平成25年司法試験予備試験論文式刑事実務基礎参考答案

試験問題は、こちら

第1.勾留の理由(刑訴法207条1項、60条1項)

1.嫌疑の相当性

(1)被害者供述として信用できるVの供述及びVによって公開された画像とメモリーカードに記録された写真画像のうち3枚が同一だったことから、甲を通常逮捕した際に車内から発見されたメモリーカードは、被害品であるVのデジタルカメラに入っていたものと同一と認められる。

(2)メモリーカードの発見されたワゴン車は、Z社代表者の供述によれば、被疑事件発生日の2日前である平成25年2月24日から甲が使っていた。上記供述は管理簿に基づくと考えられるから、信用できる。従って、メモリーカードを所持し、車内に保管したのは、甲であると推認できる。

(3)そうすると、甲は、被疑事件発生から7日後に被害品であるデジタルカメラに入っていたメモリーカードを所持していたことになる。7日の間に、甲はいかにして所持するに至ったのか。甲がV方居室から持ち去ったのでなく、中古市場等で入手したのであれば、容易に入手経路を説明できるはずである。にもかかわらず、「知らない」と述べるのみで合理的な弁解をしない。
 以上から、甲が、V方居室からメモリーカードを持ち去ったことが疑われる。

(4)メモリーカードは被害品であるデジタルカメラに入っていたものであり、通常デジタルカメラからメモリーカードのみを引き抜いて持ち去ることは、メモリーカードとデジタルカメラの財産的価値からして考えにくいことから、被害品であるデジタルカメラを持ち去ったのも、甲であると疑われる。

(5)事件と直接の利害関係になく信用できるWの供述、買取票及び事前の誘導もなく20名から割り出しており信用できるWによる面割りの結果から、被害品であるデジタルカメラと同種のXをRに持ち込んだ男は、甲であると認められる。持ち込まれたデジタルカメラにはメモリーカードが入っていなかった。
 上記のことは、甲が被害品であるデジタルカメラを持ち去った後、メモリーカードを抜いてZ社のワゴン車内に保管し、デジタルカメラのみをRに持ち込んだと考えて矛盾がない。他方、甲はデジタルカメラにつき「名前を言えない知り合いからもらった」と供述するのみで、合理的な弁解をしていない。このことは、上記(4)の疑いを補強する。

(6)Qマンションの出入り口の防犯ビデオの映像から、甲にはAがマンションを出た後の約5分間、Aに目撃されることなくデジタルカメラを持ち去る機会があった。すなわち、甲は犯行可能であった。また、O社への照会及び甲の供述から多額の借金があったことがうかがわれる。すなわち、甲には犯行動機がある。これらも、上記(4)の疑いを補強する事実である。

(7)以上から、甲が被疑事実であるV所有のデジタルカメラに係る窃盗を犯したと疑うに足りる相当の理由がある。

2.各号該当性

(1)甲はT市内のアパートに住んでいるから、1号には該当しない。

(2)Vに対する証人威迫やAとの口裏合わせのおそれがあるから、2号に該当する。

(3)甲は執行猶予中であるから、被疑事件につき有罪となると執行が猶予される可能性は極めて低い(刑法25条2項本文)。また、甲は一人暮らしであり、逃亡が容易である。そうすると、正社員として勤務していることを考慮しても、懲役刑の執行を恐れて逃亡するおそれがある。よって、3号にも該当する。

第2.勾留の必要性(刑訴法87条1項参照)

 前記第1の2(3)のとおり、甲には逃亡のおそれがあり、公判期日への出頭(刑訴法286条参照)を確保する必要があるから、勾留の必要性が認められる。

第3.結論

 以上のとおり、勾留の要件を全て充足するから、Jは、甲を勾留すべきである。

以上

戻る