平成24年司法試験予備試験
口述試験(最終)結果について(1)

最終合格者219人

法務省は11月8日、予備試験の口述試験の結果を公表した。
論文合格者233人が受験して、219人が合格。
不合格者は、14人だった。
合格率は、93.9%ということになる。

昨年は、122人受験で、116人合格。
合格率は、95.0%だった。
昨年と比べると、合格率は1.1%下がっている。
今後、このまま合格率低下の傾向になるのか。
それとも、これは誤差の範囲であって、95%前後で安定するのか。
多少、気になるところではある。

今年も、参考情報として、属性情報が公表された。
以下では、そこからわかることを検討してみたい。

男女比

下記は、各段階の男女比である。

 

出願

83.1%

16.8%

受験

83.4%

16.5%

短答
合格

89.8%

10.1%

論文
合格

88.8%

11.1%

口述
合格

89.9%

10.0%

ほぼ、昨年と同じ比率である。
まず、出願段階で、圧倒的に男性が多い。
新試験では、出願段階の男女比は概ね7:3である。
それと比べても、男性の比率が大きい。
その原因は、女性がリスクに敏感だからではないか。
そんな気がしている。

その後、数字に大きな変化が生じるのは、短答合格段階である。
ここで、男性の比率がさらに高まる。
これも、上記と同じ理由ではないか。
男性は、リスクに鈍感なため、何度も受験する。
すなわち、長期受験者が多い。
長期受験者は勉強量が多いので、短答が得意な傾向にある。
その差が、ここに現れるのではないか。
論文で女性が若干盛り返すのも、そのことによると考えられる。
(ただし、それほど劇的ではない。)
口述では、若干女性が減っている。
口述段階での1%だから、結構大きいという感じもする。
精神的に揺さぶられ易い、ということなのかもしれない。
最終的には、ほぼ9:1となる。

男女の人生設計に対するリスクへの感度は、年によって変動する要素ではない。
前記の仮説が正しければ、今後も、このくらいの比率で推移すると思われる。

年齢層別構成割合

以下は、年齢層別の各段階の構成割合をまとめたものである。
ただし、口述については、ほとんど数字に変化がないため、省略した。

年齢層

出願

受験

短答
合格

論文
合格

19歳以下

0.2%

0.3%

0.05%

0.4%

20〜24歳

21.8%

24.0%

17.2%

36.9%

25〜29歳

10.5%

9.7%

8.1%

17.1%

30〜34歳

13.5%

13.0%

14.8%

14.1%

35〜39歳

14.2%

13.6%

16.2%

12.0%

40〜44歳

11.9%

11.5%

14.3%

8.1%

45〜49歳

9.5%

9.4%

11.3%

6.0%

50〜54歳

7.3%

7.0%

8.0%

3.0%

55〜59歳

4.6%

4.5%

5.3%

0.8%

60〜64歳

3.4%

3.7%

3.0%

0.8%

65〜69歳

1.4%

1.5%

0.8%

0.4%

70〜74歳

0.6%

0.7%

0.3%

0%

75〜79歳

0.3%

0.3%

0%

0%

80歳以上

0.1%

0.1%

0%

0%

概ね、昨年と同じ傾向である。
予備試験受験者の出願者の主力は、20代前半と30代。
これらの層を合わせると、21.8+13.5+14.2=49.5%、
約半数を占めている。
その間の20代後半の層は、やや少ない。
20代前半の層は、大学生及び法科大学院生。
飛び級狙いの層である。
他方、30代の層は、かつての旧試験組が多いだろう。
敗者復活を狙う層である。
20代後半の層は、法科大学院修了者が多く属する層である。
この層の多くの者は、既に本試験受験資格を有する。
予備試験を受ける必要がないから、出願者は少なくなる。
そのため、20代前半と30代の狭間で、出願者数の谷間が生じている。
この傾向は、しばらく続きそうである。
ただ、数年後は、30代の層が旧試験組から、三振者層に換わるだろう。
旧試験組は、次第に40代、50代へと移行する。
そうなると、その後の短答、論文の比率にも影響が出るかもしれない。

論文の若年化傾向も、昨年同様だ。
短答よりも論文の方が、若手が受かりやすい。
これは、旧試験、新試験の双方で一貫している。
予備試験でも、これは同様である。

受験段階と、短答合格段階の推移をみてみる。
そうすると、20代は比率を減らしている。
他方、30代以降は、概ね比率を増やしている。
しかし、論文段階になると、一気に逆転する。
20代は、比率が倍以上に増加する。
実に、論文合格者の54%が、20代で占められている。
一方、30代以降は、全て比率を減少させている。

これは、短答、論文の合格率でみると、よりわかりやすい。
以下は、短答合格率(受験者ベース)と論文合格率(短答合格者ベース)の数字をまとめたものである。
20%を超える部分に、黄色のマーカーを付した。
(なお、19歳の論文合格率は、1人中1人なので、参考にならない。)

年齢層

短答
合格率

論文
合格率

19歳以下

4.1%
(1人)

100%
(1人)

20〜24歳

17.0%

29.0%

25〜29歳

19.8%

28.7%

30〜34歳

27.0%

12.9%

35〜39歳

28.3%

10.0%

40〜44歳

29.6%

7.7%

45〜49歳

28.7%

7.1%

50〜54歳

27.1%

5.0%

55〜59歳

28.1%

2.1%

60〜64歳

19.1%

3.8%

65〜69歳

12.9%

7.1%

70〜74歳

11.3%

0%

短答は、30代から50代までが、全て27%以上。
これに対し、20代は2割にも届かない。
短答は、年配者が圧倒的に勝利している。

しかし、論文は逆である。
20代は、3割に近い合格率を誇る。
これに対し、30代以降は、1割5分にも届かない。
40代以降は、1割未満にとどまっている。

これが、短答と論文の顕著な違いである。
短答は、勉強すればするほど、得点が伸びる。
だから、勉強量の多い年配者が強い。
他方、論文は、勉強量と得点は比例しない。
むしろ、方向性が違えば、かえってマイナスになる。
このことを、しっかり理解すべきである。

論文の特徴は、基本事項に異常な配点があることである。
他方で、応用事項には、びっくりするほど配点がない。
(受験対策上は、零点だと思った方がよいくらいである。)
応用的な事項を勉強した人は、基本を省略して応用を書きたがる。
(これは○○先生の問題意識だ、と気付いてしまうと、書きたくてしょうがないだろう。)
その結果、点数をどんどん落とす。
自分から、すすんで不合格になりにいっているようなものである。
このことが、上記の現象を生じさせている。
これは、予備試験だけでなく、新試験の論文にも共通していえることである。
司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(商法)司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(民法)司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(刑訴法)等参照)

今回、予備に受かった人は、同じ気持ちで新試験を受けるべきである。
予備の合格者は、普通に受ければ合格できる力を持っている。
しかし、新試験は、問題の体裁が、予備と違う。
そのため、予備とは違う発想で、論文を書いてしまうことになりがちだ。
すなわち、新試験は、応用的なこと、個別具体的な分析が重要だ。
だから、基本事項は省略して、応用や個別的検討をたくさん書こう。
そういうことを考えると、足をすくわれる。
新試験も、予備と同じだ。
そのことを、しっかりイメージした上で、新試験の論文に臨むべきである。

それから、今年は、昨年と違う結果になった層がある。
それは、20代後半の層だ。
昨年は、論文合格率が、6.5%にとどまった。
(短答合格者95人中、8人しか受かっていない。)
そのときは、三振者の存在のせいではないか。
そう思っていた。
しかし、今年は、28.7%である。
20代前半の29.0%と比べても、遜色がない。
昨年から、22.2ポイントも、合格率が上昇している。
三振者の存在という要素は、今年と昨年とで変わらないはずだ。
20代後半の、この劇的な変化を、三振者で説明することはできない。
既に受験資格を有する優秀な修了生が、模擬試験的に受験したのだろうか。
ひょっとすると、予備と新試験の両方に合格したことをもって、就職に有利となる。
そのような発想が、あったのかもしれない。
しかし、その割には、出願・受験の比率は、昨年同様だ。
上位ローが予備の受験を推奨した等の事情なら、出願・受験の比率が上昇するはずである。
そうした状況は、生じていない。
従って、そのような説明も成り立たない。
むしろ、昨年が異常値で、今後はこの程度で安定するのかもしれない。
この点は、今後の推移を見ていく必要がある。

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