平成27年予備試験論文式試験の結果について(2)

1.下記は、予備試験論文式試験の平均点及び論文受験者数の推移です。


(平成)
論文
平均点
平均点
前年比
論文受験者数 受験者数
前年比
23 195.82 --- 1301 ---
24 190.20 -5.62 1643 +342
25 175.53 -14.67 1932 +289
26 177.80 +2.27 1913 -19
27 199.73 +21.93 2209 +296

 平均点と受験者数には、一定の相関性があります。上位の得点を取るコアな受験生は一定数に限られるために、受験者数の増加は、上位層以外の者の増加を意味することが多いからです。
 平成24年、平成25年と、平均点が下落したことは、受験者数の増加で、ある程度説明できます(ただ、平成25年は、少し下落幅が大きすぎるという印象です)。また、平成26年に、若干ですが平均点が上昇に転じたことは、受験者数の若干の減少によって説明が付く。ところが、今年は、平均点が大幅に上昇しているのに、受験者数も増えています。ですから、今年の平均点の上昇は、受験者数との相関性では説明の付かない、異常なものであるということがわかります。

2.説明の付かない異常な論文平均点の上昇。これは、今年の司法試験の論文式試験でも生じていました(「平成27年司法試験の結果について(3)」)。そのときに示した仮説は、司法試験の結果検証の流れを受けて、今年は採点における得点分布の目安が比較的守られたのではないか、というものでした。
 予備試験の論文式試験についても、採点における得点分布の目安が定められています。

 

(「司法試験予備試験論文式試験の採点及び合否判定等の実施方法・基準について」より引用)

 採点に当たってのおおまかな分布の目安を,各問に応じ次のとおりとする。ただし,これは一応の目安であって,採点を拘束するものではない。

割合 5%程度 25%程度 40%程度 30%程度
得点 50点から38点 37点から29点 28点から21点 20点から0点

(引用終わり)

 

 上記の採点目安を守った場合の論文の1科目当たりの平均点を推計すると、

(50+38)÷2×0.05+(37+29)÷2×0.25+(28+21)÷2×0.4+20÷2×0.3=23.25点

 予備論文の科目は10科目ですから、全科目平均点は、232.5点ということになります。これと比較すると、今年の数字でも、まだ平均点は上記目安より低いということにはなるでしょう。とはいえ、予備論文の平均点の上昇も、得点分布の目安を守ろうとする方向性で採点がされたためだ、という仮説によって、一応説明が付きます

3.仮に、そのような理由で平均点が上昇したとすると、平均点の上昇は、必ずしも全体の出来が良かったことを意味しないことになります。同時に、今年の合格者が増加した原因も、従来の意味での一応の水準の下限を超えた者が増加したのではなく、得点分布の目安を守ろうとする方向性で採点がされた結果、従来の不良水準の答案にも一応の水準を超える点数が付き、210点を超える受験者が400人を超えたためだった、ということになります(「平成27年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。その意味では、今年の予備受験生は、たまたまこの時期に司法試験の結果検証の動きがあったという偶然の事情によって得をした、ということがいえるでしょう。

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