ローの過剰な定員を生んだ制度的要因

参院法務委員会平成25年03月21日より抜粋(下線及び※注は当サイトによる)

○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 ・・・法科大学院、ロースクールを設立する際、司法制度改革審議会の意見等を踏まえてロースクールというものを新たに設けたわけでありますが、そのときの精神は、初め二千人ぐらいから徐々に、十年ぐらい掛けて三千人に法曹人口を増やしていくということと、もう一つは、ロースクールで学んだ人の七割、八割ぐらいが司法試験に合格して法曹になっていくと、このような制度設計であったわけでございます。
 そうしたところで、そうした理念で出発したんですが、出発したところ、文科省の方で、法科大学院を設置したところ、どうも数的にそうした理念に合わないような大変多い人数の法科大学院が認可され、設置されました。
 ここのところの問題意識でお尋ねするんですが、そもそも最初に法科大学院を認可するときに、そうした理念、つまり、二千人ぐらいから始まって行く行く三千人ぐらいの法曹人口で、それはロースクールで学んだ人の七割、八割が合格することによって達成される数字だというこの理念はどのように反映されておったんでしょうか

○大臣政務官(義家弘介君) 法律の専門家でもある小川先生のこの問題意識、これは野党時代も含めて我々も問題意識を持って議論してきたところでございますが、御指摘のとおり、平成十三年の司法制度改革審議会の意見書において、関係者の自発的創意を基本としつつ、基準を満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとすべきである、二点目として、各法科大学院は、互いに競い合うことによりその教育内容を向上させていくことが望まれる旨の提言がなされましたが、これらを受けて、専門職大学院設置基準等において設置に必要なまずは最低限の基準を定め、それを満たしたものについては設置を認めるという方向で進めてきたものであります。
 平成十六年度の開設が、申請七十二校のうち、認可六十八校、不認可四校です。平成十七年度の開設が、申請六校、認可六校、現在七十四校が認可されておりますが、競争的な環境の中で本来は切磋琢磨して教育の質の向上、維持を図ることが重要でありますが、一部の法科大学院においては教育の質に課題を抱えていると認識しております。

○小川敏夫君 今現在教育の質に課題を抱えているロースクールがあるというふうに思うんですが、それは今現在のことで、またこれから順にお尋ねしますが、私がお尋ねしているのは、このロースクール制度が始まるとき、今副大臣が言われました平成十六年の認可ですか、このときに、では、定員で何名の定員になるだけのロースクールを認可したんでしょうか

○大臣政務官(義家弘介君) 平成十六年度の定員五千五百九十名で、実入学者が五千七百六十七名という形になっております。

○小川敏夫君 大臣政務官を副大臣と申し上げまして失礼しました。そのくらい立派な方だと思いましたので、つい間違えてしまいまして申し訳ございません。
 五千人台後半ですか。そうすると、審議会の理念に従えば、そのうち七、八割が合格するというと四千人ぐらいになっちゃうんですかね。しかし、当初は法曹人口は二千人ぐらいという設定ですから、もう出発時点からそもそもロースクールで学んだ人の七、八割が法曹になれるという理念が壊れているんですよね。ここのところはどうなんでしょう。どうしてそんな状況になってしまったんでしょうか。

○大臣政務官(義家弘介君) 御指摘のこと、現実的にはそのようになっていることは事実だと思います。
 例えば入試における競争性の確保、これも今現在できているかといえば、二十四年度に関して言えば定員四千四百八十四名のうち三千百五十名、定員割れが起こっているわけですね。当初の理念に合致した現行の教育内容になっていないという問題意識を持っております。

○小川敏夫君 やっぱり法科大学院ができるとき、ロースクールでしっかり学べば七、八割が受かる、法曹になれると。そうした理念ですと、じゃ自分はロースクールでしっかり頑張ろうといって、職に就いている方がその職をなげうってロースクールに入学した人も多いわけですが、しかし、現実にロースクールで学んだ人の七割、八割が法曹になれるという制度設計であるにもかかわらず、しかし、もう数字的に成り立たないわけですよね、ロースクールの定員が多い、多過ぎる、人数も多いわけですから。現実には合格率が二割とかそこら辺で低迷していると。
 そうすると、ロースクールでしっかり学べば法曹になれると思って今持っている職をなげうって取り組んできたのに、現実にはそうではなくて、法曹になれない。じゃ職をなげうってまできて、なげうった職に戻れないし、ロースクールで学んだ、しかし、現実にはなかなか法曹になれないというような方で大分話が違うなという状況になってしまった人も多いと思うんですが、私はやはりロースクール問題、こうして今は質が問われていますけれども、これやはり初めに出発点で余りにも安易にロースクールというものを認め過ぎた、定員も多くし過ぎた、ここに今のロースクール問題の一番の根本原因があるんではないかと、こういうふうに思っているんですが、ここは文科省としてはどういう問題認識を持っていますでしょうか。

○大臣政務官(義家弘介君) 先ほどの答弁とちょっと重なる、重複するところがありますが、まずは切磋琢磨の競争、これが必要であろうというスタートの議論、そしてスタートからの取組であったと思います。
 他方で、結果として現在のような状況になっていることはこれ非常に問題意識を持っておりますので、課題を抱えている法科大学院を中心とした入学定員の適正化、そして教育体制の見直し、これを図っていかなければならないというふうに思っています。
 ちなみに、学生募集停止を公表した法科大学院、予定も含まれますけれども、現在六校でありますが、引き続き教育内容の充実、そして入学定員の適正化を進めてまいりたいと思っております。

○小川敏夫君 言わんとするところは、その司法制度改革審議会の制度の趣旨はよく分かったけれども、しかし、初めにロースクールはどんとつくって、そして切磋琢磨して淘汰されていけばいいんだと、こんなような趣旨というふうに私は受け止めたんですが、それじゃ切磋琢磨されるまでにロースクールに入った人たちは、学んだ人たちが捨て石になるだけじゃないですか。やはりきちんと、政府の方針が出したしっかり学べば七割、八割がきちんと法曹になれるという、そういう制度設計にそぐわないようなことをやって、切磋琢磨していずれなればいいんだというのは、やはり初めに学んだ人たちに対する配慮が全く欠落しているんじゃないかというふうに思っておりますが。
 一つ具体的にお尋ねしますけれども、このロースクールの学生の数と教員の数、この配置基準は具体的にどうなっているでしょうか

○大臣政務官(義家弘介君) お答えいたします。
 法科大学院の教職員数については、これは法令によりまして、まず、通常の修士課程で必要とされる研究指導教員の一・五倍の教員の配置が義務付けられております
 二点目として、専任教員一人当たりの学生の収容定員の算出において、通常の修士課程は二十人までとされているのに対して十五人までとされており、ほかの修士課程よりもしっかりとした体制をしくことが定められているところでございます。

○小川敏夫君 私の質問の意図は、ある一定の基準までは学生数に対して教員の配置基準が厳しいと、しかし、それを超えると緩くなると。このようなことが結局、生徒をたくさん集めれば集めるほど経営的に楽になるということによって、過剰な定員のロースクールを生んだんじゃないかという問題点から聞いておるわけです。
 それで、具体的に今、その学生数に対する教員の配置人数ですか、これを他の大学院との比較で聞いたのではなくて、学生数何人までは教員が何人につき一人と、それを超えた場合には学生数何人につき教員が何人と、こう具体的にお話しいただきたいんですが。

○大臣政務官(義家弘介君) まず、収容定員が百八十名のときに必要な専任教員数が十二名、以下、収容定員十五名当たり専任教員を一名追加するという形で百八十一名から百九十五名は十三名、百九十六名から二百十名が十四名という形で法令では定められておりますが、現実的には各法科大学院の自主判断で、ほとんどの法科大学院ではこの設置基準を超える専任教員を配置しているという実態も御理解願いたいと思います。

○小川敏夫君 どうも何かあらかじめ聞いたのとちょっと、よく分かりにくいんだけど、その百八十人までという話がありましたね。これは一学年六十人で三学年で百八十人と。ですから、一学年については六十人と、こういうことですか。そして、その六十人については十二人の教員が必要と、こういう意味なんでしょうか

※当サイト注

3学年だから、というのは、正確でない。
一律に、収容定員=入学定員の3倍と決まっているからだ。
既修は、2年であるが、それは関係がない。

平成15年文部科学省告示第53号4条)
 法科大学院においては、法学既修者を入学させるかどうかにかかわらず、その収容定員は当該法科大学院の入学定員の三倍の数とする。

今回の質疑では、「1学年」が概ね上記の入学定員を指す語として用いられている。
なお、教員配置に関する詳細な計算方法は、「法科大学院定員削減の意味(5)」を参照。

○大臣政務官(義家弘介君) そのとおりでございます

○小川敏夫君 そうすると、要するに学生数五人について教員一人ですよね、今。一学年六十人について十二人の専任教員だから、十二掛ける五は六十だから。それで、学生数一学年六十人を超えた場合には、これが生徒数何人について教員が何人になるんですか

○大臣政務官(義家弘介君) 先ほども御説明しましたが、重複しますが、収容定員十五名当たり専任教員一名が追加されるという形になっております。

○小川敏夫君 そうでしょう。だから、六十名を超えていくと、学生数を集めれば集めるほど経営が楽になるんですよ。つまり、六十名までは生徒数五人に一人の教員がいなくちゃいけないと、しかし、それ以上たくさん集めれば、生徒数に対して、言わば五人に一人が十五人に一人になっちゃうわけですから、教員が少なくて済むと。実際に、ロースクール出発のころは、大手有名校は一学年三百人も学生集めました。これはやはり、そういうふうにたくさん集めれば、大規模化すればするほど経営が楽になるという、そういう教員の配置基準を定めたことも私は大きな原因じゃないかと。
 本来、このロースクールは、少人数についてしっかりとした中身のある教育を行うということが制度の本質だったんだけれども、しかし現実には、たくさん生徒数を集めれば集めるほど経営が楽になる。しかし、たくさん生徒数を集めれば集めるほど、生徒数の数に応じての教員の数が、割合が減ってくると、つまり教育の質が当然薄くなると、こういうふうに思うわけですが。つまり、そういうふうにたくさん集めた方が有利だというような、そういう教員の配置基準を定めておくことが結局は過剰な定員を生んだ、ロースクールのこの定員を生んだという一つの私は大きな理由じゃないかと思うんですが、そこのところはいかがですか

※当サイト注

これも正確でない。
必要な教員の数は、単純化すると、

入学定員60名以下のロー → 12名
入学定員60名超のロー → (入学定員÷5)名

となる。
入学定員60名を超えるからといって、「5人に一人が15人に一人になる」ことはない。

小川議員が誤解したのは、収容定員の場合と混同したからである。

前記のとおり収容定員は、入学定員の3倍である。
従って、上記を収容定員で表すと、

収容定員180名以下のロー → 12名
収容定員180名超のロー → (収容定員÷15)名

となる。
収容定員で計算すると、180を超える場合、15名に一人必要になる。
しかし、これは単に換算しただけで、同じ意味である。
このことを、官僚からの説明を受けた際に、混同したのだろう。

しかし、大規模校が有利な制度になっているという指摘は、間違っていない。
なぜなら、小規模校は、入学定員60(収容定員180名)未満であっても、必ず12名の教員を確保する必要があるからだ。
たとえ、入学定員が12名(収容定員36名)であっても、教員は12名確保しなければならない。
この場合、入学定員ベースだとマンツーマン。
収容定員ベースでも、学生3名に1人の教員という配置を強制される。
これでは、学生の収める学費との関係で、均衡が取れないだろう。
しかも、平成26年から、いわゆるダブルカウントが原則許されなくなる。
このことから、今後さらに小規模校が統廃合に追い込まれることが予想される。
(詳細は、「法科大学院定員削減の意味(6)」参照)

○大臣政務官(義家弘介君) これは、トータルとしてしっかりと検証していかなければならない問題であろうと思っております。まず、例えば、法令上は、この法科大学院の教員、研究者の教員が八、実務者教員が二というふうに決まっている、八対二の比率なわけですが、まあ現実的には研究者七対三、実務者の割合を増やしたり、あるいは、先ほども言いましたが、設置基準を超える専任教員を配置しているという実態も存在しております。
 しかし、一方で、結果の問題も当然、厳然と受け止めねばならないと思っています。政府に設置された法曹養成制度検討会議では、この法科大学院を中核とする法曹養成制度全体の在り方が現在検討されておりまして、文部科学省としても、検討会議の議論も踏まえて、この法科大学院教育の質の向上、これをしっかりと図ってまいりたいと思いますので、引き続き御指導をよろしくお願いいたします。

○小川敏夫君 まあ御指導は別にして意見は言わせていただきますけれども、どうです、やっぱりロースクールの教育の中身をしっかり充実させるためには、やはり教員一人当たりの生徒数は少ない方が中身がいい教育ができるに決まっているわけですから、言わば小規模、中規模校がしっかりとした人数で頑張っている、大規模校が言わば少ない割合の教員で済んでしまうというこういう構造は直して、やはり同じだけの教員が必要だというふうに一律にしちゃった方がいいんじゃないですか。
 ロースクール制度をつくるときには、一つはやっぱり一極集中、あるいは少数の学校に偏らないで様々な幅広い人材を法曹界に輩出するという意味で、やはり少人数教育というものを充実したロースクールというものを予定して、それが各層あるいは各地域に満遍なくというのが理念だったと思うわけです。
 しかし、現実に、文科省の方は、大規模にした方が経営が楽だと、しかし大規模にしてたくさん生徒数を集められる学校は限られていると、都会の学校に限られていると。こういうことから、都会に大規模校が集中して、大規模校というのはそれなりに知名度が高い学校ですから、そこに言わば人材が集中してしまうと。この結果、中小のロースクールが厳しい、経営も厳しいと。それから、人材が言わばそうした大規模校に吸い上げられてしまうのでなかなか学生が集まらないと、こういう悪循環に陥っていると思うんですね。
 私は、ですからそこで、大規模校だから経営が楽になるんじゃなくて、やはり人数が多い学校でもきちんと学生数に見合った教員を配置するというふうに、私はすぐにも文科省、手を着けるべきではないか、それが今のロースクール問題の解決の大きな一歩だと思うんですが、そこはいかがでしょう。

○大臣政務官(義家弘介君) 一つの重要な指摘として、しっかりと受け止めて検討してまいりたいと思っております。
 いずれにしましても、課題を抱えている法科大学院については、入学定員の適正化と、そして指導者がどのような教育内容を担保できているのかということをしっかりと受け止めた上で判断してまいりたいと思います。

○小川敏夫君 しっかりと受け止めていただくそうでありますので、しっかり受け止めていただいて、政務官、副大臣、大臣に期待して、そういう方向に持っていくよう期待しまして、政務官に対する質問はこれで終わります。

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