平成25年司法試験の結果について(4)

論文の合格レベル

司法試験は、短答と論文の総合で合否が決まる。
総合の合格点だけをみても、論文単独での合格レベルはわからない。
論文の得点別人員から、合格レベルを割り出す必要がある。

今年の合格者数は、2049人。
論文単独で2049位になるのは、何点か。
得点別人員をみると、373点である。

論文は800点満点だから、373点は、得点率46.6%である。
この水準は、どのくらいのレベルなのか。
論文の成績は、優秀、良好、一応の水準、不良に分けられる。
優秀の得点率は、100%〜75%。
良好は、74%〜58%。
一応の水準は、57%〜42%。
不良は41%以下となっている。
司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について参照)

今年の論文合格レベル46.6%は、一応の水準の下の方だと分かる。
もう少し厳密に計算してみよう。
一応の水準の上限である57%を100とし、下限である42%を0とする。
そうすると、46.6%は、

(46.6−42)÷(57−42)≒30.6%

となる。
従って、一応の水準のうち、下3割は不合格。
残る7割は合格ということになる。
一応の水準に入れば、7割は合格する。
合格には、良好どころか、一応の水準内部でも上位になる必要がない。
多くの受験生が、このことを知らない。

以下は、上記と同様に算出した論文合格レベルの得点率の推移である。

合格レベル
の得点率

18

48.2

19

48.5

20

47.8

21

47.1

22

46.2

23

45.8

24

46.7

25

46.6

最近では、46%前後で落ち着いていることがわかる。
(他方、「ザル」と呼ばれた第1回の合格水準は、意外と高かった。)
新司法試験の過去の歴史の中で、得点率50%を取って不合格になったことはない。
「一応の水準の真ん中」、すなわち得点率50%は、安定合格ラインである。
当サイトでは、これを一貫して述べてきた。
これからも、当分これは変わらないだろう。

このことを知っているかどうかは、普段の学習、現場での答案戦略の双方に影響する。
普段の学習では、一応の水準レベルを確実に理解、記憶する。
試験現場では、一応の水準レベルを絶対に落とさない構成を採る。
優秀良好レベルの事柄は、思い切って無視した方がよい。

※一応の水準をきちんと守って書いた場合、結果的に優秀良好レベルの問題意識が当てはめ等の中で触れられていて、優秀、良好の成績となることもよくある。
しかし、これは結果論であって、狙うべきものではない。

論文で不合格になる人には、二つのタイプがある。
勉強不足過ぎる人と、勉強し過ぎた人だ。
前者は、一応の水準レベルすら学習できていない。
このタイプは、未修者に多い。
後者は、優秀良好レベルを答案に書こうとして、一応の水準を落としてしまっている。
このタイプは、2回目以降の受験生に多い。
(1回目の既修は上記のいずれにも当てはまりにくいために、一番受かりやすい。)
対応策も、両者で異なる。
前者は、ひたすら基本の反復である。
後者は、答案戦略を見直すことだ。

ところが、多くの不合格者は、優秀良好レベルを学習しようとしてしまう。
優秀良好レベルをきちんと書き切れる人は、ほとんどいない。
また、難解な部分は、受験後に強烈に印象に残る。
基本部分はそこそこわかったが、見たこともない論点が書けなかった。
だから、これからは徹底して今まで知らなかった論点を勉強しよう。
そうなりがちなのは、自然なことともいえる。

※特に、「あの論点は○○先生の連載(または論文)に載ってたやつだよ」と言われたりする。
そうすると、「法律雑誌の連載や考査委員の論文を漁って読まないと受からない」と思ってしまう。
これは、よくあるパターンである。

しかし実際には、「そこそこ」しか書けなかった基本が原因で、不合格になっている。
優秀良好レベルを十分に書けないのは、実は合格者も同じである。
だとすれば、合格・不合格を分けるのは何か。
その発想で考え直せば、やるべきことは一応の水準レベル。
これを正確に答案に表現する能力だと、気付くはずである。
司法試験の難しさは、その精度に対する要求水準が高い点にある。
基本事項は、「わかっている」では足りない。
「正確に答案に示すことができる」という水準が必要だ。
実力者と呼ばれる人でも、基本的な論述が曖昧な人は、意外と多い。
基本事項をわかったつもりになって、応用を勉強しようとしている。
どんなに勉強量を増やしても受からないのは、このためである。

今後公表される出題趣旨、採点実感等に関する意見を読む際にも、この点に留意すべきである。

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