平成30年予備試験論文式商法の補足説明

1 今年の商法は、応用的な論点や、商法特有の論理を問う部分を含んでいるので、それらの点について、補足的な説明をしておきたいと思います。

2 設問1は、全体的に応用的な論点を問う問題でした。主な論点は、以下の2つです。

 ① 株主提案権の株式保有要件はどの時点で具備することを要するか
 ② 監査等委員取締役選任議案を株主が提出する場合にも監査等委員会の同意(344条の2第1項)を要するか

(1)①は、新司法試験サンプル問題民事系論文式試験問題第2問でも出題された論点でした。

 

新司法試験サンプル問題民事系論文式試験問題第2問より引用。太字強調は筆者。)

 当社の株主数は,単元未満株主も含めますと約3,000人ですが,単元株主の数は,約1,500人です。単元未満株主の有する株式の合計数は,10万株です

 (中略)

 当社は,工場設備の大規模な更新を計画していますが,内部留保金の取崩しでは費用の全額を賄えないため,平成16年5月1日を払込期日とする20万株の第三者割当増資を行い,当社の主要取引先であるB社に引き受けていただきました。この新株発行により,当社の発行済株式総数は220万株,資本の額は110億円になりました
 さて,甲弁護士は,平成16年6月29日に開催される当社の株主総会の検査役になられたとのことですが,この株主総会は定時総会です。この株主総会には,株主のCさんから株主提案権が行使されていますCさんが平成16年3月31日現在で名義書換をしていた株式数は2万株で,同数の株式を平成15年3月31日時点でも名義書換されていました。Cさんは,当社の従業員として永らく当社に勤務された方で,平成16年2月末で当社を退職されたのですが,今回の株主提案権の行使は,ご退職の際の当社の処遇にご不満がおありのためと承っております。

 (中略)

 なお,議場で「異議なし」と述べた株主の株式数は,B社を含め,少なく見積もっても35万株を下ることはなく,また,総会終了後に確認したところ,会社側提案の各議案に対しては,議決権行使書によって議決権を行使した株主のうち55万株が賛成であった。

(引用終わり)

 

 応用論点が問われた場合には、その前提となる基本事項をしっかり解答しているかどうかで、合否が分かれます。株主提案権の一般的な要件を、問題文の事情に即してきちんと検討していることが、本問における前提となる基本事項に当たります。その上で、応用部分については、問題意識に触れられている程度でよい。本問の場合、この論点自体を知らなくても、問題文5の事情(丙社に対する募集株式の発行及び基準日後議決権行使の許容)は一体何なんだ、ということを考えているうちに、「基準日の時点及び請求時には保有要件を満たしているが、総会当日には保有要件に相当する議決権を有していない。」という問題意識に気付くことができたでしょう。この問題意識を指摘できるところまでいっていれば、十分な合格答案だと思います。
 もっとも、上位者であれば、もう少し頑張れるところです。本問における①の論点の「正解」は、現場で条文を素直に読めば、一応読み取ることが可能でした。

 

(会社法。太字強調は筆者。)
303条2項 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。

305条1項 株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知すること(第二百九十九条第二項又は第三項の通知をする場合にあっては、その通知に記載し、又は記録すること)を請求することができる。ただし、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、当該請求をすることができる

 

 条文をきちんと読むと、「~の株主に限り…請求することができる。」という規定の仕方になっていることがわかります。一般に、「〇〇の要件を満たす場合に限り、請求することができる。」という条文があれば、それは請求の時に要件を満たしておくべきことを意味します。そうすると、303条2項や305条1項についても、請求をする時点を基準として、そこから6か月前からの継続保有があるか、という読み方をするのが自然です。また、その請求によって、株主提案に係る事項が議題を構成するなどの効果が生じるわけですから、その後に保有要件に相当する議決権を失ったことによって、その効果が遡って失われると考えるのは、自然な解釈とはいえないでしょう。そうだとすると、本問の場合には、請求日である平成29年4月10日の時点で保有要件を充足しているわけですから、その後に保有要件に相当する議決権に満たない状況が生じたとしても、何ら影響はない、という結論になるのです。厳密には、基準日より前に請求したが、その後株式を譲渡して基準日に株主ではなくなっていたような場合にまで認める必要はないだろうということから、「請求日と基準日のいずれか遅い日」に保有要件を満たす必要があるとするのが実務です。本問の場合は、基準日後に請求していますので、いずれにしても請求日を基準にすることになります。
 仮に、株主総会当日に保有要件を満たす必要がある、とする見解を採用した場合には、丙社に基準日後株式の議決権行使が認められたことによって、Dは総会当日に保有要件を欠くに至っているのだから、124条4項ただし書の(類推)適用があるのではないか、という点を検討することになるでしょう。

 

(会社法124条4項。太字強調は筆者。)
 基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない

 

 124条4項は、基準日制度の趣旨が主に会社の事務処理の便宜にあることから、会社の側から議決権の行使を認めることは差し支えないが、基準日後に株式譲渡がされた場合に譲受人に議決権の行使を認めると、譲渡人(「当該株式の基準日株主」)から議決権を奪うことになるから、その場合は譲渡人の承諾が必要ですよ、という趣旨の規定です。ですから、単に基準日後の議決権行使が許容されたことによって他の一般株主の議決権比率が低下した、というだけでは、同項ただし書の(類推)適用はないのです。仮に、そのような場合にまで同ただし書の(類推)適用があるとすれば、基準日後に募集株式の発行がされた場合の引受人に議決権行使を認める場合には、他の全株主の承諾を得る必要があることになってしまいます。そういうわけで、本問のDについて124条4項ただし書を(類推)適用するためには、単に議決権比率が低下した、ということだけでは足りない。さらに、提案権を奪われる点で、基準日後に株式譲渡がされた場合の譲渡人と同様である、という点まで、本来であれば説明することを要するでしょう。もっとも、現場でこのことを的確に説明できた人はほとんどいないでしょうから、特に説明もなく同ただし書を(類推)適用したからといって、大きく評価を落とすことはないだろうと思います。
 逆に、基準日ないし請求日に保有要件を満たせば足りるとしながら、124条4項ただし書の(類推)適用を論じた場合には、評価を落とすおそれがあります。丙社が総会当日に議決権を行使できるようになったからといって、基準日や請求日に遡って丙社が株式を保有していたことにはならないわけですから、基準日ないし請求日に保有要件を満たせば足りると考えた以上、124条4項ただし書を論じるまでもなく、Dの請求は適法となるからです。これも、後記2の設問2のところで説明する商法特有の論理性の1つです。

 (2)②の監査等委員会の同意の要否については、わざわざ監査等委員会設置会社を出してきたこと、Dの提出する議案が監査等委員取締役選任議案であるということを意識した上で、監査役選任議案には監査役会の同意が必要だという基本知識を連想できれば、「監査等委員会設置会社にも同様の規定があるんじゃないの?」ということに、気付くことは可能だっただろうと思います。そのようにして、監査役選任議案に関する343条の付近を検索すると、344条の2を発見することができたでしょう。

 

(会社法)
343条1項 取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。
3項 監査役会設置会社における前二項の規定の適用については、第一項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは「監査役会」と、前項中「監査役は」とあるのは「監査役会は」とする。

344条の2第1項 取締役は、監査等委員会がある場合において、監査等委員である取締役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査等委員会の同意を得なければならない。

 

 この条文を発見できれば、本問ではDの提出する議案について監査等委員会の同意があるという事実がないので、甲社はこれを招集通知に記載しなくてもよいということではないか、という問題意識に気付くことができます。条文上の根拠としては、304条ただし書の法令違反に当たります。

 

(会社法304条。太字強調は筆者。)
 株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次条第一項において同じ。)につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない

 

 この論点についても、条文を素直に読めば、「正解」がわかります。すなわち、344条の2第1項は、「取締役は」と書いているから、株主提案の場合は同項の適用がない、ということです。本問の場合は、これだけでも十分合格答案でしょう。上位を狙うなら、もう少し実質的な理由を付してもよいかもしれません。例えば、同項の趣旨は監査等委員取締役の独立性を確保する点にあるところ、株主提案として監査等委員取締役選任議案が提出される場合には、会社との馴れ合いによって監査等委員会が十分に機能していない場合をも想定する必要があり、この場合にまで監査等委員会の同意を必要とすると、会社と馴れ合いの関係にある監査等委員会が同意を与えないことによって、会社にとって都合の悪い監査等委員取締役選任議案を葬り去ることができてしまうから、明文上の要求のない株主提案の場合にまで監査等委員会の同意を必要と考えるべきではない、というような感じです。
 もっとも、厳密には、株主提案の場合にすべて監査等委員会の同意を不要とすると、不都合が生じます。すなわち、会社提案による監査等委員取締役選任議案が監査等委員会の同意を得られなかった場合に、取締役が株主の資格で同じ議案を株主提案として提出することができてしまうからです。監査役選任議案について、このような問題が顕在化した事案が出題されたのが、平成24年司法試験です。

 

平成24年司法試験論文式民事系第2問より引用。太字強調は筆者。)

3.甲社は,平成20年秋頃の経営環境の著しい悪化を受け,その業績及び株価は,共に下落の一途をたどった。それにもかかわらず,Aは,効果的な経営立て直し策を実施できないままでいたため,甲社内外のAに対する評価は,日増しに厳しくなる一方であった。これに危機感を抱いたB,C及びDは,Aに対し,Aは取締役会長となって一線を退き,新たに外部から経営者を迎えて代表取締役社長とすることを求めた。結局,Aも,この求めに応じざるを得ず,Hを新たに甲社の代表取締役社長として迎えることに同意した。これを受けて,平成21年6月に開催された甲社の定時株主総会において,Hが取締役に選任され,就任し,また,その後に開かれた甲社の取締役会において,Hが代表取締役社長に選定され,Aは代表権のない取締役会長となった

4.乙株式会社(以下「乙社」という。)は,設立以来,株主も取締役もPだけの会社であるが,実際の事業活動は,ほとんど行っていない

 (中略)

5.平成22年6月に開催された甲社の定時株主総会(以下「22年総会」という。)では,その終結の時をもって,取締役5名のうちHを除くA,B,C及びDの4名について取締役の任期が満了するため,A,B,C及びDの4名を候補者とする取締役選任議案が会社提案として提出された。ところが,甲社の株主である乙社から,上記の取締役選任につき,会社法第304条に基づき,P,Q及びRの3名を候補者として追加する旨の議案が提出された。なお,乙社は,Dの選任については賛成する意向であった。議長であるHは,事前に何も知らされていなかったためやや驚いたものの,淡々と議事を進めることとし,A,B,C,D,P,Q,Rの順に,候補者ごとに投票による採決をした投票による採決の結果,Hは,Aから上記の順に得票数(候補者の選任に賛成する議決権の数をいう。以下同じ。)を集計し,Pの得票数を集計した時点で,出席株主の議決権の過半数の賛成を得た候補者が4名に達したので,Q及びRの得票数については議場で集計しないで,B,C,D及びPの4名だけが取締役に選任された旨を宣言した。なお,各候補者の実際の得票数等は,次のとおりであった。

8.E,F及びGは,平成23年6月に開催される甲社の定時株主総会(以下「23年総会」という。)の終結の時をもって監査役の任期が満了するところ,同年3月に,Hは,甲社の監査役会に対し,23年総会に提出する監査役選任議案の候補者は,E,Q及びRの3名としたい旨を伝えた

9.平成23年4月上旬に,Eが,甲社の監査役会において,上記の監査役選任議案の提出に同意する旨の提案をしたが,F及びGが賛成しなかったため,この提案は可決されなかった。他方,Fが,この監査役会において,E,F及びGの3名を候補者とする監査役選任議案(以下「議案①」という。)を23年総会に提出することを取締役に対して請求する旨の提案をした。この提案は,F及びGの賛成により,可決された。そこで,甲社の監査役会は,Hに対し,議案①を23年総会に提出することを請求した。

10.平成23年4月下旬に,Pは,甲社の株主である乙社を代表して,甲社に対し,監査役3名の選任を23年総会の目的とすること並びにE,Q及びRの3名を候補者とする監査役選任議案(以下「議案②」という。)の要領を招集通知に記載することを請求した。なお,社債,株式等の振替に関する法律第154条第3項所定の通知(いわゆる個別株主通知)に係る要件は満たされていた。

(引用終わり)

 

 平成24年司法試験では、当初の会社提案が監査役会で可決されなかったため、取締役Pが乙社を代表して同じ議案を株主提案として提出した事案が出題されました。このように、実質的には会社提案といえるような議案が株主提案の形式で提出されている場合には、脱法行為として適法と認めない、という解釈が必要となる場合はあるでしょう。しかし、本問はそのような場面ではないので、単純に株主提案だから適法であると考えれば足りるでしょう。

2 設問2では、主に利益相反取引による損害についての任務懈怠責任が問われています。ここでは、商法特有の論理性と、過失相殺について応用的な論点が問われていますので、その点について説明をしておきたいと思います。

(1)本問では、Bと甲社との間で責任限定契約が締結されていますが、どうみてもBは悪意か、少なくとも重過失があるので、責任限定契約が適用される余地はない。何でこんな問題を出したんだろう、と疑問を感じた人も多かっただろうと思います。ここで考査委員が試したかったのは、利益相反取引該当性の認定との論理的な整合性でしょう。責任限定契約が適用されるためには、善意無重過失以前に、自己のためにした取引でないことが必要です。

 

(会社法)
427条1項  第四百二十四条の規定にかかわらず、株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この条及び第九百十一条第三項第二十五号において「非業務執行取締役等」という。)の第四百二十三条第一項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる

428条 第三百五十六条第一項第二号(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引(自己のためにした取引に限る。)をした取締役又は執行役の第四百二十三条第一項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない。
2 前三条の規定は、前項の責任については、適用しない

 

 自己のためにした取引の場合には、善意無重過失を問うまでもなく、責任限定契約の適用が排除される。したがって、利益相反取引該当性について自己のためにした取引と認定しておきながら、「Bは悪意であるか、又は少なくとも重過失があるから、責任限定契約は適用されない。」などと書いてしまうと、論理矛盾と判定されてしまう、というわけです。このような論理性は、司法試験でも、従来から商法でよく問われていました。最近では、刑法でも問われるようになってきています。
 利益相反取引該当性については、名義説からは第三者のためにした取引として、計算説からは自己のためにした取引として認定するのが自然でしょう。ですから、同じように責任限定契約が適用されないという結論を採るにしても、名義説を採用した場合にはBが善意無重過失ではないことを解答すべきであり、計算説からは428条2項による適用の排除を解答すべきだということになるのです。

(2)設問2では、明示的に、「額」が問われています。民法・商法共通のテクニックとして、「額」まで問われている場合には、過失相殺も検討するクセを付けておくべきでしょう。本問では責任限定契約の適用の可否があるので、それで額まで問われているという面はあるのでしょうが、過失相殺も問題となる事案です。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

 甲社の代表取締役Eは,甲社の事業の都合上,本店所在地近辺における駐車場用地の確保が急務であったことから,賃料の決定に際して丁社の全部の持分を有するBの意向を尊重する姿勢をとっていた

(引用終わり)

 

 423条1項の責任は、委任(330条)に関する債務不履行責任としての性質を有するものですから、民法418条が類推適用される。実戦的には、ここまで書ければ十分というところです。ただ、応用的な論点として、本問のような場合に、果たして過失相殺を認めるのが妥当なのか、という問題があります。
 423条1項の責任について、会社の過失を考慮して過失相殺をするという場合、本問のように代表取締役の過失が会社の過失とされるのが典型例です(民法101条1項)。しかし、代表取締役に過失があって会社に損害が発生したというのであれば、それは代表取締役が任務懈怠責任を負うべきことであって、会社がリスクを負担すべき場合とはいえないでしょう。そして、複数の取締役が任務懈怠責任を負う場合、連帯責任となる(430条)わけですから、代表取締役に過失があるからといって、他の取締役が会社に対して負う責任の額が小さくなるというのは、おかしな話です。本問でいえば、代表取締役EがBの意向を尊重して高額な賃料を飲んでしまったために、甲社に損害が発生したというのであれば、損害全額についてEBが連帯責任を負うべきものであって、Bの責任を減額する根拠にはなり得ないのではないか、ということですね。この点を指摘して過失相殺を否定する論述ができれば、上位の優秀答案といえるでしょう。
 なお、周辺の相場との差額をすべて損害と考えてよいか、という点も問題とはなり得ますが、本問では、Bや丁社の利用状況等(※)が不明で、周辺の相場より高額とする理由の有無を判断することができませんから、この点は問われていないだろうと思います。
 ※ 例えば、丁社が事業に用いていた土地であれば、それを賃貸することによる損失の補填の趣旨で若干賃料を高額にすることは考えられるでしょう。

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