平成26年予備試験短答式の結果について(2)

1.今年の短答は、昨年より難化しました。そのために、司法試験の短答の合格点は、昨年より下がりました。一方で、予備試験の方は、昨年と同じ合格点でした。その原因の一つには、受験者数が増加したにもかかわらず、合格者数が1人しか増えなかったこと、すなわち、短答合格率の低下があるでしょう。しかし、短答合格率の低下は、むしろ、司法試験の方が大きい。司法試験では、受験者数は昨年より増えたのに、短答合格者数は、むしろ減っているのです。従って、司法試験との比較という意味では、合格率の低下は理由になりません。

2.最大の要因は、受験者層の違いです。今年の司法試験の短答が見た目の数字より受かり易かったこと、その原因が、受験者増の大半が受控え層であったことについては、以前の記事(「平成26年司法試験短答式試験の結果について(1)」で説明しました。
 他方、予備試験の受験者層を考える際に重要な要素は、現役ロー生の参入増です。下記は、法科大学院在学中の予備試験受験者数等の推移です。

現役法科大学院生
の受験者数
受験者総数 受験者総数に占める
法科大学院生の割合
23 198 6477 3.0%
24 555 7183 7.7%
25 1497 9224 16.2%

 年を追うごとに、受験者層に占めるロー生の割合が急増しています。今年の数字はまだわかりませんが、さらに増加している可能性が高いでしょう。そして、ロー生の受験は、上位ローに多い。下記は、平成25年の予備試験受験生の多かった法科大学院上位5校の受験者数です。

順位 大学院名 受験者数
早稲田 145
東大 141
中央 126
慶應 121
大阪 69

 中央と大阪は微妙だと感じるかもしれませんが、一橋が66人で6位になっています。要は、予備試験の受験者増は、上位ローを筆頭に、実力に自信のある現役ロー生の受験者増によるところが大きいということです。このことが、予備試験全体のレベルを上げている。そのために、短答の合格点は、難易度が上がったにもかかわらず、下がらなかったのです。筆者が、事前の予想で合格点は下がらないと考えた理由も、この点にありました。

3.今後も、この傾向は続くでしょうから、予備試験は、見かけの合格率よりも受かりにくくなっていくことになります。特に、若手の現役ロー生は論文に強い。昨年の現役ロー生の論文合格率は、44.2%です(短答合格者ベース)。現役ロー生の参入増によって、論文のレベルは確実に高くなります。逆に言えば、昔は論文のレベルが非常に低かった。平成23年当時、A評価の再現答案を見て、この程度でもA評価になってしまうものかと驚いたものです。しかし現在では、当時のA評価答案は、合格答案にならないでしょう。再現答案分析をする際には、その点に注意する必要があります。

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