平成28年予備試験短答式試験の結果について(1)

1.平成28年予備試験短答式試験の結果が公表されました。合格点は165点合格者数は2426人受験者合格率は、23.2%でした。

2.以下は、合格点、合格者数等の推移です。

受験者数 短答
合格者数
短答
合格率
短答
合格点
23 6477 1339 20.6% 165
24 7183 1711 23.8% 165
25 9224 2017 21.8% 170
26 10347 2018 19.5% 170
27 10334 2294 22.1% 170
28 10442 2426 23.2% 165

 平成26年以降、受験者数はほぼ横ばいなのに、短答合格者数がどんどん増えている。しかも、今年は合格点まで下がった。これだけをみると、「法務省は合格点を下げてまで合格者数を増やそうとしている。」ようにみえる。しかし、本当にそうなのでしょうか。

3.平成25年以降、予備試験の短答合格点は、あるルールに従って決定されています。それは、「5点刻みで最初に2000人を超えた得点が合格点となる」というルールです。当サイトでは、これを「2000人基準」と呼んできました(「平成27年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。今年は、このルールが破られたのでしょうか。以下は、法務省の得点別人員から、合格点前後の人員をまとめたものです。

得点 人員 累計
人員
170 86 1997
169 91 2088
168 79 2167
167 97 2264
166 79 2343
165 83 2426

 従来の合格点だった170点の累計人員をみると、1997人。惜しい。しかし、「最初に2000人を超えた得点」に当たらない以上、170点は合格点とはなりません。そして、165点で累計人員が2426人となり、「5点刻みで最初に2000人を超えた得点」となります。だから、165点が合格点になった。それだけのことです。ですから、「法務省は合格点を下げてまで合格者数を増やそうとしている。」などということはありません。今回の合格者数だけをみて、「法務省は予備試験合格者数を増やそうとしている。その意図は~。」などという解説が一部でなされるかもしれませんが、そのような解説には意味はありません。

4.現在のところ、予備試験の論文の合格点の決定基準についての当サイトの仮説は、

(1)210点に累計で400人以上存在しない場合は、210点が合格点となる。
(2)210点に累計で400人以上存在する場合は、5点刻みで初めて400人を超える点数が合格点となる。

というものです(「平成27年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。これによれば、210点以上を取る人が何人いるかが重要になります。その際に気になるのは、昨年に司法試験と予備試験の双方で生じた、「特に理由のない論文の平均点の上昇」という現象です(「平成27年司法試験の結果について(3)」、「平成27年予備試験論文式試験の結果について(2)」)。この現象が生じた原因についての当サイトの仮説は、考査委員間で得点分布の目安を守ろうという申し合わせがあったのではないか、ということでした。これが正しいとすれば、その方針は、今年も引き続きとられることになるでしょうから、今年も高めの平均点になる。その結果、昨年と同様に、210点以上を取る人が400人を超える可能性が高いでしょう。その場合、上記の(2)の基準が適用されて、合格者数は、昨年同様に400人強になる。ただ、短答合格者数が多いので、論文の競争率という意味での難易度は、昨年より高めになるでしょう。

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