公定力関連の論点について

1 適法性ではなく、有効性の問題

 公定力に関する説明は、かつての適法性推定説の説明がところどころ残っている文献も多く、すっきりした理解を困難にしています。しかし、実際にはそれほど難しい内容ではありません。
 現在では、公定力の根拠は、取消訴訟の排他的管轄によるものであるとされています。これは、会社法でいえば株主総会決議取消しの訴えと同様です。その趣旨は、違法であっても、訴訟によるまでは有効性を維持することにある。すなわち、法的安定性・画一性ということですね。従って、公定力は、あくまで処分の有効性に関するものであって、適法性とは関係がないということになります。これが最大のポイントです。

2 国賠訴訟との関係

 公定力関係の論点として、国賠訴訟との関係があります。問題は、二段階に分かれます。一つは、前もって取消訴訟を要するかという一般論。もう一つは、これを前提としつつ、認容判決によって処分を取り消したのと同様の効果がある場合にも同様に考えてよいかという問題です。前者の判例が最判昭36・4・21、後者が最判平22・6・3です。
 前者については、前記1の公定力の理解から、そのまま結論が出ます。国賠訴訟で争うのは、処分が適法か違法かという問題であって、処分の有効性ではありません。国賠請求の要件として、処分の有効性は問題にならないからです(むしろ、処分が有効だからこそ損害が生じているともいえます)。よって、前もって取消訴訟を提起する必要はないということになる。
 他方、後者の論点は、上記を前提としつつ、国賠の直接の目的が取消訴訟と重複するような場合には、取消訴訟に出訴期間が設けられている趣旨を没却しないか、という問題です。これについては、要件及び立証責任の所在が異なるから構わないというのが端的な解答となります。

最判平22・6・3における金築補足意見より引用、下線は筆者)

 取消しを経ないで課税額を損害とする国家賠償請求を認めると,取消訴訟の出訴期間を延長したのと同様の結果になるかどうかは,取消しと国家賠償との間で,認容される要件に実質的な差異があるかどうかの問題である。

 (1) まず,国家賠償においては,取消しと異なり故意過失が要求され,また,その違法性判断について当裁判所の判例(最高裁平成元年(オ)第930号,第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁等)はいわゆる職務行為基準説を採っているから,この点でも要件に差異があることになる。もっとも,こうした要件上の差異が,実際上どの程度の結果の違いをもたらし得るかについては,見方の分かれるところかもしれない。しかし,取消しが認められても国家賠償は認められない場合があり得るということだけは,間違いなくいい得る

 (2) 固定資産税の課税物件は膨大な数に上り,その調査資料を長期にわたって保存しておくことが困難な場合もあるのではないかと思われるので,課税処分から長期間が経過しても国家賠償請求ができるとした場合,立証責任の問題は,より重要かもしれない。課税処分の取消訴訟においては,原則的に,課税要件を充足する事実を課税主体側で立証する責任があると解すべきであるから,本件固定資産税についても,一般用倉庫として経年減点補正率を適用して評価課税する以上,本件倉庫が冷凍倉庫用のものではなく,一般用のものであることについて,課税主体である被上告人側に立証責任があることになる。これに対し国家賠償訴訟においては,違法性を積極的に根拠付ける事実については請求者側に立証責任があるから,本件倉庫が一般用のものではなく,冷凍倉庫用のものであることを請求者である上告人側が立証しなければならないと解される。上告人側が同事実を立証することは,損害額を明らかにするためにも必要である。立証責任について,課税処分一般におおむねこうした分配振りになるとすれば,課税処分から長期間が経過した後に国家賠償訴訟が提起されたとしても,課税主体側が立証上困難な立場に置かれるという事態は生じないと思われる。

 以上のとおり,取消しを経ないで課税額を損害とする国家賠償請求を認めたとしても,不服申立前置の意義が失われるものではなく,取消訴訟の出訴期間を定めた意義が没却されてしまうという事態にもならないものと考える。

(引用終わり)

3 刑事訴訟との関係

 公定力関連の論点として、もう一つ、刑事事件との関係があります。この場合は、国賠のときとは異なり、処分の有効性を前提にして刑事責任が発生するため、公定力との抵触が問題となるようにみえます。ところが、余目町個室付浴場事件は、事前の取消訴訟を不要としている。そこで、このことの理由を説明する必要があります。
 実質論としては、被告人に取消訴訟を要求するのは酷だ、ということがあるでしょう。ただ、これだけでは説得力が弱い。これを法律論として構成するとすれば、刑罰を課すためにはその前提となる処分が有効であるだけでは足りず、適法である必要がある、と考えることになるでしょう。そうなると、公定力のために有効性が争い得ないとしても、適法性が否定されることにより処罰が否定される。このように考えれば、判例と同じ結論に至ります。

4 司法試験定義趣旨論証集(行政法)では、以上のようなことを、端的に論証化しています。基本書の説明がどうも回りくどいと感じている方は、利用してみてください。

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