平成25年司法試験の結果について(8・完)

選択科目別合格率

以下は、選択科目別の短答・論文合格率等をまとめたものである。

科目

短答
受験者数

短答
合格者数

短答
合格率

倒産

1700

1288

75.7%

租税

562

389

69.2%

経済

745

502

67.3%

知財

929

626

67.3%

労働

2378

1671

70.2%

環境

455

269

59.1%

国公

121

75

61.9%

国私

705

439

62.2%

 

科目

論文採点
対象者数

論文
合格者数

論文
合格率

倒産

1288

516

40.0%

租税

389

152

39.0%

経済

502

194

38.6%

知財

626

241

38.4%

労働

1671

665

39.7%

環境

269

100

37.1%

国公

75

28

37.3%

国私

439

153

34.8%

倒産法選択者は、短答合格率が顕著に高い。
毎年の傾向である。
短答は、本来科目選択と関係ないはずである。
倒産法を選択したから合格し易くなる、ということはあり得ない。
合格し易い人が、倒産法を選択している。
すなわち、倒産法は、実力者が選択する科目だということになる。
また、倒産法は、論文でも合格率は一番高い。
これも、毎年の傾向だ。
しかし、その割には、素点平均点が低い傾向にある。
(「平成25年司法試験の結果について(7)」参照)
そのために、毎年多数の最低ライン未満者を出している。
不思議な科目である。

一方、毎年短答、論文合格率が低いのが、国際法である。
環境法も、年によって多少のブレはあるが、同様の傾向である。
なぜそうなるのかは、よくわからない。
一つの仮説としては、既修者、未修者にとってのなじみやすさが考えられる。
既修者は、国際法や環境法になじみが薄い。
むしろ、倒産法や労働法のように法学部でメジャーだった科目を選ぶ。
他方、法学部出身でない人は、「国際」や「環境」というフレーズに惹きつけられやすい。
倒産法は、堅くてなじみにくいイメージがあるだろう。
そのため、未修者は倒産法を敬遠し、国際法や環境法を選択しやすい。
そのことが、上記のような特徴を生じさせているのではないか。
ただ、選択科目別の既修・未修の人員が公表されていないので、これは確認できない。

多数の人が選択するメジャーな科目で、しかも倒産法のようなクセがないのが、労働法である。
マイナー科目は嫌だが、倒産法のようなリスクのある科目も嫌だ。
そういう人は、労働法を選択するのが無難である。

年齢構成

以下は、合格者の平均年齢の推移である。

年度

短答
合格者

短答
前年比

論文
合格者

論文
前年比

短答論文
の年齢差

18

29.92

---

28.87

---

1.05

19

30.16

+0.24

29.20

+0.33

0.96

20

30.36

+0.20

28.98

−0.22

1.38

21

30.4

+0.04

28.84

−0.14

1.56

22

30.8

+0.4

29.07

+0.23

1.73

23

30.7

−0.1

28.50

−0.57

2.20

24

30.9

+0.2

28.54

+0.04

2.36

25

31.0

+0.1

28.37

−0.17

2.63

一見すると、安定しているようにもみえる。
しかし、わずかではあるが、一定の方向性を示している。
短答合格者年齢は、上昇傾向にある。
今年は、ついに31歳台に乗せてきた。
他方で、論文合格者は、若年化傾向にある。
今年の28.37は、これまでで最も若い。
結果として、短答、論文の差が開いていくことになる。
短答論文の年齢差も、過去最大である。
短答で高齢化、論文で若年化が生じている。

このことは、論文対策を考える上で、示唆的だ。
普通、受験者全体の年齢が上がれば、合格者の年齢も上がり易いはずだ。
しかし、論文受験者=短答合格者の高齢化に逆行して、論文合格者は若年化している。
論文では、若手が特に受かりやすい。
そういう傾向が、強まっているということである。

よくある仮説として、若手の方が優秀だから、というものがある。
予備の飛び級組などをみると、そう思いたくもなる。
これは、間違いだ。
仮にそうなら、短答段階で若年化が生じないとおかしい。
一般的に若手が優秀、という考え方は、成り立たない。
短答にはない若手に有利な要素が、論文にある。
そう考えなければ、筋が通らない。

それは、配点の付き方にある。
短答は、簡単な問題も、難しい問題も、同じ配点である。
しかし論文は、基本事項にあり得ないような配点がある。
これは、採点実感等に関する意見を読むとわかる。
(詳細は、司法試験平成22年採点実感等に関する意見の読み方(商法)等参照)
若手は、時間的制約から、基本事項を正確に覚える学習で手一杯になる。
(長期受験者も、初学者の頃は一生懸命に趣旨や規範を覚えた経験があるはずである。)
だから、応用論点は、初めから気付かないし、無理に書こうとしない。
一方で、基本事項は正確に書いてくる。
また、拾う論点が少ないから、構成は楽だし、当てはめにも時間を割ける。
他方、勉強量が増えてくると、問題文を見た瞬間、たくさんの問題意識が見えてしまう。
あの論点も、この論点も、考えようによってはこういう論点も問題になるな。
勉強した成果を(悪い意味で)実感する瞬間である。
見えてしまったら、書きたくなる。
しかし、現場でこれらの論点をうまくまとめようとすると、構成が大変だ。
構成に時間がかかり、答案に書く時間が制約される。
たくさんの事柄に触れるには、個々の論述は丁寧に書けない。
結果として、個々の論述、当てはめは、雑になってしまう。
しかも、答練等では、たくさんの論点を処理する問題ばかり解いている。
そのため、雑な論述を積み重ねるのは得意だが、丁寧な論述ができない。
基本事項についても、不十分、不正確な論述に終始してしまう。
答練はそれでも点が取れるが、本試験は、そうはいかない。
この差が、論文の若年化として現れる。

以上のことから、30代以降の受験生は、初心に戻って勉強すべきだ。
つまらないかもしれないが、基本的な趣旨や規範を覚える。
(初受験の頃の勉強法を、思い出すべきである。)
そして、素直な筋で、当てはめはきっちりやる。
答練では、全部の論点を拾いに行かない。
若手が拾う論点に絞って、丁寧に書く。
(結果的に「合格まで後一歩です。○○の論点を拾えば合格答案でした」という講評を受けても、気にしない。)
他方、若手は特に意識せず、がむしゃらに基本事項を習得すればよい。

上記のことは、これまでも繰り返し述べてきた。
合格点の水準、受験回数別合格率、年齢構成。
全てのデータが、同じことを示唆している。
「基本事項を正確に書けば受かる」ということだ。
「基本事項」の範囲は、意外と狭い。
他方で、「正確」の精度は、意外と高い。
多くの受験生が、この点を逆に考えている。
必要以上に広い範囲を学習し、基本事項の精度が低い。
それなのに、さらに広い範囲を学習しようとしている。
これでは、受かり易くなるはずがない。
勉強量を増やしても成績が伸びない人は、学習範囲と精度の見直しを考えるべきである。

戻る