現実味を帯びてきた足切り

今回は新司法試験に関する話

新司法試験の採点・成績評価の基準をざっと見て気付いたことがある。
それは、新司法試験では現実に足切りが行われるのではないか、ということだ。

旧司法試験の足切りは名ばかり

実は、旧試験においても、足切りは存在していた。
法務省の資料によると、以下のようになっている。

合否判定方法・基準
  (1)  6科目の得点の合計点をもって合否の決定を行う。
  (2)  1科目の得点は,1,2問の平均点とする。
  (3)  得点が10点に満たない科目がある場合には,それだけで不合格とする

(3)は足切りを意味している。
旧試験においても、確かに足切りは存在していた。
ところが、である。
この資料(PDF)を参照して欲しい。これも法務省発表の資料だ。
少なくとも、平成6年から平成16年の10年間、足切り該当者は、ただの一人もいないのである。

原因は得点調整

直感的におかしいと感じる。
1問目と2問目の取り違え、無効答案(特定答案など)・白紙答案などは零点である。
これらが全く無いはずがない。
なぜ、足切りに該当しないのか。
その答えは、前出の資料の中にある。
それによると、

(5)  上記合否判定方法・基準2の(3)にいう「得点が10点に満たない科目がある場合」とは,素点をもって算出した1,2問の平均点及び採点格差の調整後の得点をもって算出した1,2問の平均点が,いずれも10点に満たない科目がある場合を指すものとする。

とある。
この、「調整後の」というのがポイントだ。
つまり、あのルートの入った式を経由すると、足切りに該当しなくなる。
素点が仮に0点でも、10点以上に引き上げられるのだろう。

資料には平成17年度のものは無い。
しかし、得点調整は同様に行われている以上、17年度も足切りは無かったと考えられる。
そして、今年(平成18年)も、旧試験での足切り該当者は、出ないはずである。

新司法試験は素点ベース

これに対して、新司法試験は事情が違う。
この資料(PDF)を見て欲しい。
採点基準はおおむね旧試験と同じで、得点調整もなされることがわかる。
そして、

(1) 総合評価は,短答式試験の得点と論文式試験の得点を合算した総合点をもって行う。
ただし,論文式試験において最低ラインに達していない科目が1科目でもある者に
ついては,それだけで不合格とする。

とあるので、足切りも存在する。
旧試験と変わらない。一見そう見える。
ところが、

2 論文式試験における最低ライン
最低ラインは,各科目の満点の25%点とする。
なお,最低ラインに達しているかの判定は,各問ごとに考査委員が採点した素点により次
の算式で求めた1科目の点数により行う。

ポイントは、言うまでもなく、「素点により」というところだ。
調整後の点数ではない。
そうなると、足切りが現実味を帯びてくる。
新司法試験では、足切り該当者が実際に出てくるはずだ。

想定される最悪の事態

かつて、旧司法試験においても、足切りが存在すると言われていた。
法務省の発表がある前のことである。
その根拠は、「Gが一つでもあると受からない」という事実だ。
GAAAAAというような成績で不合格。
足切りがあると思われて当然だろう。
逆に、Gを取らないということは非常に難しいことだった。
実際には、前出の資料の通り、足切りは現実には機能していない。
結果的に、Gがあると総合的に上位に上がれないということであった。

このことを新司法試験に置き換えて考えると、少し怖い予測ができる。
旧試験において、実力者でもGを一つも取らないというのは難しかった。
ほとんどの受験者が、Gを取らされていたのである。
そうすると、新司法試験でも、一科目くらいは最低ラインを切ってしまうという者が、続出する可能性がある。
足切り該当者だけで、半数を超えるなどということも、あるかもしれない。
仮にそんなことになれば、当初の合格者数は維持できない。
その場合、合格者数が900人を切ることもありうる。

新司法試験の合格者数が予想以上に少なかった場合は、足切りによる可能性を考慮すべきだろう。

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