政府公表資料等情報

衆院法務委員会平成24年3月23日より抜粋(下線は当サイトによる)

○辻恵委員 民主党の辻恵でございます。
 本日は、三人の参考人の先生方にお越しをいただいて貴重な御意見を伺わせていただいたことを、まず冒頭、感謝申し上げたいというふうに思います。
 一九九〇年代から始まった司法改革というものが、今ちょうど、十数年たって、いろいろなところでしっかりと、先の時代にさらにその趣旨を生かすためにはどうすべきなのかということの検証が必要なときに差しかかっているのではないかというふうに思います。きょうの給費制か貸与制かという問題もそういう中での重要な問題であり、しかし、この給費制、貸与制の問題は、実は、法曹養成制度がどうあるべきなのかということの問題点の中で整理をされるべき問題であろうというふうに思うわけであります。
 そういう観点で、きょうは、三人の参考人の皆様方に、法曹養成制度をめぐって、現在直面している課題、そして、それに対してどういうふうに改善をしていくべきか、考えていかなければならないのかという問題を明らかにしていただく、そういう趣旨で御質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、佐藤参考人からお伺いしたいと思います。
 司法は公共性の空間であるということで、非常に高い志を持って司法改革審議会の会長として務めてこられた。
 私は、二〇〇四年のいろいろな改革関連の法案の審議で、当時、推進本部の山崎潮事務局長とは七回にわたって質疑をさせていただきました。非常に真摯な御答弁をいただいて、しかし、残念ながら、事務局長をおやめになった後、千葉地裁の所長になられて、急逝された、お亡くなりになったということで、今後の司法改革の検証等についてぜひ山崎さんのお考えも伺いたいというような、そんな方でありましたので、非常に残念な思いをしているところをまず最初にお伝えしておきたいというふうに思います。
 佐藤参考人、二〇〇六年十二月一日のジュリストで、先ほどおっしゃられた、国民にとって身近でわかりやすい司法、ファミリア、国民にとって頼もしく、公正で力強い司法、フェア、国民にとって利用しやすく、速い司法、ファストということが、これは顧問会議の意見として出しているんだというふうにおっしゃられて、それに沿って、制度的基盤の整備、人的基盤の拡充、国民の司法参加ということが三つの大きな柱なんだというふうにおっしゃっておられます。このこと自体そのとおりだと私は思いますし、その中で、とりわけ、きょうの課題としては、人的基盤の拡充という点に関してのものだと思います。
 ジュリストの中では、人的基盤の拡充に関して、人間味のあるすぐれた法曹が身近に存在するようにすることが重要なんだということをおっしゃられて、そういう意味では、質、量ともにすぐれた法曹が必要なんだということで、一つは、法曹人口の拡大、三千人、法曹養成制度の改革、これは法科大学院を中核として、私はその中身をもう少しよく検討したいと思いますけれども、プロセスとしての法曹養成ということが言われているというふうに思います。
 簡単に言えば、従来の受験技術一本やりではなくて、もっと具体的な、現場のニーズに対応できるような、そういう法曹を養成していきたいということであり、また、だからこそ、社会経験や、法学部出身者に限らず、法学未履修者であっても、幅広い人材を確保するということが要請されていることだろうというふうに思います。
 ところが、現状を見ますと、いろいろ問題点がある。佐藤参考人も、このジュリストの中、二〇〇六年であります、もう今から六年近く前なのでありますが、予想以上の法科大学院が設立されたことに伴う定員と新司法試験の合格者数との間に相当なギャップが生じて、法科大学院への志望者の質や種類、あるいは教育に悪い影を落とし始めているようにも感じられます、このようにおっしゃっております。
 現に、適性試験もそうだし、法科大学院もそうだし、志望者が激減しているという現状は極めてゆゆしい問題である。これは大学法学部の希望者も減少しているということであります。法科大学院の中には、定員割れをして廃校に至らざるを得ないとか経営難に直面しているところもあるということでありますが、このような想定されたあるべき法科大学院と違う現状とのギャップについて、現状、どうお考えなのか、そして改善すべき点はどういう点にあるというふうにお考えなのか、その点をお聞かせいただけますでしょうか。

○佐藤幸治参考人 最初に山崎さんのことをお触れになりました。私も、本部の事務局長として大変尽力された方が亡くなられて、今ここに山崎さんが生きておられれば、私、出る必要がなかったというように思っているんですけれども、本当に残念なことでございました。
 法曹養成の、法科大学院の現状についてでありますけれども、そのときも既に申し上げ、きょうの話でも触れましたけれども、予想以上の法科大学院ができて、定員が非常に大きくなって、そして他方では、意見書で、修了したら七割から八割の合格者がというようにうたっていたのが、その部分がひとり歩きして、そして結果的に、第一回から入っていただいた諸君に、結果的にですけれども、非常に申しわけないことになったという思いを最初から抱いておりました。
 その後、七十四の法科大学院のさまざまな状況を見ておりまして、きょうの話で定評のある大学院と申しましたけれども、そこは非常にしっかり、厳しい中でもしっかりした努力、大変な努力、今までとまるで違う授業です法学部でたくさんの法学部出身者を出してきましたけれども、いろんな希望者がいるものですから、法学、本当の法曹に進む人たちのための特化した教育というのは、大学として非常に取り組みにくかったんですね。しかし、法学部はさまざまな工夫をして、何々コース何々コースといろいろやってきたんですけれども、うまくいかなかった。
 他方、司法試験が、私がやっておったときですけれども、一番厳しいのが一・五%、一番よく通りやすいのが、六・五回ぐらいで一番通りやすいというのが一番厳しい状況でありました。そうなりますと、試験が厳しければ優秀な人材が得られるかというと、そこは必ずしもそうではなくて、私の教えておった京都大学なんか見ますと、この子は非常にいい法曹になるだろうなと思っても、最初からもう法曹を目指さないんです、司法試験をだって、一・五%の狭い道ですから、リスクが多い。五年、六年、七年、八年とかかる、あるいは十年かかる、そういうものですから、離れるんですね非常に法学部時代に危機感を覚えておりました。司法試験でもありましたから。
 それで、この改革でこういう法科大学院という構想を出して、そして教え方を特化して、そして法曹に進もうという人に特化した教育をやる、丁寧にやる、そういうことに切りかえて、人材を輩出しようということでスタートしたわけですけれども、最初に申し上げたように、また、委員もお触れになったように、たくさんのあれが出て、七割、八割というのが何かちょっと。
 定評のある法科大学院は今でも、累積で見ると、六割、七割のところがあるんです、三回。あるんですけれども、それ以下のところは非常に多い。そして下の方は一名とか二名とか、そういう状況の法科大学院があります。そして、その批判は、法科大学院、何やっているんだと。何といいますか、苦労している法科大学院が、あたかも、下手をすると法科大学院全体の問題のように指摘されるところがありまして、その点は、法科大学院の関係者は非常に気の毒だという思いをしてきております。
 ですから、申し上げにくくてあれなんですけれども、多過ぎる法科大学院をどういうようにこれから、ちまたには、整理統合とかいろいろなことが言われております。私の口から言うのも、ちょっといろいろとあるものですから、なんですけれども、今、文科省で各法科大学院の状況を正確に把握し、そしてフォーラムにおいて、これからどうするかと。しかも、これは長い先の話じゃない、早く安定させる必要があるという観点から、早急に取り組む必要があるという認識が次第に関係者にも抱かれているように思います。
 ですから、そこに、私としては、具体的な方策を至急に出していただきたいというのが、まあ、それ以上はちょっと、申し上げたいこともありますけれども私の口からはちょっと申しにくい、しかももう書斎生活に戻っている身ですから正確な状況を把握していないこともありますので、この辺でお許しいただければと思います。

○辻委員 佐藤参考人、京都大学の例をお挙げになりましたけれども、近畿大学のたしか総長ですか……(佐藤参考人「法科大学院で教えました」と呼ぶ)法科大学院の教授をされて。失礼しました。
 いろいろな法科大学院の現状を見ておられるというふうに思います。経営難になっていたり、合格率が悪いと本当に廃校の危機にもなるというようなことで、合格率を低めないために、留年者をふやすとか、入学前から補習をするとかいうような形で、実は、当初目的としていたプロセスの法曹養成と言われていた趣旨とは違って、受験予備校化しているようなところが非常に強くなっているという意味で、やはりこれは抜本的な見直しを免れないというふうに私は思います。
 特に、予備試験というものがございまして、これは、法科大学院卒業者でなくても司法試験を受ける受験資格をということで、昨年度は受験者六千四百七十七人で合格者百十六人、一・八%なんですね。法科大学院の修了者が三百三十六人受けていて十九人しか通っていない、五・七%なんです。司法試験の受験資格を法科大学院修了者は持つんだけれども、法科大学院を修了した人がその予備試験を受けても五・七%しか通っていない。つまり、法科大学院の修了者の質が果たしてどれだけ確保されているのかということが問題として指摘されている。
 そういう意味では、司法試験の受験資格を法科大学院修了者に必ずしも絞る必要はないんじゃないか、予備試験を、もっと門戸を開く必要があるのではないかというような指摘も結構強くあるんです。
 簡単にこの点、一言、今の御見解をいただけませんか。

○佐藤参考人 これはなぜ法科大学院かと。
 きょうは、法曹の養成では、身体上のお医者さんの養成と同様の問題があると申しました。これは、何でそうなのかという御疑問もあるかもしれませんけれども、これは人間の命、片っ方は身体ですけれども、片っ方は、自分の財産がどうなるかというのはある意味では死活問題であり、生死にかかわる問題ということもあるわけです。しかも、その人間の一番のシークレットな部分にかかわる職業です。相続を相談するについても、全部さらけ出さなければいけません。ですから、その意味で、人間の最もセンシティブな領域にかかわるというので、法曹と身体上のお医者さんとは共通している。
 だから、歴史上、医学、医師と法、大学の発祥は医者の部分とそれから法曹の部分があったということは、そういう人類の英知がそこに出ているんだろうというように理解するところです。
 それで、定評ある大学院と申しましたけれども、そこでの教育は、今見ますと、非常にいい教育をやっておるけれども、余り司法試験を過剰に意識しないで、もう少し余裕を持って、いろいろなことをやっていただくような法科大学院を描いておりましたが、それができない状況なんですね。ですから、その状況は、七十四の法科大学院の全体が引き起こしている問題が、定評のある法科大学院にも必ずしもいい影響を与えていない
 ということで、先ほど統廃合というようなことが言われていると申しましたけれども、そこを早急に取り組んでいただくということが、まさに今最も求められていることではないかというように考えます。

○辻委員 時間が余りなくて、あとお二人の参考人の皆さんにもお伺いしなくちゃいけないんですが、次に青山参考人にお伺いいたします。
 先ほど御紹介いただいたジュリストの中で、青山参考人も、法科大学院の志願者が減り続けているのは深刻な事実であるというふうにおっしゃっていて、志願者が二つのリスクを敏感に察知しているからなんだと。一つは、学費が高い割に、修了しても司法試験に合格するかどうかわからない、法曹として就職できるかわからない、この二つがネックになっているんだと。
 やはりこれは、今の法科大学院制度のありよう、また、就職難という意味においては法曹の数、この二つの面において見直すべき現実があるということではないかと思います。そういう中で、どのように考えておられるのかを青山参考人にお伺いしたいということ。
 あと、新里参考人に、こういう状況の中で、先ほど佐藤参考人は、給費制というのは優先順位の問題であって、もっとほかに使うところがあるんだというようなお話であったわけです。財政状況からやはり難しいんだというような御指摘もあったと思いますけれども、この今の財政状況の中で、新里参考人が、きょうの御意見の中でどのようにお考えなのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。

○青山善充参考人 委員御質問の点でございますけれども、私は、現在の法科大学院が抱えている大きな問題の原因を考えますと、一つは、発足当時の制度設計に問題があった点が一つあると思います。もう一つは、発足した後の現状にやはり問題があるというふうに考えております。
 最初の発足当時の問題点と申しますのは、御存じのように、司法制度改革審議会の意見書では、まともに勉強すれば七割、八割が合格する程度の教育を施すんだと。合格率七割、八割というのがひとり歩きしているということでございますが、それと同時に、司法試験の合格者を三千人を目指すということを言っておる。この二つの数を言っているだけで、それでは入学定員をどれだけにするかということについては何も言っていない。これはその後、文部科学省の認可に委ねられてしまったところでございます。しかし、合格率を七割、八割にする、それで合格者をこのくらいにするということになれば、おのずから入り口を絞らなければ、その合格率は達成されないはずでございます。
 韓国の法科大学院を見ますと、御存じのように、法科大学院の数が二十五校、合格者は千五百、だから入学定員は二千人。そういう制度設計をきちんとした上で二十五校の法科大学院を認可し、二千人の入学者を入れ、それから、間もなく第一回の司法試験が韓国では行われますが、そこで千五百人を合格させようとしている。
 日本は、その入り口のところは全く野放しにしてしまいまして、そして将来は三千人にしましょう、合格率は七割、八割にする。そうすると、おのずから入学者はこのくらいにしなければならないというのは誰が考えてもわかるはずでありますのに、結果的に七十四校もの法科大学院が続々とつくられてしまった。これが制度の最初の出発点の大きなつまずきの石ではなかったかというふうに私は思います。
 それから、制度が発足した後はどうかといいますと、今、辻委員御指摘のとおり、法科大学院の志願者の数が激減しているという事実がございます。それは、今おっしゃったように、法科大学院に入っても本当に合格するかどうかわからない、それから、運よく合格しても法曹として就職できるかどうかわからない、その二つのリスクが現実にあるからであります。
 それを、では、こういう状況でどう対処をしたらいいかということについて私の私見を申しますと、まず第一の、制度設計の当初のつまずきについては、やはり、冷たいようですけれども、法科大学院の淘汰といいますか、統廃合をさらに進めて、合格者数が七割、八割に達する程度に入学定員を絞っていくということ以外にないこれは強制的に絞るわけにいきません。韓国は、二十五校の法科大学院に絞ったために、行政訴訟がたくさん出て、まだ係属しているわけですけれども、日本は自然にそうなることを待っているというのが今の状況でございますので、これはなかなか難しいところがあります。
 それから、学費が高い割に合格者が少ないというのは、やはり法科大学院の学生に対する経済的援助というのはもっともっと強化していただきたいと思います。
 私自身は先ほど貸与制には賛成する立場をとりましたけれども、誤解していただきたくないのは、私は、日々法科大学院の学生と日常接している者といたしまして、いかに彼らが経済的に苦しんでいるかということは十分よくわかっております。この学生たちに経済的な支援をして、法科大学院の教育をきちんと受ければ、やはり当初の目的どおりの、自分の意思が達成できるような制度設計に戻したいというふうに思っております。
 そのためには、もちろん私は法科大学院の教員の一員でございますから、法科大学院の教育の質をもっともっと向上させていかなければならないということは言うまでもありません。そのことを前提といたしまして、今申し上げたようなことを申し上げているわけであります。
 それから、運よく司法試験に合格して、司法修習が終わってからも、法曹として就職できるかどうかわからないリスクというのは、これは法科大学院だけではどうにもならない問題でございます。
 私は、日本にはまだ法曹に対する需要があるというふうに認識しております。ただ、その需要は潜在的でありまして、顕在化していない。しかし、法律家に相談にしても、身近に法律家がいないというところはたくさんあります。日弁連の御努力で、公設弁護士事務所が各地にたくさんできたり、法テラスができたり、それから、ゼロワン地区が解消、ゼロ地区は解消して、ワン地区は少し残っているんでしょうか、そういうふうにゼロワン地区の解消ということを一生懸命努力している。
 この努力に私は深甚なる敬意を表するものでありますけれども、ゼロワン地区というのは、地裁の支部単位で、そこに誰も弁護士がいないか、一人弁護士がいるかということであります。地裁の支部は非常に大きなくくりでありまして、今、全国に二百五十三庁ぐらい支部があると思います。その地裁の支部でなくて、私は、市町村ごとに考えていただきたいというふうに思っています。市町村単位で考えますと、身近に弁護士さんがいない、アクセスしようもないという市町村は非常にたくさんあるわけであります。
 そういうことだけではなくて、国際的にも……

○小林興起委員長 青山参考人、大変恐縮ですが、短目にお話しください。

○青山参考人 はい、わかりました。
 そのほかに、国内だけではなくて国際的にも活躍する場面はたくさんある、そういうものをやはり日本の法曹として切り開いていかなければ、諸外国に対する法的な競争というものでは負けてしまうのではないかというのが私の危惧でございます。
 少し長くなって、大変恐縮でございます。

○小林委員長 新里参考人、時間でございますが、一言お願いします。

○新里宏二参考人 御指摘でございますけれども、やはり、国家戦略としてプロフェッショナルの法曹をどう位置づけるかというのが重要になってくるのではないのかな。海外でもそうでありますように、日本でも、そのようなことを考える中で、やはり人の、プロフェッショナルの養成にお金をかけるということで日本が立国していくのが一番なのではないかという視点でございます。
 それから、具体的なところでございますと、例えば、法科大学院の運営費交付金が最大九十九億円でございましたけれども、それが入学者数が減ることによって下がってきております。その意味では、ロースクールへのお金のいわゆる適正化、それから、公明党の修正案では七十一億円ぐらいに減額するような修習費ということで、その意味では、全体として法曹養成の中でのバランスを図りながら、国家戦略の中で位置づける
 先ほど佐藤先生が、法曹の職責が私利私欲の追求ではなく正義へのアクセスで、公共性が高いということであれば、国家戦略としてきちっと養成していただければいいのではないかということを考えておるところでございます。
 以上です。

○辻委員 民主党内では、法曹養成制度の抜本的な見直しを含めて今検討しております。きょうおいでいただきました三人の参考人の皆様方には、今後ともいろいろ御意見をまた頂戴したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 本日は、ありがとうございました。

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