平成24年司法試験論文式
刑事系第1問の感想と参考答案

試験問題は、こちら

今年一番危険だった刑事系

今年の特徴は、刑事系の最低ライン未満者が多かったことである。
266人が、最低ライン未満になっている。
論文採点対象者5339人の、およそ5%。
実に、20人に1人が、刑事系だけで不合格になった。
そのことが、全体の得点分布にも、歪みを生じさせていた。
平成24年司法試験の結果について(4)参照)

なぜ、今年の刑事系では、そのようなことが生じたのか。
今回は、そのことに重点を置いて検討してみたい。

メリハリがきかない

刑法における原因は、各論だったことである。
しかも、検討すべき犯罪の数が、非常に多かった。
そのため、個別の構成要件を全て検討すると、とても丁寧には書けない。
多くの人が、全ての要件を雑に検討してしまっていた。
その結果、ほとんど点の付かない答案が、続出したのである。

本問は、大局的にみると、書くべき論点は限られている。
甲については、横領と背任の区別(領得行為性)、代表形式における名義人、事務の他人性、横領後の横領。
乙については、共同正犯と狭義の共犯の区別(共謀共同正犯論)、共犯と身分である。
上記は、いずれも予備校Aランク。
どの基本書にも、触れられている論点である。
従って、これらの論点に大きな配点が振られていることは、明らかだった。
だから、これらをメインにして、構成すればよかった。
一方で、上記論点に関係のない要件は、超コンパクトにまとめる。
このメリハリが、合否を分けるポイントだった。

しかし、受験生の多くは、これができなかった。
上記のメイン論点についても、結論だけ。
説明らしい説明が、何もないような答案を書いていた。
これでは、点数の付きようがない。

では、どう書けばよかったのか。
具体的にみていこう。

横領と背任の区別

本問で、横領と背任の区別が問題となること。
これは、明らかだっただろう。

※抵当権設定だから、横領ではなく背任だと考える人がいる。
二重抵当の場合に、横領ではなく背任になることとの混同である。
二重抵当は、自己所有の物に二重に抵当権を設定したという場合である。
そもそも、「他人の物」ではない。
だから、横領にはならない。

しかし、本問の場合、A社が所有権者である。
従って、本件土地が「他人の物」に当たるのは明らかだ。
そして、通常所有権者でなければ抵当権を設定できない。
従って、所有権者でない者が勝手に抵当権を設定すれば、横領となる。

それにもかかわらず、この点を無視した人が多かった。
単に、横領だけを検討する。
しかも、横領行為か否かにつき、「不法領得意思の発現といえるか」だけを検討している。
これでは、点数はほとんど付かない。

上記のように書いた人は、おそらく、こう考えたのだろう。
横領と背任は、法条競合の関係にある。
従って、横領の成否だけ検討し、横領にならないときに背任を検討すれば足りる。
そして、横領行為とは不法領得意思の発現行為である。
だから、これだけ検討すれば足りる。

確かに、横領と背任は法条競合であり、まず横領を検討すれば足りる。
これは、基本書にも書いてあることである。
しかし、そういう基本書でも、それに続いて、背任との区別基準を別に検討している。
すなわち、単に不法領得意思の発現か、というだけでは考えていない。
なぜか。
それは、背任との区別が問題になる事例では、それだけでは判断が難しいからである。

例えば、本問の甲は、A社を代表して抵当権を設定している。
これは、不法領得意思の発現行為だろうか。
A社を代表するということは、本件土地をA社所有と認めることに他ならない。
それでも、甲は自ら所有権者として振舞っているといえるのだろうか。
この部分を判断できる基準が、提供される必要がある。
それが、逸脱か濫用か、または名義・計算で区別する考え方である。
上記のような基準は、どの基本書、予備校本にも書いてある。
にもかかわらず、これらを答案で示さない。
それは、基本すらわかっていない不良の答案となる。
当てはめに入る以前の段階で、勝負がついている。

なお、甲の抵当権設定は、会社の負担となる反面で甲の利益となる。
従って、会社法595条1項2号の間接取引であるが、その承認がない。
これを捉えて、権限逸脱あるいは自己の計算だ、とした人もいたかもしれない。
それでも、大きく減点される、ということはないだろう。
(この種の当てはめは、受験生が思っているほど、比重が高くない。)
しかし、本来それだけでは、直ちに権限逸脱あるいは自己の計算とはいえない。
例えば、会社の事業で不要となった工作機械を、取締役が買い取った。
(これは、直接取引である。)
その価格も適正であったが、承認の手続きを失念していた。
これをもって、工作機械の横領行為とはいえないだろう。
(故意がないから、ではなく、客観的に領得行為と認められない。)
自己の借金返済のために、会社財産を担保に入れる。
この点が、領得の直接の根拠となる。
会社の財産を、あたかも自己の財産のように担保に入れる行為だからである。
これを、委託の趣旨からおよそ許されないから権限逸脱だ、と表現するか。
利益が専ら甲に属するから、自己の計算である、と表現するか。
それは、規範との対応によるものであって、言っている中身は同じである。

※もう少し細かく言えば、甲の返済能力の問題もある。
本問では、自力の返済が難しそうである。
すなわち、一時的に会社財産を担保に入れて、すぐに返済しようという場合ではない。
会社資金の一時流用(使用窃盗類似の議論)と同様に考える余地もない、ということである。
従って、領得行為を認定し易い方向に働く事情ということができる。

それから、本問のA社は合同会社である。
これは、特別背任を避ける意味がある。
このことは、単に特別法を避けた、というだけにとどまらない。
特別背任が入ると、話が無駄にややこしくなるのである。
それは、特別背任の法定刑にある。

(会社法960条1項、下線は筆者)

 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する
一 発起人
二 設立時取締役又は設立時監査役
三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
4号以下略。

 

(刑法、下線は筆者)

247条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

254条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

どの罪が、一番重いのだろうか。
通常の背任が一番軽い、ということはわかる。
問題は、業務上横領と特別背任の軽重である。
刑の軽重については、刑法10条が定めている。

(刑法)

9条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

10条 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。
2 同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。
3 二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。

12条1項 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。

両者は、共に懲役の長期が10年で、短期は1月(12条1項)である。
長期も短期も同じなので、素直に考えると、3項で犯情によるとなりそうである。
しかし、特別背任は、罰金との併科がある。
これを、無視してよいのだろうか。
このことは、10条をみても、よくわからない。

この点については、大きく二つの考え方がある。
一つは、重い刑種だけを比較するという考え方である。
(重い部分だけ対照しろ、ということから重点的対照主義という。)
これに従えば、重い懲役だけをみるから、罰金の併科は無視する。
従って、やはり犯情で決することになる。
刑法施行法3条3項は、その立場に立っている。

刑法施行法3条3項、下線は筆者)

 一罪ニ付キ二個以上ノ主刑ヲ併科ス可キトキ又ハ二個以上ノ主刑中其一個ヲ科ス可キトキハ其中ニテ重キ刑ノミニ付キ対照ヲ為ス可シ併合罪又ハ数罪倶発ニ関スル規定ニ依リ数罪ノ主刑ヲ併科ス可キトキ亦同シ

もう一つは、全体を比較するという考え方である。
(全体を対照するから、全体的対照主義と呼ばれる。)
これに従うと、軽い罰金が選択できる場合は、そちらの方が軽い。
なぜなら、懲役ではなく、罰金だけで済む場合が生じるからである。
他方で、罰金の併科もできる場合は、そちらの方が重い。
なぜなら、懲役だけではなく、罰金までも課される場合が生じるからである。
特別背任は、罰金を併科できる場合である。
従って、この立場からは、特別背任の方が重い。

判例は、基本的に重点的対照主義によるとされている。
上記刑法施行法3条3項が、その根拠となっている。

最判昭23・4・8より引用、下線は筆者)

 原判決は、食糧管理法及び物価統制令違反の連続した想像的数罪を認定し、法律の適用にあたり所論のように刑法第五四条第一項前段、第五五条、第一〇条を適用して、食糧管理法第三一条(昭和二二年一二月三〇日の改正前の規定、以下同じ。)の所定刑と物価統制令第三三条の所定刑とを対照し、犯情により前者の刑を重しとし、これに従つて処断したものである。所論のごとく、前者の法定刑は、一〇年以下の懲役又は五万円以下の罰金であり、後者の法定刑は、一〇年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金である。そして共に懲役と罰金の選択刑又は併科刑であつて、懲役は長期及び短期が同じである。両者の異る主要点は、ただ罰金の多額について、前者は五万円であり後者は一〇万円である一点に帰着するのである。
 そこで、刑法第五四条第一項において、一個の行為にして数個の罪名に触れるときは、その最も重き刑をもつて処断する旨を規定している重き刑という意味は、刑を抽象的に比較対照して数個の罪名に科せられた数個の法定刑の中最も重い法定刑を指すものであつて、具体的に判断せられるいわゆる処断刑の軽重によるべきものでないことは明かである。そして、主刑の軽重については、刑法第一〇条に規定されている。・・しかし、ここに問題となるのは、併科刑又は選択刑について、刑の軽重を対照する場合である。すなわち、一つの併科刑を他の併科刑、選択刑若しくは単独刑と対照する場合又は一つの選択刑を他の選択刑、併科刑若しくは単独刑と対照する場合においては、いかなる方法によるべきかという問題である。しかるに、刑法第一〇条はこの問題について直接的な規定をしていない。そこで同条の解釈としては、(一)併科刑又は選択刑の場合には、その中にて重い刑のみについて対照をすべきであるという考え方と、(二)二個以上の主刑の全体について対照をすべきであるという考え方とが生ずるのである。前者はいわば重点的対照主義であり、後者は全対的対照主義である。今本件の場合を例にとれば、前説では、軽い罰金刑を度外視して重い懲役刑のみについて対照すべきであり、その懲役は長期も短期も同じであるから、刑法第一〇条第三項に従い犯情により刑の軽重を定むべきこととなる。これに反して後説では、懲役が長期も短期も同じであるから、さらに罰金の法定刑をまず多額につき対照して、多額一〇万円の物価統制令違反罪の刑を重いとし、これをもつて処断すべきこととなる。思うに、(い)刑法第一〇条第一項本文においては、刑の軽重を刑種を標準として定めているが、これは一応の標準であつて無期禁錮は禁錮ではあるが有期懲役より重いとせられ又有期懲役の長期の二倍を超える長期を有する有期禁錮は、禁錮ではあるが有期懲役より重いとせられている。すなわち、刑の軽重を定めるには、刑の種類のみによるばかりでなく、刑の量もまた考慮に入れられていることが十分窺い知られるのである。又(ろ)同条第二項によれば、同種の自由刑については長期の長いものを重いとし、長期の同じものは短期の長いものを重いとせられている。すなわち、自由刑の軽重を定めるには、重い長期のみによる重点主義ばかりでなく、短期もまた考慮の中に取り入れられ、刑全体として対照せられている。(は)同様に、同種の金刑についても多額の多いものを重いとし、多額の同じものは寡額の多いものを重いとせられている。すなわち、金刑の軽重を定めるには、重い多額のみによる重点主義ばかりでなく、寡額もまた考慮の中に取り入れられ、この場合も刑全体として対照せられている。従つて刑法第一〇条がかくのごとく刑の軽重を定めるに単独刑全体として比較対照する主義に立つているところから推理すれば併科刑又は選択刑の場合においても同様にまずその中の重い刑について対照し、重い刑が全く同じであるならば、さらに順次軽い刑について対照すべきであるとする全体的対照説が刑法第一〇条の解釈としてはむしろ常識的であり、合理的であり、動かぬところであると言わねばならぬ。
 ・・ところが、ここに特に注視すべきは、刑法施行法第三条の規定の存在である同条第三項においては「一罪ニ付、二個以上ノ主刑ヲ併科ス可キトキ、又ハ二個以上ノ主刑中其一個ヲ科ス可キトキハ、其中ニテ重キ刑ノミニ付キ対照ヲ為ス可シ。」と明定している。この規定は、おそらく刑法施行前に犯した旧刑法の罪につき、刑法施行後裁判をなす場合に、「犯罪後ノ法律ニ因リ刑ノ変更アリタルトキハ、其ノ軽キモノヲ適用ス」とある刑法第六条の規定の運用上、常に新旧刑法の法定刑の軽重を比較対照する必要性に基き、これを主眼として制定せられたものではあろうが、それと同時に、「一個ノ行為ニシテ数個ノ罪名ニ触レ、又ハ犯罪ノ手段若クハ結果タル行為ニシテ他ノ罪名ニ触ルルトキハ、其最モ重キ刑ヲ以テ処断ス」とある刑法第五四条第一項の規定の運用上、法定刑の軽重を比較対照する必要のある場合にも、前記施行法の規定、少くともその規定の精神は適用を見るものと解すべきである。けだし、同条項は、併科刑又は選択刑の場合に、刑の軽重を定むるための対照手続を規定したものであり、その表現は広く一般的であつて特に新旧刑法の刑の対照のみに限定したものではないからである。又同条項は、刑法施行法であるという点から、その内容は性質上経過的規定に過ぎないと説く者があるかも知れないが、これは当らない。必ずしも常に施行法中の総ての規定が、性質上当然経過的規定であるとは言い得ない。施行法中の規定で、当然本法中に置かるべきものも往々現実に存するからである。例えば、民法施行法第四条、第五条、商法施行法第一一七条、商法中改正法律施行法第三条のごときは、その適例であると言うことができる。要するに、刑法施行法第三条第三項の規定は、一般的に併科刑又は選択刑の場合に、刑の軽重を定める重点的対照方法を規定したものと解すべきであるこれは一に運用上の簡明と便宜に主眼を置いて重点的に定められたものと見るべきであろう
 さて本件において、原判決が、上記食糧管理法第三一条の法定刑と物価統制令第三三条の法定刑を対照するに当り、刑法施行法第三条の適用を明示しなかつた瑕疵はあるが、結局併科刑又は選択刑の軽い刑種の罰金を度外視しこれを不問に附して、重い刑種の懲役のみを対照比較し、その長期も短期も同じであるから刑法第一〇条第三項を適用し自由裁量によつて犯情により食糧管理法違反罪の法定刑に従い処断したのは、固より適法であつて所論のごとき違法は、毫も存在しない。

(引用終わり)

全体的対照主義の方が合理的だが、刑法施行法3条3項の存在ゆえに重点的対照主義による。
そういう論理である。

通常、横領を先に検討すればよい、というのは、横領の方が重いからである。
しかし、上記のとおり、特別背任が入ると、必ずしもそうとは限らないことになる。
しかも、刑の軽重の解釈という、どうでもいいような解釈論が絡んでくる。
これが、どうしても特別背任を出したくない理由である。

私文書偽造について

文書偽造は、案外見落とし易い。
付随する詐欺等の財産罪に目が行ってしまうからだ。
ただ、本問では、文書偽造に関する記述が多い。
末尾に、別紙として、わざわざ議事録も載っている。
これで偽造を落としてしまうのは、問題文の読み方に問題がある。
細かい点に気を取られて、大局が見えていない。
普段の演習でも、まずは基本論点を落とさない訓練をすべきである。
理屈はともかく、この問題文ならこれは訊いているだろう。
そういうところが、直感でわかるように、演習を積む必要がある。

主要な論点は、偽造に当たるかである。
作成者は、甲ということで疑いない。
名義人は、誰なのか。
すなわち、「社員総会議事録」を見た人が通常、誰の観念、意思の表示と思うかである。
アプローチとしては、二つある。

一つは、責任追及手段の確保という点に着目する考え方である。
この考え方からは、当該文書の責任主体が名義人ということになる。
本問の「社員総会議事録」は、利益相反取引の承認を証する文書である。
そして、定款上、その主体は社員総会とされている(問題文3第2段落)。
また、議事録作成者は、社員総会を代表して議事の内容を文書化する。
だとすれば、その責任主体は、A社社員総会である。
従って、名義人も、A社社員総会となる。
上記のように考えると、作成者が権限に基づいて作成したか。
その点が、重要となってくる。
従って、偽造の定義としては「権限なく他人名義の文書を作成すること」の方が、しっくりくる。
本問の甲は、権限を与えられていないから、偽造に当たることになる。
そして、名義人の印章による押印はないから、無印私文書偽造となる。

この考え方は、最決昭45・9・4と同じ結論である。

最決昭45・9・4より引用、下線は筆者)

 他人の代表者または代理人として文書を作成する権限のない者が、他人を代表もしくは代理すべき資格、または、普通人をして他人を代表者もしくは代理するものと誤信させるに足りるような資格を表示して作成した文書は、その文書によつて表示された意識内容にもとづく効果が、代表もしくは代理された本人に帰属する形式のものであるから、その名義人は、代表もしくは代理された本人であると解するのが相当である(明治四二年六月一〇日大審院判決、判決録一五輯七三八頁参照)。ところで、原判決の是認した第一審判決は、その罪となる事実の第一として、昭和三八年八月六日に開かれた学校法人B理事会は、議案のうち、理事任免および理事長選任に関する件については結論が出ないまま解散したもので、被告人Aを理事長に選任したり、同被告人に、理事署名人として当日の理事会議事録を作成する権限を付与する旨の決議もなされなかつたのにかかわらず、被告人らは、行使の目的をもつて、理事会決議録と題し、同日山口県C高等学校理科室で行なわれた理事会において、被告人Aを理事長に選任し、かつ、同被告人を議事録署名人とすることを可決したなどと記載し、その末尾に、理事録署名人Aと記載し、その名下に被告人Aの印を押し、もつて、同被告人において権限のなかつた理事会議事録について署名人の資格を冒用し、理事会議事録署名人作成名義の理事会決議録なる文書を偽造したと認定判示しているのである。そして、右理事会決議録なる文書は、その内容体裁などからみて、学校法人B理事会の議事録として作成されたものと認められ、また、理事録署名人という記載は、普通人をして、同理事会を代表するものと誤信させるに足りる資格の表示と認められるのであるから、被告人らは、同理事会の代表者または代理人として同理事会の議事録を作成する権限がないのに、普通人をして、同理事会を代表するものと誤信させるに足りる理事録署名人という資格を冒用して、同理事会名義の文書を偽造したものというべきである。したがつて、前記のとおり、これを理事会議事録署名人作成名義の文書を偽造したものとした第一審判決およびこれを是認した原判決は、法令の解釈適用を誤つたものといわなければならない。
 また、右のような、いわゆる代表名義を冒用して本人名義の文書を偽造した場合において、これを、刑法一五九条一項の他人の印章もしくは署名を使用してしたものとするためには、その文書自体に、当該本人の印章もしくは署名が使用されていなければならないわけである。ところが、原判決の是認した第一審判決は、前記のとおり認定判示しているだけで、学校法人B理事会の印章もしくは署名が使用されたとのことは判示していないのである。しかも、記録をみても、前記理事会決議録なる文書に、右の印章や署名が使用されていたと認むべき証跡は存在しない。そうすると、前記罪となる事実を同条項に問擬した第一審判決およびこれを是認した原判決は、法令の解釈適用を誤つたものというほかはない。

(引用終わり)

この判例を知っていれば、この筋で間違いないと自信を持つことができる。
ただ、この判例は、代理形式の名義人につき本人説を採ったものとだけ紹介されることが多い。
事案の詳細は、基本書等でも、あまり書かれていなかったりする。
そのため、上記判例が議事録の事案だったことは、知らない人も多かったのではないか。
通常、代理形式の名義人の本人説の論拠は、法的効果の帰属にある。
しかし、本問の議事録による承認の法的効果が、社員総会に帰属するとは考えにくい。
(そのことから、A社を名義人とした人もいたようであり、必ずしも間違いとは言い切れない。)
だから、代理形式の場合の論理は使えないのではないか。
そういう疑問が生じてしまう。
しかし、上記のとおり、判例は議事録の作成権限冒用も、代表権冒用として処理している。
重要判例は結論だけでなく事案も把握しておくと、こういうときに役に立つ。

※責任追及という観点からは、別の考え方。
すなわち、代理形式の場合に、代理人を名義人とする考え方も成り立つように思われる。
仮に権限がなくても、その無権代理人の責任が追及できるからである。
本問でいえば、議事録上甲が表示されているから、甲に責任追及ができる。
そうである以上、名義人は甲であって、偽造に当たらない。
そういう処理も、理論的には間違っていないと思う。
ただ、一般的な考え方ではないので、答案で書くのはあまり勧められない。

また、本人説は、公共の信用という保護法益論からも説明できる。
すなわち、代理(代表)形式の場合、公共の信用の対象は、本人が誰かである。
代理人が誰かは、問題とならない。
なぜなら、効果はあくまで代理人ではなく、本人に帰属するからである。
だから、名義人は本人である。
こちらの方が、実際の答案では書きやすいかもしれない。

もう一つのアプローチは、公共の信用の基礎となる事項は何か、に着目する考え方である。
例えば、甲乙間の売買契約書であれば、真実甲と乙が作成したのかが、信用性の基礎となる。
しかし、甲が作成したか、以外の事項でも、信用性の基礎となる事項はある。
例えば、権限者によって作成されているか、等である。
これらの事項は、偽造の保護法益である公共の信用の観点から、人格の属性に含まれると解すべきである。
本問では、議事録は、真実甲が作成したか、だけでなく、権限に基づいているか。
このことも、信用性の基礎となる事項である。
そうである以上、名義人は、「作成権限のある甲」と考えるべきである。
このような考え方からは、権限の有無は、人格の属性に取り込まれてしまう。
だから、偽造の定義として、「権限なく」という部分が必要ない。
単に「作成者・名義人間の人格の同一性を偽ること」と定義すれば足りる。
本問では、実際の作成者は、「作成権限のない甲」であった。
従って、人格の同一性を偽ったから、偽造に当たる。
そして、「作成権限のある甲」と認識しうる印影が顕出されている。
従って、有印私文書偽造となる。
この考え方は、最決平15・10・6と結論が同じである。

最決平15・10・6より引用、下線は筆者)

 私文書偽造の本質は,文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあると解される(最高裁昭和58年(あ)第257号同59年2月17日第二小法廷判決・刑集38巻3号336頁最高裁平成5年(あ)第135号同年10月5日第一小法廷決定・刑集47巻8号7頁参照)。本件についてこれをみるに,上記1のような本件文書の記載内容,性質などに照らすと,ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証の発給権限を有する団体により作成されているということが,正に本件文書の社会的信用性を基礎付けるものといえるから,本件文書の名義人は,「ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証の発給権限を有する団体である国際旅行連盟」であると解すべきである。そうすると,国際旅行連盟が同条約に基づきその締約国等から国際運転免許証の発給権限を与えられた事実はないのであるから,所論のように,国際旅行連盟が実在の団体であり,被告人に本件文書の作成を委託していたとの前提に立ったとしても,被告人が国際旅行連盟の名称を用いて本件文書を作成する行為は,文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽るものであるといわねばならない。したがって,被告人に対し有印私文書偽造罪の成立を認めた原判決の判断は,正当である。

(引用終わり)

上記は、代理冒用の場合に、「甲代理人乙」を名義人とするのと同様の発想である。

※なお、上記のように考えても、論理必然、有印となるわけではないと思われる。
有印の場合に刑が加重されるのは、信用性が高まるからである。
すなわち、我が国では、印章が重用されている。
本人が、厳重に保管しているだろう。
だから、名義人の印章の印影が顕出されていれば、本人が押した。
すなわち、名義人本人が作成したとの信用が高まるわけである。
(二段の推定と同じ論理である。)
しかし本問で、上記の論理から、「作成権限のある甲」が作成したとの信用は、高まるだろうか。
甲自身が作成したという信用は、高まるだろう。
しかし、印章の所持と、作成権限の有無は、全く無関係である。
そうだとすれば、「作成権限のある甲」が作成したとの信用は、高まらないとも解しうる。
そのように考えるなら、なお無印私文書偽造にとどまると考える余地がある。
(もちろん、作成権限者にしか使用の許されない特別の印章であれば、別である。)

いずれにせよ、上記のような説明を、ある程度答案上に示す必要がある。
しかし多くの受験生が、ここは極めて雑に書いている。
例えば、以下のような感じである。

 「偽造」とは、作成者と名義人間の人格の同一性を偽ることをいう。
 本問で、作成者は「作成権限のない甲」である。名義人は、「作成権限のある甲」と解される。
 従って、偽造に当たる。

この程度では、ほとんど点数が付かないだろう。
考査委員は、この論点を問うことで、偽造罪の基本的理解を試している。
そうであるなら、偽造罪の基本的理解を、答案上に示さなくてはならない。
もちろん、どうでもいい論点であれば、上記の程度でも仕方がない場合がある。
しかし、本問で、ここは明らかにメイン論点だ。
だとすれば、他の要件(権利義務関係文書、行使の目的等)を犠牲にしても、ここはしっかり書くべきである。

なお、議事録が権利義務関係文書なのか、事実証明文書なのか等は、どうでもいいことである。
(実際には、承認という法律行為に係る証明力を有するから、権利義務関係文書だろう。)
そういうことで悩んで時間をロスするのは、現場では避けたい。
(後の勉強会やゼミにおいても、こういうことはあまり議論すべきでない。)

売却行為とDに対する背任

本問で、Dに対する背任が問題になりうることは、容易に判断できる。
売却の直前のDとの約束があるからだ。
また、Dは抵当権者であって、所有権を失うわけではない。
従って、横領ではなく、背任であるとわかる。

検討すべき問題は、「他人の事務」であるかどうかである。
二重抵当と、同様の論点である。

※二重抵当の場合には、加えて財産上の損害の有無が問題になる。
抵当権を失うわけではなく、順位の低下にとどまるからである。
しかし、本問では、Dは抵当権自体を失う。
従って、本問では、財産上の損害はあっさり肯定してよい。

多くの受験生が、「Dのためだから」という理由だけで、他人の事務に当たるとしている。
しかし、問題の所在がわかっていないと思われても、仕方がないだろう。
単なる債務不履行は、背任とはならない。
それは、「自己の事務」だからである。
すなわち、「他人の事務」とは、本来他人(本人)が行う事務を、本人に代わって行うようなものでなくてはならない。
この問題の所在を、答案に示したかどうか。
ここが、本論点のポイントである。
二重抵当に関する最判昭31・12・7は、この点について理由らしい理由を付していない。

最判昭31・12・7より引用、下線は筆者)

 論旨第一は、背任罪の成立要件たる事務は他人の事務であることを要件とする。しかるに本件第一番抵当権者たるべきAに対する被告人の抵当権設定の登記義務は設定者である被告人固有の事務であつて他人の事務ではないのに、原審が被告人の所為を背任罪に問擬したのは刑法二四七条の解釈適用を誤つた違法があ・・ると主張するしかし抵当権設定者はその設定登記に関し、これを完了するまでは、抵当権者に協力する任務を有することはいうまでもないところであり、右任務は主として他人である抵当権者のために負うものといわなければならない。この点に関する原判決の判示はまことに正当である。

(引用終わり)

学説は、二重抵当の場合は、登記必要書類を渡した後は、抵当権者が申請するから、登記協力義務は抵当権者の事務であると構成している。
しかし、これはかなり無理がある構成である。
そこまで無理をするのは、所有権侵害(横領)に対応する担保権侵害を、背任でカバーしたいという点にある。
本問で、結論をどう考えるにせよ、甲の事務なのかDの事務なのかを、検討すべきである。
その上で他人(D)の事務とするなら、どうみればDの事務にみえるのか。
具体的に示すべきだろう。
ここで文量を割く分、その他の要件はコンパクトにまとめていく。
図利加害目的に確定的認識を要するかなどは、論じてはいけない。

横領後の横領

この論点は、他の基本論点と比べると、ウエイトは下がる。
なぜなら、比較的新しい論点だからである。
また、学説も、いまだ固まっているとはいい難い。
従って、落としたり、雑に書いても、傷の浅いところである。

ここでのポイントは、不可罰的事後行為の基本構造である。
すなわち、一般に領得罪は、状態犯である。
従って、領得した物を再度領得しても、既にされた領得の違法状態に包含される。
だから、不可罰的事後行為となるのである。
(このことは、共罰的事後行為と呼んでも同じである。)
ここまでが、基本事項である。
これを、答案に示しているか。
多くの受験生が、これを示していない。

そして、ここから先は応用であり、配点が低くなる。
従来は、横領の場合も、同様に不可罰的事後行為と解されてきた。
ところが、最大判平15・4・23が現れた。

最大判平15・4・23より引用、下線は筆者)

 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後においても,その不動産は他人の物であり,受託者がこれを占有していることに変わりはなく,受託者が,その後,その不動産につき,ほしいままに売却等による所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは,委託の任務に背いて,その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をしたものにほかならない。したがって,売却等による所有権移転行為について,横領罪の成立自体は,これを肯定することができるというべきであり,先行の抵当権設定行為が存在することは,後行の所有権移転行為について犯罪の成立自体を妨げる事情にはならないと解するのが相当である。
 このように,所有権移転行為について横領罪が成立する以上,先行する抵当権設定行為について横領罪が成立する場合における同罪と後行の所有権移転による横領罪との罪数評価のいかんにかかわらず検察官は,事案の軽重,立証の難易等諸般の事情を考慮し,先行の抵当権設定行為ではなく,後行の所有権移転行為をとらえて公訴を提起することができるものと解される。また,そのような公訴の提起を受けた裁判所は,所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり,犯罪の成否を決するに当たり,売却に先立って横領罪を構成する抵当権設定行為があったかどうかというような訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきものではない。このような場合に,被告人に対し,訴因外の犯罪事実を主張立証することによって訴因とされている事実について犯罪の成否を争うことを許容することは,訴因外の犯罪事実をめぐって,被告人が犯罪成立の証明を,検察官が犯罪不成立の証明を志向するなど,当事者双方に不自然な訴訟活動を行わせることにもなりかねず,訴因制度を採る訴訟手続の本旨に沿わないものというべきである。

(引用終わり)

これを、どう理解するか。
大きく二つの考え方がある。

一つは、不可罰的事後行為性を否定した、とする考え方である。
全くの別罪と考えれば、上記判旨は説明できる。
しかし、二つ問題がある。
従来の領得罪一般の理解との整合性は、どうなるのか。
それから、両罪の罪数関係はどうなるのか、という点である。
前者については、抵当権設定は完全な所有権侵害ではないという説明が考えられる。
すなわち、抵当権の負担を負わせるだけでは、所有権自体は消滅しない。
いわば、部分的な侵害である。
これに対して、売却は所有権を完全に失わせる。
だから、別個の法益侵害だ、というのである。
答案上は、この程度でもよいだろう。
前記のとおり、ここは比重の低いところである。

しかし、実際には、上記の理解は苦しい。
なぜなら、後行の売却の方が本体の法益侵害ということになるからである。
だとすれば、先行の抵当権設定行為が、不可罰的事前行為になるだろう。
そうでないと、筋が通らない。
全くの別罪とみるのは、無理がある。
同様の理由で、後者の問題で、併合罪とみるのは、無理があるだろう。
全く別個の法益とは、評価しがたいからである。
また、包括一罪と考えるのであれば、実は不可罰的事後(事前)行為とするのと変わらない。
不可罰的事後(事前)行為も、包括一罪の一類型と考えられるからである。
(成立させて包括するか、わざわざ成立させないかは、感覚的な差異に過ぎない。)

もう一つは、本判例は刑訴の判例だと考える考え方である。
不可罰的事後行為は、法条競合ないしは包括一罪の一類型である。
従って、単独では、犯罪成立要件を充たす。
そして、検察官は、法条競合や包括一罪の一部を起訴できる。
例えば、強盗の事実を認めても、窃盗だけで起訴できる。
(被害者の人権や実体的真実主義からの限界はあるが。)
この場合に、弁護側が、「強盗の事実があるので窃盗罪は成立しないから無罪である」とは主張できない。
(訴因変更がないのに、裁判所が強盗で有罪認定することもできない。)
審判対象は、あくまで訴因だからである。
本判例は、そのことを述べただけだ、という理解である。
筆者は、この考え方がすっきりすると思う。
判旨の「横領罪の成立自体は」「罪数評価のいかんにかかわらず」という文言とも、整合的である。
訴因外の事情を考慮しないと言っているのも、考慮すると成否に影響しうることを示唆するものである。
(二つの横領が別個に成立するなら、訴因外の事情を考慮しても結論が変わらない。)
また、本判例は、一部起訴ではなく、両方の横領行為が起訴された場合を除外している。

最大判平15・4・23より引用、下線は筆者)

 なお,所論は,原判決が大審院明治43年(れ)第1884号同年10月25日判決・刑録16輯1745頁に違反するとも主張するが,同判決は,抵当権設定とその後の売却が共に横領罪に当たるとして起訴された場合に関するものであり,本件と事案を異にするから,この点は,適法な上告理由に当たらない。

(引用終わり)

このことも、上記理解と整合するだろう。
不可罰的事後行為性自体を否定しているなら、敢えて除外する必要がない。
共に起訴された場合は、これまでどおり不可罰的事後行為となるから、除外したとみるべきである。
上記理解からは、本判例の示した実体法上の意義は、構成要件該当性を否定しなかったという点だけである。
すなわち、既に領得した物は刑法上自己の物であって「他人の物」ではない。
あるいは、既に委託信任関係は破られているから、後行の領得において保護すべき委託信任関係がない。
そうした構成は、採らないということである。

上記理解から本問をみると、これは一部起訴の事例ではない。
従って、原則どおり、不可罰的事後行為になる。
本問の比重が低く、原則論がポイントになる理由は、ここにもある。

乙の共同正犯の成否

問題になるのは、共同正犯と狭義の共犯の区別。
それから、共犯と身分(65条論)である。
これは、容易に理解できたはずだ。

※そうである以上、乙の仲介は実行行為の分担であると認定すべきでない。
もちろん、理論的にはそのような理解もありうるだろう。
契約締結の当事者は甲でも、その締結過程をみると、Eとの契約書等のやりとりは、直接乙がやっているからである。
(民法的に言えば、乙は表示機関の使者として、法律行為の一部を行っている。)
しかしそうなると、当然実行共同正犯だから、狭義の共犯との区別を論じる余地がなくなる。
問題文は、この点について、わざわざ考慮要素を詳細に示している。
それを無視すれば、点数を落としても仕方がないだろう。

それから、甲の業務上横領を不可罰的事後行為とした場合。
この場合、乙の共犯も成立しないように思える。
しかし、この点は、共犯の成立を認めるのが一般である。
(本犯たる窃盗犯人との関係では不可罰的事後行為となる盗品運搬行為に加功した共犯を認めた判例として最判昭30・7・12参照。)
このことは、不可罰的事後行為に限られない。
包括一罪の場合に、広く認められることである。
例えば、強盗の一部である窃盗に共犯が成立することは、承継的共同正犯の議論で明らかである。
窃盗は強盗に吸収(あるいは包括評価)されるから共犯は成立しない、とはならない。

あとは、いつもの論証で、厚めに展開する。
共同正犯論については、因果的共犯論等の本質論から書く。
そして、事実を拾って当てはめる。
乙が、甲の業務上横領及び背任に係る犯罪事実を概ね認識していること。
甲が借金で苦しいことにつけこんで、執拗に説得していること。
契約の書類授受等で不可欠の仲介をしていること。
(問題文上、甲とEは直接顔を合わせることなく、完全に乙を介して契約している。)
そういった辺りを、指摘していきたい。
ただ、本問は甲のところで書くことが多いので、忙しい。
業務上横領と背任を分けて書きたいが、まとめて書くことになってもやむを得ないだろう。
そうでないと、重複が生じるからである。
共犯と身分も、一応65条の趣旨を示してから書く。

少し気になるのは、(特別)背任と共犯の問題である。
最決平15・2・18最判平16・9・10最決平17・10・7最決平20・5・19など、近時の判例がある。
新しい基本書では、触れられているものもある。
一部、予備校の答練でも出題されているようである。
しかし、これは最近の議論であり、いまだ学説は固まっていない。
一般論として、検討するような論点ではないだろう。
共同正犯論の当てはめを丁寧にやれば、結果的に書いたことになるともいえる。
そもそも背任は、他人の事務、図利加害目的、財産上の損害等を認識していないと、意思連絡を認めがたい。
それだけでも、成立要件は限定されている。
従って、ここはあまり気にしない方がよい。

その他の犯罪

上記以外の点でも、犯罪は成立する。
しかし、メイン論点を含まない。
本問は、上記論点だけでも、相当に忙しい。
そうである以上、その検討は、最低限のものにすべきである。

まず、Dに対する偽造私文書行使及び詐欺罪は、あっさり認めたい。
詐欺については、基本書や予備校本でも一応触れられているから、迷う。
しかし、通常問題になるのは、確実に権利を取得できる相手方に対する欺く行為がないのではないか、という点である。
本問の場合、Dは判例理論(相対的無効説)による救済によらない限り、権利を取得できない。
(結果的に善意無過失だったから保護されるとしても、欺かれたことに変わりはないだろう。)
従って、論点として論じる必要は、ないと思われる。
また、交付した金銭に対応した貸金債権を取得する点は、一応論点である。
個別財産に対する罪だから、と一言書いても、よいかもしれない。
ただ、この辺りを論じて欲しいのなら、もう少しD側の事情が書いてあるはずである。
気にはなるが、書かないという対応でよいのだろう。
本問は、他に書くべき典型論点がたくさんある。
(なお、民事上の法律関係を長々論じることは、断じてやるべきでない。)

Dからの融資金を借入金返済に充てた点は、不可罰的事後行為である。
しかし、その点をわざわざ示す必要はないだろう。
(横領後の横領と比較しようなどと考えると、答案がパンクする。)

Eに対する詐欺は、欺く行為を特定しがたいだろう。
そのことを理由に否定するか、そもそも検討しない。
「仮に〜だとすれば」のような書き方は、紙幅をロスするだけで、無意味である。
確かに、対価相当という典型論点はある。
しかし、そこを問うつもりなら、もう少し事実が挙がっているはずである。

それ以外の犯罪は、そもそも検討すべきでない。
例えば、(常習)賭博などは、現場で考えること自体がおかしい。
国外犯処罰規定(2条、3条)を確認するなどは、時間の無駄である。
(実際には、国外犯処罰の対象ではないから、不可罰である。)
ましてや、答案に「賭博罪は海外の行為なので成立しない(2条、3条参照)」などと書くのは、1行であっても無駄というほかない。
賭博罪については、そもそも常習性と共犯以外に、典型論点は何もない。
それがわかっているのだから、最初から考えすらしないのが、正解である。

それから、ひょっとすると、Eへの売却を背任と横領に分けた人がいたかもしれない。
その人は、実は鋭い。
なぜなら、本問のEへの売却は、利益相反取引に当たらないからである。
(外形上、甲とA社との利益対立がない。)
だとすれば、Eへの売却は単なる権限濫用で、背任。
しかし、売却代金を借金返済や賭博費用に回している。
だから、これが売却代金に対する横領となる、という構成だ。
現場で思いついたら、書きたくなる。
しかし、このように他人が考えない複雑な構成を採ると、大体自滅する。
本問でも、これをやると、書きにくくなるだろう。
また、実際にも、上記は誤っている。
なぜなら、利益相反取引でなくても、単独で売却できるわけではない。
本件土地の売却は、時価1億円相当であり、日常的な売買の対象ではない。
従って、会社の常務とはいえず、社員過半数の決定を要するからである。

(会社法590条)

 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
2 社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
3 前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。

甲は、BCに無断で売却している。
従って、利益相反にならなくても、内部的手続を欠いているのは同じである。
しかも、売却代金は借金返済に使うつもりであるから、委託の趣旨からおよそ許されないか、自己の計算である。
そうである以上、やはりこれは横領として評価すべきである。

現場では、こういう思いつきは、自重すべきである。
無難に、周りと同じように構成できるよう、努めるべきである。

なお、売却を横領と構成すると、売却代金の費消は、さらなる横領となる。
(本来、A社所有の土地の売却代金は、A社に帰属すべきものである。)
すなわち、横領後の横領後の横領だ。
仮に、横領後の横領は一般的に不可罰的事後行為でないと考えるとする。
その場合、これはどうなるのか。
あるいは、横領は全て成立するが、罪数処理で包括処理するという立場。
(実際は、これは不可罰的事後行為を認めているのと同じと考えられることは、前述した。)
その立場を仮に採るなら、これも一応成立させないと筋が通らない。
この部分を敢えて入れたのは、この辺りの論理性でワナをしかける意図だろう。

※甲の費消は、わざわざ用途が分かれている。
5000万円は、借金返済。
4000万円は、海外での賭博である。
わざわざ分けた理由は、何か。
問題文をよくみると、売却の当初の目的は、借金返済だけである。
仮に、横領後の横領において、当初の意図で包含されているか、という基準を用いたとする。
(その基準自体の当否は、別論である。)
そして、抵当権設定時には他に売却する意図がなかったから、売却は新たな横領だ、と説明する。
そのような説明で再度の横領を認めた場合、ここで困ることになる。
すなわち、海外での賭博は、売却当初の目的に含まれない。
だとすると、またしても横領が成立するのか。
おそらくは、そういった論理のワナとして機能するという趣旨なのだろう。
ただ、ここまで到達してワナにかかった受験生は、皆無と思われる。

こういうものは、無視するのが一番よい。
下手に触ると、思わぬ論理矛盾を犯しかねない。

罪数

罪数の比重は、それほど大きくない。
それが、例年の傾向である。
従って、よほど余裕のある場合を除いて、結論だけ書けばよい。
本問では、罪数処理のやり方によっては、かすがい現象が生じる。
その場合でも、いちいち論証する必要はない。

なお、余談であるが、通常、観念的競合は「54条1項前段」と摘示する。
牽連犯は、「54条1項後段」である。
しかし、厳密には、それは誤りである。
同項には、前段、後段は存在しない。

最判平21・7・14における堀籠補足意見より引用、下線は筆者)

 法廷意見は,観念的競合の適用条文として,「刑法54条1項前段」ではなく,「刑法54条1項」を掲げているが,これは正確な法令の適用であると考える。
 法令用語としての「前段」とは,法令の規定を一つの文章に書くことができない場合で,かつ,それを項に分けることが適当でない場合に,その規定中に終止形で終了する文章を二つ設けることがあるが,その場合の前方の文章をいうものとされている。これによれば,刑法45条には前段及び後段が存することになるが,刑法54条1項には前段又は後段はいずれも存しないことになる。法令の規定のある部分をどのように呼称するかは,法制上の約束事であって,法令の解釈の問題ではないから,観念的競合の適用条文として「刑法54条1項前段」を掲げるのは,正確性を欠くものと言わざるを得ない。当審判例や実務において観念的競合の適用条文として,慣行的に,「刑法54条1項前段」を掲げることが行われているが,正確性を欠くものと考える。

もちろん、上記は論文の成績には、全く影響しないだろう。

注意したいのは、横領後の横領を認めた場合である。
うっかりしていると、以下のようなことを書いてしまいがちだ。

 本問では、抵当権設定と売却は、異なる法益侵害と評価できるから、売却につき別途業務上横領罪が成立する。

 (中略)

 ・・2個の業務上横領は、同一の法益に対する罪であるから包括一罪である。

上記は、明らかな論理矛盾である。
「異なる法益」と「同一の法益」の部分だ。
(両罪を成立させた上で包括一罪にすること自体は、問題ない。)
これは厳しく評価されても、やむを得ないだろう。
横領後の横領を書く場所と、罪数を書く場所は、離れている。
つい、前に書いたことを忘れて、思いつきの理由付けを書いてしまうことがある。
こういうところは、構成段階で気をつけておくべきである。

なお、抵当権設定の業務上横領と私文書偽造、同行使、詐欺の牽連犯との観念的競合を認めた上で、売却行為の業務上横領と背任を観念的競合とし、抵当権設定と売却行為の業務上横領を包括一罪にすると、かすがい現象が生じ、全体が科刑上一罪となる。
これは、面白い現象である。
しかし、興味深いのは、それだけではない。
仮に、売却の業務上横領を不可罰的事後行為として不成立にしたとする。
そうすると、今度は、背任だけが浮くので、併合罪になる。
これは、変である。
前記のとおり、不可罰的事後行為は包括一罪の一類型である。
だとすると、成立させて包括したか、そもそも成立させなかったかで、差がでるのはおかしい。
やはり、背任もまとめて科刑上一罪にすべきではないか、という問題が生じる。
しかし、そんなことは、答案ではとても検討していられない。
不可罰的事後行為にしたのであれば、背任は併合罪にするのが無難である。

各論で覚える必要のある定義は少ない

以上のように、メリハリをつけて書くと、論点のない構成要件は、超コンパクトになる。
わざわざ定義や規範を示して当てはめる、という余裕もない。
だから、事実をいきなり当てはめて終わり、という感じになる。
その結果、いちいち定義や規範を覚えていなくても、書ける。
つまり、重要な論点のある要件は定義・規範を覚えるが、その他はそれほど必要ない。
こういう書き方の方が、むしろ簡単に書ける。
基本答練だと思って、典型論点だけ処理すれば、よかった。
しかし、多くの人が、構成要件を全て覚えて、吐き出すだけの答案を書いている。
覚える労力の割りに、成績には反映されてこない。

重要論点を、趣旨等の本質論から書く。
それ以外は、簡単に処理する。
本問の場合、それだけで、かなり上位になるだろう。
ほとんどの人が、典型論点を雑に書きすぎているからだ。
ローの教官等は、上記のような書き方は、論点主義だからやめろと指導するかもしれない。
しかし、無難に好評価になるのは、そういう書き方である。

【参考答案】

第1.甲の罪責

1.本件土地にDの抵当権を設定した点につき、業務上横領罪(253条)の成否を検討する。

(1)横領と背任の区別(横領行為の有無)

ア.甲は、A社の代表社員として、A社名義で抵当権設定を行っている。これをもって横領といえるのか、背任にとどまるのではないかが問題となる。

イ.横領は、背任の特別類型であるから、横領が成立する場合、背任は成立しない(法条競合)。そこで、本問の抵当権設定行為が横領に当たるかを検討する。
 横領とは、領得行為、すなわち不法領得の意思を実現する一切の行為である。不法領得の意思とは、権限がないのに所有権者しかできない処分を行う意思をいう。そうすると、権限濫用の場合は、なお形式上権限を有するから領得行為に当たらないが、権限逸脱の場合は、形式上も権限がないから、領得行為に当たる。

ウ.本問で、甲のした抵当権設定は、A社が抵当の負担を負う反面、甲は担保の信用を得るから、利益相反取引に当たる(会社法595条1項2号)のに、必要な承認手続を経ていない。のみならず、自己の賭博による借入金返済のための融資の担保として会社財産を抵当に入れる行為は、代表社員としておよそ許されない。そうである以上、権限逸脱の場合であり、抵当権設定をもって不法領得意思の実現行為ということができる。

エ.よって、甲の抵当権設定行為は、横領行為に当たる。

(2)その他の要件

 本問で、A社の代表社員は同社所有不動産の処分・管理権、すなわち法律上の支配力を有するところ、甲は、A社の代表社員の地位に基づいて、A社所有の本件土地を管理していたから、他人の物を業務上占有する者である。

(3)以上から、業務上横領罪が成立する。

2.「社員総会議事録」を作成した点につき、私文書偽造罪(159条)を検討する。

(1)偽造の有無

ア.文書の表示から認識される意思又は観念の主体(名義人)と異なる者が、勝手に文書を作成すると、文書に係る責任追及を適切になしえないことから、現行刑法は、原則として有形偽造を処罰する。従って、本罪の偽造とは、無権限で他人名義の文書を作成する行為をいう。

イ.本問で、「社員総会議事録」の名義人は誰か。「社員総会議事録」には、「議事録作成者代表社員甲」とあり、A社社員総会を代表して甲が議事録を作成したと認識される。文書に係る責任追及手段の確保という文書偽造の本質からすれば、代表形式における名義人は、その責任の帰属する代表された本人となる。本問では、名義人はA社社員総会ということになる。

ウ.そして、A社の定款上、社員総会議事録作成者は社員の互選によるとされているのに、甲は、B及びCの承認を得ておらず、作成権限を与えられていない。そうである以上、甲は無権限で他人名義の「社員総会議事録」を作成し、もって偽造したといえる。

(2)その他の要件

ア.「社員総会議事録」は、会社法595条1項柱書の承認に係る証明力を有するから、権利、義務に関する文書である。

イ.甲は、Dに真正文書として交付する目的でこれを作成したと考えられるから、行使の目的が認められる。

ウ.「社員総会議事録」には甲の署名、押印があるのみで、名義人であるA社社員総会のものはない。従って、「社員総会議事録」は無印文書である。

(3)よって、無印私文書偽造罪(159条3項)が成立する。

3.Eに本件土地を売却した点

(1)A社に対する業務上横領罪の成否

 BCに無断で売却しており(会社法590条2項参照)、代金を甲自身の借入金返済等に充てることは代表社員としておよそ許されないから、前記1と同様権限逸脱として業務上横領の構成要件に該当するが、Dへの抵当権設定時において既に業務上横領が成立することから、横領物の横領の成否が問題となる。
 領得行為により横領は既遂となって終了するが、なお所有権及び信任関係の侵害状態は残存する(状態犯)。その後さらに同一物を領得しても、その違法は残存した違法状態に包含されるに過ぎない。従って、後行の領得行為のみをもって横領罪を認定するときは別として(近時の判例参照)、重ねて横領罪は成立しない(不可罰的事後行為)。
 本問では、前記1の業務上横領が成立する場合であるから、Eへの売却については、業務上横領罪は成立しない。

(2)Dに対する背任罪(247条)の成否

ア.他人の事務(事務処理者)

 背任罪の罪質は、委託信任関係に違反する財産侵害であるから、同罪の事務とは、委託により他人(本人)に代わって行う事務、すなわち、他人の事務でなければならない。甲は、Dとの間で抵当権の保持を約しているが、これは甲自身の事務にとどまるのではないか。
 確かに、担保保持義務は、担保権設定者が担保権者に直接負う義務のようにもみえる。しかし上記義務は、本来的には担保権者が自らの権利を保持するためのものであって、担保権設定者はこれを担保権者に代わって履行すると考えることができる。従って、担保権設定者の担保保持義務は、担保権者の事務である。
 本問では、担保権設定者たる甲の負う担保保持義務は、担保権者であるDの事務である。従って、甲は他人(D)の事務を処理する者である。

イ.その他の要件

(ア)本件土地の売却は、登記を抹消されたDの抵当権を消滅させる効果を生じさせ、委託による担保保持義務に違背するから、財産上の損害及び任務違背行為がある。

(イ)甲は、売却代金で自己の借入金の返済に充てる目的であったから、自己図利目的がある。

ウ.よって、背任罪が成立する。

4.その他の犯罪

(1)「社員総会議事録」を真正文書としてDに交付した点につき、偽造無印私文書行使罪(161条1項)が成立する。

(2)「社員総会議事録」を交付する等の欺く行為によりDに社員総会の承認があったと誤信させて1億円を交付させた点につき、詐欺罪(246条1項)が成立する。

(3)Eは、本件土地の売却がA社との正規の取引と誤信していたが、Eの誤信を生じさせる欺く行為と認めるに足りる甲の行為が明らかでないから、本問の事情だけでは詐欺罪は成立しない。

5.以上から、甲は@業務上横領、A無印私文書偽造、B同行使、C詐欺、D背任の罪責を負う。ABCは牽連犯の関係にあり、@Cが観念的競合となる(54条1項)ことから、@からCまで全体が科刑上1罪となり、Dと併合罪(45条前段)となる。

第2.乙の罪責

1.Eに本件土地を売却する甲の行為に加功した点について、(業務上)横領及び背任の共同正犯(60条)の成否を検討する。

2.業務上横領罪につき、甲との関係では不可罰的事後行為であるが、乙は後行の売却のみの加功者であるから、乙との関係では共同正犯が成立しうる。

3.乙は、本件土地のA社所有、Dの抵当権の存在、甲D間の約束、甲の借入金返済目的等を知りながら甲に売却の説得を行っているから、共同実行の意思(意思の連絡)がある。他方、Eと売買契約を締結したのは甲であるから、仲介した乙は実行行為自体を分担していない。共同実行の事実はあるといえるか。

(1)共犯の処罰根拠は、正犯を通じて犯罪結果を惹起した点にある。そして、共同正犯と狭義の共犯は、結果への因果的寄与の強弱によって区別される。そうすると、共同実行の事実を認めるには直接の実行行為の分担は不要であるが、犯罪結果への重要な因果的寄与が認められる必要がある。

(2)本問で、乙は、Eへの売却を最初に提案し、当初断っていた甲に対し、いわば借金の弱みに付け込んで説得し、犯行を決意させた。心理的因果性は強い。また、乙は、AE間における必要書類や代金の授受等売買の成立、履行に不可欠の仲介をしており、物理的因果性も強い。甲の支払う仲介手数料が1000万円もの多額であることは、乙の上記役割の重要性を裏付ける。以上から、物心両面において、犯罪結果への重要な因果的寄与が認められる。

(3)よって、共同実行の事実がある。

4.もっとも、乙は本件土地の業務上の占有者でもなく、Dの事務処理者でもないことから、共犯と身分に関する65条の適用が問題となる。

(1)同条は、非身分者も身分者を介して法益を侵害しうることを基礎としつつ、身分に応じた犯罪を成立させることで妥当な帰責を実現する趣旨であるから、1項において構成的身分の連帯性を、2項において加減的身分の個別性を規定したものと解すべきである。また、上記趣旨は共同正犯にも妥当するから、共同正犯についても同条の適用がある。

(2)単純横領の占有者及び背任の事務処理者の身分は構成的身分であり、業務上横領の業務者の身分は加減的身分である。従って、業務上横領に加功した共犯は1項及び2項によって単純横領の共犯となり、背任に加功した共犯は1項によって背任の共犯となる。

(3)本問で、乙には単純横領及び背任の共同正犯が成立する。

5.よって、乙は単純横領及び背任の罪責を負い、加功した行為は1個であることから、観念的競合となる。

以上

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