平成24年予備試験論文式試験の結果について

合格者数、ほぼ倍増

法務省が、平成24年司法試験予備試験論文式試験の結果を公表した。
合格者数は、233人。
昨年が123人だから、110人増えた。
ほぼ倍増である。

今年の新試験では、予備組がトップの合格率だった。
平成24年司法試験法科大学院等別合格者数等(合格率順)(PDF)参照。)
2位の一橋の57%より10ポイント以上高い、68%だった。
そのことから、予備合格者は増える。
少なくとも、減ることはないと、予想されていた。
閣議決定には、合格率均衡が挙げられていたからである。
不当に予備試験合格者を絞るな、とも書いてある。

規制改革推進のための3か年計画(再改定)(平成21年3月31日閣議決定より引用、下線は筆者)

 法曹を目指す者の選択肢を狭めないよう、司法試験の本試験は、法科大学院修了者であるか予備試験合格者であるかを問わず、同一の基準により合否を判定する。また、本試験において公平な競争となるようにするため、予備試験合格者数について、事後的には、資格試験としての予備試験のあるべき運用にも配意しながら、予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させるとともに、予備試験合格者数が絞られることで実質的に予備試験受験者が法科大学院を修了する者と比べて、本試験受験の機会において不利に扱われることのないようにする等の総合的考慮を行う。
 これは、法科大学院修了者と予備試験合格者とが公平な競争となることが根源的に重要であることを示すものであり、法科大学院修了者と同等の能力・資質を有するかどうかを判定することが予備試験制度を設ける趣旨である。両者における同等の能力・資質とは、予備試験で課せられる法律基本科目、一般教養科目及び法律実務基礎科目について、予備試験に合格できる能力・資質と法科大学院を修了できる能力・資質とが同等であるべきであるという理念を意味する。

(引用終わり)

ただ、これまで、上記閣議決定は、守られてこなかった。
代表例が、平成22年までに合格者数を3000人にする計画である。

規制改革推進のための3か年計画(再改定)(平成21年3月31日閣議決定より引用、下線は筆者)

 司法試験合格者数の拡大について、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備状況等を見定めながら、現在の目標(平成22年ころまでに3,000人程度)を確実に達成することを検討するとともに、その後のあるべき法曹人口について、法曹としての質の確保にも配意しつつ、社会的ニーズへの着実な対応等を十分に勘案して検討を行う。

(引用終わり)

しかも、上記合格率均衡には、留保がついている。
まず、「事後的には」とある。
それが、どのくらい事後なのか。
1年後なのか、10年後なのか。
はっきりしない。
また、「資格試験としての予備試験のあるべき運用にも配意しながら」となっている。
あるべき予備試験像からすれば、たくさん受からせるべきでない。
そう判断すれば、均衡させなくてもよいようにも読める。
そういうことから、そう簡単に増えるという予測は、難しかった。
その意味では、今年100人以上も増えたことは、予想外である。

なお、上記のような留保は、3000人計画にも付いている。
平成23年「ころ」や、3000人「程度」。
それから、「新たな法曹養成制度の整備状況等を見定めながら」という文言がそれである。
これらは、司法制度改革審議会の段階で、意識的に付された留保である。
当時から、法曹関係の委員には、達成が難しいという認識があったからである。

第60回司法制度改革審議会平成13年5月22日議事録より抜粋(肩書は当時のもの、下線は筆者))

【水原敏博委員(弁護士(元名古屋高等検察庁検事長))】
 3,000人達成の時期につきましては、昨日発言いたしましたので、重複になりますけれども、もう一回お許しをいただきまして述べさせていただきます。
 原案では、2010年には3,000人とすることを目指す、というふうに時期をはっきり示しておりますけれども、昨日も申しましたとおり、3,000人の目標達成時期については、必ずしも委員間に意見の一致があったとは私は思っておりません。しかも、新たな法曹養成制度の整備状況等々を含めて考えますと、そこにはやはりある程度幅を持たせておく必要があるのではないかという意味で、確定的な目標設定ではなくて、「2010年から2015年頃までの間には」という表現にしていただいた方がよろしいのではなかろうかというふうに思います。

【吉岡初子委員(主婦連合会事務局長)】
 私も幅を持たせるということは必要だと思いますけれども、ここでは「頃」と入っているんですね。ですから、これはもう既に幅があるということではないでしょうか。

【藤田耕三委員(弁護士(元広島高等裁判所長官))】
 やはり、「頃」が付いていても、平成22年と言われると、そこに視線がいっちゃいますから、「平成22年以降できるだけ早い時期に」というような、ある程度の含みを持たせたような表現の方がよろしいのではないか。基本的には水原さんに賛成なんですけれども。

【吉岡委員】
 ちょっと、それには反対なんです。幅を持たせるのはいいですけれども、以降というと、それまでやらなくていいということになってしまいますから、「2010年には」と言うと、確かに実現の可能性を考えないといけないということになりますが、「頃」の場合は幅がありますから、それをつけておけばいいのではないかと思います。

【藤田委員】
 2010年までに3,000 人達成はちょっと無理ではないかという認識が前提にあるものですから。要するに法曹の能力的レベルの低下、倫理的レベルの低下を防ぎ、社会的な需要の動向を見て段階的に増やしていくべきであるということを考えているものですから、無理のないように増やしていかないと混乱が生ずるのではないかという懸念がありますので、そういう言い方をしているわけです。前提においてちょっと吉岡委員とは認識が違うのかもしれません。

【吉岡委員】
 前提というよりは、文章の読み方だと思います。

【竹下守夫会長代理(一橋大学名誉教授・駿河台大学長)】
 3,000人の達成の時期を明らかにするべきではないという御意見が、元々あったところですから、今、水原委員がおっしゃったぐらいの幅を持たせるというのはどうでしょうか。
 現在、1,000人ですから、そうすると2010年ぐらいまでと言うと、この新しい制度が発足してすぐに3倍にするという話になる。制度が発足してからというより、今から10年足らずで3倍にするというのは、やはりかなり無理があるのではないでしょうか。

【吉岡委員】
 その議論は、夏の集中審議のときにさんざんやりましたね。

【井上正仁委員(東京大学法学部教授)】
 確たることは何とも言えないのですけれども、法科大学院の立ち上がり状況として、最初にあるまとまった数が立ち上がるとすれば、そこの段階で飛躍的に数が増えて、後はそれほど大きくは増えないかもしれない。その立ち上がり状況と、そこからどのぐらいのスピードで、例えば4,000人なら4,000人というところまでいくか、そこの見込みの問題だと思うのです。そこが御意見が分かれるところだと思うわけです。
 もう一つは、あくまで「目指す」ということでして、それを目指していろんな関連の制度を整備していきましょうということであるわけですが、目標なんだけれども、独り歩きしないかという御懸念がある。そこのところの感覚が人によって違うのかなと思うのですが、目標だからその辺に設定しておいて努力しましょう。できなかったら、それよりずれても仕方がなく、できるだけ早い時期に達成するように努力しましょうと、そういう姿勢でいくのか、最初から難しいのだったら、むちゃな数を掲げると、逆に拙速になっちゃう。質を考えないで、どんどん増やすということになりかねないので、もう少し後に設定しようというのか。ただ、「2010年から2015年の間に」ということは、縮めて言えば、「2015年までに」というのと変わらないと思うのですけれども、姿勢としてどちらでいくのか、そういう問題だと思いますね。

【吉岡委員】
 2010年から2015年と言うと、それに更に「頃」と付けるのはおかしい。

【井上委員】
 だから、ぎりぎり言うと、2015年までにはとにかく達成しましょうと言うのに等しいのではないかと思うのです。

【佐藤幸治会長(近畿大学法学部教授、京都大学名誉教授)】
 やはり、早く達成したいんですけれども。

【吉岡委員】
 できるだけ早く達成したい、だけれどもそれは目標だから目指すべきであると言っているわけで、5年とかそんなことをプラスするとかしないとかということは、余りこだわることではないと思いますけれども。

【木剛委員(日本労働組合総連合会副会長)】
 やはり、これは「頃」もあるし「目指す」もあるし、特に日本の法曹人口を増やそうということですから、これは、鳥居先生や井上先生がおられるけれども、法科大学院を設立しようと考えている人たちには、できるだけ早くそういう体制で法曹が生まれるようにという努力をお願いするわけだし、これは全くはしにも棒にも掛からぬ話が書いてあるということでもない。だから、ある種こういうものは、メッセージが社会的に何か動きを誘導していくという面もあるわけですから、私は原案のままでいいと思います。

【竹下会長代理】
 おっしゃることはよく分かりますけれども、冒頭、この問題を議論したとき、昨年の春ごろから申し上げているのですが、どうも議論が先走りしているという傾向が否めないように思うのです。ですから、やはりここはちょっと地に足を付けた考え方を入れておいた方が良いのではないかという気がするのです。

【吉岡委員】
 これは、含みが二重、三重に入っているんですよね。最初のところで「法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら」と書いてあるんですよ。それで、2010年ではなくて「2010年頃には」となっていて、しかも「目指すべきである」と、3段階になっているんですよ。それ以上緩めるというのは、私には意図が分かりません

【竹下会長代理】
 ですけれども、3倍にするのですよ。実際にできるのでしょうか

【吉岡委員】
 3倍にするのでも、できるとかということではなくて、法曹養成制度の整備の状況を見定めながらということですから、状況がうまくいかなければ当然延びていくわけですよ。それを「頃」というところで言っています。でないと、せっかくあの夏の暑いときに集中審議をして、3,000人合意したのは何だったんだと、私は言いたいです。

【佐藤会長】
 それは、水原委員の御意見もその中に入って、「2015年まで」という御趣旨だろうとは思いますけれども

【吉岡委員】
 そんな5年のことでこだわることない

【中坊公平委員(弁護士(元日本弁護士連合会会長))】
 今、我々が司法制度改革を大きく国民にアピールしていくというところにおける3,000人問題の意味を考えると、その時期をある程度特定していくということが必要なんです。確かに竹下さんのおっしゃるように地に付いていないというきらいがないわけではないけれども、同時に、今のところ我々が唯一の牽引車なんです。この審議会が発信することによって議論が初めて前へ動き出しているわけです。だから、そういう我々の置かれている立場全体を考えたときには、やはり今おっしゃるように、我々の審議会は人口問題について積極的に提案して牽引していきますよという姿勢を示しているんだから、それが今吉岡さんのおっしゃるように、余り意味が分からんものになってしまうと、牽引車たるものの役割が薄れてしまう。確かに竹下会長代理のおっしゃる趣旨はよく分かるけれども、しかし同時に、司法制度改革についてこの審議会は一体どういう位置付けにあるのかということを考え合わせたときには、確かにそういうきらいはあるけれども、同時に牽引車としての役割を果たしていくという姿勢が必要なんで、またさっきのように戻りますけれども、なるべく原案通りでいくというのがいいのではないでしょうか。

【鳥居泰彦委員(慶應義塾大学学事顧問(前慶應義塾長))】
 これは2015年というと、私は80歳ですよ。とてもじゃないですけれども、私が80歳になるまで放って置くのか、という感じはあるね。

(引用終わり)

司法制度改革審議会の委員も、現在の状況は予測できていた。
(強力な推進派だった吉岡委員ですら、「状況がうまくいかなければ当然延びていくわけですよ」と言っている。)
だから、意識的に留保を付していた。
しかし、このような留保の存在は、メディア等に完全に無視され、現在に至っている。

合格率からみる難易度

論文段階での短答受験者ベースの合格率は、233÷7183≒3.24%
論文受験者ベースでみると、233÷1643≒14.18%だった。

下記は、旧試験を含めた合格率等の推移である。
平成22年までが、旧試験。
平成23年以降が、予備試験である。

短答
受験者数

論文
受験者数

論文
合格者数

短答受験者
ベースの
論文合格率

論文受験者
ベースの
論文合格率

16

43356

7287

1536

3.54%

21.07%

17

39415

7487

1454

3.68%

19.42%

18

30240

3717

542

1.79%

14.58%

19

23298

2171

250

1.07%

11.51%

20

18201

1560

141

0.77%

9.03%

21

15218

1546

101

0.66%

6.53%

22

13222

726

52

0.39%

7.16%

23

6477

1301

123

1.89%

9.45%

24

7183

1643

233

3.24%

14.18%

短答受験者ベースが3%を超えたのは、平成17年以来となる。
平成17年は、1454人の論文合格者が出た年である。
また、それ以前の旧試験の受験者合格率も、概ね3%程度だった。
その頃と同程度の合格率だった、ということになる。
末期の旧試験と比べると、明らかに受かり易くなっている。

ただ、論文受験者ベースでみると、平成18年と同じくらいである。
論文は、やや厳しかった、ということだ。
逆に言えば、その分、今年は短答が甘かったといえる。

今後、このくらいの合格率が続くのか。
それとも、もう少し高い数字になるのか。
結論的には、どんどん高くなる、ということはないと思う。
理由は、2つある。

1つは、受験者数が増加しそうだ、ということである。
旧試験では、合格者数が絞られることで、志願者が急減した。
それでも、実質最後の平成22年の段階で、1万3千人が受験していた。
これに対し、予備試験は、1万人を大幅に下回っている。
旧試験も予備試験も、受験資格の制限がない。
(ただし、旧試験は、大卒でないと1次試験が課された。)
にもかかわらず、大幅に受験者が減った。
その原因は、予備試験に対する期待の薄さにあったと思われる。
すなわち、予備試験は、受かっても、すぐに法曹になれるわけではない。
新試験の受験資格を得るだけである。
予備と新試験を両方クリアして、初めて法曹になることができる。
それは、末期の旧試験と比較しても、可能性が低い。
(科目的にも、行政法と選択科目を新たに勉強しなくてはならない。)
すなわち、予備は、末期の旧試験よりも、うま味のない試験だ。
そういう認識があったからこそ、旧試験より受験者が減ったと考えられる。

ところが、予備に合格すると、かなりの割合で新試験に受かることがわかった。
そうなると、予備に対する期待が、膨らんでくる。
その期待感の上昇は、受験者数を増加させる要因となる。

そして、合格率は、受験者数と合格者数の割り算で決まる。
分母の受験者数の増加率が、分子の合格者数のそれを上回れば、合格率は低下する。
すなわち、上記の受験者数増加要因は、合格率の低下要因である。

他方、分子の合格者数はどうか。
これが、今後飛躍的に増加する可能性は、低い。
今回、合格者数が増加したのは、新試験における予備組の高い合格率による。
従って、今後の予備組の合格率を、予測する必要がある。
これは、下落はあっても、上昇は考えにくい。
今年の予備組は、全て初回受験である。
司法試験は、受験回数が増えると、どんどん受かりにくくなる。
下記は、今年の新試験の受験回数別合格率である。
(出所:平成24年司法試験受験状況

受験
回数

受験者
合格率

1回

27.11%

2回

23.71%

3回

20.77%

この法則は、今年不合格だった予備組にも、当てはまるだろう。
そうなると、来年再挑戦する予備組の合格率は、今年より低くなる。
また、今年新規参入する予備組は、去年ほど絞られていない。
このことも、来年の新試験における予備組の合格率を押し下げる。
そして、来年不合格だった予備組は、さらに再来年の合格率を押し下げる。
そのプロセスの反復によって、予備組の合格率は、今後下がっていく。
その下落幅こそ正確にはわからないが、上昇することは、まずあり得ない。
一方、ローでは現在、定員削減と修了認定の厳格化が行われている。
下位ローの統廃合も、進んでいる。
ロー組の合格率は、むしろ上昇する方向にある。
現在、2位一橋との合格率の差は11%である。
これが逆転に至る可能性は、決して低くない。

そうなると、予備の合格者数を大幅に増やそう、という話にはなりにくくなる。
今年よりは少し増えるかもしれないが、そこからは横ばいになるだろう。
従って、分子の合格者数は、微増か、横ばいとなると予測できる。
このことが、合格率が上昇しなさそうに思えるもう一つの理由である。

長期的にみると、予備の新試験合格率が下落すると、予備への期待がまた薄まる。
それによって、受験者数が減ると、また予備の合格率が上昇するだろう。
安定化するのは、三振制度が機能する時。
すなわち、5年が経過する時点である。
それ以降は、受験者数、合格者数、合格率ともに、横ばいとなるだろう。

合格点、平均点からみる難易度

今年の予備論文の合格点は、230点だった。
満点は500点だから、その46%を取れば合格できた。
昨年の245点より、15点低い点数である。
これは、純粋に合格者数が増えたことによる。
例えば、今年245点以上の者は、104人。
また、昨年の123人に最も近い126位の得点は、242点である。
合格者数が昨年並みなら、合格点も昨年に近い数字になっていた。
予備の合格点は、合格者数を基準にして確定されている。

では、この合格点は、どの程度の水準なのだろうか。
下記は、旧試験と予備試験の合格点等の推移である。
平成22年までが、旧試験。
平成23年以降が、予備試験である。
得点率とは、満点に占める得点の割合である。

合格点

得点率

16

136.50

56.8%

17

132.75

55.3%

18

133.75

55.7%

19

132.00

55.0%

20

132.00

55.0%

21

126.50

52.7%

22

130.50

54.1%

23

245

49.0%

24

230

46.0%

単純に得点率だけを比較すると、旧試験時代よりレベルが下がっている。
そういうようにもみえる。
ただ、そのような単純比較はできない。
実は、採点区分が、旧試験と予備では、若干異なるからである。
両者とも、大きく4つの区分で分けることは、同じである。
すなわち、優秀、良好、一応の水準、不良である。
ただ、各区分の得点や分布割合が異なる。
旧試験では、以下のとおりだった。

(司法試験第二次試験の合否判定等に関する情報より引用)

○  採点方針
  1  1問の採点は,40点満点とし,白紙答案は0点とする。
  2  各答案の採点は次の方針により行う。
   (1)  優秀と認められる答案については,その内容に応じ30点から40点。
 ただし,その上限はおおむね35点程度とし,抜群に優れた答案については更に若干の加点を行えるものとする。
   (2)  良好な水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ25点から29点。
   (3)  一応の水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ20点から24点。
   (4)  上記以外の答案については,その内容に応じ19点以下。
 ただし,特に不良であると認められる答案については,9点以下。

 (中略)

2  得点分布の目安
 採点格差の問題があることを考慮し,上記1の方法による採点格差調整を行うほか,採点に当たってのおおまかな得点分布の目安を次のとおりとする。
 ただし,これは一応の目安であって,採点を拘束するものではない。

割合 5%程度 30%程度 40%程度 25%程度
得点 40〜30点 29〜25点 24〜20点 19〜0点

(引用終わり)

得点率に直して表にすると、概ね以下のようになる。

区分

得点率

分布割合

優秀

100〜75%

5%

良好

74%〜62%

30%

一応

61%〜50%

40%

不良

49%〜0%
(特に不良22%以下)

25%

旧試験の合格点は、概ね55%前後の得点率で推移してきた。
これは、一応の水準の真ん中くらい。
分布割合にすると、概ね上から55%、下から45%の位置ということになる。

※ただし、分布割合は飽くまで目安であり、実際にはかなり異なる。
(論文合格率と、合格点の得点割合を比較すれば、明らかである。)
従って、実際に比較に適するのは、得点率の方である。
もっとも、旧試験と予備では、その分布の目安自体に差異がある。
一応、そのことに留意した上で、比較する必要がある。

では、予備ではどうか。
予備の区分や分布割合は、以下のとおりである。

司法試験予備試験論文式試験の採点及び合否判定等の実施方法・基準についてより引用)

1.採点方針

(1) 白紙答案は零点とする。

(2) 各答案の採点は,次の方針により行う。

ア.優秀と認められる答案については,その内容に応じ,下表の優秀欄の範囲。
 ただし,抜群に優れた答案については,下表の優秀欄( )の点数以上。

イ.良好な水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ,下表の良好欄の範囲。

ウ.良好とまでは認められないものの,一応の水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ,下表の一応の水準欄の範囲。

エ.上記以外の答案については,その内容に応じ,下表の不良欄の範囲。
 ただし,特に不良であると認められる答案については,下表の不良欄[ ]の点数以下。

優秀

良好

一応の水準

不良

50点から38点
(48点)

37点から29点

28点から21点

20点から0点
[3点]

(3) 採点に当たってのおおまかな分布の目安を,各問に応じ次のとおりとする。ただし,これは一応の目安であって,採点を拘束するものではない。

割合 5%程度 25%程度 40%程度 30%程度
得点 50点から38点 37点から29点 28点から21点 20点から0点

(引用終わり)

同じように表にまとめると、以下のようになる。

区分

得点率

分布割合

優秀

100〜76%

5%

良好

74%〜58%

25%

一応

57%〜42%

40%

不良

40%〜0%
(特に不良6%以下)

30%

そうすると、昨年の合格ラインだった49%。
これは、一応の水準の真ん中くらいの得点率である。
分布としては、上からも下からも50%。
ちょうど、真ん中くらいということになる。
これは、旧試験の時代と、それほど変わらないといえる。

今年の46%は、それよりやや下。
従って、旧試験時代の合格点との関係でも、少し下、という感じである。
得点率からは、論文は旧試験よりハードルがやや低くなっている。
とはいえ、その差はわずかである。
旧試験の合格者再現答案などは、予備でも合格レベルのものとして、参考にしてよい。

では、新試験と比較するとどうか。
新試験は、予備との比較がしやすい。
区分ごとの得点率や分布割合が、予備と等しいからである。
(「司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について」参照。)

まずは、平均点を比較してみる。
新試験の数字は、最低ライン未満者も含んだ数字にしている。
予備には、最低ラインが存在しないからである。
新試験の平成18、19年は、最低ライン未満者を含んだ数字が公表されていない。
そのため、表からは省いている。

新試験
平均点
得点割合

予備試験
平均点
得点割合

20

46.5%

---

21

45.1%

---

22

43.2%

---

23

43.0%

38.5%

24

44.1%

38.0%

平均点では、新試験組の方が高い。
新試験組は、かろうじて一応の水準の下限に位置している。
他方、予備組は、不良の水準の方に落ちている。
全体の受験者層のレベルは、新試験の方が高いといえる。

では、合格レベルはどうか。
新試験では、短答と論文との総合で、合格点が決まる。
ただ、ここでは論文での比較を対象としている。
そこで、新試験の最終合格者数に相当する論文の順位の得点。
これを、論文の合格点とした。
例えば、平成20年は、2065人が受かっている。
論文で2065位の人の得点は、383点だ。
論文は、800点満点だから、得点割合は、

383÷800≒47.8%

ということになる。
同様に算出したものをまとめたのが、下記の表である。

新試験
合格点
得点割合

予備試験
合格点
得点割合

20

47.8%

---

21

47.1%

---

22

46.2%

---

23

45.8%

49.0%

24

46.7%

46.0%

昨年は、予備の方が合格レベルは高かった。
今年は、ほぼ同じ。
むしろ、新試験の方が微妙に合格レベルが高い。
とはいえ、新試験の合格レベルが、概ね予備の合格レベルになっている。
予備は、ロー修了生と同等のレベルかを問う試験のはずである。
実際には、新試験合格者と同等のレベルかを問う試験になっている。
合格者が昨年から100人以上増えても、そのくらいのレベルは維持されている。

従って、今年の予備合格者は、新試験でも、同じように実力を発揮すれば、合格できる。
難しいことではなく、基本論点を無難に拾って書いていく。
予備は、それだけで合格できたはずだ。
これは、新試験でも変わらない。
むしろ、新試験を予備と違う特別な試験だと思うと、足をすくわれる。
見かけの難しさに、だまされないようにすべきである。
他方で、あまり馬鹿にしてもいけない。
新試験の合格率は予備よりはるかに高いが、合格レベルは同程度である。
(この点は、かなり誤解されている。)
油断すると、普通にやられてしまう。
それなりの緊張感は、必要である。

また、これから予備試験を目指す人は、新試験も解いてみるべきである。
新試験の合格ラインが、ほぼそのまま予備の合格ラインになっているからだ。
共通して目指すべき水準は、「一応の水準の真ん中」である。

口述試験について

新試験と異なり、予備では論文の後に、口述が控えている。
ただ、これは通常落ちない試験である。
昨年は、122人が受験して、116人合格。
落ちたのは、6人だけである。

もっとも、旧試験と違って、口述で落ちたら短答から出直しである。
それだけに、独特の怖さがある。
口述で落ちるパターンは、2通りである。

1つは、考査委員と議論になること。
これをやると、先の質問ができずに時間切れになる。
考査委員が撤回を示唆しているのに、強情に自説を曲げない場合に起こりやすい。
考査委員側が用意している質問にうまく流れるよう、上手に対応しよう。

もう1つは、沈黙してしまうこと。
これも、先の質問ができずに時間切れになる。
とりあえず、関連しそうな事項をしゃべるようにしよう。
趣旨でも、条文でも、何でもよい。
そうすると、考査委員がヒントをくれることがある。
しかし、黙っていると、そのままになってしまう。

いずれにせよ、考査委員の発言の意図を考えて、それに素直に乗る。
これが、口述のテクニックである。

出題範囲は、民事・刑事の実務基礎(法曹倫理含む)だけである。
実体法よりも、手続法が重視されている。
要件事実や、訴訟法を中心に勉強するとよい。
また、民訴規則や刑訴規則の知識が問われることもある。
これは、短答でも出題されるところでもある。
わずかな期間しかないが、条文や定義、趣旨の確認をしておくとよい。
条文は、現場に法文があるが、まずは見ないで答えろと言われることがある。
法文を見てよい場合でも、家で条文を引くのとは、わけが違う。
考査委員の前で、いつものように目当ての条文を引くのは、案外大変だ。
緊張して、ページもうまくめくれなかったりする。
少なくとも、どの辺りにある条文かを、把握しておきたい。
また、定義は最初の方で導入的に訊かれることが多い。
そこで多少間違えても、どうということはないが、精神的に動揺する。
一応、基本概念については、再度確認しておこう。
法曹倫理については、ゼロから勉強する余裕はない。
論文の時に使った教材があれば、ざっと見るという程度だろう。

昨年の口述の様子については、東京弁護士会のアンケート結果(PDF)がある。
他にも、各予備校が口述再現などを出していたりする。
一応の雰囲気だけでも、感じ取っておこう。

とにかく、基本的には落ちない試験である。
知識的なことは、本来あまり気にする必要はない。
(とはいえ、精神衛生的な意味で、当日まで必死に勉強すべきである。)
完璧に答えようとするのではなく、人間としておかしい態度をみせない。
間違えたら、素直に撤回する。
完全な解答がわからなくても、その手がかりになりそうな事柄をしゃべる。
これが、一番重要である。

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