令和4年予備試験論文式刑事実務基礎参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.当サイトでは、規範の明示と事実の摘示ということを強調してきました。それは、ほとんどの科目が、規範→当てはめの連続で処理できる事例処理型であったためです。近時の刑事実務基礎は、事実認定・当てはめ重視の事例処理型の設問と、民事実務基礎のように端的に解答すれば足りる一問一答型の設問の両方が出題されます。事例処理型の場合でも、規範の明示より事実の摘示・評価が重視されやすい傾向です(規範の明示が特に要求される場合には、設問にその旨が明示されています。)。参考答案は、そのような傾向を踏まえ、事例処理型の設問については、事実の摘示・評価を重視した答案を作成することとしています。

2.今年の刑事実務基礎には、2つの特徴があります。1つは、雑に解答しようと思えば一言で解答できそうな反面、丁寧に書こうと思えばいくらでも丁寧に書けそうだ、ということです。このような場合、すべて丁寧に書いた方がよいとは必ずしもいえませんし、時間と紙幅には限りがあります。何をどの程度書くか。また、丁寧に書きたいが、時間・紙幅が厳しい場合に、どう対処するか。これが、本問では重要なポイントです。もう1つは、問題文読解の重要性がとても高い、ということです。問題文をきちんと読んでいないと、解答の方向性を誤って配点をほとんど取れなくなってしまったり、逆に、問題文をよく読むことで、難しい問題でも最低限の論述ができるようになっています。問題文を的確に読んで対処できたか。これも、本問では合否を分ける重要なポイントです。これらのことは、例年の刑事実務基礎にも当てはまらないわけではありませんが、今年は、特にこの要素が強いと感じます。
 設問1は、まず、設問をよく読んで、検察官の想定する立証構造を把握しておくことが重要です。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

 下線部㋐に関し、検察官は、Aが本件被告事件に関与した状況についてのB供述の信用性が認められ、同供述の内容等を踏まえればAに共謀共同正犯が成立すると判断したものであるところ、以下の各問いに答えなさい。なお、証拠①から⑨及び証拠⑪から⑯に記載された内容については、信用性が認められることを前提とする。

(引用終わり)

 この部分から、共謀共同正犯を基礎付ける事実について、B供述を直接証拠として認定しようとしているのだな、と読み取る必要があります。だから、B供述が信用できるかを検討し、信用できるのであれば、B供述の内容どおりの事実が認められるから、その供述内容から、共謀共同正犯の成立を認定するという流れになる。そのことを理解していれば、小問(1)において、証拠①から⑨及び証拠⑪から⑯は、間接証拠としてではなく、B供述の信用性に係る補助証拠として使うのだということがわかる。供述の信用性の考慮要素のうち、本問のメインは客観事実との一致であるということは、それらの証拠から読み取れるでしょう。ここは、時間・紙幅が無制限なら、まず、各証拠から認定できる客観事実を確定した上で、それとB供述を対照するという手順を踏むべきですが、そんなことをやっていては、どう考えてもパンクする。本問は、各証拠を読み解いて、B供述と整合する部分との対応関係を問う趣旨であることは明らかです。なので、B供述のどの部分が、どの証拠と対応するかを指摘する。それだけでも、結構大変です。適宜、日本語を崩さざるを得ない場合もあるでしょう。具体的には、参考答案を参照してみて下さい。それから、共犯者供述なので引込みの危険も考慮すべきなのですが、後の設問4は、そのヒントになります。設問4のBの公判供述は、「引き込む場合はこんな供述をするのだよ。」という良い例で、そんな供述はしていない、ということが、逆に設問1段階において引込みの危険が低いことを示しているのです。なお、既に判明している証拠から明らかでない事実、例えば、作業着と帽子は自分で購入したとか、ロープは自分の家にあったものだ、という供述部分について、「客観事実からは明らかにならない秘密の暴露なので信用性が高い。」等と評価するのは誤りです。なぜなら、「秘密の暴露に当たる。」という評価は、「作業着と帽子をBが購入した。」、「ロープはBの家にあった。」という事実が真実と確認されたことを前提とするわけですが、本問ではその前提を欠いているからです(「作業着と帽子をBが購入した。」、「ロープはBの家にあった。」という事実は、Bの供述の信用性が認められて初めて、Bの供述内容から認定できる事実です。)。

鹿児島夫婦殺人事件判例より引用。太字強調は筆者。)

 記録上明らかな諸般の客観的事実等と対比しつつ、自白内容をさらに詳しく検討すると、その中には、あらかじめ捜査官の知りえなかつた事項で捜査の結果客観的事実であると確認されたというもの(いわゆる「秘密の暴露」に相当するもの)は見当らず、右自白がその内容自体に照らして高度の信用性を有するものであるとはいえない(原判決が自白の信用性を肯定すべき理由として指摘する事項の中にも、右のような意味において自白の信用性を客観的に保障するものは見当らない。)。

(引用終わり)

 また、「通常自分に不利なことは言わないはずなので、自ら犯行を認めるB供述は信用できる。」とするのも、刑事の事実認定としては適切ではありません。自らの関与を素直に認めている点は、供述が真摯であるとか、Aに一方的に転嫁しようとしていない、という限度の評価にとどめるべきでしょう。
 次に、小問(2)ですが、これは上記の検察官の立証構造を理解していれば、B供述の内容どおりの事実が存在するという前提で、共謀共同正犯の当てはめをすれば足りることがわかります。その意味では、刑法の当てはめとほとんど同じです。設問をよく読まないで、検察官の立証構造を把握しないまま解き始めると、証拠①から⑨及び証拠⑪から⑯を間接証拠として、間接事実型の立証、例えば、「証拠⑪から、ABが通話しており……を推認させる。」のような論述を延々と行うような解答をしてしまうことになりやすい。これは、相当の時間と紙幅を消費するにもかかわらず、ほとんどが余事記載となるので、かなり厳しい評価になってもやむを得ないでしょう。ここでも、当てはめは丁寧にやりたいけれど、時間と紙幅の限界との戦いが厳しい。参考答案のように日本語を崩して配点を取りに行くやり方は、このような場合の有効な方法論です。
 設問2はマニアックな内容で、「最初は物語方式で出しておいて、弁護人が争ったら立証構造方式を出すんだよね。」という、知っている人からすればそれだけの話です。とはいえ、ほとんどの受験生が知らなかったのではないかと思います。しかし、諦めたら、そこで終了です。条文や問題文を読み解いて、最低限の論述ができないか、粘る必要がある。まず、設問に、「公判前整理手続の制度趣旨に言及しつつ」と書いてあるわけですが、これは覚えている必要はなくて、現場で条文を見て何とかする

(参照条文)刑訴法316条の2第1項

 裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。

 条文の文言をうまく繋ぎ合わせれば、「公判前整理手続の趣旨は、事件の争点・証拠を整理することで、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行う点にある(刑訴法316条の2第1項)。」くらいのことは書けるでしょう。問題は、追加提出を求めた理由ですが、問題文にはちゃんとその経緯が書いてある。 

問題文より引用。太字強調は筆者。)

 検察官は、同月14日、本件被告事件について、犯行に至る経緯、犯行状況等をB供述に沿って時系列で記載した証明予定事実記載書を裁判所に提出するとともに、証拠の取調べを裁判所に請求し、当該証拠を弁護人に開示した。
 その後、所定の手続を経て、弁護人は、「AがBと共謀した事実はなく、Aは無罪である。」旨の予定主張記載書を裁判所に提出し、検察官請求証拠に対する意見を述べた。これを受け㋑裁判所は、検察官に対し、どのような事実と証拠に基づいてAB間の共謀を立証するのか、その主張と証拠の構造が分かるような証明予定事実記載書を追加で提出するように求めた

(引用終わり)

 とりあえず、「時系列だと弁護人が争ってきたとき何か不便だから、主張と証拠の構造が分かるやつが必要なのね。」ということはわかる。これをそのまま書き写すことも考えられますが、それだけではちょっと芸がない。わざわざ設問で、「公判前整理手続の制度趣旨に言及しつつ」とされているわけですから、制度趣旨の文言に引っ掛けるくらいの頑張りを見せるべきです。例えば、以下のような程度の論述は、知識が何もなかったとしても、書けるようになりたいところです。

【論述例】

 公判前整理手続の趣旨は、事件の争点・証拠を整理することで、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行う点にある(刑訴法316条の2第1項)。検察官は、当初、時系列で記載した証明予定事実記載書を提出したが、その後、弁護人が、「AがBと共謀した事実はなく、Aは無罪である。」旨の予定主張記載書を提出したため、共謀が争点となり、その証拠を整理する必要が生じた。そこで、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため、裁判官は、検察官に対し、どのような事実と証拠に基づいてAB間の共謀を立証するのか、その主張と証拠の構造が分かるような証明予定事実記載書を追加で提出するように求めた。

(引用終わり)

 本当は、どんなことが問われていたのか。簡単に説明すると、証明予定事実記載書には、大きく分けて2つの方式がある。1つは、時系列で事実関係を説明していく書き方。物語のような感じになるので、「物語方式」と呼ばれます。平成26年予備試験刑事実務基礎の問題文末尾の【別紙1】に掲載されている証明予定事実記載書が、物語方式の記載例です。本問でいえば、証拠⑩のB供述は時系列順の内容になっていますから、これに対応する証拠を付記すれば、そのまま物語方式の証明予定事実記載書になります。もう1つは、時系列ではなく、立証構造に沿って事実を記載する方式です。立証構造に沿って記載されるので、「立証構造方式」と呼ばれます。この両者を組み合わせた方式もあり、「ハイブリッド方式」と呼ばれたりします。両者の長所、短所については、実は、設問1を解いたときに実感しているはずで、これが一応ヒントにはなっています。証拠⑩のB供述は時系列で書いてあるので、事案の概要が掴みやすい。一読すれば、「なるほどこんな事案だったのか。」とすぐにわかる。一方で、立証構造はわからない。前記のとおり、検察官がB供述を直接証拠として立証しようとしているのか、①から⑨及び⑪から⑯までの証拠から間接事実を推認して、その総合によって立証しようとしているのかは、前に引用した設問1の記載から初めて明らかになるわけで、証拠⑩のB供述のような時系列の物語方式ではわからないのです。なので、設問1では、小問(1)でB供述の各部分と各証拠との対応を考えなければいけないし、小問(2)ではB供述のどの部分が共謀共同正犯の成立要件に当てはまるのかを検討しなければならなかったのでした。設問1で解答した感じのことを整理してまとめたものが、「立証構造方式」の証明予定事実記載書です。設問1で解答したような内容の証明予定事実記載書を見れば、裁判所は、「じゃあB供述の信用性の有無を中心に審理しましょうね。」となりますし、弁護人も、「検察官は直接証拠型で立証しようとしているのだな、そうであれば、間接事実の推認過程を争うとかそういうのではなくて、B供述の信用性を減殺する立証活動をしないといけないんだな。」とわかる。そんな感じで争点・証拠を整理すれば、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことができるので、公判前整理手続の趣旨が実現できるよね。そんな解答が想定されているのでしょう。
 設問3は一番難易度が低い問題で、問題文を見れば、解答すべき内容の大筋は明らかです。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

3 ……(略)……裁判所は、争点を整理し、検察官が請求したBを証人として尋問する旨の決定をするなどした上、審理計画を策定し、公判前整理手続を終了した。裁判所が策定した審理計画は、第1回公判期日に冒頭手続、検察官請求証拠のうち証拠書類等の取調べ、第2回公判期日にBの証人尋問、第3回公判期日に被告人質問、第4回公判期日に論告、弁論等を行い、第5回公判期日に判決を言い渡すというものであった。

4 検察官は、Aについて、起訴後の接見等禁止決定がなされていたものの、その終期が公判前整理手続の終了する日までとされていたことから、㋒同日、接見等禁止の請求をし、裁判官は、その終期を第1回公判期日が終了する日までとして接見等禁止決定をした。
 第1回公判期日において、冒頭手続、検察官請求証拠のうち証拠書類等の取調べが行われた。検察官は、同期日終了後、裁判所に対し、接見等禁止の請求をし、裁判所は、その終期を第2回公判期日が終了する日までとして接見等禁止決定をした。その後、第2回公判期日において、Bの証人尋問が行われ、Bは、証拠⑰と同旨の証言をした㋓検察官は、同期日終了後、接見等禁止の請求をしなかった。

(引用終わり)

 「第2回公判期日にBの証人尋問があって、㋒はその前だけど、㋓はその後だからだろ。」で終わり。なのですが、その一言で終わってしまった答案には、あまり点が付かないでしょう。おそらく、最も合否を分けそうなのは、刑訴法81条を摘示しているかどうかです。

(参照条文)刑訴法81条

 裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。

 なんとなくその場の思い付きで解答していると、条文摘示をうっかり忘れてしまう。81条の罪証隠滅のおそれの当てはめですよ、という形式で解答していれば、おそらくここは合格レベル。後は、罪証隠滅のおそれに関する考慮要素をどれだけ丁寧に検討しているか、というところですが、当てはめの事実がそれほどないので、ここはそれほど頑張るところではなさそうだ、という判断をすべきなのでしょう。なので、冒頭で考慮要素を列挙して個別に当てはめる、というところまでは、しない方がよさそうです。
 設問4は、まず小問(1)で、弁護人は証拠⑩で積極的に事実を立証したいのではなくて、Bの公判供述を弾劾しようとしているんだよね、ということを読み取る。そこで、公判前整理手続後の弾劾証拠と316条の32第1項の「やむを得ない事由」という刑訴法の論点が出てくるな、ということに気付きたい。ここまで書ければ合格レベルでしょう。後は、公判供述と証拠⑩のどの部分が矛盾するか犯罪の成否に関わることか量刑事由にとどまるか等について触れられていれば、上位という感じでしょう。小問(2)は、弾劾証拠は非伝聞なんだから同意・不同意とか言うわけないよね、というただそれだけの問題ですが、ここでいう異議は、証拠決定前の証拠意見(刑訴規則190条2項)であって、証拠決定に対する異議(刑訴法309条1項、刑訴規則205条1項ただし書)とは異なることに注意が必要です。

(参照条文)
刑訴法309条1項 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。

刑事訴訟規則
190条 証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。
2 前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を、職権による場合には、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
3 (略)

205条1項 法第309条第1項の異議の申立は、法令の違反があること又は相当でないことを理由としてこれをすることができる。但し、証拠調に関する決定に対しては、相当でないことを理由としてこれをすることはできない。

 参考答案中の太字強調部分は、「司法試験定義趣旨論証集刑訴法」に準拠した部分です。

【参考答案】

第1.設問1

1.小問(1)

(1)3月1日夜Aから電話で誘われた旨は同日20:32「A」着信約14分間通話(⑪)、Bの車で何回かV方様子観察は「あ 8910」車は使用者がBで(⑤)、同月3~5日8:00~18:00同車Qマンション前路上停車男2名出入り(⑮)、宅配業者装う、刃物で脅す、現金・キャッシュカード(以下「カード」)奪う、暗証番号聞出し、V縛るを計画してそのとおり実行した旨は被害状況(①③)、茶色作業着・帽子着た旨は犯人服装(①)、Qマンション前犯行日12:58同車助手席から出た男服装(④)、同日13:38T店入店乙服装(⑦)、翌日B方捜索で発見服(⑨)、物干ロープ使った旨は被害状況(①)、犯行直後ロープ被害者任意提出で領置(②)、翌日B方捜索でロープ発見(⑨)、犯行当日Bの車で12時過ぎ出発しV方付近マンション前車止めた旨は同日12:56~13:11Qマンション前路上「あ 8910」停車(④)、A父のサバイバルナイフ使った旨は翌日A方捜索ナイフ発見(⑫)、発見ナイフA父のもの(⑬)、発見ナイフにB指紋付着(⑭)、UコンビニでICカードでスポーツドリンク1本買った旨はT店で13:41乙ペットボトル1本購入(⑦)、同時刻清涼飲料水1本購入に用いたICカード名義人B(⑧)、同店ATMでAがカード出金できなかった旨は同日13:40出金操作(⑥)、13:39~41甲T店ATM前立ち(⑦)、翌日A方捜索カード発見(⑫)、取り分A300万B200万だった旨は翌日B方捜索200万発見(⑨)、翌日9:32Y社に100万返済、9:34Z社に200万返済(⑯)の客観事実とよく整合する。

(2)犯行計画立案をAと話し合い、作業着・帽子、ロープを自分で用意したと率直に認め、一方的にAに転嫁しようとはしていない。

(3)供述態度は真摯で一貫する(⑰)。

(4)以上から、引込みの危険等共犯者供述の特質を考慮しても、B供述は全体にわたり信用できる。

(5)よって、本件被告事件に関与したのはAとする供述部分の信用性が認められる。

2.小問(2)

(1)Aは、3月1日夜、Bに電話で、「一緒にその金を奪わないか。」と誘いBは承諾した。それから何回か、Bと共にB車でV方付近に行きV方様子観察し、昼過頃にV方に押し入ることにした。その後、Bと話し合い、Bが宅配業者装う、刃物で脅す、現金・カード奪う、暗証番号聞出し、V縛る、その間A見張るを計画した。以上から、共謀がある。

(2)Aは、自分からBを誘い、宅配業者のような服とV縛る道具の用意を指示し、サバイバルナイフ準備してBに渡し、犯行時見張り・車運転し、自らカード出金試み、取り分A300万で実行したBより100万多く、犯行を主導し重要な役割を果たした。以上から、正犯意思がある。

(3)Bは計画どおり実行したから、共謀に基づく実行がある。

(4)よって、Aに共謀共同正犯が成立する。

第2.設問2

 公判前整理手続の趣旨は、事件の争点・証拠を整理することで、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行う点にある(刑訴法316条の2第1項)。
 検察官が当初提出した時系列で記載した証明予定事実記載書は、事案の概要を把握するのに適するが、共謀を基礎づける事実と証拠との関係(刑訴規則217条の21参照)、具体的には、B供述を直接証拠として他の証拠をその信用性に係る補助証拠とする立証構造とするか、他の証拠を間接証拠として、推認される間接事実から共謀を立証する立証構造とするか等は明確にならない。
 その後、弁護人が共謀を否定する予定主張記載書を提出し、共謀が争点であることが明らかとなったから、検察官がどのような立証構造を採るか明確にした上で証拠を整理しなければ、継続的、計画的かつ迅速な証拠調べ等が困難である。
 以上の理由から、裁判官は、検察官に対し、主張と証拠の構造が分かるような追加の証明予定事実記載書の提出を求めた。

第3.設問3

 ㋒で接見等禁止請求したのは、その後、第2回公判期日でBの証人尋問が予定され、Aは取調べで一貫黙秘し、弁護人が共謀を争っているのに対し、Bは全面自白し共謀を認めているため、外部交通を許せば第三者を介したBへの威迫、口裏合わせ等のおそれがあり、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(刑訴法81条)があったからである。
 ㋓で接見等禁止請求しなかったのは、既にBの証人尋問は終了し、⑰と同旨の証言がえられ、Aの共謀共同正犯立証に十分だから、もはや罪証隠滅の客観的可能性がなく、上記相当な理由がなかったからである。

第4.設問4

1.小問(1)

(1)⑩は、「Aと話し合い…決めた」、「茶色の作業着上下と帽子を購入した」、「家にあった物干しロープを使うことにした」の点で公判供述と矛盾するから、刑訴法320条1項(伝聞法則)にかかわらず、弾劾証拠として証拠能力が認められる(同法328条)。

(2)弾劾証拠については、公判前整理手続の時点においては、いまだ弾劾の対象となる公判供述が存在しない以上、同条の要件該当性を判断することはできない。したがって、その取調請求を当事者に要求することは相当ではないと認められるから、「やむを得ない事由」(同法316条の32第1項)がある(福井強盗致傷事件参照)

(3)公判供述と⑩の相違点はAの犯情にとどまるが、供述の一部に矛盾・変遷があることは、B供述全体の信用性に関わる。そこで、弁護人は、B供述全体の信用性を減殺して共謀の認定を妨げるため、⑩を取調請求した。

2.小問(2)

 伝聞証拠については、証拠意見(刑訴規則190条2項)において同意・不同意(刑訴法326条)の意見も述べるところ、弾劾証拠は自己矛盾供述の存在そのもので公判供述の信用性を減殺させるため非伝聞で、同条の同意を要しないからである。

以上

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