平成26年予備試験口述試験(最終)結果について(5)

1.以下は、職種別の短答、論文合格率です。短答は受験者ベース、論文は短答合格者ベースで算出しています。

職種 短答
合格率
論文
合格率
公務員 20% 12.8%
教職員 10.4% 0%
(7人中0人)
会社員 16.7% 5.8%
法律事務所
事務員
20.8% 11.3%
塾教師 27.5% 0%
(40人中0人)
自営業 20.6% 6.4%
法科大学院生 22.0% 43.4%
法科大学院以外
大学院生
14.7% 40.0%
(5人中2人)
大学生 16.3% 26.9%
無職 22.0% 8.2%
その他 21.5% 4.7%

2.年齢層別でみた場合、20代は短答に弱いという結果でした(「平成26年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)。20代の多くは、大学生とロー生でしょう。しかし、上記の表をみると、短答に弱いのは、大学生だということが分かります。ロー生は、それほど短答を苦手にしていません。長期受験者の多いと思われる無職と比較しても、遜色のない合格率になっています。大学生は、ロー生と比較しても圧倒的に勉強時間が足りません。これに対し、最近のロー生は、早い段階から短答対策のインプットをやっています。そのことが、この結果に現れているといえるでしょう。

3.ロー生は、論文で圧倒的な強さを見せています。母集団の少ないロー以外の大学院生を除くと、二番手が大学生になりますが、これと比べても、ロー生は1割以上高い合格率です。一方で、ロー生、大学生以外の社会人や無職は、非常に低い合格率となっています。
 この結果は、当サイトで繰り返し説明している論文の特性をよく反映しています。
 初学者の頃は、基本事項と規範の理解、記憶で精一杯です。大学生は、その最低限必要な部分の習得にすら、時間が足りません。そのために、合格率が伸び悩みます。それでも、可能な限り基本事項と規範を示して回答しようとするので、それなりの合格率になるのです。ロー生は、基本事項と規範までは何とか理解、記憶したという、論文合格には理想的な段階です。これが、非常に高い論文合格率として反映されています。
 他方で、それ以外の職種の人は、長期受験者が多いでしょう。こういった人達は、基本事項と規範はもう卒業して、応用的な本に手を出し始めます。そうなると、大学生やロー生がおよそ気付かないような問題意識に気が付くようになる。大学生やロー生は、基本論点だけを抽出してすぐに書き出し、余裕を持って当てはめに時間と紙幅を使います。しかし、勉強期間が長くなると、余計な応用論点の検討に時間をかけてしまい、答案構成がまとまらない。複雑な構成になって読みにくくなったり、個々の論点の論述が不十分になったり、当てはめが極端に雑になったり、ひどいときには途中答案になってしまったりする。結果として、大学生やロー生に合格率で大きな差を付けられてしまうのです。
 この、「大学生→ロー生→長期受験者」という学習の発展段階と、論文合格率の対応は、意識しておく必要があります。自分が現在どの段階にいるのか。長期受験者の域に達し始めているという自覚のある人は、意識的に勉強法を考える必要があります。普通の感覚だと、「基本がわかったから応用」という流れは自然ですが、論文試験の合格という観点からはそうではない、ということです。

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