普通地方公共団体の課税権

最高裁判所第一小法廷判決平成25年03月21日(下線は当サイトによる)

【事案】

 神奈川県が条例で定めた臨時特例企業税を課された株式会社が、当該条例は地方税法に違反して無効であると主張して争った事案。

【判旨】

 地方自治法14条1項は,普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて同法2条2項の事務に関し条例を制定することができると規定しているから,普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが,条例が国の法令に違反するかどうかは,両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく,それぞれの趣旨,目的,内容及び効果を比較し,両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない(最高裁昭和48年(あ)第910号同50年9月10日大法廷判決・刑集29巻8号489頁)。

 普通地方公共団体は,地方自治の本旨に従い,その財産を管理し,事務を処理し,及び行政を執行する権能を有するものであり(憲法92条,94条),その本旨に従ってこれらを行うためにはその財源を自ら調達する権能を有することが必要であることからすると,普通地方公共団体は,地方自治の不可欠の要素として,その区域内における当該普通地方公共団体の役務の提供等を受ける個人又は法人に対して国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されているものと解される。しかるところ,憲法は,普通地方公共団体の課税権の具体的内容について規定しておらず,普通地方公共団体の組織及び運営に関する事項は法律でこれを定めるものとし(92条),普通地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定することができるものとしていること(94条),さらに,租税の賦課については国民の税負担全体の程度や国と地方の間ないし普通地方公共団体相互間の財源の配分等の観点からの調整が必要であることに照らせば,普通地方公共団体が課することができる租税の税目,課税客体,課税標準,税率その他の事項については,憲法上,租税法律主義(84条)の原則の下で,法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されており,これらの事項について法律において準則が定められた場合には,普通地方公共団体の課税権は,これに従ってその範囲内で行使されなければならない
 そして,地方税法が,法人事業税を始めとする法定普通税につき,徴収に要すべき経費が徴収すべき税額に比して多額であると認められるなど特別の事情があるとき以外は,普通地方公共団体が必ず課税しなければならない租税としてこれを定めており(4条2項,5条2項),税目,課税客体,課税標準及びその算定方法,標準税率と制限税率,非課税物件,更にはこれらの特例についてまで詳細かつ具体的な規定を設けていることからすると,同法の定める法定普通税についての規定は,標準税率に関する規定のようにこれと異なる条例の定めを許容するものと解される別段の定めのあるものを除き,任意規定ではなく強行規定であると解されるから,普通地方公共団体は,地方税に関する条例の制定や改正に当たっては,同法の定める準則に拘束され,これに従わなければならないというべきである。したがって,法定普通税に関する条例において,地方税法の定める法定普通税についての強行規定の内容を変更することが同法に違反して許されないことはもとより,法定外普通税に関する条例において,同法の定める法定普通税についての強行規定に反する内容の定めを設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することも,これと同様に,同法の規定の趣旨,目的に反し,その効果を阻害する内容のものとして許されないと解される。

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