平成25年司法試験論文式公法系第2問参考答案

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第1.設問1

1.問題点

 「認可」は、文言上処分とされる(行手法2条3号参照)。もっとも、抗告訴訟の対象となる「処分」というためには、紛争の成熟性の観点から、個別の国民に対する直接法効果性を要する。本件認可については、この点が問題となる。

2.土地区画整理組合の法的性格

(1)組合は、都道府県又は市町村と同様に土地区画整理事業を施行する(法3条2項)。また、賦課金等の滞納が生じた場合に市町村長に対し徴収申請ができる(法41条1項)。のみならず、市町村長が滞納処分に着手しない等の場合には、都道府県知事の認可を受けて組合の理事が滞納処分をすることができる(同条4項)。このように、組合は行政上の法律関係の主体としての地位を有するから、行政主体性を有する。組合設立認可(法14条1項)は、上記行政主体としての地位の付与という法的効果を有するから、講学上の特許として処分性が認められる。

(2)他方、組合は、その定款等の変更について都道府県知事の認可を受けなければならない(39条1項)。また、市町村長から報告等を求められ、又は勧告等を受ける(法123条1項)。さらに、都道府県知事の監督を受ける(法125条1項)。このように、組合は、下級行政機関としての性質を有する。

3.定款変更認可の法的性質

(1)前記2から、組合設立認可とは異なり、定款変更認可は、上級行政機関である都道府県知事による下級行政機関としての組合に対する監督手段に過ぎず、当然には外部的効力は生じない。従って、定款変更認可には個別の国民に対する直接法効果性が認められないから、処分性は認められないのが原則である(成田新幹線事件参照)。

(2)もっとも、本件定款変更は、費用分担(法15条6号)につき定款に賦課金を新設する(6条2号)。その法的効果を完成させるのが、本件認可である。

ア.定款の費用分担の定めに賦課金を新設した場合、以後個別の賦課金決定については定款の定めを要しない(法40条1項)。そのため、組合は、賦課金新設の定款変更が認可されれば、その後は認可を要することなく組合員から賦課金を徴収できる。すなわち、組合員は、上記定款変更により、一方的に賦課金を徴収される法的地位に立たされる。そうすると、個別の賦課金決定を争い得ない場合には、定款変更認可による賦課金新設を争わせる必要がある。

イ.以上から、定款変更認可であっても、賦課金新設の定款変更に係るものであって、個別の賦課金決定を争う機会が組合員に与えられない場合には、上記アの法的効果を完成させる講学上の認可としての直接法効果性を根拠として、処分性が認められる。

ウ.本問で、本件認可は賦課金新設の定款変更に係るものであって、本件要綱が同時に議決されたため各組合員は直ちにその有する地積に応じて個別的に賦課金の負担を負うことになり、これを争う機会は、本件認可の段階以外にない。なお、滞納処分(41条3項、4項)の段階では、年利10.75%の高率の延滞金が課される(定款8条)から、この段階まで待って争わせることは現実的でない。

エ.よって、本件認可には、処分性が認められる。

(3)これに対し、市町村が主体となる場合の施行規程が条例事項である(法53条1項)ところ、組合施行の場合に定款が施行規程と同様の位置づけとなる(法15条、53条2項対照)ことから、本件認可は条例制定行為と同様に処分性がないとする主張が考えられる。
 確かに、処分というためには個別の法効果の発生を要するから、一般的法規範である条例の制定行為は原則として処分ではない。しかし、他の処分を待たずに直接個別の法効果を生ずるときは、その法的効果において処分と異ならないから、処分性が認められる(保育所廃止条例事件参照)。このことは、定款変更認可にも同様に当てはまる。
 本問では、前記(2)のとおり、本件認可により、各組合員は、他に何らの処分を待たずに直接に賦課金を徴収される法的地位に立たされる。よって、上記主張を前提としても、本件認可の処分性は認められる。

第2.設問2

1.違法とする法律論

(1)本件事業は実質的に破綻しており、施行に必要な経済的基礎を欠いている。従って、本件認可は違法である(法39条2項、21条1項4号)。

(2)Dは白紙の書面議決書500通に勝手に賛成の記載をしたから、本件定款変更の変更手続に違法がある。従って、本件認可は違法である(法39条2項、21条1項2号)。

(3)一部の組合員の賦課金を免除することは、賦課金額の公平を定める法40条2項に反する。本件定款変更は、上記違法な賦課金免除の利益を受ける者が賛成することによって初めて承認され得るものであった。従って、本件認可は違法である(法39条2項、21条1項2号)。

2.適法とする法律論

(1)法21条1項各号の不許可事由該当性判断は都道府県知事の自由裁量であり、C県知事が同項4号に該当しないと判断したことに違法はない。

(2)組合員の署名捺印のある白紙の書面議決書は、慣例上賛成票とすべきであるから、Dがこれに賛成の記載をしても違法ではない。

(3)賦課金免除は小規模宅地所有者等に対する政策的配慮によるものであって、実質的公平を害するとはいえないから、法40条2項に違反しない。仮に違法であるとしても、賦課金の算定方法は定款で直接定められていないから、本件定款変更の内容には違法はない。従って、法21条1項2号には当たらない。

3.私見

(1)法21条1項4号該当性の判断には、専門技術的知見を要するから、都道府県知事の裁量があることは否定できない。もっとも、賦課金新設に係る定款変更認可は、一度認可されれば個別の賦課金決定を組合員が争うことは困難となるから、賦課金新設に係る同号該当性の判断は、客観的な事実に裏付けられた合理的なものであることを要する。
 一般に賦課金新設により事業の好転が見込めるのは、一時的な資金不足の場合であって、慢性的な資金不足の場合には、早期に破たん処理をすべきである。本問では、本件組合は資金計画の変更を繰り返しており、事業の前提であった保留地の高値売却は計画どおりに進んでいない。すなわち、慢性的な資金不足の場合である。そうである以上、賦課金の新設による事業の好転は見込めない。他に上記と反対の判断を導きうる客観的事実はない。
 以上から、賦課金新設につき事業の遂行に必要な経済的基礎が十分であるとして本件認可をしたC県知事の判断は、客観的な事実に裏付けられた合理的なものとみることはできない。
 よって、本件認可には、法21条1項4号の判断を誤った違法がある。

(2)白紙の書面投票が賛成を意味するという慣例は必ずしも確立しているとはいえず、総会決議の結果を左右する重要な事柄であることからすれば、そのような取扱いは、定款に記載することを要する。
 本問で、本件組合の定款に白紙の書面投票をもって賛成と扱う旨の記載があることはうかがわれない。
 よって、これを当然に賛成票と扱った点に、本件定款変更の決定手続の違法があるから、本件認可は法39条2項、21条1項2号に違反し、違法である。

(3)確かに、本件要綱は、小規模宅地の所有者等に賦課金負担を求めることの現実性を考慮すれば、必ずしも法40条2項に反するとまではいい難い。また、仮に同項に違反するとしても、直ちに本件定款変更の違法を基礎付けるものではない。本件定款変更は、賦課金の新設を認めるにとどまるからである。
 しかし、免除対象組合員が、総組合員の約80%、総地積の約41%を占めることからすれば、本件定款変更の特別決議成立は免除対象組合員の賛成によるところが極めて大きい。総会の議決権行使についての利益供与は、条理上当然に違法である。本件定款変更の議決に当たり、同時に本件要綱によって免除を明示すれば、免除対象組合員が本件定款変更に賛成することは当然である。従って、賦課金の算定方法は、たとえ本件要綱で定められ、定款で直接定められていないとしても、本件定款変更の賛否の判断を歪める利益供与といえるから、本件定款変更の議決についての違法を構成する。
 以上のとおり、本件定款変更の決定手続に違法があるから、本件認可は法39条2項、21条1項2号に違反し、違法である。

以上

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