平成25年司法試験の結果について(6)

予備はそんなに凄いのか

今年は、予備組が参入して2年目になる。
その予備組は、167人が受験して、120人合格。
受験者合格率は、71.8%となった。
このことは、マスコミでも大きく取り上げられた。

2013年9月11日 読売新聞より引用、下線は筆者)

司法試験合格者、予備試験組120人…倍以上に

 法務省の司法試験委員会は10日、今年の司法試験の合格者を発表した。

 合格者は前年比53人減の2049人。合格率は法科大学院修了生の25・77%に対し、大学院を修了しなくても受験資格が得られる予備試験を経たケースは71・86%と高く、予備試験組が初めて受験した前年の58人から倍以上の120人となった。優秀な人材が法科大学院から予備試験に流れている実態が鮮明になった

(引用終わり)

いかにも、予備がロー生をはるかに凌ぐ存在であるかのように読める。
本当に、そうなのか。
以下は、いわゆる上位ローと呼ばれる4校の受験者合格率である。

東大 55.1%
一橋 54.4%
京都 52.4%
慶応 56.7%

確かに、上位ローと比較しても、予備の71.8%は突出して高いようにみえる。
しかし、上記ローの合格率には、未修や2年目以降の修了生も含まれている。
そこで、平成24年度修了の既修だけでみると、以下のようになる。

東大 83.3%
一橋 70.9%
京都 67.2%
慶応 78.0%

東大は、8割以上の合格率を誇っている。
こうしてみると、予備の71.8%は、大したことがない。
ただ、予備には昨年不合格(または受控え)の者が含まれている。
ローの方も、平成23年度既修を加味して考えた方が、公平だろう。
そこで、平成24年度、平成23年度の既修の修了生で算出すると、以下のようになる。

東大 77.3%
一橋 64.5%
京都 63.7%
慶応 75.5%

これでも、東大と慶応は、予備に勝っている。
予備は、上位ローの既修レベル程度の実力しかない。
上位ローよりはるかに上の存在、というのは、過大評価である。

今年もはっきりと分かれた明暗

以下は、予備試験受験者の世代別の合格率等をまとめたものである。

年代

受験者数

合格者数

受験者
合格率

20代

76

72

94.7%

30代

56

38

67.8%

40代

26

10

38.4%

50代
以降

00.0%

昨年同様、20代が圧倒的である。
(昨年については「平成24年司法試験の結果について(3)」参照。)
20代は9割を超え、ほとんど全員合格と言ってよい状態だ。
これに対し、30代は、上位ローの既修とあまり変わらない。
40代は、全体の合格率26.7%より上ではあるが、明らかに見劣りする。
50代以降に至っては、全滅である。

20代の多くは、いわゆる飛び級組だろう。
ローの修了を待たずに、予備に受かる人々である。
この層は、職種別カテゴリーでみると、「大学生」「法科大学院生」に当たる。
そこで、その合格率をみると、以下のようになる。

職種

受験者数

合格者数

受験者
合格率

大学生

41

40

97.5%

法科大学院生

37

34

91.8%

やはり、9割を超えている。
これは、平成24年既修修了生のみの上位ローと比べても、はるかに高い。
従って、飛び級組に限って言えば、「ロー生よりはるかに優れた予備」のイメージは間違っていない。
(もっとも、上位ロー既修内部でも上位層を抜き出せば同様の結果となるから、上位ロー既修全体と予備の飛び級組のみを比較して、上位ロー既修より予備が優れているとするのは、公平とはいえない。)

注目すべきは、大学生の合格率の方が、ロー生より高いということだ。
すなわち、ローで学ぶ「プロセス」は、司法試験合格には全く不要。
あるいは、かえって有害な可能性が高いということである。
プロセスを重視して設計された新司法試験制度。
その最終関門は、ロー生が苦労して歩んだプロセスを嘲笑うような内容になっている。

予備の合格率上昇の謎

予備組の昨年の合格率は、68.2%だった。
今年は、71.8%。
3.6%も上昇している。
これは、予想外のことである。

予備の参入は、昨年が初めてだった。
すなわち、昨年は受験1回目の者しかいない。
今年は、昨年不合格の2回目の受験者が、いたはずである。
論文は、受験回数が増えると、受かりにくくなる。
これは、過去の数字からの顕著な傾向である。
だとすれば、今年の予備は、昨年より合格率が下がるはずである。

にもかかわらず、合格率が上昇した。
この原因としては、2つが考えられる。
一つは、今年の予備受験者の若手の比率が高かったことだ。
昨年は、20代の予備受験者は、全体の41.1%だった。
それが、今年は45.5%に増えている。
前記のとおり、20代は9割以上受かる。
このことが、今年の予備の合格率を押し上げた。

もう一つの原因は、予備論文の合格体験である。
受験回数が増えると合格率が下がるのは、負の選抜による。
論文に受かりにくい勉強をする人が、滞留してまた論文を受ける。
このサイクルのせいである。
1度も論文に受かっていないから、受かり方がわからない。
だから、何度受けても落ちる。
しかし、予備組は、一度予備の論文に受かっている。
論文に受かるには、どうしたらいいか知っている。
予備組が司法試験に落ちる原因として、「本試験は予備と違う」という誤解がある。
予備は基本だけで受かるが、司法試験はそうではないのではないか。
そう誤解して、崩れてしまうケースである。
しかし、そういう場合でも、予備と同じでよいことが分かれば、リカバリーできる。
この違いではないか。
すなわち、予備組は、「論文は回数が増えると受かりにくくなる」法則が当てはまりにくい。
このことは、30代で顕著だ。
昨年、30代の予備の合格率は、50.0%だった。
今年は、67.8%に上昇している。
30代は、知識過多に陥り易い。
昨年不合格だった30代が、今年はうまく修正してきたのだろう。
このように予備組に修正力があるのであれば、今後も合格率はそれほど下がらないはずだ。
来年以降の予備組の合格率に注目したい。

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