平成25年司法試験・予備試験
短答式試験の感想(3)

刑法について

刑法は、概ね例年どおりである。
もっとも、細かく見ると、揺れ動いている部分もある。

知識問題がメインであることは、毎年概ね変わらない。
ただ、論理問題の比率が、年によって変動している。
平成22年は、ほとんど知識問題だけだった。
一方で、ここ数年は、論理問題も出題されている。
そして、知識問題は難しく、論理問題は易しい。

出題形式は、公法と民事の形式が混ざって出題される感じだ。
ただ、1、2を選ばせる問題は、5個1組であることが多い。
このような問題は、2の5乗=32通りの組み合わせがある。
従って、でたらめに選んで当たる確率は、3%程度に過ぎない。
また、どの肢も8割の確率で正誤を判別できたとする。
それでも、0.8の5乗≒32%の正答率になってしまう。
仮に、8割判別できる肢が2つあったとする。
この場合、残りは確実に正誤を判別できても、0.8の2乗=64%の正答率である。
6割程度しか判別できない肢が2つあったらどうか。
その場合、他の肢が簡単でも、正答率は36%まで下がる。
7割が2つでも、49%だ。
このように、この形式で出題されると、正答率は極端に低くなりやすい。
もっとも、常に正答率が低くなるとは限らない。
全肢が簡単なら、正答率はそれなりに高くなる。
従って、この形式の設問は、一通り解いてみる。
その際、難しい肢が2つ以上あれば、正答率は相当低くなるはずだ。
その場合は、軽く解いて、次の問題にすばやく移った方がよい。
逆に、どの肢も易しい、と感じたら、正答率は高くなりやすい。
その場合、ケアレスミスに注意すべきだ。
1肢でもケアレスミスで正誤を誤ると、部分点になってしまう。
今年では、司法試験第4問、第9問、第14問、第16問(予備第6問)は、正答率が低くなるだろう。
従って、解けなくても、気にしない方がよい。
こういう問題はすばやく捨てて、易しい論理問題を確実に解くべきである。

今年は、新判例問題が少なかった。
出題された新判例問題も、必ずしも知識を必要としない問題になっている。
ただ、来年以降もそうなるとは限らない。
新判例対策は、これからもやっておくべきだろう。
それから、今年は処断刑を当てはめさせる問題が出なかった。
これも、来年以降そうなるとは限らない。
例年、参照条文がなく、覚えていないと解けない問題も出題されていた。
これも、きちんと対策はしておきたい。

司法試験第3問アは、東京高判平9・8・4である。

(司法試験第3問ア)

 甲は,医師免許を有していなかったが,女性乙に対し,医学的に必要とされる措置をとることなく豊胸手術を行った。女性乙が豊胸手術に伴う身体傷害につきあらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲に傷害罪(刑法第204条)は成立しない。

 

東京高判平9・8・4より引用、下線は筆者)

 被害者が身体侵害を承諾した場合に、傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段・方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を総合して判断すべきところ(最決昭五五年一一月一三日刑集三四巻六号三九六頁参照)、関係証拠によれば、(1)Dは、本件豊胸手術を受けるに当たり、被告人がO共和国における医師免許を有していないのに、これを有しているものと受取って承諾したものであること、(2)一般的に、豊胸手術を行うに当たっては、「1」麻酔前に、血液・尿検査、生化学的検査、胸部レントゲン撮影、心電図等の全身的検査をし、問診によって、既往疾患・特異体質の有無の確認をすること、「2」手術中の循環動態や呼吸状態の変化に対応するために、予め、静脈ラインを確保し、人工呼吸器等を備えること、「3」手術は減菌管理下の医療設備のある場所で行うこと、「4」手術は、医師または看護婦の監視下で循環動態、呼吸状態をモニターでチェックしながら行うこと、「5」手術後は、鎮痛剤と雑菌による感染防止のための抗生物質を投与すること、などの措置をとることが必要とされているところ被告人は、右「1」、「2」、「4」及び「5」の各措置を全くとっておらず、また、「3」の措置についても、減菌管理の全くないアパートの一室で手術等を行ったものであること、(3)被告人は、Dの鼻部と左右乳房周囲に麻酔薬を注射し、メス等で鼻部及び右乳房下部を皮切し、右各部位にシリコンを注入するという医行為を行ったものであること、などの事実が認められ、右各事実に徴すると、被告人がDに対して行った医行為は、身体に対する重大な損傷、さらには生命に対する危難を招来しかねない極めて無謀かつ危険な行為であって、社会通念上許容される範囲・程度を超えて、社会的相当性を欠くものであり、たとえDの承諾があるとしても、もとより違法性を阻却しないことは明らかである。

(引用終わり)

ただ、本問はその他の肢が易しい。
上記裁判例を知らなくても、正解できる問題である。

司法試験第5問、予備試験第11問の4は、最決平21・12・8である。

(司法試験第5問、予備試験第11問の4)

 精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合には,裁判所は,被告人の責任能力を認めることはできない。

これは、司法試験平成21年最新判例肢別問題集で出題している。

司法試験平成21年最新判例肢別問題集より引用)

【問題】

7:専門家たる精神医学者の精神鑑定等が証拠となっている場合においても、鑑定の前提条件に問題があるなど、合理的な事情が認められれば、裁判所は、その意見を採用せずに、責任能力の有無・程度について、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判定することができ、特定の精神鑑定の意見の一部を採用した場合においても、責任能力の有無・程度について、当該意見の他の部分に事実上拘束されることなく、上記事情等を総合して判定することができる。

【解答】

7:正しい(最判平21・12・8)。
 「責任能力の有無・程度の判断は、法律判断であって、専ら裁判所にゆだねられるべき問題であり、その前提となる生物学的、心理学的要素についても、上記法律判断との関係で究極的には裁判所の評価にゆだねられるべき問題である。したがって、専門家たる精神医学者の精神鑑定等が証拠となっている場合においても、鑑定の前提条件に問題があるなど、合理的な事情が認められれば、裁判所は、その意見を採用せずに、責任能力の有無・程度について、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判定することができる(最高裁昭和58年(あ)第753号同年9月13日第三小法廷決定・裁判集刑事232号95頁、最高裁昭和58年(あ)第1761号同59年7月3日第三小法廷決定・刑集38巻8号2783頁、最高裁平成18年(あ)第876号同20年4月25日第二小法廷判決・刑集62巻5号1559頁参照)。そうすると、裁判所は、特定の精神鑑定の意見の一部を採用した場合においても、責任能力の有無・程度について、当該意見の他の部分に事実上拘束されることなく、上記事情等を総合して判定することができるというべきである」と判示した。

本問は、1の肢が、5の肢のヒントになっている。

((司法試験第5問、予備試験第11問、下線は筆者)

 責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。

1.心神喪失とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力が欠けている場合をいう。

5.精神の障害がなければ,心神喪失は認められない。

5の肢は、単独でみると、何か例外がありそうだ、と不安になる。
しかし、1の肢をみると、正しそうだ、と気付くことができる。
1の肢は、「及び」ではなく、「又は」にすれば正しい肢である。
これは、基本知識であり、すぐにわかるだろう。
そうすると、普段意識しないが、「精神の障害により」の文言が、限定句であることがわかる。
これに気付くと、精神の障害の場合以外はなさそうだ、と考えることができる。
5が正しく、正解となる。

司法試験第10問、予備試験第2問は、最決平24・2・13である。
同判例の知識は、司法試験平成24年最新判例肢別問題集で出題した。
ただ、本問は、全く知識がなくても、解けるようになっている。

(司法試験第10問、予備試験第2問、下線は筆者)

 次の【事案及び判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,判旨の理解として誤っているものはどれか。

【事案及び判旨】

 精神科の医師である甲が,犯行時16歳の少年Aが犯した殺人罪に関する保護事件が係属している家庭裁判所からAの精神鑑定を命ぜられた際,鑑定資料として家庭裁判所から交付されたAの捜査機関に対する供述調書の謄本を新聞記者に閲覧させたため,Aが甲を秘密漏示罪で告訴した事案につき,裁判所は,甲の行為は秘密漏示罪に該当し,訴訟条件にも欠けるところはない旨判示し,甲に有罪判決を言い渡した。

【記 述】

1.この判旨は,甲が医師の身分を有していることを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものである。

2.この判旨は,裁判手続等において後に公開される可能性のある事項であっても,秘密漏示罪における「人の秘密」として保護の対象になり得ると考えている。

3.この判旨は,甲が医師の業務としてAの精神鑑定を行ったことを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものである。

4.この判旨は,秘密漏示罪における「人の秘密」について,Aの秘密ではなく,甲に鑑定を命じた家庭裁判所の秘密であると考えている。

5.この判旨からは,秘密漏示罪の「人の秘密」の主体が,自然人のみならず,法人・団体を含むかどうかは必ずしも明らかではない。

事案で、「Aが告訴した」と書いてある。
だとすれば、Aが被害者だろう。

(刑事訴訟法230条)

 犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。

そうすると、漏示された秘密は、Aの秘密でなくてはおかしい。
この時点で、4が誤りであり、正解となるとわかる。

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