平成25年司法試験・予備試験
短答式試験の感想(1)

憲法について

形式面は、例年どおり。
全肢の正誤を判断させる問題しか、出題されない。
そして、ほとんどが知識問題。
ただ、今年は若干の論理問題も出題された。
とはいえ、それも実質は学説の知識を問う問題である。

内容的には、昨年よりかなり易しくなった。
昨年は、公法だけで最低ライン未満者が943人も出た。
今年は、その反省から、易しく作ったのだろう。
とはいえ、これは易しすぎる。
平均点は、相当上がるだろう。
だとすれば、来年は、反動で難しくなる可能性が高い。
それから、今年は判例知識よりも、基本書知識の方が問われている。
基本書知識は、有斐閣憲法 レベルで十分である。
これも、昨年に細かい判例知識を出しすぎた、という反省からだろう。
来年は、今年の反動で、また判例が出る可能性もある。
今年の出題傾向だけをみて、来年を予想するのは、危険である。

司法試験の第2問は、論理問題ともいえるが、実質は学説知識問題である。

 人権保障規定の私人間効力に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.間接効力説は,私人による人権侵害の危険性が増大していることに対応しようとするものであるが,国家権力がなお人権にとっての最大の脅威であることを無視している。

イ.間接効力説は,私法の一般条項に人権価値を充填しようとするものであるから,充填の程度により結論が大きく異なり得る。

ウ.直接効力説は,私人間に憲法規範を直接適用するものであるが,国家が私人の自由な活動領域に過度に介入する糸口を与えかねない。

こういう問題は、あまり理屈で詰めてはいけない。
オーソドックスなテキストに、そういう理由付けや、批判がある。
そうであれば、それは正しいと判断してよい。
間接効力説は、憲法が国を名宛人とすることを重視して直接適用を認めない。
これは、人権にとって最大の脅威が国家であることを意識しているからである。
だから、「国家権力がなお人権にとっての最大の脅威であることを無視している」とはいえない。
従って、誤り。
イは、間接効力説に対する一般的な批判だから、正しい。
間接効力説の論者から、「そのような批判は当たらない」という反論があるか否かは、解答に影響しない。
一般的なテキストでそういう批判があると説明されているから、正しいと解答する。
これが、本試験の解答法である。
こういうところで、難しく考えすぎて間違える人がいるので、注意したい。
ウも、有名な批判であるから、正しい。
これも、直接効力説の論者から、「その批判は実は誤っている」という反論があるか否かは、解答に影響しない。

司法試験第3問、予備試験第2問のウは、最判平20・3・6である。

 憲法の明文で規定されていない権利・自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ウ.住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集,管理又は利用する行為は,当該住民がこれに同意していなくとも,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。

これは、司法試験平成20年最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成20年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

18:行政機関が住基ネットにより住民の本人確認情報を管理、利用等する行為は、たとえ当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条に違反しない。

【解答】

18:正しい(最判平20・3・6)。
 「行政機関が住基ネットにより住民である被上告人らの本人確認情報を管理、利用等する行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできず、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された上記の自由を侵害するものではないと解するのが相当である」と判示した。

(引用終わり)

司法試験の第5問は、見解・批判対応問題である。
新試験になって一時期よく出題されたが、昨年は出題されなかった。
それが、復活したという感じだ。

 憲法第19条の保障する思想・良心の自由に関する次のアからウまでの各記述について,bの見解がaの見解の批判となっている場合には1を,そうでない場合には2を選びなさい。

ア.a.思想・良心の意味は,人の内心における物の見方ないし考え方であり,事物に対する是非弁別を含む内心一般と捉えるべきである。

b.思想・良心の自由が保障される範囲を広範に捉えることは,その高い価値を低下させ,むしろ,その自由の保障を弱めるものである。

イ.a.思想・良心の意味は,人生観,世界観,思想体系,政治的意見などのように人格形成に関連のある内心の活動と捉えるべきである。

b.憲法第19条は,「思想」と「良心」を併記し,同等にその自由を保障しているのであるから,「思想」と「良心」の概念を区別する必要はない。

ウ.a.思想・良心の自由のうち,良心の自由については,信教の自由,とりわけ信仰選択の自由ないし信仰の自由と同じ意味に捉えるべきである。

b.欧米諸国では良心の自由と信教の自由が不可分とされてきた歴史もあるが,日本国憲法は第20条で信教の自由を保障しており,あえて良心の自由を限定的に解する必要はない。

アについては、aが広義説で、bは広義説に対する有名な批判である。
従って、1とわかる。
イは、aは思想良心の範囲の話であるのに、bは思想良心の区別の話である。
すなわち、論点が異なる。
だとすれば、批判とはならない。
だから、2ということになる。
論点が違うから批判にならない、というのは、旧試験以来よく使われる手法である。
知らないと戸惑うこともあるので、知っておきたい。
ウのaの見解は、知らなかった人も多かったかもしれない。
これは、謝罪広告事件における栗山意見である。

謝罪広告事件における栗山意見より引用、下線は筆者)

 論旨は憲法一九条にいう「良心の自由」を倫理的内心の自由を意味するものと誤解して、原判決の同条違反を主張している。しかし憲法一九条の「良心の自由」は英語のフリーダム・オブ・コンシャンスの邦訳であつてフリーダム・オブ・コンシャンスは信仰選択の自由(以下「信仰の自由」と訳す。)の意味であることは以下にかかげる諸外国憲法等の用例で明である
 先づアイルランド国憲法を見ると、同憲法四四条は「宗教」と題して「フリーダム・オブ・コンシャンス(「信仰の自由」)及び宗教の自由な信奉と履践とは公の秩序と道徳とに反しない限り各市民に保障される。」と規定している。次にアメリカ合衆国ではカリフオルニヤ州憲法(一条四節)は宗教の自由を保障しつつ「何人も宗教的信念に関する自己の意見のために証人若しくは陪審員となる資格がないとされることはない。しかしながらかように保障されたフリーダム・オブ・コンシャンス(「信仰の自由」)は不道徳な行為又は当州の平和若しくは安全を害するような行為を正当ならしむるものと解してはならない。」と規定している。そしてこのフリーダム・オブ・コンシャンス(「信仰の自由」)という辞句はキリスト教国の憲法上の用語とは限らないのであつて、インド国憲法二五条は、わざわざ「宗教の自由に対する権利」と題して「何人も平等にフリーダム・オブ・コンシャンス(「信仰の自由」)及び自由に宗教を信奉し、祭祀を行い、布教する権利を有する。」と規定し、更にビルマ国憲法も「宗教に関する諸権利」と題して二〇条で「すべての人は平等のフリーダム・オブ・コンシヤンス(「信仰の自由」)の権利を有し且宗教を自由に信奉し及び履践する権利を有する云々」と規定しており、イラク国憲法一三条は回教は国の公の宗教であると宣言して同教各派の儀式の自由を保障した後に完全なフリーダム・オブ・コンシャンス(「信仰の自由」)及び礼拝の自由を保障している。(ピズリー著各国憲法集二巻二一九頁。脚註に公認された英訳とある。)。英語のフリーダム・オブ・コンシヤンスは仏語のリベルテ・ド・コンシアンスであつて、フランスでは現に宗教分離の一九〇五年の法律一条に「共和国はリベルテ・ド・コンシアンス(「信仰の自由」)を確保する。」と規定している。これは信仰選択の自由の確保であることは法律自体で明である。レオン、ヂユギはリベルテ・ド・コンシアンスを宗教に関し心の内で信じ若しくは信じない自由と説いている。(ヂュギ著憲法論五巻一九二五年版四一五頁)
 以上の諸憲法等の用例によると「信仰の自由」は広義の宗教の自由の一部として規定されていることがわかる。これは日本国憲法と異つて思想の自由を規定していないからである。日本国憲法はポツダム宣言(同宣言一〇項は「言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ」と規定している)の条件に副うて規定しているので思想の自由に属する本来の信仰の自由を一九条において思想の自由と併せて規定し次の二〇条で信仰の自由を除いた狭義の宗教の自由を規定したと解すべきである。かように信仰の自由は思想の自由でもあり又宗教の自由でもあるので国際連合の採択した世界人権宣言(一八条)及びユネスコの人権規約案(一三条)にはそれぞれ三者を併せて「何人も思想、信仰及び宗教の自由を享有する権利を有する」と規定している。以上のように日本国憲法で「信仰の自由」が二〇条の信教の自由から離れて一九条の思想の自由と併せて規定されて、それを「良心の自由」と訳したからといつて、日本国憲法だけが突飛に倫理的内心の自由を意味するものと解すべきではないと考える。憲法九七条に「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」であると言つているように、憲法一九条にいう「良心の自由」もその歴史的背景をもつ法律上の用語として理解すべきである。されば所論は「原判決の如き内容の謝罪文を新聞紙に掲載せしむることは上告人の良心の自由を侵害するもので憲法一九条の規定に違反するものである。」と言うけれども、それは憲法一九条の「良心の自由」を誤解した主張であつて、原判決には上告人のいう憲法一九条の「良心の自由」を侵害する問題を生じないのである。

bの批判は、知っている人は、知識で1とわかる。
知らなかった人でも、現場で考えれば批判になっているとわかったのではないか。

行政法について

行政法も、出題形式は例年どおりだ。
1、2型の正誤問題は、憲法は肢3つが多く、行政法は4つが多い。
また、憲法は基本知識を問うのに、行政法は細かい知識が多い。
もっとも、今年は現場で何とか推測すれば、正解にたどり着ける問題が多かった。
現場で何とかしようとする人と、諦めてしまう人とで、差が付きやすい。

例年、行政法の方が憲法より難しい傾向だった。
今年は、憲法が例年にないほど易しかった。
そのため、今年は、行政法と憲法の難易度の格差が広がっている。

司法試験第22問、予備試験第13問は、現場で考えて解答すべき問題である。

 建築基準法第6条第1項の定める建築確認及び同法第9条第1項の定める違反是正命令に関し,次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

(参照条文)建築基準法

第6条 建築主は,(中略)建築物を建築しようとする場合(中略)においては,当該工事に着手する前に,その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて,確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない。(以下略)

2〜13 (略)

14 第1項の確認済証の交付を受けた後でなければ,同項の建築物の建築(中略)の工事は,することができない。

15 (略)

第9条 特定行政庁は,建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については,当該建築物の建築主(中略)に対して,当該工事の施工の停止を命じ,又は,相当の猶予期限を付けて,当該建築物の除却,移転,改築,増築,修繕,模様替,使用禁止,使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

2〜15 (略)

第99条 次の各号のいずれかに該当する者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

一 第6条第1項(中略)の規定に違反した者

二〜十三 (略)

2 (略)

ア.建築主事は,建築主と建築に反対する近隣住民とが一定期間協議することを停止条件として建築確認を行うことができる。

イ.建築確認を受けて建築された建築物について,特定行政庁は,建築確認が取り消され又は無効である場合でなくても,建築物が建築基準法令の規定に違反することを理由に,違反是正命令を行うことができる。

ウ.建築確認を受けて建築された建築物について,近隣住民は,建築確認の取消訴訟又は無効確認訴訟を併合提起しなくても,違反是正命令の義務付け訴訟を適法に提起することができる。

エ.建築確認を受けずに建築を行っても,当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していれば,建築基準法第99条第1項第1号の定める刑罰を科されない。

アは、建築基準法というものがどういうものかを知っていれば、すぐ誤りとわかる。

建築基準法1条

 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

近隣住民との協議、調整といったことは、この法律には入って来ない。
だから、そのような条件を付することはできない。
また、その点に気付かなくても、参照条文をみると、ダメそうである。
参照条文の6条1項をみると、こうなっている。

 建築主は,(中略)建築物を建築しようとする場合(中略)においては,当該工事に着手する前に,その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて,確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない。(以下略)

敷地、構造又は建築設備に関する規定に適合しているかを確認する。
これが、建築確認である。
だとすれば、そこに近隣住民との協議という条件が付いてくるのはおかしい。
そもそも、確認行為なのに、なぜ協議を条件にするという裁量行為をなしうるのか。
その辺りに気付けば、誤りと判断できたはずである。

イは、参照条文の9条1項を読めば、できそうだと判断できる。
なお、訴えの利益に関するものとして有名な最判昭59・10・26は、以下のように述べる。

最判昭59・10・26より引用、下線は筆者)

 特定行政庁の違反是正命令は、当該建築物及びその敷地が建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているかどうかを基準とし、いずれも当該建築物及びその敷地が建築確認に係る計画どおりのものであるかどうかを基準とするものでない上、違反是正命令を発するかどうかは、特定行政庁の裁量にゆだねられているから、建築確認の存在は、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。

(引用終わり)

ウは、まず申請拒否型(行訴法37条の3第3項2号)ではない。
それから、イがヒントになる。
仮に、建築確認が取り消され、又は無効でなければ是正命令できないとする。
その場合には、先に取消訴訟や無効等確認訴訟を提起するか、少なくとも併合提起が必要となる。
しかし、イは正しいから、建築確認が取り消され、又は無効でなくても是正命令ができる。
だとすれば、取消訴訟や無効等確認訴訟の併合は不要だろう。
従って、これも正しいと判断できる。

エは、99条1項1号をみると、6条1項違反とある。
そこで6条1項をみると「確認を受け・・なければならない」とある。
だとしたら、「建築確認を受けずに建築を行っても」という部分が誤りだ。

このように、本問は、条文を参照すれば、何とか正解できる。
ただ、時間がかかる。
こういう問題は、一度保留しておいて、後からじっくり解くとよい。

司法試験第24問は、最判平23・6・7の知識を問う問題である。

 行政手続法第14条第1項本文は,不利益処分をする場合には同時にその理由を名宛人に示さなければならない旨を定めているが,次のアからウまでの各記述について,同項の理由の提示に関する最高裁判所平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)の多数意見の判示内容として,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.行政手続法第14条第1項本文が理由の提示を要求しているのは,不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものである。

イ.建築士法による一級建築士に対する懲戒処分の場合,処分基準が定められているとしても,行政手続法第14条第1項本文が理由の提示を要求している趣旨は,当該処分の根拠である建築士法の法条及びその法条の要件に該当する具体的な事実関係が明らかにされることで十分に達成できるというべきであり,更に進んで,処分基準の内容及び適用関係についてまで明らかにすることを要するものではない。

ウ.建築士法による一級建築士に対する懲戒処分について,公にされている処分基準は,複数の懲戒処分の中から処分内容を選択するための基準として,多様な事例に対応すべくかなり複雑な内容を定めていたのであり,処分の原因となる事実と処分の根拠法条とが示されているだけでは,いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることはできないから,処分基準の適用関係が全く示されていない理由提示は,行政手続法第14条第1項本文の要求する理由提示としては十分でない。

これは、司法試験平成23年最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成23年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

1:重要度:A
 行政手続法14条1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨である。

3:重要度:A
 公にされている処分基準の適用関係を示さずに建築士法に基づく一級建築士免許取消処分がされた事案につき、判例は、行政手続法14条1項本文の趣旨は根拠法条及びその法条の要件に該当する具体的な事実関係が明らかにされることで十分に達成できるというべきであり、更に進んで、処分基準の内容及び適用関係についてまで明らかにすることを要するものではないとして、上記免許取消処分を適法とした。

【解答】

1:正しい(最判平23・6・7)。

3:誤り(最判平23・6・7)。
 公にされている処分基準の適用関係を示さずに建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づく一級建築士免許取消処分がされた事案につき、判例は、行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし、同項本文の要求する理由提示としては十分でないといわなければならず、上記免許取消処分は、同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるとした

(引用終わり)

司法試験第25問、予備試験第14問は、現場で考えて何とか正解したい。

 行政庁が免許業者に対して不利益処分を行う場合の聴聞手続及び弁明手続に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.弁明は,書面を提出して行うことが原則であるが,行政庁が認める場合には,口頭で行うことができる。

イ.行政庁は,免許取消のための聴聞手続の進行中に免許停止処分とすることが妥当であると判断した場合であっても,免許停止処分を行うことはできず,改めて弁明手続を執ることが必要となる。

ウ.行政庁は,免許停止のための弁明手続の進行中に免許取消処分とすることが妥当であると判断した場合であっても,免許取消処分を行うことはできず,改めて聴聞手続を執ることが必要となる。

アは、行手法29条1項で正しい。
問題は、イとウである。
イは、重い処分と思って聴聞手続をしたら、軽い処分が妥当だった場合。
ウは、軽い処分と思って弁明手続を執ったところ、重い処分が妥当だった場合。
聴聞は、弁明より慎重な手続である。
既に慎重な手続を踏んだ上で、軽い処分をするのは許されるだろう。
しかし、軽い手続を踏んだ上で、重い処分をするのは、ダメではないか。
発想としては、刑法の錯誤論と似ている。
現場で考えれば、そのような推測はできるだろう。
それに従えば、イが誤り、ウが正しく、正解は3となる。

総管第211号平成6年9月13日「行政手続法の施行に当たって」より引用、下線は筆者)

 不利益処分の名あて人となるべき者について弁明の機会の付与の手続を執った場合にあって、その結果として、第13条第1項第1号イからハまでに掲げる処分を行うことが相当であると判断し、当該処分をしようとするときには、改めて聴聞手続を執る必要があること。

(引用終わり)

司法試験第28問も、現場で考えて正解したい。

 A市は,コンビニエンスストアを経営する株式会社B社との間で,住民に対する住民票の写しの交付を委託する契約(以下「本件契約」という。)を締結した。A市は,A市個人情報保護条例(以下「本件条例」という。)第10条において,「市は,個人情報の取扱いを伴う事務又は事業を委託するときは,当該契約において,個人情報の適切な取扱いについて受託者が講ずべき措置を明らかにしなければならない」旨を定めている。本件契約及び本件条例に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア.本件契約により,A市長は住民に対し住民票の写しを交付する権限の一部をB社に委任したことになる。

イ.本件契約には,B社が個人情報の保護措置を講じているかをA市が確認する必要がある場合に,B社はA市の職員によるB社の作業所の検査に協力しなければならない旨を定めることができる。

ウ.A市は,本件条例第10条にいう受託者が個人情報の保護措置を定める契約の条項に違反した場合には刑罰を科される旨を,本件条例中に定めることができる。

エ.A市は,本件条例第10条にいう受託者が個人情報の保護措置を適切に講じていない場合にはA市長が受託者に対し行政処分として是正命令をなし得る旨を,本件条例中に定めることができる。

アは、委任であれば当該部分のA市長の権限が失われることになる。
そんなはずはないので、誤りと分かる。
イは、契約で互いに合意すれば、問題なさそうだ。
従って、正しいだろう。
ウは、刑罰の構成要件が契約内容で定まることになる。
これは罪刑法定主義からして、おかしい。
だから、誤りと判断できる。
エは、条例だから、この程度はできるだろう。
従って、正しいと判断できる。
この種の問題は、この程度の思考で、正解するものである。
初めから全て知識で固めようとしても、限界がある。
わからないなりに現場で考えて、拾えるものは拾っていきたい。

司法試験第29問、予備試験第17問のエは、最決平21・1・15である。

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

エ.行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた行政文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは原則として許されないが,原告が検証への立会権を放棄した場合には,例外的に許される。

これは司法試験平成21年最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

1:情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消しを求める訴訟において、不開示とされた文書を対象とする検証を被告に受忍させることは、それにより当該文書の不開示決定を取り消して当該文書が開示されたのと実質的に同じ事態を生じさせ、訴訟の目的を達成させてしまうこととなり、情報公開法による情報公開制度の趣旨に照らして不合理といわざるを得ないが、原告の立会権放棄を前提とする場合には上記のような結果が生じることを回避できるから、原告の立会権放棄を前提に裁判所が不開示とされた文書を検証の目的として被告にその提示を命ずることは許される。

【解答】

1:誤り(最判平21・1・15)。
 「情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消しを求める訴訟(以下「情報公開訴訟」という。)において、不開示とされた文書を対象とする検証を被告に受忍させることは、それにより当該文書の不開示決定を取り消して当該文書が開示されたのと実質的に同じ事態を生じさせ、訴訟の目的を達成させてしまうこととなるところ、このような結果は、情報公開法による情報公開制度の趣旨に照らして不合理といわざるを得ない。したがって、被告に当該文書の検証を受忍すべき義務を負わせて検証を行うことは許されず、上記のような検証を行うために被告に当該文書の提示を命ずることも許されないものというべきである。
 立会権の放棄等を前提とした本件検証の申出等は、上記のような結果が生ずることを回避するため、事実上のインカメラ審理を行うことを求めるものにほかならない。
 しかしながら、訴訟で用いられる証拠は当事者の吟味、弾劾の機会を経たものに限られるということは、民事訴訟の基本原則であるところ、情報公開訴訟において裁判所が不開示事由該当性を判断するために証拠調べとしてのインカメラ審理を行った場合、裁判所は不開示とされた文書を直接見分して本案の判断をするにもかかわらず、原告は、当該文書の内容を確認した上で弁論を行うことができず、被告も、当該文書の具体的内容を援用しながら弁論を行うことができない。また、裁判所がインカメラ審理の結果に基づき判決をした場合、当事者が上訴理由を的確に主張することが困難となる上、上級審も原審の判断の根拠を直接確認することができないまま原判決の審査をしなければならないことになる。
 このように、情報公開訴訟において証拠調べとしてのインカメラ審理を行うことは、民事訴訟の基本原則に反するから、明文の規定がない限り、許されないものといわざるを得ない。
 ・・・以上によれば、本件不開示文書について裁判所がインカメラ審理を行うことは許されず、相手方が立会権の放棄等をしたとしても、抗告人に本件不開示文書の検証を受忍すべき義務を負わせてその検証を行うことは許されないものというべきであるから、そのために抗告人に本件不開示文書の提示を命ずることも許されないと解するのが相当である」と判示した。
 本肢は、不開示とされた文書を検証の目的として被告にその提示を命ずることは許されるとしているから、誤りである。

(引用終わり)

司法試験第30問のエは、最判平21・2・27である。

 処分の取消しを求める利益に関する次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らし,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

エ.自動車運転免許証の有効期間の更新処分は,申請を認容して利益を付する処分であり,更新によって交付される免許証が優良運転者である旨の記載のあるものか一般運転者である旨の記載のあるものかによって当該免許証の有効期間等に差異はないから,一般運転者として扱われ,優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者が,自分は優良運転者に当たるとして当該更新処分の取消しを求める利益はない。

これも司法試験平成21年最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

4:免許証の更新を受けようとする者が優良運転者であるか一般運転者であるかによって、他の公安委員会を経由した更新申請書の提出の可否並びに更新時講習の講習事項等及び手数料の額が異なるものとされており、これらはいずれも免許証の更新処分がされるまでの手続上の要件のみにかかわる事項ということはできず、同更新処分がその名あて人にもたらした法律上の地位に対する不利益な影響であるというべきであるから、免許証の有効期間の更新に当たり一般運転者として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有する。

【解答】

4:誤り(最判平21・2・27)。
 「免許証の更新処分は、申請を認容して上記のような利益を名あて人に付与する処分であるから、当該名あて人においてその取消しを求める利益を直ちに肯定することはできない。免許証の更新を受けようとする者が優良運転者であるか一般運転者であるかによって、他の公安委員会を経由した更新申請書の提出の可否並びに更新時講習の講習事項等及び手数料の額が異なるものとされているが、それらは、いずれも、免許証の更新処分がされるまでの手続上の要件のみにかかわる事項であって、同更新処分がその名あて人にもたらした法律上の地位に対する不利益な影響とは解し得ないから、これ自体が同更新処分の取消しを求める利益の根拠となるものではない
 しかしながら、・・・道路交通法は、優良運転者の実績を賞揚し、優良な運転へと免許証保有者を誘導して交通事故の防止を図る目的で、優良運転者であることを免許証に記載して公に明らかにすることとするとともに、優良運転者に対し更新手続上の優遇措置を講じているのである。このことに、優良運転者の制度の上記沿革等を併せて考慮すれば、同法は、客観的に優良運転者の要件を満たす者に対しては優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して更新処分を行うということを、単なる事実上の措置にとどめず、その者の法律上の地位として保障するとの立法政策を、交通事故の防止を図るという制度の目的を全うするため、特に採用したものと解するのが相当である。
 確かに、免許証の更新処分において交付される免許証が優良運転者である旨の記載のある免許証であるかそれのないものであるかによって、当該免許証の有効期間等が左右されるものではない。また、上記記載のある免許証を交付して更新処分を行うことは、免許証の更新の申請の内容を成す事項ではない。しかしながら、上記のとおり、客観的に優良運転者の要件を満たす者であれば優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を有することが肯定される以上、一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである」と判示した。
 本肢は、他の公安委員会を経由した更新申請書の提出の可否並びに更新時講習の講習事項等及び手数料の額が異なるものとされていることについて、「これらはいずれも免許証の更新処分がされるまでの手続上の要件のみにかかわる事項ということはできず、同更新処分がその名あて人にもたらした法律上の地位に対する不利益な影響であるというべきである」として訴えの利益を認める根拠としているから、誤っている。

もっとも、上記は結論ではなく理由付けを問うている。
本試験の方が、素直に結論だけを訊いている。

司法試験第34問、予備試験第20問は、最判平24・2・9の知識を問う問題である。
(「実施前年の判例は知識問題としては出題されない」といわれることがあるが、そんなことはない。)

 最高裁判所平成24年2月9日第一小法廷判決(民集66巻2号183頁)は,次のような事案における教職員からの訴えについて判断を示しているが,次のアからエまでの各記述について,同判決の判示内容として,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

(1) 教育委員会は,公立高等学校等の各校長に対し,卒業式等の式典の実施に当たっては国歌斉唱の際に教職員は会場に掲揚された国旗に向かって起立して斉唱するなど所定の実施指針のとおり行うものとすること等を示達する通達を発し,各校長は,同通達を踏まえ,毎年度,卒業式や入学式等の式典に際し,多数の教職員に対し,国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の職務命令(以下「本件職務命令」という。)を発している。

(2) 本件職務命令に従わない教職員については,過去の懲戒処分の対象と同様の非違行為を再び行った場合には処分を加重するという方針の下に,おおむね,その違反が1回目は戒告,2,3回目は減給,4回目以降は停職という処分量定がされ,懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされる危険があり,また,その違反及びその累積が懲戒処分の処分事由及び加重事由との評価を受けることに伴い,勤務成績の評価を通じた昇給等に係る不利益という行政処分以外の処遇上の不利益が反復継続的かつ累積加重的に発生し拡大する危険がある。

ア.処分の差止めの訴えについて行政事件訴訟法第37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟又は無効確認訴訟を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する。

イ.教職員が本件職務命令の違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについては,処分の取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることにより容易に救済を受けることができるから,前記(1),(2)などの事情があるからといって,行政事件訴訟法第37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があるということはできない。

ウ.教職員が本件職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは,本件職務命令の違反を理由としてされる蓋然性のある懲戒処分の差止めの訴えを法定の類型の抗告訴訟として適法に提起することができ,その本案において当該義務の存否が判断の対象となるという事情の下では,上記懲戒処分の予防を目的とするいわゆる無名抗告訴訟としては,他に適当な争訟方法があるものとして,不適法である。

エ.教職員が本件職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは,前記(1),(2)などの事情の下では,本件職務命令の違反を理由とする行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,確認の利益がある。

一見すると読解型で、考えれば解けそうにもみえる。
しかし、知識がないと解けないようになっている。
どの肢も、司法試験平成24年最新判例肢別問題集で出題している。

司法試験平成24年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

6:重要度:A
 差止めの訴えを適法に提起するためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する。

7:重要度:A
 東京都教育委員会の教育長が都立学校の各校長宛てに発した通達を踏まえて懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされる危険が現に存在する場合であっても、上記職務命令の違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて重大な損害を生ずるおそれがあるとは認められない。

13:重要度:A
 卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の校長の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは、上記職務命令の違反を理由としてされる蓋然性のある懲戒処分の差止めの訴えを法定の類型の抗告訴訟として適法に提起することができ、その本案において当該義務の存否が判断の対象となる場合には、不適法である。

14:重要度:A
 卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えに関しては、行政処分に関する不服を内容とする訴訟として構成する場合には、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして位置付けられるべきものであるが、勤務成績の評価を通じた昇給等に係る不利益という行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする訴訟として構成する場合には、無名抗告訴訟として位置付けることができる。

15:重要度:A
 卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは、勤務成績の評価を通じた昇給等に係る不利益という行政処分以外の処遇上の不利益が反復継続的かつ累積加重的に発生し拡大する危険がある場合には、確認の利益が認められる。

【解答】

6:正しい(最判平24・2・9)。
 判例は、行政庁が処分をする前に裁判所が事前にその適法性を判断して差止めを命ずるのは、国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡の双方の観点から、そのような判断と措置を事前に行わなければならないだけの救済の必要性がある場合であることを要するから、差止めの訴えの訴訟要件としての「重大な損害を生ずるおそれ」(行訴法37条の4第1項)があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要するとした。

7:誤り(最判平24・2・9)。
 判例は、東京都教育委員会の教育長が都立学校の各校長宛てに発した「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」を踏まえて懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされる危険が現に存在する状況の下では、事案の性質等のために取消訴訟等の判決確定に至るまでに相応の期間を要している間に、毎年度2回以上の各式典を契機として上記のように懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされていくと事後的な損害の回復が著しく困難になることを考慮すると、上記通達を踏まえた職務命令の違反を理由として一連の累次の懲戒処分がされることにより生ずる損害は、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものであるとはいえず、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであるということができ、その回復の困難の程度等に鑑み、上記職務命令の違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについては「重大な損害を生ずるおそれ」(行訴法37条の4第1項)があると認められるとした。

13:正しい(最判平24・2・9)。
 判例は、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の校長の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは、上記職務命令の違反を理由としてされる蓋然性のある懲戒処分の差止めの訴えを法定の類型の抗告訴訟として適法に提起することができ、その本案において当該義務の存否が判断の対象となるという事情の下では、上記懲戒処分の予防を目的とするいわゆる無名抗告訴訟としては、他に適当な争訟方法があるものとして、不適法であるとした。

14:誤り(最判平24・2・9)。
 判例は、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えに関しては、行政処分に関する不服を内容とする訴訟として構成する場合には、将来の不利益処分たる懲戒処分の予防を目的とする無名抗告訴訟として位置付けられるべきものであるが、東京都教育委員会の教育長が都立学校の各校長宛てに発した「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」を踏まえた上記職務命令に基づく公的義務の存在は、その違反が懲戒処分の処分事由との評価を受けることに伴い、勤務成績の評価を通じた昇給等に係る不利益という行政処分以外の処遇上の不利益が発生する危険の観点からも、都立学校の教職員の法的地位に現実の危険を及ぼし得るものといえるので、このような行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする訴訟として構成する場合には、公法上の当事者訴訟の一類型である公法上の法律関係に関する確認の訴え(行訴法4条)として位置付けることができるとした。本肢は、位置付けられるべき構成が逆になっている。

15:正しい(最判平24・2・9)。
 判例は、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは、東京都教育委員会の教育長が都立学校の各校長宛てに発した「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」を踏まえ、多数の教職員が、毎年度2回以上の各式典に際し、上記職務命令を受けており、上記職務命令に従わない教職員については、その違反及びその累積が懲戒処分の処分事由及び加重事由との評価を受けることに伴い、勤務成績の評価を通じた昇給等に係る不利益という行政処分以外の処遇上の不利益が反復継続的かつ累積加重的に発生し拡大する危険がある等の事情の下では、上記職務命令の違反を理由とする行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする公法上の法律関係に関する確認の訴えとして、その目的に即した有効適切な争訟方法であるということができ、確認の利益を肯定することができるとした。

本問の正解は、1211ということになる。

司法試験第38問、予備試験第23問は、着眼点がわからないと、迷う。

 損失補償請求権として法律構成することが考えられる事案について,損害賠償を認めることにより解決される例がある。こうした例として適切なものを,次の1から5までの中から2個選びなさい。

1.民間の事業者が村の工場誘致施策に応じて投資した後,村長が交代し,村が事業者に対し代償的措置を執らずに施策を変更した場合に,村が事業者の受けた積極的損害を賠償する不法行為責任を負う例。

2.国の行政機関が民間の事業者による汚染物質の排出を規制する権限を適切に行使しなかった場合に,国が公害の被害者に対し国家賠償法第1条第1項による賠償責任を負う例。

3.民間の指定確認検査機関が違法に建築確認を行ったために当該建築物の近隣住民が被害を受けた場合に,当該建築物に係る建築確認事務の帰属する市が国家賠償法第1条第1項による賠償責任を負う例。

4.市の保健所で受けた予防接種により個人に後遺障害が生じた場合に,接種した医師の過失が一部推定され,市が損害賠償責任を負う例。

5.国家公務員が勤務場所での事故により死傷した場合に,国が国家公務員に対して負う安全配慮義務の懈怠を理由に損害賠償責任を負う例。

1から5までは、どれも損害賠償を認めうるものである。
そうすると、正解かどうかを分けるのは、損失補償となり得るか。
すなわち、適法なものという余地があるかということである。
その観点でみると、2は「権限を適切に行使しなかった」のであるから、違法な場合である。
3は、「違法に建築確認を行った」のであるから、違法な場合である。
5も、「安全配慮義務の懈怠」であるから、違法な場合である。
一方、1は、文言上違法性を認めうる記述がない。
4も、同様である。
従って、1と4が正解ということになる。

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