の
受験者合格率

修了生合格割合

20%

48.8%

30%

65.7%

33%

69.9%

40%

78.4%

50%

87.5%

60%

93.6%

70%

97.3%

受験者合格率が4割でも、修了生合格割合は78.4%に達する。
そして、ちょうど33%の受験者合格率のときに、修了生合格割合は、69.9%。
ほぼ、7割となる。
すなわち、33%が、修了生7割を維持するために必要な合格率ということになる。
近時の合格率は、これを下回っている。
だから、修了生7割は、実現できていない。
各年度修了者の平成23年までの新司法試験合格状況参照。)

以上が、「修了生7割」の正確な理解である。
しかしマスコミは、当初からこれを単年度の合格率7割のことだと報道した。
平成16年の時点で、当時の司法試験委員会の上谷清委員長はこれを指摘した。

司法試験委員会会議第12回(平成16年11月9日)より引用、下線は筆者)

上谷清委員長  前回の委員会の審議が終わった直後に,朝日新聞に合格者数に関する記事が出て,それを切っ掛けにして,こういう新聞記事とか,記事を基にした意見が出ている。
 この朝日新聞の記事には事実と異なる記述がある。 (中略) もう一つは,新司法試験は3回受験することができるので,その間にどの程度合格するかということで考えなければいけないにもかかわらず,1回だけの受験で20パーセント台や30何パーセントといった数字が出ているとして,いかにもそれで司法試験の全体の合格率がそれと同じ数字になってしまっているというような議論をしている点。この点はちょっと確率の計算をすればすぐ分かる誤解だが,3回受験することができるわけだから,例えば1回の試験で仮に4割くらいの合格率になるとすると,3回受ければ80何パーセントが合格するという数になると思う。

(引用終わり)

朝日を名指しにしている。
そして、それから8年経った平成24年。
今年は、どうか。
いまだに、単年度合格率として報道されている。

読売新聞2012年9月12日記事より引用、下線は筆者)

司法試験、「予備試験」通過者は合格率68%

 法務省の司法試験委員会は11日、今年の司法試験合格者を発表した。

 合格者は前年比39人増の2102人。法科大学院修了生の合格率が24・62%にとどまる一方で、法科大学院を修了しなくても受験資格が得られる予備試験を通過した受験生は68・23%と高い合格率を記録した。構想段階で7〜8割の合格率が想定されていた法科大学院に対し、一層失望感が広がる可能性がある。

(引用終わり)

 

日経新聞WEB版2012/9/11 16:00配信記事より引用、下線は筆者)

司法試験の合格率25% 「年3000人目標」届かず

 法務省は11日、法科大学院修了者が対象となる2012年の司法試験で過去最多の2102人が合格したと発表した。昨年より39人増えたものの「年間合格者数3千人程度」との政府目標を7年連続で下回った。合格率も25.0%(前年比1.5ポイント増)と初めて前年を上回ったがなお低水準。政府が掲げた法曹人口の拡大路線は改めて転換を迫られそうだ。

 (中略)

 政府は02年、司法試験の合格者数を年間3千人程度とする目標を掲げ、合格率7〜8割を目指した。社会経験を積んだ多様な資質を持つ人材を法曹界に供給するというのが当初の理念だった。

(引用終わり)

これらは、単なる無理解とも考えうる。
しかし、当初から間違いを名指しで指摘されていたのである。
それでもなお、間違えるものだろうか。
マスコミはこれまで、一貫して増員を主張してきた。
それは、当時の規制改革会議の見解とほぼ同旨であった。
(その背後に米国があった(TPPと法曹人口問題の関係を理解するための資料(1)参照)。)
「合格率7割」は、その根拠として利用されてきた。
合格率7割になるまで増員せよ、ということである。
そのことからすれば、これは意図的誤報の疑いがある。
その一端は、一応正しく報じた毎日社説からも看取することができる。

毎日.jp 2012年09月17日02時31分配信記事より引用、下線は筆者)

社説:法科大学院 統廃合を進めるべきだ

 今年の司法試験合格者がこのほど発表された。過去最多の2102人(昨年比39人増)が合格したが、政府が02年の閣議決定で目標値とした3000人には遠く及ばなかった。

 (中略)

 司法制度改革審議会は01年、法科大学院修了者の7、8割が司法試験に合格できる教育を行うべきだと提言した。だが、合格率は想定を下回り、受験制限の3回までに合格できる修了者は半数に満たない

(引用終わり)

「修了生の7、8割」とし、累積でも半数に満たないことを指摘している。
これは、正しい表現である。
しかし、7、8割が合格率とは異なることを明示していない。
しかも、「合格率は想定を下回り」という不要の語句を直前に挿入している。
(単年度合格率については、政府の明示の想定は存在しない。)
そのため、読み方によっては、7、8割が単年度合格率のようにも読めるようになっている。
読者の誤解を誘う書き方を、敢えてやっているのではないか。
そう感じさせる。
そして、マスコミによる増員の主張は、いまでもなされている。
最近のいじめ問題まで、増員の根拠にしている。

日経社説・春秋2012/9/18記事より引用、下線は筆者)

「多様な司法」実現へ構想を練り直せ

 「司法試験の合格者数を年間3000人まで引き上げるという政府の目標は現実からかけ離れている」「合格者が2000人程度の今でさえ弁護士は就職難に陥り、質の低下が懸念される」――。

 こうした声を受け、政府が合格者数の目標や人材養成のあり方を見直すための検討会議を設けた。来年3月に素案をまとめる。

 しかし、司法改革が目指した身近で利用しやすい「多様な司法」はいまだ実現していない。実態に合わせて理念を取り下げるような「合格者数の削減ありき」の議論ではなく、どうすれば本来の司法改革が実現できるかを考え、原点から構想を練り直すべきだ

 この10年間に弁護士の数は1万8800人から3万500人へと1.6倍に増えた。司法改革の設計当初に見込んだほど弁護士に対する需要は広がっておらず、司法修習を終えた時点で2割の人が就職先が決まらないため弁護士登録をしていない。だが、これは仕事がないというより、需給のミスマッチの問題ではないか。

 ビジネスの現場では、M&A(合併・買収)や資本市場からの資金調達、事業再生などに精通した弁護士が必要な場面が増えているしかし使い勝手がよく質の高いサービスは十分ではない

 「法の支配を社会に行き渡らせる」という理念も実現していない。依然、弁護士は大都市に偏在している。地方でも本来は法的な対処が必要なのにそうなっていない問題は多い。それをすくい上げる努力は尽くされているだろうか。

 いじめ問題などでも、弁護士や弁護士会としてもっとやれることがあるはずだ。実際、学校と連携したスクールローヤーとして、子どもの人権保護などに取り組んでいる地域もある。こうした試みをさらに拡大していくべきだ。

 (中略) 

 法科大学院に入ったのに、単年度での合格率は下がり続けて2割台まで落ちている。合格しても仕事がなかなか見つからない。このためさらに志願者が減っていく。この悪循環を断ち切って、若い人が希望を持って目指せる法曹の世界を築かなければならない。

(引用終わり)

とはいえ、風向きは増員見直しの方向に進んでいる。
政府目標が、2000人に引き下げられたという話も出てきている。

時事ドットコム2012/08/05-14:30配信記事より引用、下線は筆者)

司法試験合格目標引き下げ=弁護士過剰で年間2000人に−政府

 政府は5日、司法試験合格者数の目標を現行の年間3000人から2000人に引き下げる方針を固めた。これまで法曹人口の拡大に取り組んできたが、弁護士の過剰が問題となり、目標値の引き下げが必要と判断した。
 政府は今月下旬にも、法相を中心とする関係閣僚会議と下部組織の有識者会議を設置する。有識者会議で司法試験合格者数の適正規模を検討するが、法務省は2000人とする案を提示。定員割れなどの問題を抱える法科大学院の統廃合の是非についても協議し、今年度末までに結論を取りまとめる予定だ。

(引用終わり)

 

滝実法務大臣閣議後記者会見平成24年8月7日より引用、下線は筆者)

法曹養成制度に関する質疑について

【記者】
 法曹養成の問題に関係して,一部報道では司法試験合格者の数について,政府の方で2000人を目標にするという案を示し,法務省の方も今度の法曹養成の新組織では2000人とする案を提示するとありましたが,その点の事実関係はいかがでしょうか。

【大臣】
 まだまだそういう具体的な数字を検討しているという段階ではありません。現状では,この2,3年が2000人台で行きつ戻りつしていることは事実として当然押さえておかなければいけませんけれども。

(引用終わり)

他方、米国は、増員を積極的に主張してきていない。
むしろ、焦点は外国弁護士の方に移行している。
TPPと法曹人口問題の関係を理解するための資料(2)TPPと法曹人口問題の関係を理解するための資料(3)TPPと法曹人口問題の関係を理解するための資料(4)参照。)

平成24年4月20日米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書(日本の貿易障壁言及部分:外務省作成仮要約)より引用、下線は筆者)

 日本は外国弁護士が日本において国際法務サービスを効率的な形で提供する能力に制約を課している米国政府は引き続き日本に対し,法務サービス市場をさらに開放するよう求めている。2012年3月,外国弁護士が日本国内において支店の開設が許可される日本の専門職法人を設立することを認める法案が国会に提出された。次なる重要なステップは,外国弁護士が専門職法人を設立したか否かを問わず,複数の支店を日本に開設することを認めることである。米国政府は引き続き,日本に対し,日本の弁護士が海外の弁護士とともに国際法務パートナーシップに加盟することについて,法的な障害や弁護士会において障害がないことを確保すること及び新規外国法務コンサルタントの登録手続の迅速化を含む他の重要な措置を取るよう求めている。

(引用終わり)

規制改革会議も、もはや存在しない。
後継の規制・制度改革委員会は、司法制度を主な検討対象としていない。
(「規制・制度改革に係る方針」(平成24年7月10日 閣議決定)参照。)
マスコミの増員主張は、後ろ盾を失っている。

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