平成25年司法試験・予備試験
短答式試験の感想(2)

民法について

出題傾向は、従来どおりである。
全問が、知識問題。
また、形式的にも、内容的にも、易しい。
肢の組み合わせや、5肢から1つ又は2つを選ばせる形式である。
一部の肢さえ正確に判断できれば、正解できる。
また、訊いている事柄も、基本的な条文・判例ばかりだ。
きちんと勉強すれば、確実に取れる問題である。

例年、知識があっても判断に迷う肢がいくつかある。
肢の読み方によって、正しいとも誤りとも取れるような肢である。
そのような肢があると、知識があっても、満点は取りにくい。
しかし、今年は、そういう肢はほとんどなかった。
知識さえあれば、十分満点を狙える問題だった。
民法は、例年安定して得点を取れる科目だ。
まずは民法で稼ぐ、ということが基本である。

特に新試験では、民法の比重が大きい。
民事系74問(150点満点)のうち、36問(74点)を民法が占める。
ほぼ半分が、民法である。
全科目(350点満点)で考えても、74÷350≒21.1%。
2割強を、民法が占めている。
初学者は、とにかく民法を取ることを考えるべきである。

他方で、予備試験では、民事3科目は、いずれも15問。
また、法律科目は、全科目30点満点だ。
すなわち、民法の比重は、他科目と同じである。
ただ、学習効率がよいという点。
すなわち、勉強すれば無難に点が取れることは同じだ。
従って、予備でも、まずは民法を取れるようにするのがよい。
もっとも、旧試験組は、何もしなくても、民法は取れるはずだ。
そういう人は、行政法、会社法、訴訟法を優先的に勉強すべきだろう。

民法では、特に取り上げるような問題は、なかった。
細かい特別法や、最新判例。
あるいは、肢の読み方の難しい問題。
そういったものは、出題されていない。
今年の民法は、例年と比較しても、解き易かったといえる。
そのことは、結果にも現れている。
司法試験では、民事系の平均点は、7.2点上昇し、104.8点だった。
これは、平成20年と並んで、過去最高の数字である。
予備でも、民法の平均点は昨年より3.4点上がっている。
逆に言えば、今年の問題を難しいと感じた人は、明らかに勉強不足である。

商法について

商法も、例年どおりの傾向だ。
民法よりも問題数が少ない割りに、範囲が広い。
しかも、細かい知識も訊いてくる。
今年は、司法試験第40問、予備第18問で、社債等振替法の知識を訊いてきた。
同法については、概要くらいは知っておいた方がよい。
しかし、この問題は概要を知っていたくらいでは、解けないようになっている。
現場では、すばやく捨てるべき問題だった。
商法では、毎年こういう問題が出題される。
多少勉強したくらいでは、点が伸びにくい。
学習効率の悪い科目である。
従って、短答対策としては、後回しでよい。
特に、民事系はほとんどが5択である。
デタラメに選んでも、2割は取れる。
憲法、行政法等と比べて、会社法は捨ててもはるかにダメージが少ない。

会社法は、論文でも、条文知識が重要である。
だから、論文の学習の中で、主要な条文はフォローできる。
短答は、論文で勉強した知識を基礎に、拾えるものは拾っていく。

手形や商行為・商法総則に関しては、初学者は捨てるという選択肢も、十分ある。
ただ、論文で絶対に出題されないとはいえない。
論文で出た場合、捨てるというわけにはいかない。
重要論点だけでも、一応やっておくべきだ。
そして、論文対策でやった部分だけは、短答でも取れるようになっておく。
そういう意識でよいだろう。

司法試験第39問のアは、最判平18・4・10である。

(司法試験第39問ア)

 判例によれば,会社から見て好ましくない株主が議決権を行使することを回避する目的で,会社が,自己の計算において,第三者に対してその株主から株式を譲り受けるための対価を供与した場合には,株主の権利の行使に関する利益の供与に該当する。

これは、司法試験平成18年度最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成18年度最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

2:「株式の譲渡は株主たる地位の移転であり、「株主の権利の行使」とはいえないから、会社が、株式を譲渡することの対価として何人かに利益を供与しても、会社法120条1項が禁止する利益供与には当たらない。従って、たとえ会社から見て好ましくないと判断される株主が議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的であったとしても、当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為が、上記規定にいう「株主の権利の行使に関し」利益を供与する行為にあたるということはできない」とする見解は、最高裁の判例の趣旨に合致する。

【解答】

2:誤り(最判平18・4・10)。
 「株式の譲渡は株主たる地位の移転であり、それ自体は「株主ノ権利ノ行使」とはいえないから、会社が、株式を譲渡することの対価として何人かに利益を供与しても、当然には商法294条ノ2第1項(現会社法120条1項)が禁止する利益供与には当たらない。しかしながら、会社から見て好ましくないと判断される株主が議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的で、当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為は、上記規定にいう「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」利益を供与する行為というべきである」と判示した。

司法試験第44問ウは、引っかかり易い肢である。

(第44問ウ)

 代表取締役が,会社を代表して,取締役会の決議を経ないで,会社の重要な財産であるEに対する金銭債権をFに譲渡した場合において,Fが取締役会の決議を経ていないことを知っていたときは,Eは,Fに対し,その債権譲渡の無効を主張することができる。

ぱっとみると、相手方悪意だから無効主張できる。
だから、正しい、と考えてしまいそうになる。
しかし、良くみると、無効主張しているのはEである。
無効主張は、会社以外の者でもできるのか。
原則できないとするのが、最判平21・4・17である。
これは、司法試験平成21年最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

2:株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、取締役会の決議を経ていないことを理由とする同取引の無効は、当該会社の取締役会が上記取引を追認する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り、会社以外の者もこれを主張することができる。

【解答】

2:誤り(最判平21・4・17)。
 「株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、取締役会の決議を経ていないことを理由とする同取引の無効は、原則として会社のみが主張することができ、会社以外の者は、当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り、これを主張することはできないと解するのが相当である」と判示した。

従って、ウの肢は、誤りとなる。

司法試験第47問、予備試験第23問のエは、条文操作に注意を要する。

(司法試験第47問、予備試験第23問エ)

 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社の監査役は,資本金の額の減少の無効の訴えを提起することができない。

減資無効の訴えは、「株主等」がすることができる。

(会社法)

828条1項 次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。

五 株式会社における資本金の額の減少 資本金の額の減少の効力が生じた日から六箇月以内

2項 次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。

五 前項第五号に掲げる行為 当該株式会社の株主等、破産管財人又は資本金の額の減少について承認をしなかった債権者

「株主等」とは具体的に何を指すのか。
これは、828条2項1号に規定がある。

(会社法828条2項1号)

 前項第一号に掲げる行為 設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、委員会設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)

上記規定では、監査役には何の限定も付されていない。
ならば、監査の範囲を会計に関するものに限定された場合も含むのか。
含まない。
なぜなら、そのような定款の定めがある会社は、「監査役設置会社」に当たらないからである。

(会社法2条)

 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

九 監査役設置会社 監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう。

以上から、エの肢は正しい。

司法試験第52問、予備試験第28問のアは、最判平20・2・22
オは、最判平20・1・28である。

(司法試験第52問、予備試験第28問より抜粋)

ア.判例の趣旨によれば,会社の行為は,商行為と推定され,これを争う者において,その行為がその会社の事業のためにするものでないことの主張立証責任を負う。

オ.判例の趣旨によれば,会社法第423条第1項に基づく株式会社の取締役に対する損害賠償請求権は,商行為によって生じた債権に当たり,その消滅時効期間は,5年である。

いずれも、司法試験平成20年最新判例肢別問題集で出題している。

司法試験平成20年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

1:会社法423条1項に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権は、会社と取締役との間の商行為としての委任契約に基づく債権が転化したものであるから、その消滅時効期間は5年である。

5:会社の行為は商行為と推定され、これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと、すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負う。

【解答】

1:誤り(最判平20・1・28)。
 「株式会社の取締役は、受任者としての義務を一般的に定める商法254条3項(民法644条)、商法254条ノ3の規定に違反して会社に損害を与えた場合に債務不履行責任を負うことは当然であるが(民法415条)、例えば、違法配当や違法な利益供与等が会社ないし株主の同意の有無にかかわらず取締役としての職務違反行為となること(商法266条1項1号、2号)からも明らかなように、会社の業務執行を決定し、その執行に当たる立場にある取締役の会社に対する職務上の義務は、契約当事者の合意の内容のみによって定められるものではなく、契約当事者の意思にかかわらず、法令によってその内容が規定されるという側面を有するものというべきである。商法266条は、このような観点から、取締役が会社に対して負うべき責任の明確化と厳格化を図る趣旨の規定であり(最高裁平成8年(オ)第270号同12年7月7日第二小法廷判決・民集54巻6号1767頁参照)、このことは、同条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任が、民法415条に基づく債務不履行責任と異なり連帯責任とされているところにも現れているものと解される。
 これらのことからすれば、商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任は、取締役がその任務を懈怠して会社に損害を被らせることによって生ずる債務不履行責任であるが、法によってその内容が加重された特殊な責任であって、商行為たる委任契約上の債務が単にその態様を変じたにすぎないものということはできない。また、取締役の会社に対する任務懈怠行為は外部から容易に判明し難い場合が少なくないことをも考慮すると、同号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任については商事取引における迅速決済の要請は妥当しないというべきである。したがって、同号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務については、商法522条を適用ないし類推適用すべき根拠がないといわなければならない。
 以上によれば、商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は、商法522条所定の5年ではなく、民法167条1項により10年と解するのが相当である」と判示した。
 なお、旧商法254条3項には会社法330条が、旧商法254条ノ3には会社法355条が、旧商法266条1項1号、2号には会社法462条1項柱書き、同項6号、120条4項が、それぞれ対応する。

5:正しい(最判平20・2・22)。
 「会社の行為は商行為と推定され、これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと、すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である。なぜなら、会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とされているので(会社法5条)、会社は、自己の名をもって商行為をすることを業とする者として、商法上の商人に該当し(商法4条1項)、その行為は、その事業のためにするものと推定されるからである(商法503条2項。同項にいう「営業」は、会社については「事業」と同義と解される。)」と判示した。

商法で重要な最新判例は、それほど多くない。
また、結論だけ知っていれば十分である。
しかも、論文の学習とも、リンクしやすい。
従って、細かい条文まで手が回らない人も、最新判例はやっておく。
その際、判例の理解に必要な条文は、セットで覚えてしまうとよい。

民訴法について

例年どおりの傾向である。
民法ほど易しくないが、会社法ほど難しくない。
また、問題の難易の差が、はっきりしている。
会社法は、どの問題もそれなりに難しいものが並ぶ。
中途半端に勉強していても、確実に取れる問題が少ない。
これに対し、民訴は、易しい問題はとても易しいが、難問はとても難しい。
基本的な知識があれば、取れる問題は確実に拾えるようになっている。
他方で、難しい問題は、それなりに勉強していても、取れない。
これは、意図的にそのように作っているという感じだ。
戦略としては、易しい問題は確実に取れるようにする。
難問は、現場で考えて取れそうなものだけ拾う。
時間が足りないと思ったら、難問はすばやく捨てていく。

普段の勉強では、民法のように満点を狙うのは非効率である。
難問は、勉強したからといって、容易には解けないようになっているからだ。
他方、易しい問題を確実に取る学習は、効率がよい。
易しい問題は、ある程度勉強すれば、確実に取れるようになっているからである。
従って、易しい問題は簡単に解けるが、難問は歯が立たない。
そのくらいの感覚まで到達できれば、十分である。

司法試験第61問3は、最決平19・3・20である。

(司法試験第61問3)

 判例の趣旨によれば,妻が夫に無断で夫を連帯保証人として銀行から借入れをし,銀行が夫に対し保証債務履行請求訴訟を提起した場合において,訴状を夫の住所地で送達するときは,同居中の妻がこれを受領しても,補充送達として有効である。

これは、司法試験平成19年度最新判例肢別問題集で出題した。

司法試験平成19年度最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

2:受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた民訴法106条1項所定の同居者等と受送達者との間に、その訴訟に関して事実上の利害関係の対立がある場合には、当該同居者等に対して上記書類を交付しても、受送達者に対する送達の効力は生じない。

(参照条文)民事訴訟法

第106条1項 就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。郵便の業務に従事する者が郵便事業株式会社の営業所において書類を交付すべきときも、同様とする。

【解答】

2:誤り(最決平19・3・20)。
 「民訴法106条1項は、就業場所以外の送達をすべき場所において受送達者に出会わないときは、「使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるもの」(以下「同居者等」という。)に書類を交付すれば、受送達者に対する送達の効力が生ずるものとしており、その後、書類が同居者等から受送達者に交付されたか否か、同居者等が上記交付の事実を受送達者に告知したか否かは、送達の効力に影響を及ぼすものではない。
 したがって、受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等が、その訴訟において受送達者の相手方当事者又はこれと同視し得る者に当たる場合は別として(民法108条参照)、その訴訟に関して受送達者との間に事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には、当該同居者等に対して上記書類を交付することによって、受送達者に対する送達の効力が生ずるというべきである」と判示した。

知らないと、これを誤りとして選んでも、無理はないだろう。
ただ、本問の場合、知識がなくても1がおかしいと気付きたい。

(司法試験第61問1)

 訴状の当事者欄に記載された被告の住所に送達を受けるべき場所と記されていた場合には,送達場所の届出としての効力が生ずる。

訴状を出すのは、原告である。
原告が、被告の送達場所を勝手に指定できるわけがない。
だから、これは誤りとわかる。
なお、被告による送達場所の届出は、答弁書でされるのが通常である(民訴規則41条2項)。

民事訴訟規則41条)

 送達を受けるべき場所の届出及び送達受取人の届出は、書面でしなければならない。

前項の届出は、できる限り、訴状、答弁書又は支払督促に対する督促異議の申立書に記載してしなければならない

3 送達を受けるべき場所を届け出る書面には、届出場所が就業場所であることその他の当事者、法定代理人又は訴訟代理人と届出場所との関係を明らかにする事項を記載しなければならない。

 

(日弁連「裁判文書A4版化書式 答弁書」より引用、下線及び赤字強調は筆者)

平成13年(ワ)第○○○○号 保証債務請求事件

原  告  甲 山 一 郎
被  告  乙 川 次 郎

直送済

答 弁 書

平成13年○月○○日

○○地方裁判所民事第○部○係 御中

〒○○○−○○○○ 東京都○○区□□○丁目○番○号
            乙島法律事務所(送達場所

 被告訴訟代理人弁護士   乙   島   三   郎 印
             電 話 03−○○○○−○○○○
             FAX 03−○○○○−○○○○

(引用終わり)

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