平成25年予備試験短答式の結果について

170点、2017人

法務省から、平成25年予備試験短答式の結果が公表された(法務省HP)。
合格点は、170点。
合格者数は、2017人だった。
合格点は、5点上がり、合格者は306人増えた。
合格点は、これまで2年続けて165点だった。
これは、満点のほぼ6割。
予備は、毎年これで固定になるとも思われた。
しかし、今年初めて、165点以外の合格点になった。
この数字は、どんな感じで決まったのか。

短答の合格点は、司法試験ではキリのいい数字で決めてくる。
概ね、5点刻みになっている。
どうやら、予備でも同様の決め方のようだ。
仮に、例年どおり165点だと、どうか。
法務省の得点別人員によれば、合格者数は2492人になる。
これは、さすがに多すぎる。

昨年より受かりにくかった

他方、175点だと、どうか。
これは、1645人となる。
昨年は、1711人。
これと比べると、あってもよさそうな数字にみえる。
しかし、合格率を加味して考えると、ちょっと採用しにくい数字だった。

以下は、年別の短答、論文の合格率の推移である。
(短答合格率は受験者ベース、論文合格率は短答合格者ベースの数字である。)

 

受験者数

短答
合格者数

短答
合格率

論文
合格者数

論文
合格率

23

6477

1339

20.6%

123

9.1%

24

7183

1711

23.8%

233

13.6%

25

9224

2017

21.8%

2017人でも、昨年より2%合格率が落ちている。
仮に、1645人だと、どうなるか。
これは、17.8%になる。
これは、ちょっと合格率が下がりすぎ、という感じだ。
そういうわけで、間の170点、2017人に落ち着いた。
そんな感じだろう。

今年は、昨年より合格者数は増えたが、合格率は下がっている。
これは、合格者増よりも受験者増の方が大きかったことによる。
仮にこの傾向が続けば、短答は次第に受かりにくくなっていく。
現在、ローの志願者減が止まらない。
その分、予備の方に流れている。
もうしばらくは、この傾向は続きそうである。
予備の短答合格率は、やや低下傾向になりそうだ。

科目別状況

以下は、各科目の平均点の推移である。
一般教養のかっこ内は、比較のため、30点満点に換算した数字である。

 

平成23年
平均点

平成24年
平均点

平成25年
平均点

憲法

15.8

15.1

16.5

行政法

12.2

12.5

14.2

民法

19.2

16.3

19.7

商法

12.9

14.7

12.1

民訴法

14.7

16.9

17.0

刑法

18.6

16.6

17.0

刑訴法

14.0

15.6

17.9

教養

23.2
(11.6)

27.2
(13.6)

25.2
(12.6)

合計

130.7

134.7

139.5

昨年より、5点ほど合計点が上がっている。
合格点が5点上がったのは、これに対応している。

商法を除くと、法律科目は全て平均点が上がっている。
法律科目は、解き易い問題が多かった。
昨年より平均点が上がったのは、法律科目の全般的な易化のせいである。
一方で、一般教養は、平均点が2点下がっている。
しかし、それでも平成23年より2点高い。
昨年が易しかったとみるべきだろう。

例年、行政、商法、一般教養の出来が悪い。
今年も、その傾向は続いている。
ただ、これはやむを得ない面もある。
上記3科目を勉強するより、憲法や民法の方が、伸びしろがあるだろう。
今年の問題なら、憲法、民法は8割以上取りたい。

予備でよく言われるのは、一般教養は零点でも受かる、ということだ。
今年の合格点は、170点。
法律科目は、7科目である。
従って、各科目平均で、170÷7≒24.2点取ればよい。
24点は、30点満点の8割である。
従って、法律科目で8割強を取れば、教養は零点でもよかった。
とはいえ、実際には法律科目全科目で8割強は、なかなか難しい。

逆に、法律科目を7割取ると、教養は何点必要なのか。
法律科目7割は、合計で147点である。
そうすると、170−147=23点を教養で取る必要がある。
これは、今年の教養の平均点より約2点下の水準である。
さらに、法律科目が6割だと、どうか。
法律科目6割は、合計で126点である。
そうすると、170−126=44点を教養で取らないと受からない。
これは、60点満点の7割強である。
こうなると、むしろ教養で逆転するイメージになる。
従って、教養を平均以上取る自信のない人は、法律科目7割を確保したい。

司法試験の短答では、概ね6割強を取れば受かる。
もちろん、全科目法律科目である。
教養を7割強取る人を除けば、予備は法律科目7割が必要。
すなわち、予備は、司法試験より1割くらい短答が厳しい。
予備組が全員司法試験の短答に受かるのは、10%の差が堅いことを示している。
体調等による得点の振幅が、10%以上生じない。
多少調子が悪くても、予備で7割取れた者が司法試験で6割未満に落ちることがない。
これが、短答の安定性である。
逆に、教養で逆転する人は、法律科目は6割程度。
すなわち、司法試験でもギリギリのラインである。
このような層が一定数いれば、予備全員合格は難しい。
司法試験短答の予備全員合格は、教養で逆転するタイプの人がほとんどいないことを示している。
教養逆転型の人が少ないということは、予備に一般教養を課す意味に疑問を投げかける。

論文の予測

気になるのは、今年の論文の合格者数である。
以下は、いくつかの想定される今年の論文合格者数と合格率の組み合わせである。

想定論文
合格者数

想定論文
合格率

備考

300

14.8%

 

274

13.6%

昨年の合格率

250

12.3%

 

233

11.5%

昨年の合格者数

183

9.1%

平成23年の合格率

123

6.0%

平成23年の合格者数

平成23年の水準は、ちょっとなさそうだ。
さすがに、これは合格者数、合格率共に低すぎる。

昨年と同じ合格者数(233人)だと、どうか。
合格率は、11.5%となる。
合格率としては、ちょうど昨年と平成23年との中間くらいの数字になる。
今年の司法試験の短答では、予備が全員合格した。
しかも、予備の受験者数は増加傾向だ。
昨年より合格者数を絞る、ということは考えにくい。
そうすると、この数字が予想の下限ということになる。
最も厳しい想定でも、上位1割に入れば、十分受かる。
そのくらいの受かり易さ、ということになる。

昨年と同じ合格率(13.6%)だと、どうか。
この場合、合格者数は、274人となる。
昨年より、41人合格者数が増える。
ありそうな数字である。
この場合は、受かり易さは昨年と同程度ということになる。
昨年の再現答案の水準が、そのまま参考になる。

仮に、300人まで合格した場合は、どうか。
この場合、合格率は14.8%になる。
概ね、上位15%に入れば、受かる。
300という数字は、一つの心理的な節目である。
今回は、この辺りが上限ではないか、という感じだ。
最も甘い想定でも、上位15%は必要だ、ということになる。
上位20%以下では、合格は難しい。

今年の短答は、合格者数が増えた反面、合格率は下がった。
論文も同じようになるとみると、250人、12.3%が、ありそうな数字となる。
この場合、昨年よりも、やや受かりにくくなる。
それでも、上位1割に入れば問題ない。
いずれにせよ、目標は上位1割、ということだろう。

現実的な数字としては、合格者数は250〜280。
合格率は、12%〜14%の辺りに収まりそうである。

合格ラインは、「一応の水準」の下の方

昨年の論文合格率は、短答合格者ベースで13.6%だった。
すなわち、上位13.6%に入らないと、受からなかった。
これは、どの程度の水準なのだろうか。

昨年の論文の合格点は、230点。
これは、500点満点の46%である。

得点率46%とはどのくらいの水準なのか。
これは、「一応の水準」の下限に近い水準である。

(「司法試験予備試験論文式試験の採点及び合否判定等の実施方法・基準について」より引用)

1.採点方針

(1) 白紙答案は零点とする。

(2) 各答案の採点は,次の方針により行う。

ア.優秀と認められる答案については,その内容に応じ,下表の優秀欄の範囲。
 ただし,抜群に優れた答案については,下表の優秀欄(  )の点数以上。

イ.良好な水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ,下表の良好欄の範囲。

ウ.良好とまでは認められないものの,一応の水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ,下表の一応の水準欄の範囲。

エ.上記以外の答案については,その内容に応じ,下表の不良欄の範囲。
 ただし,特に不良であると認められる答案については,下表の不良欄[  ]の点数以下。

優秀

良好

一応の水準

不良

50点から38点
(48点)

37点から29点

28点から21点

20点から0点
[3点]

(引用終わり)

各科目50点満点だから、得点率46%は、23点。
一応の水準は、28点から21点の間だから、真ん中よりも下。
むしろ、下限に近い水準であることがわかる。
これは、平均点の水準ではない。
合格ライン、すなわち、上位13.6%の水準である。
なお、平均点は190.2点だから、得点率38%。
1科目にすると、19点で、不良の方に落ちている。

※なお、合格率が9.1%だった平成23年の合格点は、245点だった。
この場合、得点率は49%。
1科目にすると、24.5点である。
上位9%水準でも、一応の水準の真ん中であった。

このことからいえるのは、「一応の水準」に入れば概ね受かる、ということだ。
「優秀」や「良好」という枠は、ないと思った方がよい。
この点を、多くの人が誤解している。
予備の合格率は低いから、優秀のレベルを書かないと受からない。
そう思っている人が多い。
そういう人は、誰も書かないような問題意識を大展開する。
その結果、かえって一応の水準の事柄を落とす。
実力のある不合格者のほとんどは、こういう自滅型である。

昨年の大学生の論文合格率は、28.5%である。
全体の13.6%の、倍以上の合格率である。
大学生が受かりやすいのは、余計な論点を思いつかない。
基本事項だけを、素直に書いてくるからである。
基本とは、大学生でも知っているレベルの基本である。
(ローで教わることは、合格には必要でない。)
配点は、そういうところにしかない。
実力者しか思いつかない論点は、書いても零点、むしろマイナスになる。
再現答案等をみていても、そういう感じの採点になっている。
「当たり前だから書かない」ではなく「当たり前だけを書く」。
この発想の転換が、必要である。

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