「相続させる」旨の遺言

遺産の一部を特定の相続人に、「相続させる」旨の遺言の法的性質については、平成に入ってから一連の判例がある。
この判例について、若干注意すべき点がある。
それは、判例が、通常の遺産分割方法の指定とは理解していないという点である。

通常の遺産分割方法の指定では、相続によって直ちに物権変動が生じることはない。
一度相続人間の共有として相続財産の一部となった後、指定に従った遺産分割(指定分割)を経て、その指定通りの権利帰属が生じるのである。
遺産分割の際の分割方法が指定されるに過ぎないからである。

これは、判例の理解とは異なる。
判例は、相続によって、遺産分割を経ることなく直ちに指定された通りの物権変動が生じるとする。

また、「遺産分割と登記」において、判例理論からは登記が必要である。
しかし、「相続させる」旨の遺言による権利取得につき、平成14年判例は登記は不要とする。
これは、遺産共有の状態を経由しないことから、177条の物権の得喪変更にあたらないという理解といえる。

結局、判例は「相続させる」旨の遺言につき、実質的には、明文に無い新たな類型の遺言と捉えていることになる。
判例の説を遺産分割効果説と呼び、遺産分割方法指定説と区別して位置付けられているのはそのためである。

論文式試験において判例の考え方を採用する場合、以上の点を理解しておくべきである。
判例の立場の実質的理由付けとしては、「当該相続人への早期かつ確実な権利移転という被相続人の意思の尊重」ということでよいと思う。

なお、登録免許税額の違いを背景事情としてあげているテキストもあるが、現在は税額の差は是正されているので注意したい。

戻る