平成25年司法試験短答式試験の結果について

220点、5259人

法務省から、司法試験短答式試験の結果が公表された(法務省HP)。
合格点は、220点。
合格者数は、5259人だった。
受験者合格率は、5259÷7653≒68.7%となる。

合格率反転、平成21年並みの受かり易さに

以下は、年度別の合格者数等の推移である。

年度

合格点

平均点

合格点と
平均点の差

受験者数

合格者数

受験者
合格率

18

210

232.9

22.9

2087

1684

80.6%

19

210

231.7

21.7

4597

3479

75.6%

20

230

250.7

20.7

6238

4654

74.6%

21

215

228.1

13.1

7353

5055

68.7%

22

215

230.8

15.8

8163

5773

70.7%

23

210

219.2

9.2

8765

5654

64.5%

24

215

224.5

9.5

8332

5339

64.0%

25

220

233.0

13.0

7653

5259

68.7%

昨年と比べて、全体の平均点が8.5点上がっている。
昨年よりも、易しかった。
ただ、過去の数字をみると、平均点230点前後が多い。
従って、今年は、平均的な難易度だった。
むしろ、平成23、24年が難しかったということになる。

一方、合格率をみると、4.7%の上昇となっている。
これまで、合格率は一貫して低落を続けてきた。
例外は、平成22年だが、この年も2%の増加にとどまっている。
(この年は、例の「平成22年頃まで3000人」の年だった。多少無理をしたのだろう。)
従って、今年は、司法試験史上最大の上昇幅ということになる。
その結果、短答合格率は平成21年の水準まで回復した。
短答は、平成21年並みに受かり易くなった。

今後の合格率の予測

合格率上昇の原因は、明らかだ。
受験者数の減少である。
受験者数をみると、ちょうど平成21年の水準に近い。
一方で、合格者数は、さほど減っていない。
この傾向が続く限り、合格率の上昇傾向も続くことになる。

では、受験者数の減少の原因は、何か。
これも、明らかである。
ローの修了者の減少である。
定員削減、志願者減の傾向は、今のところ止まる気配がない。
従って、合格率上昇傾向は、今後も続くと予想できる。

ただ、一時的に合格率を押し下げる要因が生じた。
それは、受験回数制限の緩和である。

時事ドットコム2013/05/30-20:25配信記事より引用、下線は筆者)

司法試験「5年で5回」に緩和=法曹検討会議が座長試案−政府

 司法試験や法科大学院の在り方の見直しを進めている政府の「法曹養成制度検討会議」(座長・佐々木毅元学習院大教授)は30日、座長試案を公表した。司法試験の受験回数制限を緩和し、現行の法科大学院修了後5年間で3回から5回とした。受験生の心理的な負担を和らげるのが狙いだ。

(引用終わり)

これが実施されると、合格率は確実に下がる。
5年5回だと、受け控えに何のメリットもない。
そのため、全員受験するようになるからだ。
ただ、これは一時的な現象である。
ロー修了生全体が減少すれば、全員受験しても受験者数全体の数字は下がる。
従って、長い目でみれば、合格率の上昇傾向には変わりはないだろう。
とはいえ、回数制限緩和が導入された初年度及びその翌年は、影響が顕著に出る。
法曹養成制度検討会議事務局の試算がある(99ページから104ページ参照)。
この中で、参照に値するのは103ページのもの。
すなわち、2000人合格、既に5年経過した者の復活は認めない案によるものである。

※それ以外は、いわゆる「咬ませ犬」の案だろう。
1500人の案は、累積7割を達成できず、受け入れられない。
5年経過者復活案は、導入時合格率低落が激しすぎるから、同様である。
事務局は、敢えてこのような案を用意し、2000人、復活否定の案を通すつもりなのだろう。
審議会では、よくある手法だ。
一応検討したがダメであった、というアリバイ作りである。

この案によると、平成27年導入で試算した受験者(最終)合格率は以下のようになる。

24 24.6%
25 26.7%
26 31.1%
27 20.2%
28 25.9%
29 32.2%
30 37.8%
31 41.8%
32 44.5%
33 46.5%
34 48.0%
35 49.1%

平成27年と28年は、顕著に合格率が低くなる。
しかし、それ以降は、順調に上昇する。
この試算は、予備を考慮していない。
また、平成27年以降の新規受験者数を2236人で固定している。
これらの点は、問題だろう。
それから、既にこのような情報が公になる点が考慮されていない。
平成27、28が厳しいとわかっていれば、修了年度をずらす人も出てくる。
その結果、多少この差が緩和されることも考え得る。
とはいえ、そのような行動を採れる人は、少数にとどまるだろう。
全体の傾向は、概ねこのようになると予想できる。

平均年齢、微増傾向とみるべきか

以下は、短答合格者の平均年齢の推移である。

年度

短答合格者
平均年齢

18

29.92

19

30.16

20

30.36

21

30.4

22

30.8

23

30.7

24

30.9

25

31.0

年齢を上下させるのは、主として以下の要因である。

1.受験生の累積は、上昇要因となる。
 昨年の受験生は、今年は一つ歳を取るからである。

2.知識問題の比重が高いと、上昇要因となる。
 勉強量の多い受験生ほど、有利になるからである。

3.受験回数制限等による退出者の数の増加は、下落要因となる。
 歳を取った受験生が退出するからである。

4.新規修了生の増加は、下落要因となる。
 通常、新規の修了生は、滞留者より若いからである。
 なお、予備試験合格者の平均年齢は、30.31歳(平成24年)である。
 しかも、数が少ない。
 従って、予備の新規参入は、ほとんど変動要因とはならない。

これまでは、30歳で安定している。
そういう見方をしていた。
ただ、今年は31歳に乗せてきた。
平成18年以降、数字を順に見ると、安定ではなく微増傾向。
そう評価すべきようにも見えてくる。
ローに入り直す人の影響かもしれない。
すなわち、上記4の中に、30代を超える人が増えてきた。
このことは、短答−論文の年齢差が拡大傾向にあることとも符合する。
平成24年度新司法試験の結果について(5)参照)
一度受験資格を喪失する人は、論文に受かりにくい属性を強く持つからである。

短答の総合評価への寄与度

今年の最高点は、329点だった。
一方、総合評価段階での最低点は、220点ということになる。
その差は、109点。
総合得点では、109÷2=54.5点の差である。
司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について参照)

これは、論文では何点になるのか。
54.5÷1400×800≒31.1点である。
例年、大体これくらいの差になっている。
概ね、設問1つ分の差といってよい。
これは、結構大きい。
短答トップなら、これくらいの差が付く。

では、上位10%なら、どうか。
受験者7653人の上位10%は、765位である。
765位に相当する得点は、277点である。
220点との差は、57点。
総合得点では、28.5点の差だ。
論文換算なら、16.2点となる。
トップの場合と比べると、相当差は縮まっている。

上位20%もみてみよう。
受験者7653人の上位20%は、1530位である。
1530位に相当する得点は、265点である。
220点との差は、45点。
総合得点では、22.5点の差。
論文換算なら、12.8点となる。

上記10%と上位20%の差は、論文だと3.4点しかない。
上位20%を取る労力と、上位10%を取る労力の差と、釣り合うかどうか。
この辺りを勘案して、短答に投入する勉強時間を考えることになる。
無難に上位20%が取れるようになったならば、論文重視でもよい、という感じだろう。
論文は、勉強量と成績とが連動しにくい。
しかも、得点調整により、偏差値換算になる。
偏差値の1点は、なかなか上がらない。
だから、とにかく短答をやるべきだ、と言われたりもする。
しかし、論文でも、無難に得点率50%を取る勉強は可能だ。
得点率50%を維持すれば、昨年なら論文で1321位になる。
これに、12.8点のアドバンテージを加えると、1058位に上昇する。
1000番代でも構わない、というのであれば、一番受かりやすい作戦である。
こういう作戦を採った結果、予想外に上位になることも多い。
多くの受験生が、ハードルを高く設定しすぎて自爆するからである。
偏差値換算でも、得点率50%を取るのは、さほど難しくない。
偏差値70を71にするのと比較すると、格段に容易だ。
勉強の方向性を間違えなければ、論文重視でも良いように思う。
上位20%を取った上で、論文の勉強を深めていけば、短答の点も伸びるものである。
条文・判例の意味を理解するので、知識として定着しやすくなるからだ。
結果として、上位10%ラインに食い込んでいく、というのが理想形だろう。

逆に、上位20%、すなわち265点に届かない人は、知識不足である。
今年の問題での265点は、特に対策をしなくても取れそうな得点である。
この水準が取れない人は、論文に必要な基礎知識も足りない。
従って、とにかく短答重視でやるべきだろう。

科目別得点状況

以下は、各科目の平均点及び最低ライン未満者の割合の推移である。

年度

公法系
平均点

民事系
平均点

刑事系
平均点

公法系
最低ライン
未満割合

民事系
最低ライン
未満割合

刑事系
最低ライン
未満割合

18

58.5

101.4

73.0

1.9%

0.6%

0.1%

19

60.2

103.0

68.5

4.3%

2.1%

0.9%

20

69.7

104.8

76.2

0.7%

1.3%

0.4%

21

63.0

101.7

63.4

2.7%

2.5%

3.9%

22

71.5

96.5

62.8

0.5%

2.4%

4.5%

23

59.3

102.6

57.3

4.4%

1.7%

8.0%

24

54.8

97.6

72.0

11.3%

3.2%

1.3%

25

65.1

104.8

63.1

2.9%

1.4%

5.2%

昨年は、公法系が厳しかった。
その反動で、今年は公法、特に憲法が易しかった。
昨年と比べて、10点以上平均点が上がっている。
最低ライン未満者も、一気に3%程度まで下がった。
ただ、今年の憲法は異例の易しさだったので、来年はもう少し厳しくなるだろう。

民事も、平均点が高い。
過去の数字をみると、最も高い平成20年と同じ数字である。
数字の上では、最も易しかったといえる。
とはいえ、例年との差はそれほどでもない。
受験した実感としては、さほど易しいとは感じなかったのではないか。

他方、刑事は昨年より平均点が落ちている。
最低ライン未満者が最も多かったのも、刑事だった。
ただ、過去5年でみると、平年並みである。
昨年が、易しかった。
来年以降も、この水準くらいなら対応できるようになっておく必要がある。
判例がどのような場合に何罪を成立させたか等を、覚えていくしかない。
できれば、論文の自説の感覚と判例の結論とを一致させておく。
そうすると、現場の感覚で答えても正解しやすくなる。
自分の感覚とあまりに違う判例だけを、特に覚えるようにする。
その方が、効率的だろう。

予備組全員合格

昨年、予備組は85人受験して、84人合格。
すなわち、1名を除いて全員合格した。
(その1名も、病欠の可能性が高い。)
今年は、167人が受験して、167人合格。
名実共に、パーフェクトを達成した。

このことから言えることは、短答は成績が安定し易い、ということである。
一度合格レベルに達すると、何度受けても安定して上位になる。
「短答は裏切らない」などと言われるのは、この安定性を意味する。
逆に言えば、短答にはマグレの可能性が少ない。
模試で一度も合格点を取ったことのない人が、本試験でいきなり合格点を取る。
そういうことは、生じにくい。

これに対して、論文では、なかなかそうもいかない。
昨年、予備組の論文合格率は約69%だった。
予備の論文をクリアしても、3割は落ちる。

※今年は、もう少し予備の合格率は落ちるだろう。
上記3割の再受験者は、ほぼ確実に合格率を下げる。
受験回数が増えると、論文合格率は顕著に下がるからである。
また、平成24年の予備合格者の数が増えている。
このことも、予備組の合格率を下げる要因である。

確かに、予備と司法試験の論文は、問題文の長さ等が違う。
それにしても、短答と比較したときの落差が大きい。
論文は、成績が安定しない。
このことは、重要な特性である。
もっとも、論文も、安定して取る方法はある。
それは、前記の得点率50%を確実に取る、という方法だ。
得点率50%とは、論文の採点基準では、「一応の水準」の中央値である。
司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について参照)
採点実感に関する意見で、一応の水準として言及されているレベルを確実に取る。
これは、それほど難しくない。
多くの受験生は、優秀、良好のレベルの記述を気にして、自滅している。
この点に気付くかどうかが、論文攻略のカギになる。

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