各論

胎児性障害

胎児は「人」にあたらないから、傷害罪は成立しない。
また、堕胎罪には過失処罰規定が無い。
よって、不可罰である。

逮捕監禁罪の保護法益

眠っている間は犯罪不成立となるのはおかしい。
潜在的・可能的自由が保護法益と解する。

住居侵入罪の保護法益

法益主体の明確化のため、住居の管理権であると解する。

230条の2の法的性質

表現の自由の枠内である以上、適法とされるべきである。
よって、違法性阻却事由であると解する。

違法性阻却事由の内容

「証明があったとき」という訴訟法的表現を実体法的観点から解釈すべきであるから、
証明可能な程度の真実性を言うと解する。

真実性の錯誤の処理

証明可能な程度の真実性を違法性阻却事由と解する以上、
十分な資料・根拠に基づいて、真実であると誤信した場合は規範に直面しておらず、
故意が阻却されると解する。

奪取罪の保護法益

今日の複雑な社会秩序を維持するためには、第一次的には占有それ自体を保護すべきである。
よって、占有が保護法益である。

財物の意義

財産的価値の多様化した現代では、有体物に限るべきでない。
もっとも、占有移転を観念するためには、物理的に管理可能でなければならない。
よって、物理的に管理可能なものをいうと解する。

死者の占有

死者には占有は認められない。
死者には占有の意思も事実もないからである。
もっとも、殺害直後の殺害者との関係では、被害者の生前の占有を保護すべきと解する。

下位占有者と占有補助者の区別

占有とは物に対する事実上の支配を言うから、事実上の支配がいずれにあるかで決すべきである。

使用窃盗の可罰性

占有侵害の確定性の観点から、不法領得の意思として自ら所有権者として振舞う意思が必要である。
使用窃盗はこれを欠くから、不可罰である。

領得罪と毀棄罪の区別

領得罪が重く処罰されるのは、その利欲犯的性格からである。
よって、不法領得の意思として、経済的用法に従い利用処分する意思があるか否かで区別すべきと解する。

情報の財物性

情報は物理的に管理不能であるから、「財物」にあたらない。
もっとも、情報を化体した物は、全体的にみて経済的価値を有するから「財物」にあたる。

情報を複写したのち、原本を返却する行為における不法領得の意思

外部に持ち出せない情報については、外部に流出させる目的で複写することも所有権者として振舞う意思の現われといえる。
また、外部に情報を流出させる行為は経済的用法に従った処分といいうる。
よって、不法領得の意思は認められる。

委託封緘物の占有

全体の事実上の支配は受託者にあるから、全体の占有は受託者にある。
もっとも、封緘されている以上、中身の事実上の支配は受託者にない。
よって、中身の占有は依然委託者にあると解する。

244条の親族関係の範囲

「法は家庭に入らず」という同条の趣旨から、占有者・所有者・盗取者の全ての間に親族関係が必要と解する。

244条の親族関係の錯誤

同条は処罰阻却事由に過ぎない。
よって、故意は阻却されない。

強盗罪における「暴行」の程度

奪取罪としての本質から、客観的に被害者の反抗を抑圧するに足りるものであることを要する。

強盗の実行行為に対し、自発的意思に基づいて財物を交付した場合

実行行為と財物移転の間の因果関係を欠くから、未遂となる。

強取の意思は、暴行開始時に必要か

必要である。
なぜなら、暴行脅迫が財物奪取に向けられていることが強盗罪の本質だからである。

居直り強盗の罪責

法益の共通性から、先行する窃盗未遂は、後の強盗に吸収される。
よって、強盗罪一罪が成立する。

2項強盗における処分行為の要否

反抗抑圧を伴う以上、処分行為は存在し得ないから、不要と解する。

事後強盗罪において、暴行脅迫から加功した者の罪責

事後強盗は窃盗犯人しか行い得ない真正身分犯である。
よって、65条の適用により罪責を決すべきと解する。

事後強盗における既遂未遂の判断基準

事後強盗も財産犯である以上、最終的に財物を取得したか否かによって判断すべきと解する。

強盗致傷における傷害の程度

軽微な傷害は、強盗の手段たる暴行において評価されているというべきであるから、
加療を要するような程度をいうと解する。

強盗致死傷罪における暴行脅迫と負傷死亡との関連性

刑事学上顕著であるのは、強盗の機会における被害者の死傷である。
よって、強盗の機会における死傷について関連性が認められると解する。

240条に故意ある場合を含むか

含むと解する。故意ある場合も刑事学上顕著な類型といえるからである。

強盗殺人における既遂未遂の基準

同罪の主たる保護法益は、人の生命である。
よって、殺人の既遂未遂により判断すべきと解する。

事後強盗予備の成否

事後強盗は「強盗として論ずる」(238条)とされる以上、その予備行為は強盗予備罪(237条)にあたると解する。

不法原因給付と1項詐欺の成否

詐欺されなければ不法原因給付をしなかったという関係にある以上、1項詐欺罪は成立しうると解する。

不法原因給付と2項詐欺罪の成否

民事上保護すべき財産上の利益が無い以上、2項詐欺罪は成立しえないと解する。

民事上保護されなくても、刑法上はなお事実上の要保護性があるといえるから、2項詐欺罪は成立しうると解する。

2項詐欺罪における処分行為の要否

不可罰的利益窃盗との区別のために明確な処分行為が必要である。
よって、債務免除の意思表示を要すると解する。

1項詐欺罪における損害の意義

「交付」(246条1項)という文言から、個別財産であると解する。

国家的法益に対する詐欺罪の成否

国も財産権の主体となりうる以上、国家的法益にも詐欺罪は成立しうる。

旅券の財物性

旅券は一定の資格につき、官庁の証明を受けたに過ぎないから、財物性は認められない。

健康保険証の財物性

事実上医療費の一部を免れうる以上、財物性が認められる。

キセル乗車

乗車駅改札係員も下車駅係員も運賃免除の意思が無い以上、錯誤に基づく処分行為がない。よって、詐欺罪は成立しない。

クレジットカード詐欺

加盟店は信義則上支払能力の無い者のカード利用を拒絶すべき地位にあるから、加盟店に支払能力がないことを秘してカード利用をすることは、加盟店に対する欺く行為であり、加盟店は支払能力があると誤信して、商品を交付しているから、錯誤に基づく処分行為がある。そして、一項詐欺は個別財産に対する罪である から、商品交付自体が損害である。よって、一項詐欺が成立する。

訴訟詐欺

自由心証主義から、裁判所も欺罔されうる。 また、裁判所の裁判に相手方当事者は拘束されるのであるから、処分行為と損害 との因果関係は肯定しうる(三角詐欺)。

権利行使と恐喝

恐喝罪は個別財産に対する罪であるから、恐喝の構成要件に該当しうる。
また、社会通念上相当な範囲を逸脱すれば、正当な権利行使とはいえないから、違法性も認められる。

不法原因給付と横領

被害者は民事上返還請求権を有しない以上、「他人の物」にあたらないから、横領罪は成立しない。

横領の意義

領得罪という本質から、領得行為、すなわち不法領得の意思の発現たる行為をいうと解する。

使途を定めて寄託した金銭の流用

使途を定めた委託の趣旨から、当該金銭は「他人の物」にあたる。

盗品の横領

保護に値する委託信任関係がない以上、横領罪は成立しない。
もっとも、占有離脱物横領の余地はある。

二重譲渡人と横領

第一譲渡の時点で、目的物は「他人の物」となる以上、第二譲渡は不法領得の意思の発現行為であるから、横領罪が成立する。

二重譲受人の共犯の成否

民法上適法に所有権を取得しうる以上、違法性がないから、共犯は成立しない。
但し、背信的悪意ある場合は民法上も違法とされるので、共犯が成立しうる。

背任罪の本質

権限濫用に限る理由は無いから、委託信任関係違背であると解する(背信説)。

背任における財産上の損害

債権が存在しても回収不可能なら無意味であるから、経済的観点から考えるべきである。

背任罪の故意

図利加害目的が要求されていることから、確定的認識を要すると解する。

二重抵当と背任

譲渡人は債権者に円満に第一順位の登記を移転する義務を負うから、事務処理者であり、契約上の委託信任関係がある。
そして、抵当権の順位低下は財産上の損害といえる。
よって、背任が成立する。

二重抵当と詐欺

欺く行為がなければ貸金の交付をしなかったという関係がある限り、
財産上の損害があるというべきであるから、詐欺は成立しうる。

横領と背任の区別

横領は領得をその本質とするから、自己の名義又は計算で行った場合であり、
背任は自己の名義でも計算でもない場合である。

盗品等罪の本質

保護法益の中心は、被害者の追求権である。
もっとも、本犯庇護的な行為態様も考慮すべきと解する。

被害者宅への盗品の運搬

被害者の正常な盗品の回復を妨げる事情(金銭を要求する等)がある限り、
追求権の侵害があるので、盗品運搬罪が成立する。

知情後の盗品の保管

追求権侵害は保管開始時に発生するので、本罪は状態犯である。
従って、保管の継続は実行行為にあたらず、保管罪は成立しない。

有償処分あっせん罪の既遂時期

追求権侵害が生じるのは、盗品等の移転時であるから、この時点に既遂になると解する。

257条の親族関係の範囲

同条の趣旨は、親族が本犯者の便宜を図ることには、期待可能性が乏しいという点にある。
よって、本犯者と盗品犯にあれば足り、被害者との親族関係は必要ないと解する。

257条の親族関係の錯誤

同条は一身的処罰阻却事由に過ぎないから、故意の成否に影響は無いと解する。

放火罪の「焼損」の意義

公共危険犯としての罪質から、火が媒介物を離れて、独立に客体が燃焼を継続できる状態に至ったことをいうと解する。

建造物の一体性

社会通念から、物理的一体性を基本とすべきである。
もっとも、生命身体への危険性という観点から、延焼可能性や機能的一体性も考慮せざるを得ないと解する。

非現住建造物放火罪における公共の危険の認識の要否

公共の危険が無い場合は全く適法である以上、構成要件要素として故意の対象となると解する。

難燃性建物における焼損

独立燃焼状態に至っていない以上、未遂である。

建造物等以外放火罪における公共の危険の認識の要否

公共の危険が無い場合は器物損壊に過ぎず、罪質の差異から、結果的加重犯とみることはできない。
構成要件要素として故意の対象となると解する。

写真コピーの文書性

今日では、写真コピーは証明手段として一般に利用されている。
従って、原本と同様の社会的機能と信用性を有する場合には、公共の信用が害されるので、文書性が認められる。

写真コピーの公文書性(作成名義人の問題)

性質上、原本と同一の意識内容を有し、原本と同様の証明手段として利用されることから、名義人は原本の作成名義人である。

写真コピーの有印性

性質上、原本と同一の意識内容を有し、原本と同様の証明手段として利用されることから、有印と解する。

代理資格冒用の名義人

意識内容に基づく効果が、本人に帰属する点を重視すべきである。
よって、名義人は本人である。

代表権濫用による文書

対外的には全く有効である。
従って、名義を偽っているとはいえないから、偽造罪は成立しない。

名義人の承諾(交通事件原票の供述書欄の氏名)

事件処理の性質上、作成者と名義人の同一性が厳格に要求されている以上、承諾があっても有形偽造である。

交通事件原票の私文書性

私人が記入することが予定されているから、公務員・公務所の作成すべき文書に該当しない。
よって、私文書である。

弁護士資格冒用

作成者とは異なる人格を意識させるような具体的状況の下では、人格の同一性を偽ったといえるので、有形偽造となる。

ファックスの文書性

ファクシミリは、送受信機能と共に、複写機能をも有する。
そして、その写しは、原本と同様の社会的機能と信用性を有するといえる。
よって、文書性を肯定しうると解する。

虚偽公文書作成罪の間接正犯の成否

157条の存在から、原則として否定すべきである。
もっとも、補助的作成権限者には、実質的作成権限を肯定できるから、間接正犯が成立しうると解する。

偽造運転免許証携帯運転は「行使」にあたるか

携帯運転のみでは、未だ認識可能性がない。
よって、「行使」にあたらない。

不知情だが利害関係を有しないものへの呈示は「行使」にあたるか

不特定又は多数人への認識可能性は否定できない以上、「行使」にあたる。

事実証明に関する文書図画の意義(自動車登録事項等証明書交付請求書、私大入試解答用紙氏名欄)

実生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいう。
そのような事実関係につき、保護すべき公共の信用が存在するからである。

電磁的記録不正作出罪は無形偽造を含むか

同罪が「不正に」とした趣旨は、偽造、変造、虚偽作成の概念区別が電磁的記録において困難であることから、
これらを包括的に表現した点にある。
従って、無形偽造をも含むと解すべきである。

印章偽造における印章の意義(印影に限るか、印顆も含むか)

公共の信用の対象は印影のみであり、印顆は手段にすぎない。
よって、印影に限ると解する。

公務執行妨害罪の適法性基準

基準の明確性と行為時適法行為の保護の必要性から、裁判所が、行為時にたって、客観的に判断すべきと解する。

適法性の錯誤

職務の適法性は、裁判官の規範的評価を要するから、規範的構成要件要素である。
よって、素人的意味の認識を要し、またそれで足りると解する。

公務執行妨害罪と業務妨害罪の関係(公務は業務に含まれるか)

非権力的公務は、民間業務と同様に要保護性があるから、業務に含まれる。
しかし、権力的公務は実力で妨害排除可能である。
よって、権力的公務は業務に含まれない。

非権力的公務は「公務」にあたるか

非権力的公務もその公共性ゆえに公務執行妨害罪の要保護性を認めうる。
よって、「公務」に含まれると解する。

犯人蔵匿罪における「罪を犯した者」の意義

刑事訴訟法上の被疑者被告人は真犯人に限られない以上、
刑事司法作用の保護の観点から、捜査・訴追の対象になっている者をも含むと解する。

犯人が既に身柄拘束されている場合

刑事司法作用は、単に身柄確保に尽きるものではないから、「隠避」に当たりうると解する。

犯人による犯人蔵匿・隠避教唆

他人を犯罪に巻き込む点につき、もはや定型的に期待可能性を欠くとはいえないから、教唆が成立すると解する。

共犯者による犯人蔵匿・隠避の成否

共犯者も犯人以外の者に他ならない以上、成立を肯定すべきである。

「罰金以上の刑に当たる罪」の認識

同要件は規範的構成要件要素であるから、素人的認識で足りる。
具体的には、殺人犯人、窃盗犯人であるといった認識で足りるが、侮辱罪の犯人であると誤信したような場合は故意を阻却する。

参考人の虚偽供述は証拠偽造罪にあたるか

供述には、不正確な内容が混入する危険を常に内包している。
また、偽証罪は宣誓した証人のみを処罰対象とする。
以上を考慮すれば、「証拠」に当たらないと解すべきである。

共犯事件は「他人の刑事事件」にあたるか

自己の刑事事件にも関わる証拠については、なお期待可能性欠如を認めうる。
しかし、専ら共犯者のためにする場合は、もはや期待可能性が欠けるとはいえないから、「他人の刑事事件」にあたると解する。

犯人による証拠偽造教唆の可罰性

他人を犯罪に巻き込む点につき、もはや定型的に期待可能性を欠くとはいえないから、教唆が成立すると解する。

親族が第三者を教唆した場合の105条適用の可否

第三者を巻き込んだ以上、期待可能性減少は認められないから、否定すべきである。

犯人が親族に証拠隠滅等を教唆した場合

親族を巻き込んだ点で、教唆犯の成立は認められるが、親族に105条が適用される事に準じ、105条を準用して、免除の余地を認めうると解する。

被告人による偽証教唆の可罰性

他人を巻き込む以上、期待可能性を欠くとはいえないから、可罰的と解する。

「職務に関し」(197条1項等)の意義

具体的事務分配の範囲のみでは、職務の公正とそれに対する信頼を確保できない。
よって、一般的抽象的職務権限に属する行為に加えて、密接関連行為も広く含むと解する。

再選を前提とした職務に対する収賄の成否

収賄当時現職であれば、再選後の行為に関するものであったとしても、職務に対する公正への信頼は害される。
よって、「職務に関し」にあたる。

転職前の職務に関する収賄の成否

転職後に収受した場合であっても、職務の公正に対する信頼は害される。
よって、「職務に関し」にあたる。

収賄と詐欺恐喝の罪数

意思形成過程に瑕疵があるにとどまり、任意性が完全に失われているわけではない。
また、両罪は保護法益を異にする。
よって、両罪の成立を肯定し、両罪は観念的競合となると解する。

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