本当に法曹人口は足りないのか

「法曹不足」は法科大学院構想のキーワード

法曹人口の不足という問題は、法科大学院構想の重要な論拠とされた。
これまでの司法試験の定員を増やすという方法では、質の低下という問題が避けられず、法曹人口を増加させるには不十分。
新しい教育機関を作って、そこを出れば法曹に十分な知識が習得できるというようにしよう。
これが、法科大学院構想の出発点である。
しかし、本当に法曹人口は不足しているのか。
また、新司法試験によって、それは解消されるのか。

法務省の言う論拠とは

法務省は、以下の2点を法曹不足の論拠とする。
すなわち、法曹の数が他国と比較して大幅に少ないこと、そして、弁護士の偏在である。
法務省は裁判官や検事の不足については、あまり主張しないが、それには理由がある。後述する。

法曹の数については、よく使われる指標として、法曹一人あたりの国民の数の比較がなされる。
日本は約6300人であるのに対し、アメリカ約290人、ドイツ約740人、フランス約1640人ということだ。
これを見る限り、確かに法曹の数が不足していると感じられる。
しかし、国ごとに私的紛争解決の方法は異なるはずである。
司法的解決の比重が小さければ、法曹人口は少なくても構わない。
また、いわゆる法曹三者以外にも法律問題に関わる人々がいるのであり、
法曹三者の役割自体、国ごとに全く同じとはいえない。
そういう意味で、法曹不足の根拠としては、薄弱である。

では、弁護士の偏在という点はどうか。
確かに、裁判所の管轄地域内に、一人しか弁護士がいない、または全く弁護士が存在しないという地域がある。
いわゆる、「ゼロワン地域」である。
ここを見て欲しい。確かに、弁護士は都市圏に偏在している。
しかし、これは法曹人口の不足によるものだろうか。
これは、コンビニの分布表である。
コンビニも、都市圏に偏在していることがわかる。
これは、コンビニの数が少ないからだろうか。
おそらくそうではない、弁護士やコンビニが都市圏に集中するのは、需要が都市圏に集中しているからである。
弁護士の偏在が法曹人口の不足によるものだという主張は、誤りである。

現実はどうか

現実には、弁護士は供給過剰というべきだろう。
なぜなら、近年、司法修習生の就職難という問題が生じているからだ。
本当に弁護士の数が足りないのであれば、修習生が就職に困ることはない。
むしろ、バブル期の新卒者のように青田刈りが始まってもおかしくない。
しかし、現実は逆に、修習生がなかなか就職先を見つけられないでいる。
とりわけ、2007年度は、2005年度の現行試験合格者(60期)約1500人、2006年度の新司法試験合格者(修習は1年に短縮)約1000人の合計2500人という、従来の二倍近い修習卒業生がでる予定である。
これだけの数に対する就職先はあるのか。
関係者は「2007年問題」と称して頭を悩ましているそうである。

他方、検事、裁判官は、人手不足である。
検事や裁判官が、一人で数百の事件を抱えていることは、よく知られている。
これが、訴訟の遅延や被疑者・被告人勾留の長期化につながっている。
この意味で、法曹人口の不足は、事実といえる。

新司法試験によりどう変化するか

新司法試験合格者は、2010年には3000人を目標としているようだ。
法曹人口は、急激に増加していくことになる。
しかし、検事、裁判官の採用人数は、どうやらあまり増加しないようである。
その理由は、国の財政状況にある。
検事、裁判官の増員となると、その分の人件費を国家が支出することになる。
しかし、国は今、財政再建の最中だ。
歳出削減を国家目標として掲げている。
とてもではないが、増員などできないということだろう。
法務省が、法曹不足の論拠として裁判官や検事の不足を挙げないのは、このためである。

そうすると、弁護士の数だけが急増する結果となる。
ただでさえ供給過剰なところに、さらなる増員である。
おそらく、修習生の就職難はより深刻になり、イソ弁の給与はかなり下がると思われる。
先にコンビニと比較したが、コンビニも出店過剰で閉店する店舗が続出している。
新司法試験合格の先には、非常に厳しい未来が待っているかもしれない。

結局、必要なところを増員せず、不必要なところが増員されるというのが、現状のようだ。

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