平成24年司法試験予備試験論文式民法
出題趣旨検討と参考答案

問題文及び出題趣旨は、こちら

基本知識と論理が問われた

本問は、ぱっとみると、非常に簡単である。
設問1は、物上保証人の検索の抗弁と事前事後の求償権。
これは、事後求償以外否定で、はっきりしている。
設問2は、遺留分減殺で共有。
これも、はっきりしているだろう。
これでは、全然差が付かない。
そう思うかもしれない。
しかし、ちゃんと差は付いている。

本問は、基本知識と論理が問われた。
基本知識でつまづいた人は、下位答案。
論理性を示せない人は、中位答案。
両方クリアすれば、上位答案。
そういう感じになっている。

比較の視点からの論理

設問1の前段は、検索の抗弁の肯否である。
まず、保証人には条文(453条)があり、物上保証人には条文がない。
これが、基本知識である。
これを指摘できなければアウト、という感じだ。
出題趣旨の「法的知識の正確性」とは、この点を指す。

(出題趣旨より引用、下線は筆者)

 設問1は,人的担保である保証に認められる検索の抗弁(民法第453条)と事前求償権(民法第460条)が,物的担保である物上保証にも認められるかについて,保証と物上保証との異同に着目しつつ保証についての規定の類推適用の可能性を検討すること等を通じて,法的知識の正確性と論理的思考力を試すものである。

(引用終わり)

その上で、両者を分ける本質的な差異。
これを指摘できているか。
ここが、上位答案になるかの分かれ目となる。

検索の抗弁の根拠は、保証人の補充性にある。
補充性のない連帯保証に検索の抗弁が認められない(454条)のは、そのためである。
だとすると、物上保証人に検索の抗弁を認めうるか否か。
これを分ける本質的差異は、補充性の肯否ということになる。

では、物上保証に補充性は認められるか。
認められない、ということになるだろう。
まず、保証のような2次的責任とする規定がない。

(民法446条1項)

 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

それから、物上保証とは、約定担保物権を債務者以外の第三者が負担する場合である。
約定担保物権は、抵当権と質権(譲渡担保権)であり、いずれも優先弁済効を有する(342条、369条1項)。
これも、保証とは異なる点である。
(保証の場合、保証人の一般債権者に優先できるわけではない。)
債権者は、不履行があれば、迅速かつ確実に担保目的物から満足を得ることができる。
優先弁済効には、そういう意味がある。
それなのに、まずは主債務者の一般財産から執行せよと言われたら、どうか。
他の一般債権者と共に一般財産の執行をしなければ、優先権のある担保の実行ができないことになる。
これでは、優先弁済効の意味が薄れる。
そうである以上、法が物上保証に補充性を認めたとは解し難い。

上記のような本質的差異から、論理的に結論を導いているか。
これが、上位答案になるための要件である。
出題趣旨の「論理的思考力」とは、その意味である。

(出題趣旨より引用、下線は筆者)

 設問1は,人的担保である保証に認められる検索の抗弁(民法第453条)と事前求償権(民法第460条)が,物的担保である物上保証にも認められるかについて,保証と物上保証との異同に着目しつつ保証についての規定の類推適用の可能性を検討すること等を通じて,法的知識の正確性と論理的思考力を試すものである。

(引用終わり)

この種の論理は、旧司法試験時代の一行問題で、良く問われていた。
予備試験でも、この傾向は変わっていない。
「比較しつつ」という設問を見た瞬間に、このことを感じなければならない。

設問1の後段は、物上保証の事前・事後の求償権である。
委託保証人には明文上事前求償権がある(460条)。
しかし、物上保証には明文上、事後の求償権しかない。

(参照条文)民法

460条 保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる
一  主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
二  債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
三  債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。

372条 第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する

351条 他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。

このことが、基本知識となる。

では、本質的差異はどこにあるか。
ここでは、補充性は関係がない。
なぜなら、補充性のない連帯保証であっても、事前求償は否定されないからである。

そもそも、事前求償の性質は、どのようなものか。
それは、委任の前払請求(649条)である。
委託を受けた保証人にしか認められないのは、そのためである。
だとすれば、委託を受けた物上保証も、同様のように感じられる。
そのように指摘して、460条を類推しても、それなりに評価されるだろう。
しかし、ここは有名な最判平2・12・18があり、否定に解されている。

最判平2・12・18より引用、下線は筆者)

 保証の委託とは、主債務者が債務の履行をしない場合に、受託者において右債務の履行をする責に任ずることを内容とする契約を受託者と債権者との間において締結することについて主債務者が受託者に委任することであるから、受託者が右委任に従った保証をしたときには、受託者は自ら保証債務を負担することになり、保証債務の弁済は右委任に係る事務処理により生ずる負担であるということができる。これに対して、物上保証の委託は、物権設定行為の委任にすぎず、債務負担行為の委任ではないから、受託者が右委任に従って抵当権を設定したとしても、受託者は抵当不動産の価額の限度で責任を負担するものにすぎず、抵当不動産の売却代金による被担保債権の消滅の有無及びその範囲は、抵当不動産の売却代金の配当等によって確定するものであるから、求償権の範囲はもちろんその存在すらあらかじめ確定することはできず、また、抵当不動産の売却代金の配当等による被担保債権の消滅又は受託者のする被担保債権の弁済をもって委任事務の処理と解することもできないのである。したがって、物上保証人の出捐によって債務が消滅した後の求償関係に類似性があるからといって、右に説示した相違点を無視して、委託を受けた保証人の事前求償権に関する民法四六〇条の規定を委託を受けた物上保証人に類推適用することはできないといわざるをえない。

(引用終わり)

これは、一種の基本知識である。
委託という共通点だけから類推を肯定するのは、上記判例を無視することになる。
その意味で、評価を下げやすい。
類推を肯定するとしても、上記判例を踏まえて、なお類推すべき根拠を示すべきである。
それが難しいと感じれば、判例と同様の理由付けで否定するのが無難である。

以上が、設問1のポイントである。
これ以外の論点を書いても、ほとんど点はつかないだろう。
例えば、黙示の特約を検討する。
理屈としては、これは間違ってはいない。
特約があれば検索の抗弁であれ、事前求償であれ、認められるからである。
近時の元本確定前根保証の随伴性に関する判例も、通常の性質と異なる特約の余地を認めている。

最判平24・12・14より引用、下線は筆者)

 被保証債権を譲り受けた者は,その譲渡が当該根保証契約に定める元本確定期日前にされた場合であっても,当該根保証契約の当事者間において被保証債権の譲受人の請求を妨げるような別段の合意がない限り,保証人に対し,保証債務の履行を求めることができるというべきである。
 本件根保証契約の当事者間においては上記別段の合意があることはうかがわれないから,被上告人は,上告人に対し,保証債務の履行を求めることができる。

(引用終わり)

 

最判平24・12・14、須藤補足意見より引用、下線は筆者)

 もとより,根保証契約については,契約自由の原則上,別段の合意により保証債権に随伴性を生じさせないようにすることも自由であり,したがって,例えば,根保証契約において,主たる債務の範囲に含まれる債務のうち,元本確定期日の時点で主債務者が当初の債権者に対して負う債務のみについて保証人が責めを負う旨の定めを置いておけば,その定めは,法廷意見における「譲受人の請求を妨げる別段の合意」と解されて,そのとおりの効力が認められるというべきである。

(引用終わり)

本問では、詳細な事案が挙がっている。
よく、「個別具体的検討をすればブチ跳ねる」などと言われたりする。
そこで、事案を一つ一つ挙げて、合理的意思解釈から特約を認定しようとする。
C銀行はAの事業のための借り入れとわかっているから、先にAから取り立てる黙示の合意がある。
Aは、Bに迷惑をかけないつもりのはずだから、弁済期経過後はBの事前求償を甘受すべきだ。
そんなことを、どんどん書いていけば、ブチ跳ねるのではないか。
そういう誘惑は、理解できるところである。
しかし、そういうことは、いくら書いても、得点に結びつかない。
本問では、黙示の特約を積極的に認定できるほどの事情はない。
詳細に事実は挙がっているが、実際にはほとんど使わない。
そういうことは、よくあることである。
(「問題文には無駄がないから、常に必ず全部使え」というのは、誤った指導である。)
予備試験は、新試験以上に、配点のある部分が狭い。
書くべき事項の絞り込みが、さらに重要になっている。
本問のメインが、保証と物上保証の比較にあることは、明らかである。
だとすれば、そこに絞って書くべきだった。
もちろん、本問が多論点型であれば、手広く論点を拾う必要がある。
しかし、本問は、単発論点型の問題だ。
それは、見ればすぐ気付くはずである。
そうであれば、書くべき論点を絞り、きちんと論理立てて書く。
そのような構成に、自然になっていくはずである。
論点の数が少ないので、思いつきの論点をたくさん書いてしまった。
そういう人は、答練で多論点型の問題ばかり解いている場合が多い。
本試験では、このような単発型の問題も、少なくない。
その場合には、コンパクトにたくさんの論点を思いつきで書いても、評価されない。
(その傾向が特に顕著なのが、憲法である。)
その辺りの見極めの視点を、持っておく必要がある。

法的性質論からの事案分析における論理

設問2は、遺留分減殺請求を問う問題である。
まず、遺留分減殺請求の問題だと気付くこと。
これに気付かないと、下位に沈む。
遺留分減殺に気付いたら、その基本的な理解。
すなわち、法的性質論を示す。
そして、それを踏まえて本問における法律関係を説明する。
その充実度に応じて、上位になるかどうかが決まる。

(出題趣旨より引用)

 設問2は,遺留分減殺請求権に関して,基本的な理解とそれに基づく事案分析能力を試すものである。

(引用終わり)

「事案分析能力」とは、法的性質論から事案を処理するとどうなるか。
その論理的帰結を問うている。
従って、設問2も、論理を訊いているといってよい。

本問では、Eが唯一の相続人である。
しかし、唯一のAの財産である甲土地が、贈与されてしまっていた。
そうなると、これは遺留分減殺しか思いつかない。
現場で条文を引くと、1030条前段で、死亡前1年内なら対象となることがわかる。
だとすれば、これは間違いない。
そのような判断で、遺留分減殺を書くと決断することになる。

遺留分減殺の法的性質については、最判昭41・7・14最判昭51・8・30がある。

最判昭41・7・14より引用、下線は筆者)

 遺留分権利者が民法一〇三一条に基づいて行う減殺請求権は形成権であつて、その権利の行使は受贈者または受遺者に対する意思表示によつてなせば足り、必ずしも裁判上の請求による要はなく、また一たん、その意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生ずるものと解するのを相当とする。

(引用終わり)

 

最判昭51・8・30より引用、下線は筆者)

 遺留分権利者の減殺請求により贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者又は受遺者が取得した権利は右の限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属する

(引用終わり)

この考え方から、減殺の意思表示の時点で、権利の移転が生じることになる。
そうすると、遺留分2分の1(1028条2号)の限度で、甲土地所有権がEに移転する。
これは、共有ということになるだろう。
ここまで示せれば、だいたい上位、という感じである。
なお、遺留分を侵害する贈与全体が当然無効になると考えると、Eが単独所有となる。
また、減殺請求によって物権的効果は生じないと考えると、依然Bの単独所有となる。

さらに、使用利益の問題がある。
BEの共有となる場合、BはEの持分について無権限で使用していることになりうるからである。
遺留分侵害の贈与が当初から無効だとすると、贈与時からの使用利益の返還が問題となる。
また、減殺の意思表示によっては直ちに物権的効力は生じないとすると、新たに物権変動が生じる時点以降の使用利益となる。
上記のとおり減殺の意思表示の時点で権利が移転すると考えれば、減殺請求以降の分を返還することになる。
この辺りの論理性も、一応問題になるだろう。
ただ、ここまで書いた人は、皆無に近かったようだ。

なお、本問では、BにAからの使用借権が認められる可能性がある。

(問題文より引用、下線は筆者)

3.平成3年当時,Aは,甲土地を所有しており,甲土地についてAを所有権登記名義人とする登記がされていた。A及びBは,相談の上,甲土地の上にBが所有する建物を建築することを計画した。この計画に従い,平成5年3月,甲土地の上に所在する乙建物が完成して,乙建物についてBを所有権登記名義人とする所有権の保存の登記がされ,同月,A及びBは,乙建物に移り住んだ

(引用終わり)

ABが相談して、A所有の甲土地の上に、B所有の乙建物を建てた。
そうである以上、乙建物には黙示的に敷地利用権が存在しているはずである。
(黙示の使用借権を認めた判例として最判昭41・1・20。)
そう考えると、上記の使用利益の返還の問題は、生じない。

しかし、それだと法的性質論との論理性を示せない。
敷地利用権の存在は、合意が認定できる場合、という程度に、軽く触れればよいだろう。

遺留分減殺請求の法的性質論は、論証等を用意している人の少ない論点である。
そのため、判例の結論だけでも示せるだけで、差が付いたという感じだ。

設問2は、普通に考えると論点らしい論点が少ない。
しかし、焦ってどうでもいいようなことを論点として書くと、かえって評価を下げる。
例えば、内縁のBにも相続人の規定を類推すべきだ、などと論じる場合である。
むしろ、2ページくらいでA評価になっている人が、本問では多かったようだ。

実は、本問では、やっかいな論点が隠れている。
それは、共有関係解消の手段である。
BとEは、あまり仲がよくなさそうなので、共有の状態は不都合である。
そこで、共有物分割請求(256条1項本文)をすることが考えられる。
協議が整わなければ、裁判による分割となる(258条1項)。
ただ、甲土地上の乙建物にBが居住している。
そこで、現物分割は適切ではないとして全面的価格賠償ができるか。
これは短答の知識であり、最判平8・10・31がある。

最判平8・10・31より引用、下線は筆者)

 当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許される

(引用終わり)

本問は、共有物の性質等からは、Bの単独所有にさせるのが相当な場合といえる。
問題は、Bに支払能力があるかである。
仮に支払能力があれば、そもそも価額弁償(1041条1項)で解決済みのはずだ。
そうすると、支払能力がなく、全面的価格賠償ができない場合を考慮する必要がある。
すなわち、競売(258条2項)ということになる。
ここで、第三者のFが競落したとする。
その場合、Fは、Bに乙建物収去甲土地明渡請求をできるか。
すなわち、Bに法定地上権が認められるか、という問題になる。
258条2項の競売は、民執法195条の形式的競売である。
形式的競売について、法定地上権は成立するのだろうか。

(参照条文)民事執行法

195条 留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による

188条 第四十四条の規定は不動産担保権の実行について、前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第三目の規定は担保不動産収益執行について準用する

81条 土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において、その土地又は建物の差押えがあり、その売却により所有者を異にするに至つたときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合においては、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

形式的競売には担保権実行としての競売の規定が準用され、担保権不動産競売には、強制競売の規定が準用されている。
強制競売の場合には、81条で抵当権の場合と同様の法定地上権が認められている。
しかし、担保不動産競売については、81条が、かっこ書で準用から除かれている。
そうすると、形式的競売の場合にも、81条の準用がなく、法定地上権は成立しないのではないか。
条文を形式的に読むと、そうなりそうである。
実際、そのように判断した裁判例(東京高判平3・9・19)もある。
しかし、それはおかしいだろう。
担保不動産競売において81条の準用が除かれているのは、民法388条があるからである。
すなわち、準用の必要がないからに過ぎない。
だとすると、形式的競売の場合に、積極的に法定地上権が否定されるとする根拠には、ならない。
民執195条の「担保権の実行としての競売の例による」には民法388条も含まれるとして、同条の法定地上権を成立させてよいと思われる。
そうすると、本問では、競落したFに対し、Bは地上権を対抗できることになる。

以上のように、やっかいな論点がある。
しかし、こんなものは、現場で思いつかないだろう。
また、思いついても、書くべきではない。

【参考答案】

第1.設問1

1.小問(1)

 保証人には、本小問のような検索の抗弁権がある(453条)。その根拠は、保証人の2次的責任(446条1項)に基づく補充性にある(454条対照)。これに対し、物上保証には補充性を認める規定はなく、保証と異なり、優先弁済的効力(342条、369条1項)があるから、目的物から速やかに優先弁済を受けられるという債権者の期待を考慮すると、453条の類推の余地もない。従って、物上保証人には、検索の抗弁は認められない。
 よって、物上保証人であるBは、Cに対し、検索の抗弁を主張することはできない。

2.小問(2)前段

 委託保証人には、弁済期到来後の事前求償が認められる(460条2号本文)。その根拠は、委託保証人は自ら債務を負担し、その弁済費用は委託された事務処理に要する費用(649条参照)といえる点にある。これに対し、物上保証人には事前求償を認める規定はない。また、物上保証人は自ら債務を負担せず、委託の内容は担保権の設定にとどまり、担保の実行による担保目的物の喪失は担保不動産競売手続の結果であって、物上保証人が委託された事務処理に要する費用とは解されないし、担保権の実行前は求償すべき金額も未確定であるから、事前求償になじまない。そうである以上、物上保証人の場合に460条を類推することもできない。従って、物上保証人には、事前求償権は認められない。
 よって、物上保証人Bは、あらかじめAに求償権を行使することはできない。

3.小問(2)後段

 委託を受けた物上保証人の事後求償が委託保証人と同様に認められることは、明文上明らかである(372条、351条)。
 よって、抵当権実行により乙建物が売却された場合には、Bは、Aに対し、求償権を行使できる。

第2.設問2

1.前段

 Eは、Aの子であるから相続人となる(887条1項)のに対し、Bは配偶者ではないから相続人ではない。従って、Eは、Bに対し、相続開始前1年以内にされた甲土地の贈与につき、Eの有する遺留分である2分の1の限度での減殺を主張できる(1028条2号、1029条1項、1030条前段、1031条)。
 上記主張は、Aの死亡及び甲土地の贈与をEが知った時から1年及びAの死亡から10年(平成34年3月25日)までにすることを要する(1042条)。

2.後段

(1)遺留分減殺請求の法的性質

 被相続人の意思の尊重という観点から、遺留分を侵害する遺贈等であっても、当然に無効となるわけではないと解される。また、遺留分権利者の保護と法律関係の簡明性の観点から、遺留分減殺請求は形成権であり、減殺の意思表示をした時に、受贈者が取得した権利は当然に遺留分を侵害する限度で遺留分権利者に帰属すると解すべきである。

(2)本問における検討

ア.本問では、Eによる遺留分減殺請求の意思表示がされた時に、甲土地のうち2分の1の持分がEに移転し、甲土地は、BとEによる持分割合1対1の共有となる。
 ただし、Eは、甲土地の価額の2分の1をBに弁償することで、上記を免れることができる(1041条1項)。

イ.甲土地がBとEによる共有となった場合、甲土地上に乙建物を所有するBは、単独で甲土地を使用しているから、Eの持分に対応する使用収益につき不当利得が生じる。従って、Bは、Eに対し、Eが持分を取得する減殺請求時以降の甲土地の賃料相当額のうち2分の1の額を不当利得として返還する義務を負う(703条)。
 ただし、本問の事実3の事情から生前のAから居住を目的とする使用借権の設定を受け、相続人EがAの使用貸主たる地位を承継したと解する余地がある。この場合、いまだ目的である居住が終了しない以上、使用借関係は継続している(597条2項本文)から、Bは上記不当利得の返還を要しない。

ウ.なお、Bは、自己の持分の限度で甲土地全部を使用できる(249条)から、Eは、Bに対し当然に乙建物収去甲土地明渡を求めることはできない。

以上

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