平成25年予備試験論文式試験の結果について(3)

合格点210点の意味するもの

今年の論文の合格点は、210点だった。
平成23年は、245点。
平成24年は、230点だった。
それと比べると、かなり下がったという印象だ。

この合格点の下落は、単純に合格者増によって生じたのか。
以下は、各年の合格点に相当する得点における各年の類型人員の推移である。
(赤字は実際の合格者数)

 

 

平成23

平成24

平成25

245点

123人

104人

78人

230点

247人

233人

190人

210点

499人

491人

381人

これをみると、上位層の数が減っていることがわかる。
従って、合格点の下落は、単純に合格者増だけで生じたとはいえない。
上位層の減少も、その原因の一つとなっている。
全体の受験者数は増えているのに、上位層は、むしろ減っている。
見かけの合格率の上昇以上に、予備試験は受かり易くなっている。

予備は平均点が不良レベル

司法試験と予備試験は、論文の採点区分と得点割合の対応が同じである。
司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について司法試験予備試験論文式試験の採点及び合否判定等の実施方法・基準について参照)

すなわち、優秀は得点割合100%から75%。
良好は、74%から58%。
一応の水準は、57%から42%。
不良は、41%以下である。

以下は、司法試験及び予備試験の平均点の得点割合の推移である。
司法試験については、最低ライン未満者も含んだ数字である。
なお、予備試験には科目ごとの最低ラインは存在しない。

司法試験
平均点
得点割合

予備試験
平均点
得点割合

20

46.5%

---

21

45.1%

---

22

43.2%

---

23

43.0%

38.5%

24

44.1%

38.0%

25

43.8%

35.1%

平均点は、司法試験の方が高い。
すなわち、全体の受験生の層としては、司法試験の方がレベルが高い。
司法試験は一応の水準で踏みとどまっているのに、予備は不良に沈んでいる。
このことは、これまでと変わらない。
しかし、今年はその差がかなり大きくなった。

司法試験は、平均点の下落に、歯止めがかかってきている。
ローの定員削減等の締付けによる、受験者数減が効いている。
一方、予備は平均点の下落傾向が強まっている。
特に、今年の下落幅は大きい。
司法試験とは逆に、予備は受験者数が増加傾向である。
それほど実力のない人も、受けてみようか、という雰囲気がある。
従って、今後、さらに平均点は下落していく可能性が強い。
司法試験と予備との差は、広がっていくだろう。

極限まで下がった合格点

では、合格点ではどうか。
以下は、司法試験及び予備試験の合格点の得点割合の推移である。
司法試験の合格点は、その年の最終合格者数に相当する論文の順位の得点とした。
例えば平成25年は、2049人合格している。
従って、論文の2049位に相当する373点が合格点となる。

司法試験
合格点
得点割合

予備試験
合格点
得点割合

20

47.8%

---

21

47.1%

---

22

46.2%

---

23

45.8%

49.0%

24

46.7%

46.0%

25

46.6%

42.0%

平成23年は、予備の方が合格レベルが高かった。
昨年は、ほぼ互角。
そして今年は、明確に司法試験の方が高くなった。
この3年で、はっきりと逆転した。
「司法より予備の方が難しい」といえるのは、平成23年だけである。

注目したいのは、予備の42%という得点割合である。
前記のとおり、一応の水準の幅は、57%から42%。
今年の予備の合格水準である42%は、一応の水準の下限に等しい。
これよりも合格点を下げることは、「不良でも合格」を意味する。
これは、司法試験委員会としては認め難いだろう。
そうだとすると、これ以上合格ラインは下げられない。
(旧試験時代にも、一応の水準の下限である120点を下回ったことはない。)

このことは、極めて重要なことである。
司法試験の合格率均衡の要請からは、もっと増やさなければならない。
しかし、今年は、許される最大限度まで、合格ラインを下げた。
それでも、381人しか受からせることができなかった。
今後、これ以上増やすには、不良の水準を受からせるしかない。
それができないとなれば、予備の増員はもう不可能だ。
しかも、予備全体のレベルは、前記のとおり下がっている。
今後、得点率42%の人員は、むしろ減るだろう。
司法試験委員会は、極めて難しい立場に立たされることになる。
これまで、司法試験委員会は、最終的には質を重視して上限を決めてきた。
司法試験で3000人合格を達成できなかったのも、それが原因である。
(3000人を合格させると、短答上位者は論文不良でも受かってしまいかねない。)
予備の場合でも、この42%のラインは死守する可能性がある。
すなわち、来年以降、合格点は210点に固定される。
そうなると、合格者数は、減少に転じる。

多くの人が、「予備の合格者はこれからも増える」というシナリオを描いている。
しかし、合格点の水準に着目すると、むしろ逆の可能性も十分ある。
このことは、十分意識しておくべきだろう。
(この場合、「平成25年予備試験論文式試験の結果について(2)」で示した予測と異なり、合格率は一転下落基調となる。)

とはいえ、これは受験生にとっては分かり易いともいえる。
すなわち、今後は「不良」にさえならなければ受かる。
従来は、「一応の水準の真ん中」が目標だった。
今は、「一応の水準の下限」である。
優秀や良好などという区分は、「あってないようなもの」と思っておくとよい。

一応の水準と不良を分けるのは、何か。
それは、「基本論点を普通に拾えるか、趣旨から正確に説明できるか」である。
今年不合格になった人のほとんどは、単純に「論点落ち」が原因である。
論点を拾っている人は、「趣旨から説明できていない」ことが原因である。
趣旨から説明できている人は、「説明内容(趣旨や規範)が不正確である」ことが原因である。
(応用部分(例えば民訴設問2)は、白紙同然でも受かる。)
上記の観点から、自分の答案を見直してみるとよい。
対策も、上記と対応する。
基本論点を知らなくて落とした人は、基本論点を学習する。
知っていたのに拾えなかった人は、答案構成で論点を拾う練習をする。
拾えたのに趣旨から説明できなかった人は、趣旨から説明する論証を準備する。
説明内容が不正確だった人は、正確に論証を理解し、覚える。
(特に憲法では、予備校の論証ではなく、判例や著名な補足意見を覚える。)
応用的な学習は、何一つ必要でない。
(旧試験では応用もある程度拾わないと厳しい時期があったが、予備では、既にその一線を越えている。)

逆に、今年合格した人は、油断できない。
230点以下で合格した人は、今年の司法試験の合格水準に達していない。
同じような感覚で、来年司法試験を受験すると、やられてしまう可能性がある。
成績が悪かった科目について原因を分析し、もう一歩レベルを上げておく必要がある。

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