民法総則

胎児の権利能力(721条、886条、965条の場合)

現行法上胎児の法定代理人制度のないことから、出生を停止条件として、胎児の時から遡って権利能力が認められると解する。

制限能力と意思無能力の二重効

無効と取消しはいずれも表意者保護の手段に過ぎないから、選択的に主張できると解する。

意思無能力無効の主張権者

表意者保護の趣旨から、相手方は主張できないと解する。

制限能力者であることの黙秘が詐術(21条)にあたるか

21条の趣旨は制限能力の悪用に対する制裁であるから、単に黙秘しただけでは足りない。
黙秘と相まって能力者であると誤信させ、または、誤信を強める言動が必要である。

32条1項後段の「善意」の人的範囲

失踪者保護の観点から、両当事者に必要と解する。

悪意の受益者に32条2項の適用があるか

悪意者を特に保護する理由は無いから、悪意者には、704条が適用されると解する。

婚姻に32条1項の適用あるか

身分行為には取引安全とは別個の考慮が必要であるから、同条の適用は無いと解する。
よって、重婚となり、前婚は離婚原因(770条1項1号)、後婚は取消原因(744条1項・732条)となる。

「目的の範囲」(34条)の意義

「権利を有し、義務を負う」との文言から、権利能力を制限するものと解する。

「職務を行うについて」(一般社団財団法人法78条)の意義

被害者の信頼保護の観点から、客観的に職務の外形を備えていれば足りると解する。
もっとも、被害者が職務外であることにつき悪意重過失の場合、要保護性を欠くので、適用されないと解する。

一般社団財団法人法77条5項と民法110条との適用関係

代表権に対する内部的制限について悪意である場合、77条5項の保護の余地は無い。
もっとも、その制限の手続要件を充足したと誤信した場合、保護に値するから、110条の類推適用の余地がある。

一般社団財団法人法78条と民法110条の適用関係

契約の効力はできる限り認めるべきであるから、110条が優先すると解する。

権利能力なき社団の成立要件

社団としての実質、すなわち、団体として組織化され、構成員の変更があっても存続し、多数決の原則が採られ、代表選出や総会運営、財産管理などの主要な点が確定されていることを要する。

権利能力なき社団の権利の帰属

形式的には構成員全員に帰属するが、社団の実体を重視して、潜在的持分すら無い総有となる。

権利能力なき社団の構成員の個人責任

社団としての実体から、否定すべきである。

権利能力なき社団の代表者の個人責任

社団の実体から否定すべきである。
債権者の保護は、代表者等の保証契約を別途締結することにより図りうる。

権利能力なき社団における不動産登記の方法

虚無人登記の発生防止のため、社団名義又は社団代表者たる肩書付名義には出来ない。
信託的に代表者個人名義とすることは許される。

他人物たる従物

物権変動は直ちに生じないが、債権的には他人物売買(560条)として効力が及ぶ。

動機の不法

不法な動機が表示されれば意思表示の内容となるから、無効(90条)となる。

94条2項の「第三者」に転得者を含むか

含む。
保護の必要性に変わりはないからである。

善意者からの悪意の転得者(相対的構成か、絶対的構成か)

前主たる善意者の権利を承継する以上、悪意の転得者も権利を取得する(絶対的構成)。

「善意」(94条2項)には無過失を要するか

虚偽表示者の帰責性を考慮すれば、不要というべきである。

「第三者」(94条2項)には対抗要件を要するか

虚偽表示者の帰責性を考慮すれば、不要というべきである。

要物契約に94条2項は適用されるか

確かに、意思表示のみで法的効果が発生しないが、虚偽の外観は生じる。
外観に対する保護の必要性に変わりは無い以上、同条の適用を肯定すべきである。

94条2項類推適用

虚偽の意思表示が存在しない場合、同条の直接適用はできない。
しかし、同条の趣旨は、帰責性ある虚偽表示者を犠牲にして外観を信頼した善意の第三者を保護する点にある(外観法理)。
よって、虚偽の外観、外観作出の帰責性、第三者の善意が認められる場合には、同条を類推適用すべきである。

意思外形非対応型における94条2項類推適用

原権利者の帰責性は、外観作出可能な権限を付与した点に過ぎない。
そこで、代理権限付与に一種の帰責性を求める110条をも類推適用し、相手方の正当事由(善意無過失)を要求すべきである。

虚偽表示の撤回

撤回は当事者間で有効であるが、外観法理から、虚偽の外観が除去されない限り、第三者に撤回を対抗できない。

動機の錯誤

動機が表示されれば意思表示の内容となるので、錯誤無効を主張できる。

第三者の錯誤無効主張の可否

表意者保護の規定である以上、否定すべきである。

錯誤無効の取引の転得者

錯誤者は被詐欺者よりも要保護性が低い以上、96条3項を類推適用して善意の転得者を保護すべきである。

96条3項の「第三者」の意義

取消しの遡求効ゆえに害される者を保護する趣旨であるから、取消前に新たに独立した法律関係上の利害関係に立った者をいう。

「善意」(96条3項)に無過失を要するか

落度ある被詐欺者の要保護性は低いから、無過失まで要しない。

「第三者」(96条3項)に対抗要件を要するか

落度ある被詐欺者の要保護性は低いから、対抗要件は要しない。

前主後主の関係に無い以上、不要である。

取消後の第三者

「第三者」(96条3項)には当たらない。
もっとも、取消しの遡求効は一種の擬制であり、復帰的物権変動を観念できるから、先に対抗要件を具備した者が優先する。

無効と取消しの二重効

別個の表意者保護制度であるから、いずれを主張する事もできる。

代理の法的構成(代理における行為者)

99条1項は意思表示の主体を代理人としているから、代理人が法律行為を行うと解する(代理人行為説)。

代理権授与行為(授権行為)の法的性質

特別規定が無い以上、単独行為と解することはできない。
委任類似の無名契約であると解する。

授権行為の独自性

事務処理契約とは、法的性質を異にする以上、独自性を肯定すべきである。

事務処理契約と授権行為の有因性

目的の共通性・密接不可分性から、有因と解する。

授権行為の取消しの遡求効

102条の趣旨から、将来効にとどまる。

代理人の権限濫用

自己の利益を図る内心と本人のためにする表示に不一致がある点で、心裡留保に類似する。
よって、93条ただし書を類推適用すべきである。

代理人相手方間の通謀虚偽表示

代理ではなく、相手方の真意でない表示を伝達した使者にすぎないから、93条を適用すべきである。

白紙委任状は授権表示に当たるか

109条は授権表示行為を外観作出の帰責性の根拠とする以上、同様の外観を作出したと認められれば授権表示にあたる。
また、委任事項を超えた場合には、110条を重畳適用すべきである。

公法上の行為の代理権は基本代理権にあたるか

私法取引上の帰責性とはいえないから、原則として基本代理権にあたらない。
もっとも、特定の私法上の取引の一環としてなされたときは、私法取引上の帰責性を認めうるから、基本代理権にあたる。

事実行為の代行権限は基本代理権にあたるか

私法取引上の帰責性とはいえないから、原則として基本代理権にあたらない。
もっとも、対外的取引を前提とするものである場合は、私法取引上の帰責性たりうるから、基本代理権にあたる。

法定代理権は基本代理権にあたるか

本人の過失が不要とされる以上、基本代理権にあたる。

761条の法的性質

連帯責任の前提として夫婦相互の法定代理権を定めたものである。

日常家事(761条)の意義

取引安全の観点から、客観的に夫婦の共同生活に通常必要な法律行為をいう。

日常家事の代理権(761条)は基本代理権とする表見代理の肯否

夫婦別産制(760条)を害するから、110条を適用・類推適用することはできない。
もっとも、取引安全も無視できないから、761条に110条の趣旨を類推し、日常家事と信じるにつき正当な理由ある場合には、夫婦の連帯責任を肯定すべきである。

「第三者」の範囲

正当理由を具備には代理権に対する具体的な信頼が必要である以上、直接の相手方に限る。

表見代理規定の重畳適用

取引安全のための共通の制度である以上、重畳適用しうる。

代理人が直接本人を名乗った場合

取引安全を図る必要性に変わりはないから、表見代理の類推適用を肯定すべきである。

表見代理成立により無権代理人の責任は否定されるか

表見代理は取引安全の制度であり、無権代理人の免責のための制度でない。
よって、両者は選択的なものと考える。

「過失」(117条2項)は軽過失を含むか

表見代理と無権代理を選択的制度と解する以上、軽過失を除外する必要はない。
よって、文言通り、軽過失も含む。

無権代理人の本人相続

当然に有権代理とすると、硬直的な結論となるから、両者の権利義務が並存すると解する。
もっとも、無権代理人は信義則上、追認拒絶権を行使し得ない。

本人による無権代理人の相続

本人の地位で追認拒絶をすることは妨げられない。
もっとも、無権代理人の責任も相続するから、損害賠償責任を負う。
但し、履行責任については、相続という偶然により相手方を利する必要はないから、否定すべきである。

無権代理人を相続した者が本人を相続した場合

判例は無権代理人の本人相続と同視し、追認拒絶を否定する。
しかし、無権代理行為をしていない以上、信義則に違反しないから、追認拒絶しうる。

本人が生前に追認拒絶の意思を明確化していた場合

追認拒絶の効果が確定するから、無権代理人もこれを援用しうる。

無権代理人の後見人就任

被後見人の利益のためである以上、信義則に反するとまでいえないから、追認拒絶しうる。

126条の行使期間は制限能力者と保護者で別々に進行するか

法律関係の早期安定という趣旨から、いずれかについて期間が経過すれば、他方も行使できなくなる。

取消権行使により発生する請求権の行使期間

取消権とは別個の権利である以上、別途通常の消滅時効に服する。

126条の期間は時効か除斥期間か

早期の法律関係安定の趣旨から、除斥期間と解する。

時効援用の法的性質

145条の趣旨は当事者意思尊重にあるから、援用の意思表示によって時効の効果が確定的に生じる(停止条件説)。

留置権の抗弁の主張と被担保債権の時効中断

被担保債権自体の訴求ではないが、一種の権利主張として催告に準ずる効力を認めることが出来る。

時効援用権者の範囲(「当事者」(145条)の意義)

当事者意思尊重という145条の趣旨から、時効によって直接権利を取得し、義務を免れる者をいう。

時効援用権の代位行使の可否

時効援用の財産権的側面から、一身専属権(423条1項ただし書)にあたらないから、代位行使できると考える。

時効援用による効果の人的範囲

当事者意思尊重という145条の趣旨から、援用者との関係でのみ生じる。

時効完成後の債務承認(時効完成を知らない場合)

時効完成を知らない以上、放棄とは考えられない。
もっとも、自認した以上、その後の援用は信義則に反し許されない。

主債務者についての時効中断は物上保証人に及ぶか

396条の趣旨から、物上保証人にも及ぶ。

物上保証人に対する抵当権実行により、被担保債務の時効は中断するか

競売開始決定の送達により中断する(147条2号、155条)。

期限の利益喪失約款付き割賦払い債権の消滅時効起算点

本来の期限の定めがある以上、期限なき債務と同視できないから、債権者が残額全部を請求したときから起算すべきである。

不動産賃借権の時効取得の可否

一般に債権は永続した事実状態を観念しえないことから、時効取得しえない。
もっとも、不動産賃借権については、実質において地上権と異ならず、永続した事実状態を観念できる。
よって、時効取得しうる。
ただ、中断の機会を与える必要性から、土地の継続的な用益という外形的事実の存在 と、用益が賃借意思に基づくことの客観的表現が必要である。

相続による他主占有の自主占有への転換

相続は包括承継であるから、当然には自主占有に転換しない。
もっとも、相続人が新たに占有物を事実上支配することで占有を開始し、所有の意思があると認められる場合には、「新権原」(185条)による転換を認めうる。

自己物の時効取得

162条が「他人の」としたのは、通常必要性がないからにすぎない。
永続する事実状態の尊重という時効制度の趣旨は自己物にも当てはまる場合があるから、時効取得を肯定すべきである。

善意占有者の承継人が悪意である場合の短期取得時効の成否

占有途中で悪意となった場合と同視して、短期取得時効を肯定すべきである。

悪意占有者からの善意の相続人には自己固有の占有による短期取得時効は成立するか

相続人も「承継人」(187条1項)である以上、自己固有の占有による短期取得時効が成立しうる。

取得時効と登記

取得時効も、一種の物権変動であるから、時効完成時に譲渡が行われた場合と同視し、二重譲渡と同様に処理すべきである。

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