平成25年司法試験予備試験論文式民法参考答案

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第1.設問1

1.小問(1)

(1)契約の有効性

ア.下線部の契約(以下「本件契約」という。)の目的は、将来発生すべきものを含む複数の債権を一括して債権譲渡によって担保とするものであるから、いわゆる集合債権譲渡担保である。そこで、その有効性を検討する。

イ.契約自由の原則から、複数の将来債権を担保のために一括譲渡することも可能である。もっとも、契約の一般的な有効要件として目的物の特定が必要である。集合債権譲渡担保においては、譲渡人が有する他の債権と識別できる程度に目的債権が特定されていることを要する。
 本件契約では、パネルの部品の製造及び販売を発生原因とする代金債権であって、将来発生すべき債権については発生期間が今後1年に限定されているから、Aが有する他の債権と識別できる程度に特定されている。従って、特定性の要件を充たす。

ウ.また、集合債権の包括譲渡は、債権者平等を害し、又は譲渡人の営業活動を不当に害することがあり得ることから、公序良俗違反(90条)とならないか検討を要するところ、本件契約締結時において他の債権者を害する事情はうかがわれず、融資の利息及び返済条件は過酷とはいえず、返済が滞るまではAの取立権が認められていることから、Aの営業活動を不当に害するともいえない。従って、公序良俗違反はない。

エ.よって、本件契約は有効である。

(2)甲債権の取得時期

ア.本件契約には、債権移転時期を留保する特約はないから、既発生債権については契約時に直ちに移転する。他方、いまだ発生していない債権が移転することは観念し難いことから、未発生債権については債権発生時に移転すると解すべきである。

イ.従って、Bが甲債権を取得するのは、同債権の発生原因であるAC間売買の成立した平成25年3月1日である。

2.小問(2)

(1)Cとしては、甲債権は差押え前にBに譲渡されたから、Fの差押えは無効であるとの論拠に基づき、支払を拒絶することが考えられる。そこで、債権譲渡と差押えの優劣を検討する。
 467条が債務者の認識に公示としての機能を認めて通知・承諾を対抗要件とした趣旨からすれば、債権譲渡と差押えの優劣についても、債権譲渡通知と差押命令の送達の到達の先後によって決すべきである。
 本問では、債権譲渡通知は平成25年5月7日到達であるのに対し、差押命令の送達はそれより前の同月2日にされたから、Fの差押えが優先する。
 よって、Cは、甲債権がBに譲渡されたことを理由に支払を拒絶することはできない。

(2)Cとしては、AD間の免責的債務引受によって債務を免れたから、Fの差押えは無効であるとの論拠に基づき、支払を拒絶することが考えられる。そこで、免責的債務引受を差押債権者に対抗できるかを検討する。
 そもそも、免責的債務引受を認める直接の規定はなく、私的自治の下で認められるに過ぎない。そうである以上、免責的債務引受は、当事者間における対内的効力を有するに過ぎず、差押債権者に対抗することはできないと解すべきである。
 従って、AD間の免責的債務引受は、Fに対抗できない。
 よって、Cは、AD間の免責的債務引受によって債務を免れたことを理由に支払を拒絶することはできない。

(3)以上から、Cは、甲債権の支払を拒絶することはできない。

第2.設問2

1.譲渡禁止特約の意義

 債権的効力を有する譲渡禁止特約が可能であるのは契約自由の原則から自明であるにもかかわらず、466条2項が特に規定されたのは、譲渡禁止特約に物権的効力を認める趣旨である。従って、同ただし書の例外を除き、同特約による譲渡の無効を譲受人にも対抗できる。

2.乙債権の取得時期

 前記第1の1(2)アのとおり、Bが乙債権を取得するのは、乙債権の発生原因であるAE間売買成立時である平成25年3月5日である。

3.債権譲渡禁止特約のBへの対抗の可否

(1)Bが、乙債権の譲受けをEに対抗できるのは、譲渡通知のされた平成25年5月7日からである(467条1項)。他方、AE間の譲渡禁止特約は、それ以前の同年3月5日にされたから、乙債権の譲渡は、同特約に違反するものとなる。

(2)では、Bは「善意の第三者」(466条2項ただし書)に当たるか。
 同ただし書の趣旨は、特約を知らずに債権を取得した者を保護する点にあるから、「善意の第三者」とは、債権取得時に善意である者をいう。
 本問では、Bが乙債権を取得する平成25年3月5日と同日に債権譲渡禁止特約がされた旨の通知がBにされたから、Bは債権取得時に悪意である。従って、「善意の第三者」には当たらない。

(3)よって、Eは、譲渡禁止特約をもってBに対抗することができる。

以上

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