平成25年司法試験・予備試験
短答式試験の感想(4)

刑訴法について

刑訴も、大きな傾向変化はない。
刑訴は、短答では最も多彩な出題形式が採られる。
論理問題だけでなく、知識問題も、少し変わった出題形式になることがある。
また、知識問題は、マイナー分野から出題されるものも多い。
確実に取れるものと、そうでないものを素早く見極める必要がある。
他方、論理問題は比較的易しい傾向にある。
これは、刑法と同様である。
細かい知識問題は保留して、論理問題は時間を使って確実に解きたい。

司法試験第25問は、新試験では珍しい個数問題である。

(司法試験第25問)

 令状主義に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの個数を,後記1から6までの中から選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。

ア.捜査機関が,犯罪の証拠物として被疑者の体内に存在する尿を強制的に採取するには,捜索差押令状を必要とするが,人権の侵害にわたるおそれがある点では,検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので,「裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を附することができる」旨の規定が前記捜索差押令状に準用される。

イ.捜査機関は,身体を拘束されていない被疑者を採尿場所に任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合,採尿することを許可する捜索差押令状の効力として,採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ,その際,必要最小限度の有形力を行使することができる。

ウ.身体検査令状に関する「裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を附することができる」旨の規定は,その規定する条件の付加が強制処分の範囲,程度を減縮させる方向に作用するので,身体検査令状以外の検証許可状にもその準用を肯定することができる。

エ.捜査機関は,強盗殺人事件に関し,被疑者が犯人である疑いを持つ合理的理由が存在する場合,検証許可状がなくても,犯人の特定のための重要な判断に必要な証拠資料を入手する手段として,これに必要な限度において,公道上を歩いている被疑者の容貌等を撮影することができる。

オ.捜査機関が,捜査目的で宅配業者が保管している宅配便荷物に荷送人や荷受人の承諾を得ることなく,エックス線を照射して内容物の射影を観察するには,検証許可状を必要とする。

1.0個   2.1個   3.2個   4.3個   5.4個   6.5個

個数問題には、旧司法試験以来の傾向がある。
それは、正解は「全部正しい」か「全部誤り」のことが多いということだ。
本問も、全部の肢が正しく、正解は6である。

個数問題では、正誤を2つ誤ると、正解になってしまうことがある。
例えば、○○×○○で、正しい肢4個が正解だとしよう。
この場合、誤って○×○○○と考えても、正しい肢4個となり、正解となってしまう。
しかし、全部正しいか、全部誤りの場合は、そのようなことがない。
そのため、出題側の心理として、そうなりやすいのだろう。
ただし、常にそうだというわけではない。
迷ったときの一応の目安という程度に、考えておけばよいだろう。
なお、エは、最決平20・4・15、オは、最決平21・9・28である。
司法試験平成20年最新判例肢別問題集司法試験平成21年最新判例肢別問題集に収録している。

司法試験第33問、予備試験第23問は、伝聞・非伝聞の区別を問う問題である。

(司法試験第33問、予備試験第23問)

 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

【事 例】

 甲及び乙は,共謀の上,平成24年12月5日午前1時頃,H市内のコンビニエンスストア「T」において,同店店員Vから現金10万円を強取したとしてH地方裁判所に起訴され,併合審理されることとなった。この審理において,V,甲の妻A及び知人Bに対する証人尋問が行われたところ,Vは,「2人組の犯人が店から出て行く際,犯人の1人がもう1人の犯人に対し,『@甲,早く逃げるぞ。』と言っていた。」旨を証言した。次に,Aは,「平成24年12月8日午後3時頃,自宅において,甲から『A3日前の午前1時頃,乙と一緒に,H市内のコンビニエンスストア「T」で,果物ナイフを店員に突き付けて現金10万円を奪ってきた。見付からないと思っていたが,乙が捕まった。ひょっとしたら,乙が自分のことを話すかもしれない。そうなると,警察が来るだろう。頼む。B3日前の午前1時頃には,俺が自宅で寝ていたということにして欲しい。』と言われた。」旨を証言した。次に,Bは,「平成24年12月4日,甲から,『C明日の午前1時頃,H市内のコンビニエンスストアで強盗をしないか。』と言われたが,断った。」旨を証言した。また,乙に対する被告人質問において,乙は,「甲と一緒に強盗をした際,甲が店員に『D金を出せ。出さないと殺すぞ。』と言っていた。」旨を供述した。

【記 述】

ア.下線部@の発言は,要証事実を「犯行後,犯人の1人が逃走を呼び掛けた相手が甲と呼ばれていたこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

イ.下線部Aの発言は,要証事実を「甲が乙と一緒に強盗を実行したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

ウ.下線部Bの発言は,要証事実を「甲がAに甲のアリバイ作りに協力するよう依頼したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

エ.下線部Cの発言は,要証事実を「甲がBに強盗を実行することを持ち掛けたこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

オ.下線部Dの発言は,要証事実を「甲がVを脅迫したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

伝聞法則は論文でも頻出であり、本問は確実に取りたい。
どの肢も、伝聞法則を理解していれば間違いようのない肢である。
本問を間違えた人は、伝聞法則を理解できていない。
きちんと復習しておかないと、論文でもまた間違えることになる。

まず、@は、甲が体験した事実を再現する内容ではない。
従って、伝聞証拠となりようがない。
アは、要証事実云々を読むまでもなく、正しい。

Aは、甲が自ら体験した過去の事実(乙との強盗)を再現する内容である。
その内容どおりの事実が存在したことを立証する場合、伝聞証拠となる。
従って、イは誤りである。

Bは、甲が体験した事実を再現する内容ではない。
従って、伝聞証拠となりようがない。
ウは、要証事実云々を読むまでもなく、正しい。

Cも、甲が体験した事実の再現ではない。
従って、伝聞証拠となりようがない。
エも、要証事実云々を読むまでもなく、正しい。

Dも、甲による体験事実の再現でないから、伝聞証拠になりようがない。
従って、オも、要証事実云々を読むまでもなく、正しい。

わかっていれば、簡単すぎる問題である。
しかし本問は、必ずしも正答率は高くないだろう。
それだけ、伝聞法則を理解している人が少ないことを意味している。
(「伝聞法則の趣旨は知覚、記憶、表現・・・」と飽きるほど答案に書いているのに、体験した事実の再現でない発言を伝聞証拠と考えてしまうこと自体、本来はおかしな話である。)
論文で繰り返し出題されているのも、あまりに出来が悪いためである。
逆に言えば、一度理解してしまえば、それだけで差を付けることができる。

司法試験第35問は、最判平24・9・7である。
これは、司法試験平成24年最新判例肢別問題集で出題した。
ただ、知識がなくても、容易に解けるようになっている。

(司法試験第35問)

 次の【記述】は,前科証拠の証拠能力に関する最高裁判所の判例を要約したものである。【記述】中の@からBまでの( )内から適切な語句を選んだ場合,その組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

【記 述】

 前科も一つの事実であり,前科証拠は,一般的には犯罪事実について,様々な面で証拠としての価値(@(a.法律的関連性 b.自然的関連性))を有している。反面,前科,特に同種前科については,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生ずるなど,その取調べに付随してA(a.争点が拡散する b.不当な不意打ちになる)おそれもある。したがって,前科証拠は,単に証拠としての価値があるかどうか,言い換えれば,(@)があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく,前科証拠によって証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許されると解するべきである。本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合についていうならば,前科に係る犯罪事実がB(a.顕著な特徴 b.相当の重大性)を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用できるものというべきである。

1.@a Aa Ba
2.@a Ab Ba
3.@a Ab Bb
4.@b Aa Ba
5.@b Aa Bb

文脈から、自然的関連性はあるが、法律的関連性の観点からは問題だ。
そういう趣旨とわかる。
従って、@はb.自然的関連性が入る。
この時点で、正解は4か5に絞られる。
そうすると、Aは考える必要がない。
そこでBをみると、これはa.顕著な特徴しか入らないだろう。
正解は、4ということになる。
この種の問題は、確実に取っていきたい。

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