平成25年司法試験論文式行政法の参考資料2

名古屋地裁判決平成15年10月16日より引用、下線は筆者

【事案】

 原告所有地を包含する地域を施行地区として土地区画整理事業を計画している土地区画整理組合の設立を被告が認可したことから,原告が,当該認可について,主位的に無効確認を,予備的に取消しを求めた抗告訴訟。

【原告の主張】

 そもそも本件組合は行政官庁ではなく,認可申請も行政行為ではないから,被告としては,申請の逸脱濫用のみをチェックすれば足りるというものではなく,例外的不認可事由を厳密に判断しなければならず,被告がこの点について広い裁量権を有するものとは考えられない。このことは,昭和63年に法21条1項4号が,「……必要な経済的基礎がないこと」から「……必要な経済的基礎及びこれを的確に施行するために必要なその他の能力が十分でないこと」と改められ,不認可事由が広くなっていることや,法施行規則10条1号が「資金計画のうち収入予算においては,収入の確実であると認められる金額を収入金として計上しなければならない。」と定めていることからも裏付けられる。しかるに,被告は,本件組合の経済的基礎について,正確なことは分からないまま,現在の一般的な可能性をもとに,明らかに不当といえるような計画ではないとして,上記要件に該当するか否かの判断を放棄して本件認可に及んでいるが,事業計画が「予定どおり進行する可能性がある」という程度では認可することはできないのが道理であるし,保留地購入者等は本件組合が考えるべきというのは無責任であり,企業を誘致するという発想自体,法の理念に反する。認可の時点では一般的な可能性で判断し,認可後にうまくいくかどうかは土地区画整理組合の責任というのでは,法が被告に認可権限を与えた意味が全くないのであって,被告が,このような事実を調査することなく行った本件認可は,違法である。

【被告の主張】

 そもそも,法14条1項の土地区画整理組合の設立認可は,いわゆる講学上の特許に属し,法21条1項が「次の各号……の一に該当する事実があると認めるとき以外は,その認可をしなければならない。」と規定して,不認可事由が存しない限り,認可が義務付けられていることに照らすと,処分権者である知事が設立認可をしないことの効果裁量は制限され,設立認可をする要件の認定はその自由裁量に委ねられているというべきところ,同項4号所定の経済的基礎の要件の判断は,これが将来生じる事象の予測であること,専門技術的な観点からなされるべきことを考慮すると,設立認可が裁量権を逸脱し又は濫用するものとして違法となるのは,知事が当該事業の施行のために必要な経済的基礎が十分であると判断したことが不合理である場合に限られる

【判旨】

 被告は,本件認可は,被告の自由裁量に属すると主張するのに対し,原告は,昭和63年の法改正などを根拠としてこれを争うところ,法21条1項は,「都道府県知事は,……(土地区画整理組合の設立)認可の申請があった場合においては,次の各号の一に該当する事実があると認めるとき以外は,その認可をしなければならない。」旨規定しており,その体裁に照らせば,知事に対し,各号所定の不認可事由があると認めるとき以外は,原則的に設立認可を義務付けていることが明らかである(これは,組合設立の自主性を尊重する趣旨に出たものと考えられる。)。したがって,知事は,不認可事由があると認められないにもかかわらず,不認可処分を行うことはできないという意味において羈束されているが,逆に不認可事由の存否が不明の場合に,認可することができる要件裁量を有するかについては,必ずしも明らかではない。しかるところ,同項の定める不認可事由のうち,4号の「土地区画整理事業を施行するために必要な経済的基礎……が十分でないこと。」の存否の判断については,相当期間にわたる将来的な予測が必要であり,流動的な要素をしんしゃくすることが避けられないことなどを考慮すると,知事が一定範囲の要件裁量を有することは否定し難い
 しかしながら,他方で,土地区画整理組合の設立認可は,その事業施行地区内の宅地の所有権等を有する者をすべて強制的にその組合員とした上,当該組合に土地区画整理事業を施行する権限を与える効果を付与するものであり,かつ,当該事業の実施に反対の意見を有する者であっても,法18条所定の要件が充たされる以上,そこから離脱したり,その申請を阻止する手段はなく,このように関係者の権利,利益に重大な影響を与え得る行政処分であることに照らすと,知事としては,設立認可申請に対し,現在の一般的な可能性をもとに,明らかに事業計画が不当といえるか否かについて判断するだけでは足りず,一般的に必要と考えられる調査を尽くし,収集した資料を注意深く検討して,当該組合に事業施行に必要な経済的基礎が十分に具備されているか否かを判断すべきである
 そして,裁判所も,かかる観点から,知事の判断が合理性を有するか否かについて司法審査権を有するというべきである。

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