政府公表資料等情報

衆院法務委員会平成24年3月23日より抜粋(下線は当サイトによる)

○小林興起委員長 これより会議を開きます。
 第百七十九回国会、内閣提出、裁判所法の一部を改正する法律案及びこれに対する大口善徳君提出の修正案を一括して議題といたします。
 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。
 本日は、本案及び修正案審査のため、参考人として、明治大学法科大学院特任教授青山善充君、京都大学名誉教授佐藤幸治君、日本弁護士連合会副会長新里宏二君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、青山参考人、佐藤参考人、新里参考人の順に、それぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず青山参考人にお願いいたします。

○青山善充参考人 ただいま御紹介いただきました明治大学法科大学院特任教授の青山善充であります。
 私は、平成十三年三月まで東京大学法学部教授として長らく民事訴訟法の研究教育に携わり、現在は、明治大学法科大学院で特任教授として司法制度論、民事訴訟法及び倒産法などの科目を担当することを通じて、日々法科大学院の学生と接している者であります。
 本日は、当委員会において審議中の裁判所法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について、参考人としての意見を述べよという御要請でございます。私は、結論的に、原案に賛成し、修正案に反対の立場から、その理由とともに私の意見を申し述べたいと存じます。
 なお、これから私が述べます意見は、昨年二月にジュリスト千四百十六号に「司法修習生の給費制の是非 法曹志望者支援のあり方」と題して発表しました論文の趣旨と基本的に同一でございますので、念のため、私の論文もお手元に配付させていただきました。
 さて、審議の対象の法案及び修正案そのものは、ごらんのとおり極めて簡単でございますが、ここに至る経過はかなり複雑でございまして、いきなり私が原案に賛成である、その理由はこうこうであると述べますのは、やや唐突の感を否めません。そこで、意見の本論に入ります前に、順序として、審議の対象となっておりますこの裁判所法の一部を改正する法律案が、なぜ今、国会に提出されるに至ったのかにつきまして、これは委員の先生方には先刻御承知のことで、あるいは釈迦に説法というお叱りをいただくかもしれませんけれども、私の認識をまずお話しすることから始めさせていただきたいと思っております。
 平成十六年の裁判所法の改正、これは司法制度審議会意見書を受けた司法制度改革の一環として、司法制度改革推進本部のもとに設置された法曹養成検討会の審議を経たものでありますけれども、この平成十六年の裁判所法の改正によりまして、同法に六十七条の二という新しい条文が新設されました。これは、司法修習生への経済的支援の方法を、それまでの修習生全員に対して給与を支給する給費制から、希望者に修習資金を貸与する貸与制に切りかえるものであります。
 この裁判所法六十七条の二は、本来なら、一昨年、平成二十二年十一月一日以降に採用される司法修習生から、平成二十二年十一月以降に採用される司法修習生はいわゆる新六十四期というふうに呼ばれておりますが、新六十四期から適用されるはずでございました。
 ところが、御存じのように、給費制維持を求める日本弁護士連合会などの強い要請を受けまして、一昨年十一月二十四日、当院の法務委員長からの御提案で、この裁判所法六十七条の二の定める貸与制の施行を暫定的に一年間先送りし、その間、司法修習生に給与を支給することを内容とする法律案が提出され、同法案は十一月二十六日に成立したところでございます。
 その際、当法務委員会は次のような決議を行っております。政府及び最高裁判所は、平成二十三年、昨年の十月三十一日までに、個々の司法修習終了者の経済的状況等を勘案した措置のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることという決議でございます。
 この当委員会の決議を受けまして、そこで要請された検討事項を審議するため、昨年五月十三日に、法務省、内閣官房、総務省、財務省、文部科学省及び経済産業省の六省庁副大臣クラスと有識者、関係機関による法曹の養成に関するフォーラムが発足し、そこで慎重な調査審議が行われた結果、昨年八月三十一日に、法曹の養成に関するフォーラム第一次取りまとめなるものが公表されました。
 この法曹の養成に関するフォーラム第一次取りまとめの内容は、司法修習の重要性に鑑み、司法修習生が修習に専念できる環境を確保することが必要であり、その方策として貸与制を維持すべきであることを前提としつつ、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案し、貸与を受けた修習資金の返還、修習資金の返還につきましては、最高裁判所規則で、修習終了後五年間は据え置き、無利息、その後十年間に年賦により均等返還するというふうに定められておりますが、この修習資金の返還につきまして、その返還の猶予の条件を緩和するというものであります。
 もう少し具体的に申しますと、現行裁判所法六十七条の二第三項は、「最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたときは、その返還の期限を猶予することができる。」と定めておりますが、これに加えて、日本学生支援機構の奨学金返還制度等を参考として、次のような返還猶予事由を追加することを提案しているものであります。
 すなわち、どういうものかと申しますと、修習資金の返還をする者の年間収入が三百万円以下、または年間所得が二百万円以下である者についても返還の猶予を認める。その際、年間収入または年間所得の額の算定に当たっては、法科大学院在学中にも奨学金の給付を受けている者がいわゆるダブルローンになることを避けるために、法科大学院の奨学金の年間返還額は、その者の年間の収入または年間の所得の額から控除して計算する。さらに、猶予期間は従来の猶予事由の場合と同じく最大限五年間とするというのが、この法曹の養成に関するフォーラム第一次取りまとめの内容でございます。
 さて、今回の政府原案は、このフォーラムの提案を受けまして、これを返還猶予事由にそのまま追加しようとするものであります。
 ただ、司法制度の基本法であります裁判所法の中に収入や所得金額を数字として書き込むことは必ずしも適当ではないとの判断から、改正案の字句としては、先ほどの「修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたとき」の後に「、又は修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるとき」という文言を加えることになっている、これが政府原案でありますが、先ほどのフォーラムには関係機関として最高裁判所も参加しておりますので、最高裁判所規則としては、このフォーラムの提言どおりの規定がなされるものと私は理解しております。
 以上が政府原案であります。
 これに対しまして、公明党の大口善徳議員御提出の修正案は、簡単に言いますと、第一に、貸与制への移行を、一部、昨年十一月一日の時点までさかのぼり、それから将来に向かって二年間、つまり平成二十五年十月三十一日までの間停止し、その間、給費制を維持し、その二年間でさらにこの問題について検討すべきであるとする裁判所法の一部改正、及び、第二に、現行の法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、いわゆる連携法でありますが、連携法の附則二条の見直し条項、見直し条項というのは、この連携法が施行された平成十五年の四月一日から十年を経た時点で見直しをするという条項でありますが、その見直し条項の一部改正を提案されるものであります。
 さて、前置きが長くなりましたが、以下、私の意見を申し上げます。
 私は、司法修習生に対する経済的支援のあり方としては、給費制より貸与制が望ましいと考えておりますので、その理由を三点のみ申し述べます。
 第一は、給費制は、その歴史的使命を終えたと考えるものであります。
 給費制は、御存じのように、第二次大戦後、日本が平和国家として再出発するに当たり、すぐれた法曹を養成することが急務であるとの認識のもとに、法曹三者を統一的に養成する機関として昭和二十二年に司法研修所を設置するとともに、そこにおける修習生が安心して修習に専念できるように、当時先進国としても余り例のなかった手厚い制度として採用をしたものであります。
 そして、この給費制が幅広い層から多くの法曹を養成する上で大きな意義を持ったことは、今日、誰しも認めるところでございますが、それから既に六十数年、当初、合格者数二百六十五名で始まった司法試験の合格者は、今や、二千百名とか二千二百名の間を推移しております。
 のみならず、司法制度改革の進展の中で、他に裁判員制度の導入、法テラスの創設、法律扶助の拡大など、司法予算を必要とする局面は飛躍的に拡大している現状で、これ以上給費制を維持することは、バランスの点から不可能ではないかというふうに考えるからであります。
 第二の点は、給費制は、修習資金を自分で賄える者にまで、その必要の度合いに関係なく、全員に一律に一定額の給与を支給する制度であり、制度としては欠陥であるばかりでなく、必要のない者に対してまで給付することは、庶民の常識的感覚から理解しがたい制度であるということであります。
 ちなみに、新六十五期については、既に昨年十一月から貸与制が始まっておりますが、昨年十一月以降に採用された新六十五期司法修習生は二千一名でありますが、その二千一名のうち、貸与を希望して貸与を受けた者は千七百二十二名であると聞いております。貸与率は約八六%であります。逆に言いますと、一四%の修習生は、自分に蓄えがあるか、親などから修習資金を出してもらっているのか、つまびらかではありませんけれども、少なくとも国からの修習資金の貸与を希望していないわけであります。
 給費制という制度は、貸与の希望のない者にまで一律に一定額の給与を与える制度であり、その政策的欠陥は明らかではないかというふうに思っております。
 ここで、原案に対する修正案について一言申しますと、必ずしも私の理解が正確でなければ後から御訂正いただきたいと思っておりますが、修正案は、昨年十一月一日の時点までさかのぼって、その時点から将来に向かって二年間、つまり平成二十五年十月三十一日まで貸与制を停止し、その間、給費制を維持しつつ、この問題をさらに検討しようというもののようであります。つまり、昨年十一月から始まっている貸与制を振り出しに戻し、既に貸与として受け取った資金は給与として受け取ったこととして、貸与を受けていなかった者には一律一括して給与を支給しようとするもののようであります。
 修正案について、そのような理解がもし正しいとすれば、制度の運用の混乱を招くことに加えて、既にフォーラムにおいて十分に検討を加えた上で貸与制を維持することになった前述の経緯や趣旨から考えて、残念ながら、私は修正案には賛成することはできません。
 第三に貸与制が望ましいと考える理由は、貸与制であっても修習生が安心して修習に専念できる経済的支援の方策として設定されていることであります。
 貸与制のもとでは、修習資金を必要として申請する修習生には、全員に対して修習資金が貸与されることになっております。これは、法科大学院等における奨学金とは全く異なるわけでありまして、希望者には全員貸与される。その額も、基本額は月額二十三万円と聞いております。これは、これまでの給費制と遜色がありません
 さらに、本人の状況、本人の状況というのは、その修習生が扶養家族を持っているか、あるいは住居を賃借しているか、あるいは双方に該当するか、そういうことによって最高二十八万円までの増額が認められる反面、基本額までの貸与は必要ないという者には十八万円を貸与するという制度でありまして、制度として非常に弾力性に富んでいることも、一定定額の給費制に比べてメリットであるというふうに考える次第であります。
 さて、この貸与制を維持した上で、返還猶予に新たな事由を加えるというのが政府原案でありますが、これについても私は賛成であります。
 修習資金の貸与を受けた者は、将来その者が法曹三者のいずれの道に進むか、あるいは法曹三者以外の道を選ぶかにかかわらず、修習終了後、五年の据置期間経過後、十年間で年賦均等分割で返還しなければならないことは先ほど述べたとおりでございますが、その返還額は、基本額二十三万円の貸与を受けた場合には、十年間の返済で、返済額が月額約二万五千円と聞いております。月額二万五千円を返還するというこの額は、修習終了後五年程度を経た者なら、災害や病気、けが等に遭わずに、というのは、災害や病気、けが等はそれ自身として猶予事由になっておりますから、そういう災害、病気、けが等に遭わずに働いている限り、それほど困難でなく返済できる額と考えられます。
 しかし、それに加えて、年間収入三百万円以下、所得二百万円以下の者も必ずいないとは限らないことから、猶予追加事由はそのことにも考慮したものであり、この事由を追加することは最後のセーフティーネットとして評価できるというふうに考える次第であります。
 以上の次第で、私は、政府原案に対する賛成の意見陳述とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

○小林委員長 どうもありがとうございました。
 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

○佐藤幸治参考人 佐藤でございます。
 私は、京都大学で憲法学を教えておって、近畿大学の法科大学院でも教えたところでありますけれども、七十歳で引退するということで、定年退職とともに書斎生活に戻りました。ですから、この依頼を受けたとき、どうしたものかと。もう書斎生活でいるわけですからどうしたものかと思いましたけれども、審議会の会長をやったということで、そういう関係で出てきてくださいという御趣旨と受けとめ、老骨と言ったらちょっと、まあ老骨なんですけれども、ことしの六月に後期高齢者になりますから。むち打って、きょう出かけてまいりました次第であります。どうぞよろしくお願いします。
 まず最初に、司法制度改革審議会とその後の展開について一言申し上げておきたいと思います。
 審議会は、国会から、利用者である国民の立場に立って抜本的な改革案を二年以内に示しなさいという要請を受けて、平成十一年、一九九九年の七月に内閣に設置されました。審議会は、徹底した公開のもとで六十数回に及ぶ会議を重ねまして、その間、国内あるいは国際視察などをしたわけでありますけれども、会議を重ねて到達した全員一致の意見書を平成十三年六月に内閣に提出いたしました。内閣は全力を挙げてその実現に取り組みまして、かつ、国会もそれに応えて、与野党の合意のもとに改革の実現に必要な二十数本の法律を成立させ、司法改革は具体的にスタートを切ったわけであります。審議会の委員を務めた一人として、法曹関係者、内閣及び国会に深い感謝の思いを抱いて今日に至っております。
 意見書では、改革の内容は、制度的基盤の整備、人的基盤の拡充、国民的基盤の確立、いわゆる国民の司法参加でありますが、この三本の柱から成っております。改革の趣旨、目的を私なりに要約しますと、次の三点になるんじゃないかと思っております。
 一つは、一般の国民にとってまことに縁遠かった司法に、今度こそ一般の国民が容易にアクセスできる司法、いわば国民の司法にしようということであります。第二は、政治、行政を法的により有効にチェックできる司法にしよう。第三、国内向けに小さく固まってしまっていた司法をグローバル化に対応し得る司法、国際社会に通用する司法にしよう。この三つに要約できるかと私なりに思っている次第です。
 御承知のように、内閣は、司法改革に取り組むに当たって、司法制度改革推進本部顧問会議を設けました。私もその一員になったわけでありますが、その顧問会議は、平成十四年の七月、全国の八割以上の市町村では弁護士のサービスを身近に受けることができないということを指摘した上で、三つのFの司法の実現に努力するということを国民に向けて約束し、国民もその実現に力をかしていただきたいということを訴えたアピールを行いました。
 その三つのFの司法とは、一つは、国民にとって身近でわかりやすい司法、ファミリアな司法にする。第二に、国民にとって頼もしく、公正で力強い司法にする、フェアな司法にする。三番目、国民にとって利用しやすく、速い司法にする、ファストな司法にする。三つのFの司法であります。
 この三つのFの司法を実現するには、基本的な条件があります。第一に、何といっても質、量とも豊かな法曹を確保することであります。第二に、国民が容易に司法にアクセスできるような仕組みを国が責任を持って構築するということであります。本日は、まず第一の条件について述べ、それとの関連で第二の条件について触れておきたいと思います。
 意見書は「制度を活かすもの、それは疑いもなく人である。」と二度にわたって述べております。いかに理想的な制度を描いても、適切な人を得なければ絵に描いた餅になります。意見書は、法曹を国民の社会生活上の医師と位置づけ、その確保を最重要課題といたしました。
 第二次大戦後、日本国憲法のもとで法曹人口も徐々にふえまして、昭和三十九年、一九六四年に司法試験合格者が初めて五百人台に乗ったのであります。しかし、以後三十年近くにわたって、五百人前後でとまってしまいました。合格レベルに達しないという理由で、法曹人口が統制された結果であります。
 その間、世界各国の法曹人口は猛烈な勢いでふえておりました。そうした増員を引き起こした要因と結果を象徴するのは、企業法務向けの大ローファームの出現であります。日本では、従来の弁護士像からこれに抵抗する向きが強く、また弁護士の増加は訴訟社会に通ずるといったような雰囲気もあったかと思いますけれども、そういう状況でありましたが、日本だけがそうした世界の動向の圏外に立ち続けることができるのかということが大きな課題であったわけであります。実際、日本の企業などは、さまざまな面で法的対応上の当惑、困難に直面していたようで、様子がうかがわれます。
 それだけではありません。その間、日本の社会も大きく変容しつつありました。象徴的なことを一つ言えば、家族の変容、少子高齢化の進行であります。
 例えば、戦後も長子相続が少なくなかったと思うのですけれども、次第にそうでなくなっていきました。また、平成十一年の法改正で、禁治産制度にかわって成年後見制度が設けられましたけれども、最近では、例えば認知症の人々は約二百万人、成年後見人は約十四万人、そのうち八割は家族後見人で、弁護士がかかわることはごくわずかだというように言われております。そこで、この領域は法の暗黒領域と呼ばれることもあるようであります。
 人が自己の財産を適正に管理しながらその生を全うするということは、それほど容易なことではありません。その過程で、法、したがって法曹が果たすべき役割は少なくないというように思われるのであります。
 従来、日本の弁護士の仕事といえば、訴訟事件や非訟事件などのいわゆる裁判法務でありました。訴訟、裁判は、確かに司法の土台をなす極めて重要なものでありますが、一般の多くの国民が求めるのは、いきなりそうした重大な局面に臨むことではなくて、むしろ、日常生活において遭遇する問題、困難に適切に対処するにはどうしたらいいかということについて、法的な観点からの適正な助言と支えを得ることではないかというように思われるのであります。従来の弁護士像へのこだわりが、弁護士の職域を狭くし、一般の国民をして司法から遠ざける結果もあったのではないかというように思われるところであります。
 さて、法曹が国民の社会生活上の医師であるというように捉えるとすれば、身体上の医師と同じように、それにふさわしい養成の仕方があるはずであります。
 意見書は、従来のように一発勝負の司法試験のみによって選ぶというのではなくて、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を構築すべきであるとし、その中核として法科大学院の創設を提案したわけであります。そこには、学問の自由が保障される場で、現実の社会で生起する問題を法的に解決するとはどういうことなのか、そこでの法曹に求められる役割と倫理とは何かについて、研究者と法実務家とが協働しながら、基本的な教育、訓練を施そうという考え方があります。
 そして、意見書は、新しい法曹養成制度への完全な切りかえが予定される平成二十二年、二〇一〇年ころには新司法試験合格者三千人を目指すべきであるとしまして、後に同趣旨の閣議決定がなされたことは御承知のとおりであります。
 ちなみに、なぜ三千人かということでありますが、先進国中、人口に比して法曹が最も少ないフランス並みに早くしたいということもありましたけれども、先述のように、全国の八割以上の市町村で弁護士のサービスを身近に得られないという状況を早く改善したいという強い思いがありました。
 平成十六年に法科大学院が発足し、既に一万一千人余の合格者を輩出していますが、七十四という予想を上回る法科大学院ができる一方、平成二十二年ころには合格者三千人という目標に到達せず、合格率は低迷し、志願者も減少するという厳しい状況があります。
 新しい法曹養成制度の理念は間違っているとは思いませんし、定評のある法科大学院の懸命な努力と実績に大いに勇気づけられておるものでありますが、この厳しい現実にどのように取り組み、理念の実現に向けての将来性のある道筋をつけるか、喫緊の課題であるというように受けとめております。
 以上、前置きと言えば長くなってしまいましたけれども、本日の本題である給費制、貸与制の問題について意見を述べたいと思います。
 よき法曹を確保するため、修習生全員に国庫から給与を支払うという方法、いわゆる給費制をとることは、一つの政策として十分あり得ることであり、また実際そうされてきたわけであります。そして、私は、この政策を続けられるならそれにこしたことはないというようにさえ思っております。
 ただ、この問題は、今般の司法改革の趣旨、目的、つまり、既に申し上げたように、何よりも利用者である国民の立場に立って、従来、一般の国民にとって縁遠かった司法に国民が容易にアクセスできる、正義、ジャスティスに容易にアクセスできる司法にしようということとの関連で考える必要があるように思います。
 御案内のように、刑事被告人国選弁護制度は憲法との関係で当初から設けられていましたが、被疑者国選弁護制度はありませんでした。そして、民事法律扶助については、憲法に裁判を受ける権利が保障されているにもかかわらず、国としての本格的な取り組みが見られなかったのであります。
 しかし、こうした事情を憂慮して、弁護士会は、当番弁護士制度を設けて少しでもカバーしようと努め、また、民事法律扶助については法律扶助協会をつくってそれを支え、さらに、司法過疎については公設法律事務所をつくって対処しようとしてこられました。審議会のとき、浜田の第一号公設事務所を視察する機会がありましたが、そのことが今でも非常に印象に残っているのであります。こうした弁護士会の御努力は多とすべきであるというように私は受けとめてまいりました。
 しかし、問題は、その犠牲に頼り切ってよいのか、そこにはおのずから限界があるのではないか、そもそも何ゆえにこういう姿になったのかということを考えてみる必要があるように思います。それは恐らく、国民の権利の実現は私事であると考えられてきたためではなかったかと思います。そして、弁護士も私益の実現を助ける存在と考えられてはこなかったか。
 翻って考えれば、そもそも国民の権利を十全に実現することは、文字どおり、正義へのアクセスであり、それ自体、公共的意義のある事柄であると思います。それゆえに、この正義へのアクセスが地域的事情や経済的事情で阻害されているとき、その障害を取り除くことは、これまた公共的な関心事であり、本来、国の責務と考えるべきものではないかと思うわけです。意見書が、司法を公共性の空間と位置づけ、それを活性化すべく国民によるアクセスの問題を取り上げたのは、このためでありました。
 そして、被疑者国選弁護制度の導入、民事法律扶助の本格的な法的制度化、それの基盤としての法テラスの創設へと事が進んできたわけであります。また、国民のニーズに応えるには、こうした活動に従事する十分な法曹を得なければならないことも強く認識されることになります。
 法曹人口の増大の必要ということになりますが、その過程で司法修習のあり方が問題になり、その一環として給費制の存否が議論になりました。経済的事情にかかわらず優秀な人材を法曹にリクルートする上で、給費制が果たしてきた役割を否定するものではありません。しかし、危機的とも言える極めて厳しい財政状況の中で、私も行政改革会議にかかわりましたが、平成八年、九年のころ、四百兆、五百兆の赤字で大変だ大変だといって行革会議で議論したことを覚えているんです。今は既にその倍になっています。私は財政について素人ですけれども、非常に危機的な状況にあるということは私もわかるような気がいたします。そういう状況の中で、財源には限界があり、優先順位を考慮せざるを得ないというように考えるわけであります。
 その場合、国が税金から国費を支出していく以上、直接国民に還元できる形にするのが本筋でありまして、そうであるならば、民事法律扶助や国選弁護制度を充実させていくことを考えなければなりません。公共的な役割を担う人を育てるのだから給費制というよりは、公共的な職務を遂行する人にきちんと報酬を支払うということで国民へのサービスの質を高めるというように考えるべきではないかと思うわけであります。
 つまり、司法改革は不可分の全体なのでありまして、トータルな制度設計の中でそれぞれの問題が位置づけられています。そのトータルな制度設計は、弁護士を国民の近くに置き、国民のために努力する人たちを支えていこうとするものであります。これを忘れてはならないというように思うわけであります。
 以上のような観点から、貸与制への移行はやむを得ないと思うものであります。
 ただ、司法改革全体を推進する、つまり、三つのFの司法をつくるという第一の前提条件として強調しました質、量とも豊かな法曹を確保するという努力は、懸命に続ける必要があろうかと思います。貸与制への移行はやむを得ないとしても、そのことが不必要に法曹志望をなえさせることにならないよう配慮する必要があります
 その意味で、このたびの裁判所法改正案を評価いたします。ただ、例えば貸与資金の返還免除制、弁護士過疎地で働いた場合というようなことを考えていますが、そういうものの創設などを検討していただければというように願っております。また、兼業禁止も、余り厳しいものにならないような運用を期待したいというように思っている次第であります。
 なお、公明党の改正案に対する修正案は、一つの考え方ではあると思いますけれども、既に述べたような理由で、早くこの制度は安定させた方が、はっきりさせた方がいいというように考えておる次第であります。
 時間も来ましたので終わりにしますが、審議会意見書は、こういう文章で始まっています。「民法典等の編さんから約百年、日本国憲法の制定から五十余年が経った。当審議会は、司法制度改革審議会設置法により託された調査審議に当たり、近代の幕開け以来の苦闘に充ちた我が国の歴史を省察しつつ、司法制度改革の根本的な課題を、「法の精神、法の支配がこの国の血肉と化し、「この国のかたち」となるために、一体何をなさなければならないのか」を明らかにすることにある」という文章で審議会の意見書は始まっております。
 意見書を内閣に提出してから十年余がたちました。裁判員制度はしっかりと我が国の社会に根づこうとしております。弁護士の多くも多様な分野に挑戦し、また、アジアを視野に入れつつグローバルな法的サービスの提供に乗り出す法律事務所も多く出てまいりました。既に大きな変化が始まっている、生じているわけであります。
 特に法曹三者を初め法律に関係する人たちが力を合わせて努力するならば、必ず二十一世紀にふさわしい、国民の期待に応え得る司法を築き得るであろうというように信じている次第であります。
 どうもありがとうございました。(拍手)

○小林委員長 どうもありがとうございました。
 次に、新里参考人にお願いいたします。

○新里宏二参考人 日本弁護士連合会の副会長の新里宏二でございます。
 きょうは、こういう場を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私自身は、被災地仙台の弁護士でございまして、十六日に、東日本大震災の民事扶助に関する特例の法律を当委員会で御採決いただきまして、きょうの昼だとお聞きしておりますけれども参議院の本会議で成立になるということを聞いておりまして、大変感謝しておるところでございます。地元で、何とか被災者の救済のために特例をということでございましたので、被災地でも大変喜んでいただいているというふうに思っておるところでございます。
 本日は、私自身は、公明党の修正案に賛成をする立場から、給費制の問題、それから法曹養成の抱える問題点について、当連合会の基本的な考え方を御説明し、参考人としての意見とさせていただきたいと思っております。
 まず、法曹養成制度全体の問題でございますけれども、法科大学院の統廃合と定員削減、司法試験合格者数の目標見直し、司法試験の回数制限の緩和、法科大学院生及び司法修習生に対する経済的支援の強化等の、法曹養成制度全般の見直しを早急に行うべきと考えております。
 少なくとも、このような法曹養成制度全体の議論の結論を見るまでの間は、司法修習生の給費制を何らかの形で維持すべきであると考えるところでございます。この件について御説明させていただきたいと思います。
 既に出ておりますけれども、平成二十二年十一月の裁判所法一部改正により、給費制は一年間延長され、現在危機に陥っている法曹養成制度の改善をめぐる議論が始まりました。当委員会の諸先生方の英断に当連合会としては深く感謝するものでございます。
 残念ながら、昨年十一月の給費制延長の期限切れで貸与制が実施されましたけれども、その結果は、司法修習と法曹養成全体に看過できない悪影響をもたらしていると考えているところでございます。
 現在、貸与制のもとで修習しているいわゆる新六十五期に対しビギナーズ・ネットが実施したアンケートでは、貸与制による経済的負担に対し、持ち家も車も売った、奨学金の返済を貸与金で払っている、就職が厳しいと実感しており、就職できなければ借金だけが膨らむという不安がある、縁もゆかりもない地方都市で修習するが引っ越し等の費用も自己負担、貸与制になったことで司法修習は就労に当たらないことになり子供を認可保育所に預けられなくなったといった悲痛な声も寄せられておるところでございます。
 また、司法試験に合格しながら司法修習ではなく行政、企業への就職等を選択した人が、新六十五期では従前をはるかに上回る六十人に上っておりますけれども、これも貸与制の実施が影響していると考えざるを得ないと思っているところでございます。
 法曹養成制度は司法の人的基盤にかかわる問題であり、国民の権利保障や公正なルールに基づく社会の実現にとって極めて重要な課題として御審議いただくようお願いいたします。
 まず、法曹養成制度の現状でございます。
 現在の法曹養成制度には、憂慮すべき三つの問題点があると考えております。
 まず第一に、法科大学院志願者の減少、特に社会人、非法学部出身者の激減でございます。
 平成十六年の法科大学院創設当初は、多数の社会人、非法学部出身者を含め四万人にも及ぶ入学希望者がありましたが、現在では志願者は八千人を切っており、そのうちの社会人、非法学部出身者の割合はさらに急激に減少しています。これは、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材を法曹界に迎え入れようという新しい法曹養成制度の理念に照らして大きな問題でございます。
 第二に、司法試験合格率の低迷とそれによる法科大学院教育のゆがみでございます。
 合格率の低迷は法科大学院志願者の減少の大きな要因となっていますけれども、それだけでなく、法科大学院を法曹養成の中核として位置づけ、社会の国際化、高度化に対応した充実した法曹専門教育を実現するという理念が十分実現できなくなっております。
 第三に、法的需要をはるかに上回る新法曹の急増、そして、その結果としての弁護士のいわゆる就職難の深刻化でございます。
 昨年十二月のいわゆる新六十四期弁護士の一斉登録では、ついに未登録者は四百人、修習終了者の五分の一が登録できないという深刻な事態となっております。法曹志望者減少の大きな要因となっているものと考えるところでございます。
 専門職である法曹の養成には、多大な時間と費用がかかります。これは、法曹志願者本人の多額の経済的負担だけでなく、法科大学院と司法修習には多額の国費が投じられています。司法試験に合格し、司法修習を終了しても、多数の者が法曹として活躍できないというのであれば、本人にとって不幸であるのみならず、社会経済的に見ても大きな損失です。法科大学院の定員と司法試験合格者数は、法曹への社会のニーズを踏まえて適切に定められるべきと考えております。
 以上の三点は相互に密接に関連した問題であり、悪循環に陥っていると考えているところでございます。
 このように、従前よりも経済的負担が増したにもかかわらず司法試験合格率は低迷し、弁護士の就職難なども相まって法曹志願者が大きく減少している現況のもとで、給費制を打ち切り、貸与制に移行することは、司法修習生に多大な負担を強いるのみならず、司法試験に合格しながら法曹の道を選択しない人の増加をもたらすことになっており、このことは、法曹志願者の減少に拍車をかけ、現在の法曹養成制度の危機をますます深刻なものにしかねないという危機感を持っておるところでございます。
 なお、この悪循環を解消し、法科大学院が多様で優秀な人材を受け入れ、質の高い法曹専門教育を実現するためには、経済的負担の緩和とともに、厳格な成績評価と修了認定を経た法科大学院修了者の大部分が司法試験に合格し、法曹として活躍できるような制度とする必要があります。現状の法的ニーズに見合った適正な規模にまで法科大学院の定員削減を行い、あわせて地域適正配置に配慮しつつ統廃合を進めることにより、法科大学院教育の質を向上させることにあると私たちは考えております。
 法科大学院でしっかり専門教育を受ければ法曹として活躍できるという見通しがあれば、法科大学院創設当初のように、社会人、非法学部出身者も含め、多数の方々が法曹を目指すようになると考えておるところでございます。
 日弁連は、このような基本的な考え方から、昨年三月、現在の法曹養成制度が陥っている問題点を改善するための緊急提言を行いました。資料の八十一ページでございます。
 骨子でございますけれども、一として、地域適正配置と学生の多様性確保の観点を踏まえ、統廃合を含めた方策を通じて法科大学院の一学年総定員を大幅に削減すること、二つとして、法科大学院生に対する経済的支援の充実を図ること、司法試験への対応が法科大学院教育に好ましくない影響を与えている現状に鑑み、司法試験のあり方を見直すこと、司法試験の受験回数制限を当面の間五年五回等に緩和することなどを含む八項目の提言を行っておるところでございます。
 昨年五月から開催されている法曹の養成に関するフォーラムは、平成二十二年十一月の当委員会の附帯決議の趣旨からしても、本来はこうした法曹養成制度全般に関する改善方策をまず検討すべきでしたが、東日本大震災で開催がおくれたことから、短期間で給費制廃止と貸与制の実施で取りまとめを行い、現在は法曹の活動領域の拡大についてヒアリングを行っているところであり、これから法曹養成制度に関する論点整理をする予定となっております。
 しかし、やはりこれは議論の順序が逆であり、私たちは、法曹養成制度全体の問題点と改善方策の検討をきちんとやるべきであり、しかる後に給費制の是非を検討すべきであったと考えるところでございます。
 今回の修正案は、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律附則第二条の法施行後十年後の検討を一年前倒しにし、別に法律で定める合議制の機関を設置して検討を行うとされていますが、私たちも、この問題の重要性にふさわしい位置づけを持った機関で、開かれた議論と検証を行うべきと考えているところでございます。
 そして、以下に述べるように、検証期間中は貸与制を一旦給費制に戻し、法曹養成制度に与える悪影響を最小限に抑えるべきと考えるところでございます。
 司法修習生の給費制の暫定的存続について述べたいと思います。
 まず第一に、法曹三者統一修習制度の始まりとその意義について確認していきたいというふうに思います。
 そもそも、現在の法曹三者統一修習制度は、国が司法官の養成のみを行っていた戦前の制度を新憲法の民主主義と人権保障の精神に基づき改めたものであり、全国が焦土化し、国民は物質的にも精神的にも疲弊していた昭和二十二年に司法修習制度が開始されて以来、この統一修習制度は我が国における法曹養成の一貫した方針となっていました。
 戦後の民主主義社会を形成する上で、司法制度の拡充とそれを担う人的基盤である弁護士を含む法曹三者の養成は、当然に社会のインフラ整備のコストと考えていたものと理解しております。その制度が六十四年間維持されてきたものでございます。
 統一修習は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの道に進む者も区別せずに同じカリキュラムで行われますが、これは、三者それぞれの立場から事件の見方を学ばせることにより、広い視野や物事を客観的、公平に見る能力を養うとともに、法律家間の相互理解を深める意義もございます。このような統一修習制度は、国際的に見ても特徴のある制度であり、我が国においても高い評価を受けてきたものと理解をしているところでございます。
 次に、貸与制導入とその理由について述べさせていただきたいと思います。
 こうした見地から当連合会は一貫して給費制廃止に反対してきましたけれども、司法改革関連法案の最後に成立した平成十六年の裁判所法改正により、給費制を廃止し貸与制を導入することが決まりました。その理由とするところは次のとおりでございます。
 一つ、閣議決定による平成二十二年、年間三千名の合格者の大量増加に対応し、財政支出を削減したい。司法修習生の多くは弁護士になる、弁護士は安定した収入が得られると考えられたため、法科大学院の奨学金返済を考慮しても貸与金の返済は十分できると見られていたということでございます。
 さらに、財務省財政制度等審議会の平成十四年十一月二十日付、平成十五年度予算の編成等に関する建議においては、給費制を廃止し貸与制への切りかえを行うべきであるとした上で、貸与制導入の理由として、法曹という個人資格を取得するための費用を税金から支出することはできない、受益、法曹資格を得る者がその負担、費用を負うべきであるとされておりました。
 貸与制導入時の附帯決議に触れたいと思います。
 この改正時に、衆参両院は、給費制廃止、貸与制への移行を決議したものの、政府、最高裁に対し、「経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分な協議を行うこと。」との附帯決議をつけております。
 次に、貸与制実施の一年延期と給費制の延長の問題について述べたいと思います。
 ところが、平成二十二年に司法試験合格者を三千人とするという閣議決定の目標は達成されず、二千人程度にとどまっており、しかも、この二千人でも現在の法的需要をはるかに上回る急増ペースであるため、三千人の目標の見直しは不可避と私どもは考えているところでございます。
 しかも、法科大学院時代までの奨学金などによる借金が、当連合会の調査で平均三百四十万円、多い方で千三百万円に及ぶことに加えて、給費制が廃止されて貸与制が実施されるとさらに三百万円に上る借金が重なることになることから、これでは経済的に裕福な者しか法曹になれなくなるとの批判が国会内外で強まり、平成二十二年十一月の議員立法による裁判所法一部改正により、貸与制の実施は一年延期され、その際の当委員会の附帯決議により、個々の司法修習終了者の経済状況を勘案した措置とともに、法曹養成制度のあり方全体についても速やかな検討を加えて、必要な措置を講ずることが求められたものでございます。
 法曹の養成に関するフォーラムの開催と第一次取りまとめでございます。
 この附帯決議を受けて、昨年五月二十五日、内閣官房長官、総務大臣、法務大臣、財務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣による申し合わせにより、法曹の養成に関するフォーラムが開催されていますが、さきに述べたとおり、このフォーラムでは、本来、先に検討すべき法曹養成制度のあり方全体の検討を行わないまま、実質二回の審議で、昨年八月三十一日に給費制の廃止と貸与制の実施を決めてしまいました。
 この第一次取りまとめでは、法科大学院での奨学金等の経済的負担の大きさに加え、法曹志願者の急激な減少により人材の多様性を確保できなくなるおそれ、司法修習生は修習専念義務を負い、兼職禁止や守秘義務の厳しい制約が課されており、給費はその代償であるなどの当連合会などの指摘も記載されておりますけれども、これに対するフォーラムでの検討は到底十分であったとは考えるところではございません。
 司法修習制度の重要性と修習専念義務の必要性について述べさせていただきたいと思います。
 しかし、この取りまとめでも、司法修習制度の重要性については次のように確認されております。
  司法修習は、新しい法曹養成制度においては、法科大学院教育との有機的連携の下に実務教育の主要部分を担うという重要な位置付けを与えられている。司法修習においては、社会で実際に起きている生きた事件を素材として、臨床的に実務的なスキルやマインドを磨くことがその主眼とされており、裁判所、検察庁、弁護士事務所に籍を置いての実務修習を中核としてカリキュラムが構成されている。修習は法曹として活動するための共通の基礎となるものであり、新しい法曹養成プロセスにおいては、必須の課程として置かれている。
  このような修習の重要性に鑑み、我が国においては、法曹三者を統一的に養成する修習制度を国が国費で運営する一方、司法修習生は、修習期間中、修習に専念すべき義務を負うこととされている。
 当連合会としても、このような司法修習制度の重要性と修習専念義務の必要性を認めており、それゆえにこそ、新たに借金の負担を強いる貸与制ではなく、給費制を維持すべきと考えているところでございます。
 では、公務員でない弁護士になぜ給費が必要かについても述べさせていただきます。
 裁判官、検察官、弁護士の法曹三者は、いずれも国の統治機構の重要な一部である司法制度を担う存在です。法曹三者は、それぞれ補い合い、時にお互いの役割をかえながら、法と社会正義の実現に貢献しています。実際にも、弁護士から裁判官に任官する者は毎年数名おり、この間の震災ADRや原発ADRでも見られるような準司法機関の設置、運営にも多数の弁護士がかかわっております。また、経済の高度化、国際化と企業の海外進出の活発化、あるいは多様化する国家間の利害調整と交渉の局面で、公正な法的ルールに沿って国益を実現する存在として、諸外国でも弁護士は国家戦略的に重要な存在として位置づけられております。
 このように弁護士は、個人の職業的資格という以上に、国の統治機構である司法制度の維持、運用に裁判官、検察官と同等の資格で関与し、法と社会正義の実現を担う存在であり、それゆえ、日本国憲法制定とほぼ同時に法曹三者の統一修習は国が責任を負うという制度が確立したものでございます。
 司法修習制度と給費制は不可分一体のものでございます。
 司法修習生の地位と身分について、司法修習生がその身分を離れる際に退職手当の支給を求めた昭和四十二年四月二十八日の最高裁判決は、一、修習期間中は国庫から一定額の給与を受けるほか、扶養手当等の諸手当や、公務のため旅行する国家公務員等として司法研修所入所、滞在などに必要な旅費の支給を受けること、二つ、司法研修所長の統括に服し、配属地の高等裁判所長官の監督を受けること、三、兼職を禁止されること、修習に当たって知り得た秘密を漏らしてはならない義務を負うこと、一定の事情があるときはその意に反して罷免されることを指摘した上で、その理由について、これらのことは全て、司法修習生をして右の修習に専念させるための配慮ないしはその修習が秘密事項に関することがあるための配慮であると判示しております。この事件自体は敗訴判決ではございます。
 実際、司法修習生は、裁判官の合議や裁判員の評議に立ち会い、被疑者取り調べを検察官の指導のもとに行い、弁護士と依頼者との面談に関与するなど、高度な職業倫理と守秘義務を要する作業に従事しており、そのために公務員に準じた厳しい規律が課されてきたものでございます。修習生の給費はこの公務員に準じた身分と不可分一体なものであり、上記の最高裁判決が修習に専念させるための配慮として説明したものでございます。
 ところが、貸与制への移行を決めた平成十六年の裁判所法一部改正では、司法修習生への給費を定めた条項の削除と同時に、修習専念義務を条文上明記いたしましたしかし、貸与制による修習貸与金は本人の自己負担である点で奨学金や学資ローンと同種のものであり、貸与制のもとで公務員同様の厳しい規律を課して司法修習への専念を求めることは著しい不正義ではないかと考えているところでございます。
 最後になりますけれども、当連合会としては、今回の公明党の修正案のとおり、現在の法曹養成制度について検証し、その改善方策の結論を見るまでの間は、現在の財政状況を考慮して給費額を見直すなどでも可能でございますけれども、何らかの形で給費制を維持すべきであると考えるところでございます。
 以上でございます。(拍手)

○小林委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

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