2016年1月のツイートまとめ

2016年01月02日(土)6 tweets
 
1月2日
平成26年会社法改正について、仮装払込みによる発行株式の効力につき、立案担当者は有効説を採用した、という誤解がどうも多いようです。その原因は、株主権行使に係る規定(52条の2第4項、102条3項、209条2項)など、有効説を前提にしたようにみえる規定があることによるようです。
 
1月2日
しかし、そのように考えた人は、新株発行等無効の訴えの性質を考える必要があります。新株発行等はたとえ無効の瑕疵があっても、訴えをもってのみ争うことができ、(828条1項2号、3号)、かつ、無効判決は将来効です(839条)。ですから、無効判決確定時までは、有効と扱われるのです。
 
1月2日
そうすると、「無効なのに有効と扱われる」という状況が生じることになります。従来、この点について規定がなかったので、仮装払込人は普通に株主権を行使できるのか、譲渡されたらどうなるのか、という点が不明でした。この点を明らかにしたのが、平成26年改正です(商事法務2044号9頁)。
 
1月2日
ですから、「有効とみなければ辻褄の合わない規定がある」ことは、株式有効説の根拠にならないことは明らかです。「無効なのに有効と扱われる」場合を念頭に規定が置かれたからこそ、有効を前提にしたような規律になっているだけなのですね。
 
1月2日
このように、改正規定は「無効なのに有効と扱われる」状況について規律した規定ですから、不存在や無効判決確定後においては、そもそも適用がないことになります。定義趣旨論証集の「仮装出資に係る規律の適用範囲」の論証は、その趣旨です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B015ZS7KP4
 
1月2日
なお、仮に改正法の下で発行株式だけでなく払込自体も有効と考える場合には、仮装払込みによる資本金又は資本準備金の増加が生じるかという従来の論点のほか、仮装払込みに係る義務の履行によるその他資本剰余金の増加(改正計算規則21条2号以下参照)をどう説明するか、新たに問題となるでしょう。
 
 
2016年01月03日(日)5 tweets
 
1月3日
『2016年01月02日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43202580.html…
 
1月3日
司法出題趣旨民訴設問2。第1審判決取消し・請求棄却の場合と、控訴棄却の場合の既判力の内容を示した上で、不利益変更禁止の原則に抵触しないかを論じれば足りたようです。このように、当たり前過ぎることをそのまま問うのが最近の民訴の傾向です。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月3日
「第一審判決が確定すると,本訴の訴求債権の不存在の判断…及び反対債権の不存在の判断…の双方に既判力が生じるが,第一審判決を取り消し,訴求債権の不存在を理由として請求を棄却した判決が確定すると,反対債権の不存在という,Xに有利に作用する既判力が生じない」
 
1月3日
「本問では,この二つの判決が確定したと仮定した場合に生ずる既判力の内容の相違に注目して,不利益変更禁止の原則に抵触するかどうかを説明することが求められている」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月3日
このような問題で、大事なことは当たり前なことをきちんと確認するということです。最近の民訴は、ほとんどこれが全てです。本問では、各判決の既判力の内容を確認せずに、簡単に「不利益変更禁止に反するから」というように結論から書いてしまうと、大きく評価を落とすのです。
 
 
2016年01月04日(月)6 tweets
 
1月4日
『2016年01月03日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43206829.html…
 
1月4日
司法出題趣旨民訴設問3。設問1と同様、出題趣旨はほとんど何も言っていません。自分の言葉で書け、ということと、単に矛盾関係と書いても駄目だ、ということくらいです。民訴に関しては、上位再現答案などで補完する必要性が他の科目よりもとりわけ高いといえるでしょう。
 
1月4日
「不当利得返還請求権の要件…のうち,どの要件に関する主張がその既判力と抵触するのかを,Yがその言い分において主張する事実関係に則して,受験者自らの言葉で具体的に説明することが求められている」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月4日
「既判力は訴訟物同一,先決関係又は矛盾関係において作用するところ,不当利得返還請求権の主張は反対債権の不存在の判断と矛盾関係にあるから,確定した第一審判決の既判力に抵触する,と述べるにとどまる答案は,本問の題意を的確に捉えたものとは評価し難い」
 
1月4日
民訴は、当たり前なことを確認して論述できるか、という点で差が付いています。本問でいえば、不当利得の要件にYの主張をきちんと当てはめてみせることが、特に重要だったといえるでしょう。参考答案は、その一例です。
http://studyweb5.seesaa.net/article/41990416.html…
 
1月4日
このように、民訴は、憲法と並んで、答案の書き方、受験テクニックの重要性が高い科目です。知識よりも、上位再現などを参考に、書き方を確立する方が大事です。なお、「自分の言葉で」とありますが、特に奇をてらった表現をする必要はありません。このことも、上位再現をみればわかると思います。
 
 
2016年01月05日(火)6 tweets
 
1月5日
『2016年01月04日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43211492.html…
 
1月5日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。新薬の書類の占有につき、出題趣旨は、甲の占有喪失を重視しています。すなわち、後任の部長に引き継いだ後も、金庫から持出し可能であることから、占有がいまだ甲に残っているのではないか、ということです。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月5日
「甲は…部長職を解かれ…後任部長に引き継いだが,金庫の暗証番号自体に変更がなく,甲は,金庫から新薬の書類を持ち出すことが事実上可能であった…新薬の書類に対する甲の占有は喪失したものといえるのかを論じる必要がある」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月5日
しかし、甲が占有を失ったから窃盗が成立するのでしょうか。そうではありません。後任部長が占有を取得し、その意思に反して甲が持ち出したから、窃盗が成立するのです。このことは、仮に甲の占有が残っていたとしても同様です。出題趣旨も、それは認識しています。
 
1月5日
「仮に,新薬の書類に対する甲の占有が失われていないとしても,後任部長にも新薬の書類に対する管理権が存在するとすれば,新薬の書類を持ち去る甲の行為は,共同占有者の占有を侵害することとなる点に注意が必要である」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月5日
だとすれば、検討すべきは後任部長の占有の有無であって、甲の占有喪失ではないことになる。そして、問題文上、後任部長が新薬の書類の存在を具体的に認識した旨の記載がありませんから、それでも占有を取得したといい得るのか。むしろ、この点を検討すべきではないかという疑問は残ります。
 
 
2016年01月06日(水)3 tweets
 
1月6日
『2016年01月05日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43216257.html…
 
1月6日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。機密資料に関する情報窃盗であると考えて、不法領得の意思を厚く書いた人がいるようですが、不法領得の意思が問題になるのは、機密資料をコピーして原本を元の保管場所に戻すような場合です。
 
1月6日
本問では、新薬の書類の原本をそのまま乙に渡してしまう計画ですから、不法領得の意思があるのは明らかです。出題趣旨でも、不法領得の意思については全く問題にされていません。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
 
2016年01月07日(木)6 tweets
 
1月7日
『2016年01月06日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43221174.html…
 
1月7日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。建造物侵入罪を簡潔に論じる必要がある旨が示されています。他人の家に窃盗や強盗をした場合の住居侵入罪については、本当に簡潔に、場合によっては「○宅に侵入した点につき住居侵入罪が成立する」くらいでもよいですが、本問はもう少し丁寧に書きたいところです。
 
1月7日
「甲は,有給休暇を取った上,金庫内の新薬の書類を持ち出す目的で,誰もいなくなった新薬開発部の部屋に入っており,A社における各部の部屋の状況等を踏まえ,建造物侵入罪の成否について簡潔に論じる必要がある」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月7日
本問は、自分の勤務する会社で、しかも、前任時に使用していた場所です。前任時の忘れ物を取りに行くとか、引き継ぎのために立ち入るのは普通に可能でしょう。そのような限界事例であることからすれば、簡潔とは言っても、判断基準を示して当てはめる程度は要求されていたように思います。
 
1月7日
出題趣旨は、「A社における各部の部屋の状況」を挙げていますが、これは問題文1第2段落の「各部は,A社の本社ビルにおいて,互いに他の部から独立した部屋で業務を行っている」を指しています。他の部と部屋を共用していなかったということです。
http://www.moj.go.jp/content/00114429.pdf…
 
1月7日
もっとも、実際には、気付かない人もそれなりにいたはずです。落としてしまっても、それほど評価を落とすことにはならないでしょう。メインは明らかに書類の持出しの方ですから、時間的な余裕を考慮して、敢えてここは書かない、という選択も、実戦的には十分あったのではないかと思います。
 
 
2016年01月08日(金)6 tweets
 
1月8日
『2016年01月07日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43226093.html…
 
1月8日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。Cからのかばん奪取につき、ひったくりに関する判例・学説の「理解」を期待しています。以前にも説明しましたが、ここでいう「理解」は、「記憶」を意味します。
https://twitter.com/studyweb5/stats/666197392639705088…
 
1月8日
「Cのかばんを奪い取るという甲の行為が…強盗罪に該当するか窃盗罪に該当するかを論ずる必要がある。その際には,いわゆる「ひったくり」に関する判例・学説を理解していることが期待されている」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月8日
このようなことは、答案にそのまま書けるよう、事前に準備をしておくべきです。参考答案は、事前に準備したものを端的に貼り付けるスタイルで書いています。規範は、そのまま書けるような形で覚えておくべきです。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
1月8日
本試験の現場では、じっくり考える時間はありません。字を書く時間だけで、ほとんどの時間を消費してしまいます。事前準備できるところは、何も考えずに貼り付けていかないと、すぐ時間不足になる。時間不足で事実を引く余裕がない、という人は、事前準備が足りていない可能性が高いと思います。
 
1月8日
旧試験時代の論証は、本質に遡り過ぎて、とてもそのまま答案に書けません。それは、理解のためにそうなっていたのではなく、当時はそう書かないと合格答案にならなかったからです。しかし、現在の司法試験は、本質に遡っていたら当てはめができません。論証もそれに応じたものを準備すべきです。
 
 
2016年01月09日(土)9 tweets
 
1月9日
『2016年01月08日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43230872.html…
 
1月9日
論文試験において、実際にどのくらい時間に余裕がないか。少し試算してみましょう。硬筆書写技能検定試験(旧ペン字検定)1級(最難)の速書きでは、145文字を4分で書くとされます。1文字当たり、およそ1.65秒です。
http://www.nihon-shosha.or.jp/pen/kouhitsu205.pdf…
 
1月9日
速書きの文章は難易度の高い漢字ばかりではなく、そこまで美しい文字であることも要求されてはいないようです。行書も許されるようですね。
参考:2級速書きの問題及び合格答案例を掲載しているウェブサイト
http://cumacuma.jp/kentei/kentei_ndex/grade_2_01/…
 
1月9日
仮に1文字1.5秒、1行30文字で単純計算すると、1頁(23行)だと、
 
1.5×30×23=17分15秒
 
となります。ですから、8頁は138分、すなわち、2時間18分かかる計算です。6頁でも1時間43分30秒かかることになります。「構成20分以内」の根拠です。
 
1月9日
1文字1.5秒というのは、硬筆書写技能検定試験1級の速書きで要求された以上の速度です。硬筆書写技能検定試験の速書きは単純に書き写すだけですし、4分ですから、肩が痛くなって休みたくなることもない。論文は、自分で考えて1時間以上休みなく書き続けるわけですから、ハードさが全く違います。
 
1月9日
実際には、改行があるので、もう少し字数は少ないのでしょうが、それでも、1秒も休みなく書き続けてこの数字です。実際には、細かい接続詞や表現の仕方を考えるだけでなく、トイレに行ったり、ペットボトルの水を飲んだりする。いずれにせよ、途中でじっくり考える余裕などないのです。
 
1月9日
論文は、書くだけで精一杯の無茶苦茶な試験です。ほぼ速書き試験。受かりにくい人は、この認識が甘い。考えて論証したり、事実の評価で悩んだりすれば、時間不足になるのは当然です。構成時間はできる限り短く、書き出したら筆を止めない。考えない。悩まない。普段の演習で徹底して訓練すべきです。
 
1月9日
昨年から、当サイトが、可能な限り「規範と事実の書写し」で作成できるようなスタンスで書いた参考答案の掲載を試みているのは、単純に文字を書き写すだけでも精一杯の試験であるという現実に対応したものです。大きな配点のある規範と事実をとにかく書き写せ、ということです。
 
1月9日
このことは、論文で若手の合格率が高い理由の1つでもあります。一般に、若手は高齢者より書く速度が速い。また、若手は演習量が多い傾向にありますから、速書きにも慣れています。現在のところ、法曹志望者に求められる必須の能力は、何よりもまず、「文字を速く書く能力」なのです。
 
 
2016年01月10日(日)6 tweets
 
1月10日
『2016年01月09日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43235371.html…
 
1月10日
前回、論文が「速書き試験」であることを説明しました。重要なことは、このことを考査委員自身が気付いていないということです。例年、採点実感等に関する意見において、字を丁寧に書け、というクレームが付いています。しかし、それがどのような要求であるかを、全く理解できていません。
 
1月10日
前回紹介したように、論文で必要な論述量を書くには、硬筆書写技能検定試験で最も難しい1級の速書き以上の速度が必要です。その状態で字を丁寧に書け、というのは、「法曹たるもの速書きの師範レベルの能力がなければならない」と言っているようなものです。試験時間の約9割は、書くだけの時間です。
 
1月10日
考査委員は、この点を何も理解せずに「考えさせる」問題を作ってきます。受験生は書き写すだけでも精一杯だから、答えられない。すると、「2時間もあるのに、なぜゆっくり腰を据えて考えようとしないのか。暗記で答えようとするのはけしからん」と言うわけです。
 
1月10日
受かりにくい人は、考査委員の指摘に真面目に答えようとして、現場で一生懸命考えて、書き切れずに不合格になります。他方で、覚えた規範と事実を書き写して書き切る人は、短期で合格していく。考査委員の意図と逆の選抜が生じる構造になっているのが、興味深いところですね。
 
1月10日
基本的な規範の明示や事実の引用は省略してもよい、という採点をしていれば、まだ現場思考が意味を持つでしょう。しかし、規範と事実の明示がないと点が付かないという採点がされている以上、現状では、「規範と事実の書写し」以外の現実的な合格答案作成方法は存在しないのです。
 
2016年01月11日(月)9 tweets
 
1月11日
『2016年01月10日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43239580.html…
 
1月11日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。甲が、Cのかばんを自分のものと誤信した点、多くの人が違法性阻却事由の錯誤(誤想防衛又は誤想自救行為)を検討していますが、それ以外にも、そもそも構成要件該当性の錯誤が問題になるとしています。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月11日
「甲の認識は,「他人の財物」性…すなわち構成要件該当事実の認識の問題である…「他人の財物」…の概念をいかに解釈すべきかについては…保護法益に関する自らの考え方を端的に論じ…故意の成否にどのように影響するのかを論じなければならない」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月11日
財産罪の保護法益につき本権説や中間説に立つと、窃盗犯人から直後に取り戻す場合は242条の適用がなく「他人の財物」に当たらないことになるので、甲は「他人の財物」の認識を欠くことになる。従って、この点が論点だ、ということですが、これを書いた人は多くはないようです。
 
1月11日
出題趣旨は、これを違法性の錯誤と混同したのではないか、と思っているようで、この点を非常に強調しています。しかし、私はそうでもないように思います。判例が所持説なので、この点はあまり問題にならないと思い、より重要な誤想防衛又は誤想自救行為の方に紙幅を割いたのでしょう。
 
1月11日
「甲の罪責を論ずるに当たっては,犯罪事実の認識の問題と,錯誤の問題を明確に区別して論ずることができるかが問われており,刑法の体系的理解を試すものといえる」
「構成要件該当事実の認識の問題であることを的確に把握することが求められる(違法性阻却事由に関する錯誤の問題ではない。)」
 
1月11日
当サイトでも、7月の段階で、この論点よりも誤想防衛の当てはめの方を書くべきだ、と説明していました。今でも考え方は変わっていません。
https://twitter.com/studyweb5/stats/618513900795920385…
 
1月11日
出題趣旨が出た後になると「当然書くべきです」と言いたくなるところです。しかし、事実の評価ではなく、保護法益論という抽象論で、しかも、判例が所持説で固まっているところについて、本権説や中間説に立った場合にだけ結論が変わる論点を展開するのは怖いという感覚は、やはり大事だと思います。
 
1月11日
なお、出題趣旨も、保護法益論を大展開せよ、と言っているのではありません。「保護法益に関する自らの考え方を端的に論じ」とあるように、保護法益についての自説の理由付けは求められていません。例えば、「財産罪の保護法益は所持そのものである」のように、言い切る形で構わなかったのでしょう。
 
 
2016年01月12日(火)4 tweets
 
1月12日
『2016年01月11日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43244248.html…
 
1月12日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。甲の誤信についての誤想防衛又は誤想自救行為について、出題趣旨は、主に傷害罪との関係で問題になると考えていたようです。出題者としては、窃盗については中間説に立って故意を否定することを本筋と考えていたのでしょう。また、強盗で考えた場合にも触れています。
 
1月12日
「甲は,甲のかばんをCが盗んだと認識していることから,このように認識している点が傷害罪の成否にどのように影響するかを論ずる必要がある(窃盗の故意を認める場合には,窃盗罪と傷害罪の双方についての成否が問題となろう」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月12日
「甲のCに対する暴行を強盗罪における暴行と認定する場合には,強盗罪の故意を肯定するのであれば強盗致傷罪の成否を問題とすることになろうし,強盗罪の故意を否定するのであれば致傷の点を傷害罪の成否として論ずることになろう」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
 
2016年01月13日(水)7 tweets
 
1月13日
『2016年01月12日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43249072.html…
 
1月13日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。甲の認識が正当防衛なのか自救行為なのかについては、迷った人が多いと思います。出題趣旨は、その区別を急迫性の有無に求めているようです。これは、「正当防衛をまず検討し、それが成立しないときに自救行為を検討する」とする考え方です。
 
1月13日
「正当防衛ないし自救行為…のいずれであるかは,甲の認識どおりの事態,すなわち,Cが甲のかばんを駅待合室から持ち去ったという事態が存在すると仮定した場合,その事態が急迫不正の侵害に当たるかどうかという点を検討することになる」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月13日
「急迫性を肯定した場合は誤想防衛の問題となり,急迫性を否定した場合には誤解によって自救行為と認識していた場合(以下,便宜上「誤想自救行為」という。)の問題となる」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月13日
まずは明文のある正当防衛を検討し、それがダメなら自救行為。1つの素直な考え方です。ただし、唯一の考え方ではありません。正当防衛は事前救済、自救行為は事後救済と位置付け、窃盗の既遂未遂で区別することもあり得ます。奪取を防ぐのが正当防衛、奪取後の取戻しは自救行為ということです。
 
1月13日
また、物の取戻しは正当防衛における反撃とは性質を異にするとして、一律に自救行為の問題とするという考え方もあり得るでしょう。いずれにせよ、ここは学説が固まっている所ではなく、多くの受験生が事前準備をしている所でもありませんから、深入りしない方がよいと思います。
 
1月13日
実戦的には、普段から論じ慣れており、要件が明確で、問題文の事情を使い易い誤想防衛に決め打ちするのが賢いと思います。誤想防衛か誤想自救行為かという抽象論より、当てはめで勝負をしたい。参考答案も、その戦略で書いています。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
 
2016年01月14日(木)4 tweets
 
1月14日
『2016年01月13日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43252918.html…
 
1月14日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。甲の認識が正当防衛なのか自救行為なのかという点につき、出題趣旨は、窃盗の既遂時期を考慮すべきであるが、それは急迫性の判断には直結しないと言っています。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月14日
「侵害の急迫性に関しては,窃盗罪の既遂時期との関係を意識する必要がある。すなわち,本件において…窃盗は既遂に至っていると考えられるが,窃盗の既遂時期と侵害の急迫性の終了時期は必ずしも一致しないことを意識して急迫性の有無を論じることが期待されている」
 
1月14日
窃盗が既遂であっても急迫性が認められるとした裁判例として、高松高判平12・10・19)があり、この点は一応短答知識です。とはいえ、これを知識として覚えている人は少数でしょう。この点を整理して論じることは、優秀レベルで、実戦的には気にする必要はないと思います。
 
 
2016年01月15日(金)7 tweets
 
1月15日
『2016年01月14日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43257033.html…
 
1月15日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。違法性阻却事由の錯誤について、「錯誤の刑法上の位置付け」について「論拠を示して論ずる」ことが必要であるとしています。理論的には、事実の錯誤とする(厳格・制限)故意説・制限責任説・消極的構成要件論と、法律の錯誤とする厳格責任説の対立を指しています。
 
1月15日
「違法性阻却事由に関する錯誤の刑法上の位置付けについて,論拠を示して論ずることとなる。具体的には,故意責任が認められる理由を示し,誤想防衛ないし誤想自救行為が故意責任にどのように影響するのかを論ずることとなろう」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月15日
ここは、制限故意説についての定番の予備校論証があります。
「故意責任の本質は規範に直面しつつ敢えて踏み越えた反規範的人格態度に対する道義的批難であるところ、違法性阻却事由の認識がある場合には規範に直面していない以上、責任故意が阻却される」
というものです。
 
1月15日
出題趣旨が「錯誤の刑法上の位置付け」や「故意責任が認められる理由」を要求しているのをみると、「あの予備校論証はやっぱり必要だ」ということになりそうです。しかし、過去の再現答案を見る限り、この種の抽象論はなくても上位になっています。ですから、この部分の配点は低いはずです。
 
1月15日
前記の論証は、読点を含めないで86文字ですから、以前紹介した1文字1.5秒で換算すると、2分9秒で書ける計算です。その程度なら書いて構わないという考え方もあるでしょうが、その時間を当てはめの事実の摘示に充てるべきだというのが、当サイトの考え方です。
 
1月15日
なお、近時の行為無価値の立場は、故意を違法要素と考えますから、「故意責任」という語ではなく「故意違法」又は「故意不法」という語を用います。しかし、出題趣旨は一貫して「故意責任」とのみ記載していて、この立場に対する配慮がされていません。この点は、やや気になるところです。
 
 
2016年01月16日(土)9 tweets
 
1月16日
『2016年01月15日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43261114.html…
 
1月16日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。違法性阻却事由の錯誤の刑法上の位置付けを論じた後は、要件に該当するか検討すべきであるとしていますが、注意すべきは、「具体的な事実を挙げて」とされている点です。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月16日
「甲の認識していた事態が正当防衛ないし自救行為の要件に該当するかを個別具体的に検討する必要がある。特に…甲の行為が,相当性,必要性を有する行為といえるかを,問題文にある具体的な事実を挙げて検討することが求められる」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月16日
過去の再現答案をみる限り、違法性阻却事由の錯誤の刑法上の位置付けのような抽象論は、なくても上位になっています。しかし、当てはめで具体的な事実を問題文から引用していない答案は、ほとんど上位にはなっていません。ですから、この部分にかなりの配点があるとみるべきです。
 
1月16日
かつての旧試験では、抽象論にかなりの配点があり、覚えた論証を貼り付けていれば、当てはめは雑でも、それなりの上位になっていました。しかし、新試験では逆になっています。理由付けはほとんど書いていなくても、規範を示して問題文の事実を的確に摘示していれば合格答案になっています。
 
1月16日
出題趣旨には「違法性阻却事由に関する錯誤の刑法上の位置付けについて,論拠を示して論ずること」と「問題文にある具体的な事実を挙げて検討すること」が並列的に書いてあります。あたかも、どちらも同じ配点にみえる。しかし、実際には、後者の方にあり得ないような配点があると読むべきなのです。
 
1月16日
よく、「出題趣旨に書いてあるでしょう。だから理由付けも必要です」と言われることがあります。しかし、それは優秀・良好の領域まで含んだ話です。不合格になる人は、それ以前の段階で躓いている。それは、規範の明示と事実の摘示です。まずは、これを確実にこなせるようになるべきです。
 
1月16日
注意したいのは、出題趣旨に、「問題文にある具体的な事実を挙げて」とあるように、問題文の事実を答案に書き写して示す必要があるということです。よく「評価をすれば事実は書き写す必要がない」と思っている人がいます。しかし、評価の対象となる事実が明示されなければ、点は付きません。
 
1月16日
ですから、点を取るためには、物凄いスピードで答案に事実を書き写す力が必要になるのです。以前に、「ほぼ速書きの試験」と言ったのは、そういうことです。論文が若手有利であるのも、書くスピード、筆力の差に原因の1つがあります。普段から、書くスピードを意識して演習する必要があるでしょう。
 
 
2016年01月17日(日)3 tweets
 
1月17日
『2016年01月16日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43264812.html…
 
1月17日
司法出題趣旨刑法甲の罪責。誤想防衛又は誤想自救行為を肯定して故意を否定する場合、過失犯が問題になる旨が示されています。厳格責任説からは、責任が否定されて過失犯の成立余地はないわけですが、同説からの帰結についての記述は全くありません。近時の行為無価値論は無視されている印象です。
 
1月17日
「誤想防衛ないし誤想自救行為として,傷害罪の故意を否定する場合,さらに,侵害について誤信した点についての過失を検討する必要がある。これに過失があるとすれば,過失傷害罪が成立することとなろう」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
 
2016年01月18日(月)9 tweets
 
1月18日
『2016年01月17日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43268634.html…
 
1月18日
「法科大学院における成績と司法試験における成績等の関連性の検証のために必要であるとして申請のあった法科大学院に対し,同検証作業に必要となる平成27年司法試験の受験状況に関する情報を提供することが決定された」
http://www.moj.go.jp/content/00116923.pdf…
 
1月18日
「自校修了者の司法試験の受験状況等の分析…に用いるとして申請のあった法科大学院に対し,これに必要となる平成27年司法試験の受験状況に関する情報(受験者氏名,受験回数,試験の合否)を提供することが決定された」
http://www.moj.go.jp/content/00116923.pdf…
 
1月18日
司法出題趣旨刑法乙の罪責。共謀共同正犯の肯否については、「判例の立場を踏まえて、簡潔に論ずれば足りる」としています。これは要するに、簡単に肯定しろ、という意味です。一応否定説もある以上、「簡潔に肯定すべきである」とは書けないので、こういう表現になっているのですね。
 
1月18日
「乙は,一部の実行行為さえしていないから,いわゆる共謀共同正犯の肯否が問題となり得るが,これは判例の立場を踏まえて,簡潔に論ずれば足りる」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月18日
実戦的には、肯定説を論じる必要もなく、端的に共謀共同正犯の成立要件を示して、当てはめに入ればよいと思います。参考答案も、そのような書き方をしています。肯定説を論じる余裕があるなら、当てはめに割くべきです。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
1月18日
「書けば加点されるのだから書いた方がいいのでは?」と思う人がいます。そういう人は、時間制限のある試験であることを忘れています。時間内に書ける総量は、限られている。何かを書けば、何かが書けないのです。「理由付けも規範も事実の摘示も、全部やればいい」というのは、現実にはあり得ません。
 
1月18日
時間内に書ける総量が限られている以上、優先順位の高いものから書いていくしかない。文字数当たりの得点が確実かつ高いものは何か、過去の再現答案等から、規範と事実は加点がほぼ確実で、配点も異常に高いということがわかっている。ならば、それを優先して書けばいい。それだけのことなのです。
 
1月18日
共謀共同正犯の肯否は、それなりの確実性で配点はあると分かるものの、その配点はかなり低いために、優先順位が低い。これとは逆なものが、応用論点です。当てるとそれなりに加点がありそうだが、確実性が非常に低い。単なる論点の捏造に終わる可能性の高さを考えると、優先順位は低くなるのです。
 
2016年01月19日(火)8 tweets
 
1月19日
『2016年01月18日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43272820.html…
 
1月19日
司法出題趣旨刑法乙の罪責。共謀共同正犯と教唆犯の区別の書き方が示されています。すなわち、まずは共謀共同正犯の成立要件を示し、それに当てはまらない場合に初めて教唆を検討するという形で区別される、ということです。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月19日
「共謀共同正犯と教唆犯の区別について…共謀共同正犯の成立根拠について触れた上,成立するための要件を示すことによって共同正犯と教唆犯の区別基準を明示した上,その要件に具体的な事実を当てはめることが必要である」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月19日
「乙について教唆犯とする場合でも,共同正犯と教唆犯の区別基準を踏まえた論述によって共同正犯を否定した上で,教唆犯の要件に事実を当てはめることが求められている」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月19日
共謀共同正犯の成立要件を明示しない答案は、基本的に即不良だと思ってよいでしょう。現在の司法試験は、この点では異常に厳しい。逆に言えば、信じられないような配点が、この部分にあります。要件(規範)を明示せずに当てはめをするクセのある人は、まずそこから直しましょう。
 
1月19日
具体的事実を問題文から摘示せずに当てはめをしている答案も、即不良だと思っておくべきです。「本件では、甲と乙が横領について共謀したといえるので」などといきなり書いてしまう。そのような認定を基礎付ける事実を、明示しなければなりません。実力のある不合格者の多くが、ここでやられています。
 
1月19日
「分かっていても時間が足りなかったので」と言う人がいます。しかし、それは、今の論文試験が速書き試験であることを認識できていない。もともと、時間は足りないのです。だから、余計なことは極力書かずに、全速力で規範と事実を書く。その意識が足りないから、時間不足になるのです。
 
1月19日
時間不足が原因で不合格になった人は、どんなに法の知識や本質を学んだとしても、早く書く訓練をしない限り、翌年また同じように不合格になります。「受かりにくい人は、何度受けても受からない」法則です。試験中のタイムマネジメントも含め、時間内に書く訓練をしない限り受かりません。
 
 
2016年01月20日(水)7 tweets
 
1月20日
『2016年01月19日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43276874.html…
 
1月20日
「平成28年司法試験予備試験受験願書の交付について
(1)交付期間
平成28年1月4日(月)から同年1月29日(金)まで
(出願期間:平成28年1月18日(月)から同年1月29日(金)まで)」
http://www.moj.go.jp/content/00116367.pdf…
 
1月20日
司法出題趣旨刑法乙の罪責。甲の行為と共謀又は教唆との因果関係を検討する必要があるとしています。出題趣旨は明示しませんが、教唆についてのゴットン師事件(最判昭25・7・11)を参照すべきところです。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/etail2?id=54334…
 
1月20日
「甲が新薬の書類を持ち出した当時,甲は新薬開発部を異動しており,新薬の書類に対する管理権を失っていたことから,「甲自身が管理する新薬の書類を持ち出す。」という乙の持ち掛けに対して,甲は,「後任部長が管理する新薬の書類を持ち出す。」行為をしたことになる」
 
1月20日
「そこで,甲の同行為が甲乙間の共謀ないし乙の教唆行為によるものかどうかが問題となるが,この点は,乙の持ち掛けと甲の行為との間に因果性が認められることを簡潔に述べれば足りると思われる」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月20日
ここは気付きにくい所ですから、結果的に優秀・良好の領域でしょう。落としても問題はないと思います。「簡潔に述べれば足りる」とあるとおり、大展開する所でもありません。参考答案は、ゴットン師事件を引いて簡単に当てはめています。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
1月20日
参考答案は、当サイトの定義趣旨論証集を貼り付けているだけなのですが、受験生の多くが、この規範を準備していないようです。旧試験時代のように「論証」するようなものではありませんが、現在の司法試験では、この種の規範も事前準備すべきです。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00J97LLDA
 
 
2016年01月21日(木)10 tweets
 
1月21日
『2016年01月20日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43280717.html…
 
1月21日
司法出題趣旨刑法乙の罪責。乙の認識が業務上横領であるのに対し、甲の行為を窃盗だとした場合には抽象的事実の錯誤の問題となる点について、出題趣旨は、どのように論ずべきかを示しています。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月21日
「甲乙間の共謀ないし乙の教唆行為の際には,甲は実際に新薬の書類を業務上管理しており,乙の認識(故意)は,業務上横領罪のそれであったところ,甲の行為が業務上横領ではなく,窃盗罪であるとした場合,乙の認識と甲の行為との間に齟齬が生じていることから,錯誤の問題を論じる必要がある」
 
1月21日
「抽象的事実の錯誤であるから…故意責任の本質について触れて一般論を簡潔に示した上,業務上横領罪と窃盗罪との関係を論じることになる。その際,両罪の構成要件の重なり合いがどのような基準で判断されるのかを論ずることになろう」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月21日
「故意責任の本質について触れて一般論」を示すという部分は、著名な予備校論証があります。
「故意責任の本質は反規範的人格態度に対する道義的批難であり、規範は構成要件で与えられているから、構成要件が同一又は重なり合う範囲において故意を認めるべきである」というものです。
 
1月21日
数年前なら、当サイトでも当然書くべき、と言っていました。上位答案は当然のように前記論証の吐き出しをやっていたからです。実際、初期の予備試験において、当サイトでは、素直に予備校論証を吐き出すべきだ、という趣旨の記事を書いていたのです。
http://studyweb5.seesaa.net/article/26542678.html…
 
1月21日
しかし、ここ数年で、急速に事情が変わってきたと感じています。今でも論証を貼って事実も拾って上位になる人はいますが、端的に規範を書いて、問題文の事実を引いているだけの上位答案も多数みられるようになってきた。これは、そのような論証を貼らなくても、上位になり得ることを意味しています。
 
1月21日
1つには、旧試験時代の論証を利用しない世代の参加という世代交代の要素もあるでしょう。昔は規範を明示する際には必ず論証するクセが付いていたが、最近の上位者にはそういう習慣のない者も増えてきた。その結果、必ずしも論証が必要ないことが明らかになってきたということでしょう。
 
1月21日
では、前記論証が無意味かといえば、そうではない。出題趣旨に明示されている以上、一定の加点があるはずです。しかし、その加点の程度が、規範と事実の摘示に比較してかなり小さい。そのため、論証によって事実の摘示が犠牲になると、評価が下がってしまうという現象が起きるのだと思います。
 
1月21日
規範と事実を書いてもなお時間に余裕があれば、理由付け(論証)を書いた方がよいのか。その場合は事実の評価の方を優先すべきです。理由付けと事実の評価であれば、後者を優先した方が上位になり易い。結局、理由付けを書く機会はほとんどないのです。書く機会のないものは、覚える必要もありません。
 
 
2016年01月22日(金)6 tweets
 
1月22日
『2016年01月21日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43284489.html…
 
1月22日
司法出題趣旨刑法乙の罪責。業務上横領と窃盗の重なり合いを肯定するとして、どちらが軽い罪なのか。出題趣旨は結論を示していませんが、刑法施行法3条3項を根拠に重点的対照主義を採るのが判例(最判昭23・4・8)です。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/etail2?id=56415…
 
1月22日
「業務上横領罪と窃盗罪とは懲役刑については同一の法定刑が定められているものの,窃盗罪には罰金刑が選択刑として規定されていることを踏まえ,そのいずれが軽い罪に当たるのか述べることが求められる」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月22日
本問の場合には、全体的対照主義なら窃盗が軽く、重点的対照主義なら犯情(刑法10条3項)で決することになります。重点的対照主義と全体的対照主義については、当サイトの以前の記事(横領と背任の区別の項)で説明しています。
http://studyweb5.seesaa.net/article/29669250.html…
 
1月22日
以前の記事を参照して頂ければ分かるとおり、これを論文で問うというのはちょっと考えられないという感じです。短答知識としても、現在では知らない人の方が多数派でしょう。この点について触れられなくても、全く問題ありません。
http://studyweb5.seesaa.net/article/29669250.html…
 
1月22日
なお、当時の当サイトの記事では、構成要件の定義(規範)を単に吐き出して当てはめるより基本論点の論証をした方が良いという立場を採っています。しかし、現在では、これが逆転している。論証(理由付け)よりも、規範の明示と事実の摘示を優先すべきだ、というのが、現在の当サイトの立場です。
 
 
2016年01月23日(土)6 tweets
 
1月23日
『2016年01月22日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43288352.html…
 
1月23日
司法出題趣旨刑法乙の罪責。業務上横領と窃盗の重なり合いを考える前に65条を適用し、単純横領と窃盗で考えた人も、相当数いたと思います。当サイトの参考答案も、その考え方です。出題趣旨は、どちらでもよいとしています。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
1月23日
「刑法65条の規定によって…業務上横領罪と窃盗罪の比較ではなく,単純横領罪と窃盗罪を比較するという考え方もあり得るであろう。いずれにしても,自己が取る結論を筋立てて論ずることが求められる」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月23日
乙の認識どおりの事実があったとして考えてみます。その場合は単なる業務上横領の共同正犯ですから、65条の適用により、通説によれば、甲は業務上横領、乙は単純横領となる。従って、このような事実を認識していた乙は、単純横領の限度で規範に直面していたといえます。
 
1月23日
他方、客観的には、乙は、共謀に基づいてされた窃盗に正犯としての因果的寄与を及ぼしたのだから、客観的に帰責すべきは窃盗である。従って、単純横領(主観)と窃盗(客観)を比較するというのが、素直な理論的帰結のように思います。ただ、答案ではもっと簡単に書いてよいでしょう。
 
1月23日
なお、出題趣旨には、共同正犯の本質(部分的犯罪共同説)との関係は全く言及されていません。しかし、理論的には、これも問題になるでしょう。結果的に、本問では配点対象になっていなかったかもしれませんが、常に問題にならないと考えるのは危険です。
 
 
2016年01月24日(日)6 tweets
 
1月24日
『2016年01月23日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43292182.html…
 
1月24日
司法出題趣旨刑法丙の罪責。かばんに対する甲の占有について、単に事実を羅列するのではなく、整理して論じるべきであるとしています。これは、当サイトの言い方で表現すれば、「規範を明示してから当てはめろ」ということです。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月24日
「問題文には,甲の占有に関する事実が挙げられているが,これらの事実を単に羅列するのではなく,占有の要件(占有の事実及び占有の意思)に即して,必要かつ十分な事実を整理して論ずることが求められる」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月24日
当てはめで、どうしても事実の羅列のようになってしまう、という悩みのある人は、明確な規範を立てていないことが原因です。明確な規範があれば、各事実が規範のどの要素に該当するか、その住み分けがはっきりします。そのような規範の明示がないから、単なる羅列になってしまうのです。
 
1月24日
出題趣旨は、占有の要件として、占有の事実及び占有の意思を挙げるだけですが、ここはそれだけでは足りない。本問の場合に妥当する下位規範を示すべきでしょう。あるいは、最低限、考慮要素を示すべきです。場所的時間的近接性、占有者の意識、不特定多数人の出入りの可否、遮蔽の有無等です。
 
1月24日
参考答案は、定義趣旨論証集をそのまま貼っただけですが、公園ポシェット事件の判旨を規範化したものを用いています。事実の摘示も含め、ほぼコピペだけで構成されたような文章ですが、整理された論述にみえるでしょう。これが、規範明示の効果です。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
 
2016年01月25日(月)3 tweets
 
1月25日
『2016年01月24日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43296185.html…
 
1月25日
平成28年司法試験の出願状況について(速報値)
http://www.moj.go.jp/content/00117078.pdf…
 
1月25日
適性試験を巡る近時の意見・見解について(日弁連法務研究財団)
https://www.jlf.or.jp/pdf/20160119_tkisei_opinion.pdf…
 
 
2016年01月26日(火)7 tweets
 
1月26日
『2016年01月25日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43300375.html…
 
1月26日
司法出題趣旨刑法丙の罪責。丙の不法領得の意思について、出題趣旨は、結論はどちらでもよいが、その内容を明示して当てはめる形式で書け、と言っています。当サイトの参考答案は、支払督促正本廃棄事件判例の示した内容を明示して当てはめています。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
1月26日
「不法領得の意思について,その概念を述べるだけでなく,その内容にも踏み込んで論述し,これに丙の意思を当てはめて,丙に不法領得の意思を認めることができるのかを論ずることが肝要である」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月26日
「刑務所志願の事案については,下級審の裁判例でも結論が分かれているところであり,いずれの結論を採るにしても,自らが提示した不法領得の意思の概念を踏まえて事実を当てはめて結論することが求められている」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月26日
受かりにくい人は、不法領得の意思の内容を書かずに、いきなり当てはめに入ってしまいます。その書き方だと、どんなに自分なりの評価を加えて書いても、得点は伸びません。これが「規範の明示」の重要性です。当てはめに入る前に、「○○とは~」と書く癖を付けましょう。
 
1月26日
当サイトの定義趣旨論証集は、そのような規範を手広く、端的な形で収録したものです。参考答案はそれを貼っただけですが、これだけで差が付いてしまうものなのです。「規範を明示」するためには「規範を記憶」していなければなりません。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
1月26日
なお、出題趣旨は「近時の判例として最決平16・11・30刑集58巻8号1005頁がある」としていますが、これは、参考答案でも引用している支払督促正本廃棄事件判例を指しています。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/etail2?id=50087…
 
2016年01月27日(水)2 tweets
 
1月27日
『2016年01月26日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43304348.html…
 
1月27日
『今年の出願者数からわかること』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43305265.html…
 
 
2016年01月28日(木)7 tweets
 
1月28日
『2016年01月27日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43308611.html…
 
1月28日
司法出題趣旨刑法丙の不法領得の意思。出題趣旨は、丙には何らかの用途に用いる意思もないことを前提としています。しかし、「交番に持ち込んで逮捕してもらう際に見せる用途」があるともいえるでしょう。参考答案はその考え方で書いています。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
1月28日
「丙が甲のかばんを持ち去った理由は,これを交番に持ち込んで逮捕してもらおうというものであり,丙には,甲のかばんをその本来の用法に使用する意思はおろか,何らかの用途に使用する意思もなかった」
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月28日
かばんを自ら窃盗をした証拠として提示することは、かばん本来の用法ではありませんが、証拠物としての用途があることは否定し難いように思います。出題趣旨が何らかの用途に使用する意思もないと断定していることには、疑問を感じます。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月28日
なお、「何らかの用途」という文言は、出題趣旨が「近時の判例」として挙げる支払督促正本廃棄事件判例(最決平16・11・30)が用いる文言です。参考答案は、この判例に依拠した規範を用いています。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42068534.html…
 
1月28日
「郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等について,廃棄するだけで外に何らかの用途に利用,処分する意思がなかった場合には,支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできない」
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/etail2?id=50087…
 
1月28日
それから、出題趣旨が、不法領得の意思(のうちの利用処分意思)不要説を全く意識していない点にも注意が必要です。判例が必要説を採っている以上、不要説を採って全くこの点を検討しない答案は、評価を下げるでしょう。現在の司法試験は、判例に依拠して検討するのが基本です。
 
 
2016年01月29日(金)6 tweets
 
1月29日
『2016年01月28日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43312637.html…
 
1月29日
司法出題趣旨刑法丙の罪責。丙に自首が成立するかも、1つの論点だったことが出題趣旨に示されています。しかし、この点に触れた人はほとんどいないでしょう。出題趣旨も「なお」書きで簡単に触れているに過ぎません。実戦的には、触れなくてよい論点ではないかと思います。
 
1月29日
「なお,丙に窃盗罪あるいは器物損壊罪が成立するとした場合,丙は,その事実を直ちに交番の警察官に申告していることから,自首の成否が問題となり得るところである」
http://www.moj.go.jp/content/00114429.pdf…
 
1月29日
理論的には、自首の任意的減軽の根拠を責任減少に求める場合には、当初の計画どおり警察に出頭している以上、犯行後に非難可能性を減少させる事情であるとは認められないとして、自首に当たらないという解釈が一応可能でしょう。
 
1月29日
他方、捜査が容易になることを狙った政策的規定と考える場合(東京高判平17・6・22)には、当初の計画どおり警察に出頭する場合は、そのような政策的配慮の必要がないとして自首に当たらないとするか、一応捜査は容易になるから自首に当たるとするか、考え方が分かれ得るように思います。
 
1月29日
理論面に踏み込まない場合には、「自首とは、自己の犯罪事実の自発的申告をいう。本件では…」などと自分なりに定義を書いた上で、当てはめる書き方もあります。しかしいずれにせよ、ここは無理をして書きに行くような所ではありません。これを書く時間を別の基本論点に割くべきです。
 
 
2016年01月30日(土)1 tweet
 
1月30日
『2016年01月29日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43316979.html…
 
 
2016年01月31日(日)6 tweets
 
1月31日
『2016年01月30日のtweet』司法試験・法科大学院(ロースクール)情報|http://studyweb5.seesaa.net/article/43320751.html…
 
1月31日
司法出題趣旨刑訴法設問1。強制処分と任意処分の区別が問題となる理由が示されています。問題は、これを答案にも書くかどうかです。優秀・良好を狙うのでない限り、書かなくてよいというのが、当サイトの立場です。
http://www.moj.go.jp/content/00116641.pdf…
 
1月31日
「捜査活動がいわゆる強制処分に該当する場合,同法にそれを許す特別の根拠規定がある場合に限って許されることになり(強制処分法定主義),当該捜査活動が強制処分と位置付けられるか,任意処分と位置付けられるかによって,その法的規律の在り方が異なることになるため,両者の区別が問題となる」
 
1月31日
予備校等の解答例等では、こういったことについても、冒頭の問題提起として書いてあることが多いのではないかと思います。しかし、再現等をみる限り、これは合否を分けるものではない。普段から、規範と事実を書き切る余裕のない人は、無理をしてこれを書きに行く必要はないと思います。
 
1月31日
受かりにくい人は、こういった問題提起を詳しく書いて時間不足になり、肝心の規範明示と事実抽出がおろそかになって、大きく評価を落とすという傾向があります。そういう人は、予備校等の解答例などを参考にして、「…が問題になる」といった問題提起をするクセが付いてしまっているのです。
 
1月31日
規範明示と事実抽出を難なくこなし、さらに問題提起も的確にできるのであれば、それでよい。しかし、その域に達しない人は、端的に規範→当てはめのスタイルで書く方が無難に合格レベルに達します。具体的には、参考答案の書き方を参考にして下さい。
http://studyweb5.seesaa.net/article/42083146.html…

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