債権各論

取消に基づく不当利得返還請求権の同時履行関係の有無

原則として、相互の牽連性から同時履行関係となる。
もっとも、詐欺強迫による取消の場合には、公平の観点から詐欺強迫者は抗弁主張できない(295条2項類推適用)。

危険負担の債権者主義の適用範囲

双務契約の牽連性からは、債務者主義が原則である。
そうである以上、債権者主義は、引渡しにより目的物の支配が移転し、危険移転を正当化しうる段階以後に限って適用すべきである。
よって、534条1項は目的物の引渡し後にのみ適用されると解する。

違約手附と解約手附の並存の可否

手附金相当額の負担で解約することにも合理性がある以上、違約手附というだけでは、557条1項は排除されない。

「当事者の一方」(557条1項)の意義

当該要件は解除される者が不測の損害を受けることを防止する趣旨である。
よって、解除される相手方を指す。

「契約の履行に着手するまで」(557条1項)の意義

解除可能時を画する要件である以上、客観的に判断すべきである。
よって、客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合をいうと解する。

敷金返還請求権の発生時期

敷金は明渡しまでに生ずる一切の賃借人の債務を担保するものである以上、明渡し時に返還請求権が発生する。

建物明渡しと敷金返還との同時履行の肯否

敷金返還請求権は明渡し時に生じる以上、建物明渡しが先履行であるから、同時履行は否定すべきである。

二重賃借人の優劣

債権には排他性はないから、先履行を受けた者が事実上優先するのが原則である。
もっとも、不動産賃借権には一定の排他性・対抗力が認められる(605条、借地借家法10条1項、31条1項)。
よって、不動産賃借権については、対抗要件を先に具備した者が優先すると解する。

賃借権に基づく妨害排除請求権の肯否

債権には排他性が無いから、原則として賃借権には妨害排除請求権は認められない。
もっとも、対抗力(605条、借地借家法10条1項、31条1項)を備えた不動産賃借権は排他性を有するから、妨害排除請求権を認めうると解する。

612条2項の解除権の制限

賃貸借の継続性から、信頼関係を重視すべきである。
具体的には、背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権は発生しない。

賃貸不動産の所有権移転により当然に賃貸人の地位の移転は生じるか

所有者と賃貸人の分離は法律関係を錯綜させるから、賃借人が対抗力を具備する限り当然に賃貸人の地位の移転も生じる(従たる権利、87条2項類推適用)。

賃貸人の地位の移転に賃借人の同意を要するか

賃貸人の債務の無個性性から、不要と解する。

賃貸人たる地位の主張に所有権登記を要するか

二重払い防止の観点から賃借人は登記欠缺を主張する正当な利益を有する以上、登記は必要である(177条)。

賃貸不動産の譲渡により敷金関係も移転するか

敷金は賃貸人債権を担保するものである以上、担保の随伴性から、旧賃貸人に対する未払債務を差し引いた残額について当然に新賃貸人に移転する。

賃借人の交代による敷金関係の移転の可否

旧賃借人が新賃借人に対して当然に担保を提供すべきとはいえない以上、敷金関係の移転は否定すべきである。

原賃貸借の合意解除を転借人に対抗できるか

合意解除は実質的には賃貸人の権利放棄であるから、398条、538条の法意に照らし、転借人にはこれを対抗できない。
もっとも、転借人の使用収益が確保されれば足りるから、転貸人(原賃借人)は法律関係から離脱する。

原賃貸借の債務不履行解除の場合の転借人への催告の要否

法律上解除の要件となっていない以上、不要と解する。

賃貸借についての541条適用の可否

賃貸借も契約である以上、541条は適用される。
もっとも、賃貸借の継続性に鑑み、信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情があるときは、信義則上、解除は許されない。
逆に、既に信頼関係が破壊されるに至っているときは、無催告で解除できる。

親族名義の建物登記に借地権の対抗力(借地借家法10条1項)が認められるか

他人名義登記では、自己の建物所有権すら対抗できない以上、借地権の対抗力を認めることは出来ない。

転借人の建物登記に借地権の対抗力が認められるか

転借人は転借地権者(借地借家法2条5号)であって、借地権者で無い以上、対抗力は認められない。

譲渡担保権者の建物登記に借地権の対抗力が認められるか

借地権者の登記でない以上、対抗力を認めることは出来ない。

表示の登記に借地権の対抗力が認められるか

借地権者名義の登記である以上、借地権者の借地権を推知させるに十分であるから、対抗力を肯定しうる。

借地権の存在について悪意の土地譲受人による対抗力を欠く借地人への明渡請求の可否

居住権保護という借地借家法の趣旨に鑑み、権利濫用(1条3項)として認められない。

建物買取請求に基づく代金支払いと土地明渡しとの同時履行・留置権の肯否

建物取壊しを回避する建物買取請求の趣旨から、肯定すべきである。

借地権が債務不履行解除により消滅する場合にも建物買取請求権を行使できるか

できない(借地借家法13条1項「期間が満了した場合」)。

造作買取請求に基づく代金支払いと建物明渡しとの同時履行・留置権の肯否

造作と建物では価値に著しい差があるから、公平の観点から否定すべきである。

借家権が債務不履行解除により消滅する場合にも造作買取請求権を行使できるか

できない(借地借家法33条1項「期間の満了又は解約の申入れによって」)。

請負人が材料を提供した場合の完成建物の所有権の帰属

材料と完成建物との同一性と、請負人の代金支払確保の観点から、請負人に原始的に所有権が帰属する。

出来方部分を注文者に帰属させる旨の請負人との特約に、下請人は拘束されるか

下請契約は元請契約を前提とする以上、下請人は元請人の履行補助者に過ぎない。
よって、下請人は注文者に独立の主張をなしえず、元請契約の内容に拘束される。

請負目的物完成後、引渡し前に不可抗力により目的物が滅失した場合の危険負担

請負は仕事完成に本質があるから、特定物の設定・移転を目的とする契約とはいえない。
よって、債務者主義(536条1項)が適用され、請負人は報酬債権を失う。

請負目的物の完成時期(担保責任の発生時期)

工程が終了すれば、仕事として一応完了する以上、最終工程終了時に目的物が完成すると解する。

請負担保責任の損害賠償の範囲

瑕疵の無い仕事の完成を担保するものである以上、履行利益まで及ぶ。

事務管理によって当然に代理権が発生するか

事務管理は管理者・被管理者間の対内関係を定めるものに過ぎないから、代理権は当然には発生しない。

準事務管理の肯否

事務管理は利他的行為の規律である(697条1項「他人のために」)以上、否定すべきである。
不当利得・不法行為により処理すれば足りる。

過失相殺能力

責任能力と異なり責任負担の根拠となるものでないから、事理弁識能力があれば足りる。

被害者側の過失を過失相殺で考慮できるか

公平な損害の分担の趣旨から、被害者と身分上・生活関係上一体をなす関係にある者の過失は考慮できる。

被害者の身体的素因に基づく損害の負担

疾患に基づく損害は、全てを加害者に負わせるのは公平でない場合もある。
よって、損害の公平な分担という過失相殺制度の趣旨から、722条2項が類推適用される。
もっとも、疾患に至らない身体的特徴は、個体差の範囲にとどまるから、722条2項の類推適用を否定すべきである。

被害者の心因的素因に基づく損害の負担

心因的素因に基づく損害は、全てを加害者に負わせるのは公平でない場合もある。
よって、損害の公平な分担という過失相殺制度の趣旨から、722条2項が類推適用される。

逸失利益の算定に事故後の事情を考慮できるか

賠償請求権は事故時に発生し、内容が確定する以上、事故後の事情は考慮できない。

711条列挙者以外の遺族の慰謝料請求の可否

711条は立証責任を軽減するものに過ぎないから、709条・710条に基づき慰謝料請求できる。

生命侵害以外の場合の近親者の慰謝料請求の可否

711条は立証責任を軽減するものに過ぎないから、709条・710条に基づき慰謝料請求できる。

財産的損害賠償請求権の相続性

即死の場合でも、観念的には死者に発生して相続人に相続されると解する。

慰謝料請求権の相続性

被害法益が一身専属的であるに過ぎず、単純な金銭債権に変わりは無い以上、相続性を認めうる。

責任能力者の監督者の責任

714条は過失の推定規定に過ぎないから、709条に基づく責任は生じうる。

714条と失火責任法との関係

責任無能力者に代わって監督者に責任を負わせる714条の趣旨と失火責任限定という失火責任法の趣旨から、監督者に重過失があった場合に監督者が責任を負うものと解する。

「事業の執行について」(715条1項)の意義

被害者保護の観点から、行為の外形上職務の範囲内に属すると認められるものを広く含む。
もっとも、被害者が職務の範囲外であることにつき悪意・重過失である場合、使用者責任は追及できない。

使用者による被用者への求償の範囲

被用者を使用して利益を得ながら、損害を全て被用者に帰せしめることは報償責任の原理に反する。
よって、損害の公平な分担の見地から信義則上相当な範囲に限られる。

被用者から使用者への逆求償の可否

使用者は被用者を使用して利益を得ている以上、ある程度の損害を負担すべきである。
よって、損害の公平な分担の見地から、負担割合に応じた逆求償が可能と解する。

715条と失火責任法との関係

使用者は被用者に代わって責任を負うのであるから、被用者について重過失があることを要し、それで足りる。

717条と失火責任法との関係

717条の危険責任原則の趣旨と失火責任法の責任限定の趣旨との調和の観点から、工作物の設置・保存について重過失ある場合に責任を負うものと解する。

「共同の不法行為」(719条1項)の意義

被害者保護の観点から、客観的関連共同があれば足りるが、個人責任の原則から、加害者各人が不法行為の要件を充足する事を要すると解する。

不当利得における受益と損失の因果関係

実質的妥当性の見地から、社会観念上、受益者の受益が損失者の損失に帰するものであると認められれば、因果関係が認められる。

横領・騙取した金銭による弁済に法律上の原因はあるか

「法律上の原因」とは、公平の観点から当該財貨移転を法的に正当化しうる実質的理由をいう。
とすれば、横領騙取の事実につき、弁済受領者が悪意・重過失であった場合、当該弁済は公平の観点から正当化し得ないから、法律上の原因を欠くことになる。

転用物訴権における法律上の原因の判断基準

修繕目的物の所有者・賃貸人が賃借人との賃貸借契約全体において対価無く修繕利益を受けたと評価できる場合には、当該修繕利益は正当化されないといえ、「法律上の原因」を欠くと解する。

「給付」(708条)の意義

終局性無き場合に返還を否定すれば、かえって不法の促進になる。
よって、「給付」とは、相手方に終局的利益を与えるものをいうと解する。

不法原因給付物の所有権に基づく返還請求の可否

不法に法は助力しないという708条の趣旨から否定すべきである。

不法原因給付物の所有権の帰属

給付者からの返還請求が否定される反射的効果として、受領者に所有権が帰属する。

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