平成27年予備試験口述試験(最終)結果について(1)

1.平成27年予備試験口述試験の結果が公表されました。合格点は、これまでと同じ119点最終合格者数は、394人でした。昨年の最終合格者数356人と比べると、38人の増加ということになります。

2.今年の受験者合格率は、394÷427≒92.27%でした。以下は、これまでの推移をまとめたものです。

   受験者数 合格者数 受験者
合格率
前年比
平成23 122 116 95.08% ---
平成24 233 219 93.99% -1.09%
平成25 379 351 92.61% -1.38%
平成26 391 356 91.04% -1.57%
平成27 427 394 92.27% +1.23%

 昨年までは、毎年、受験者合格率は下がり続けていました。今年は、初めて上昇に転じました昨年まで、なぜ合格率が低下を続けてきたのか。当サイトでは、平成25年までは論文合格者の急激な増加が原因だが、論文合格者の増加が緩やかになった平成26年はそれだけでは説明が付かない、と考えていました。

 

(「平成26年予備試験口述試験(最終)結果について(1)」より引用、太字強調及び※注は現在の筆者による)

 合格率低下の原因の一つとして、論文合格者数の増加があるでしょう。論文合格者数が増加すれば、基本的な知識でつまずく人が増えるでしょう。また、考査委員としても、120人程度しか論文合格者がいないと、「一人でも落としてしまったらかわいそう」という思いがあるでしょうが、さすがに400人近く論文合格者がいると、「何人かは落としてもいいかな」という感覚になってきます。ですから、論文合格者数が増えることに応じて、不合格者が増えてくることは、ある程度自然なことです。このことは、2回試験の合格率についても言えることでしょう。 
 ただ、今年の合格率の低下は、それだけでは説明できません。今年(※注 平成26年を指す)は、昨年(※注 平成25年を指す)と比べて、それほど論文合格者数は増えていません。それにもかかわらず、口述合格率の下落幅は、これまでより大きくなっています論文合格者の増加に応じて口述合格率が低下しているという説明では、なぜ下落幅が大きくなったのかを説明できないのです。 
 この点については、いくつかの仮説が考えられます。今年はたまたま口述受験者の質が悪かっただけだ、あるいは、誤差の範囲の変動に過ぎないと考えるなら、来年以降は合格率が持ち直すことになりやすいでしょう。細かい条文や手続の知識に乏しい若手の大学生やロー生の論文合格者が年々増加しているからだ、という考え方によるなら、大学生やロー生の論文合格者の増加が続く限り、口述合格率の低下傾向は続くことになりやすい。また、予備試験合格者の増加に対する懸念が強まったことが原因であると考えるなら、そのような懸念が続く限り、合格率が上昇する方向にはなりにくいことになります。現段階では、来年以降の数字や、その他の資料等を確認してみないと何とも言えない、という感じです。

(引用終わり)

 

 まだ、断定はできませんが、今年の合格率が持ち直したことをみると、平成26年はやや異常値であった、と考えることは可能だろうと思います。

3.口述の合格率を考える場合には、採点基準との関係も考慮する必要があります。以前の記事でも示したとおり、口述試験の理論的な受験者合格率は、93.75%です。

 

(「平成27年予備試験論文式試験の結果について(4)」より引用、太字強調は現在の筆者による)

 毎年、119点が合格点になっています。前記のとおり、通常は、各科目最低でも59点です。民事と刑事が両方59点だと、118点で不合格になります。しかし、一方の科目で60点を取れば、片方が59点でも119点になりますから、ギリギリセーフ、合格となるのです。ですから、不合格になるのは、民事も刑事も59点を取ってしまった場合だ、と思っておけばよいわけです。 各科目、概ね4分の1が59点を取るとすると、両方の科目で59点を取る割合は、16分の1、すなわち、6.25%です。ですから、93.75%が、理論的な口述合格率ということになるわけです。

(引用終わり)

 

 今年の受験者合格率92.27%は、わずかに93.75%を下回っています。これは、自然なことです。93.75%という数字は、民事と刑事の成績が完全に独立に決まるという前提で算出された数字です。実際には、民事と刑事の成績には、一定の相関がある。口述形式でのやり取り自体が苦手な人、全体的な勉強時間が不足していて、民事も刑事も知識不足な人、初日に失敗をして、翌日にもそれを引きずってしまった人。こういった人は、民事と刑事の両方で59点を採る可能性が高いでしょう。
 民事と刑事の科目に相関性があると、上記の理論的な合格率よりも、実際の合格率は下がります。仮に、受験生全員について、民事・刑事の成績が完全に相関する(民事と刑事で常に同じ点を取る)場合を考えると、合格率は75%まで下がります。民事で59点を取る25%の人は、必ず刑事も59点を取りますから、この25%の受験生が不合格になるからです。これは極端な例ですが、ある程度の相関性がある限り、93.75%を下回る合格率になることは、むしろ自然なことなのです。
 このように、現状の合格率程度で推移する限り、62点以上又は58点以下が付く可能性は、ほとんど考慮しなくてよいでしょう。このことは、以前の記事(「平成27年予備試験論文式試験の結果について(4)」)でも述べたとおりです。 

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