弁護士数急増と弁護士会の利害

合成の誤謬

弁護士の数の急増は、弁護士会にとって、プラスか、それともマイナスか。

まず、個々の弁護士の利害を考えてみよう。
近年の事件数のデータ(PDF)を参照してみて欲しい。
多くのデータの中で目をつけるべきところは、第一審である地裁と簡裁の事件総数(但し民事・行政事件のみ)だ。
これをみると、平成15年までは漸増しているが、この年がピークであり、それ以降は減少傾向にあることがわかる。(※)
今後弁護士が急増しても、訴訟事件数はそれに見合うほど増加しない可能性が高い。
これはすなわち、パイは増加しないが、それを食い合う者の数は増えるということである。
一人一人の分け前は、どんどん少なくなる。
従って、弁護士数の急増は、個々の弁護士にとって、マイナスである。

そうすると、そのような個々の弁護士の集合体である弁護士会にとっても、弁護士の急増はマイナスとなりそうである。
しかし、よく考えてみると、そうではない。
合成の誤謬とでもいうべき状況がここにある。

※地裁の人事訴訟の件数が異常に減少しているが、これは、平成16年から、家裁へ移管されるようになったためである。

金が入る

まず、資金面について考える。
弁護士は、日弁連や地方の弁護士会に対して、会費等の負担をしなければならない。
具体的な金額は各弁護士会によって異なるが、比較的高額であるとされる(参考PDF)。
そして、弁護士会の収入は、主にこの会費等でまかなわれている。
日弁連について言えば、収入全体の90%以上を、この会費が占めているという(参考
弁護士の数が急増すれば、これらの収入も急増することになる。

弁護士会にとって、これはプラスである。

政治的影響力も増す

次に、圧力団体としての弁護士会の政治的影響力という面に着目してみる。
弁護士数が急増すれば、弁護士会の構成員の数が急増することになる。
政治的影響力という面で見ると、組織の頭数の増加はそのまま政治力の増加につながる。
選挙は頭数単位で決定されるからだ。

この点でも、弁護士会にとって、プラスであるといえる。

弁護士会の表裏

以上のように、弁護士の数が急増することは、弁護士会にとっては、プラスの要素が強い。
そのことに気が付くと、なぜ、ロースクール構想があれ程あっさりと実現されてしまったかが、理解できる。
ロースクール構想は、法曹人口を無理矢理に増加するための手段として導入されたものといっていいからだ。

弁護士会は、個々の弁護士の利害を考慮して、表向きは反対しておきながら、内心ではまんざらでもなかったのであろう。
そのため、具体的な反対行動は採らなかったのではないか。

従って、今後も、新司法試験の合格者数の増加に対して、実効的な反対活動はしないだろうと考えられる。

研修所の孤軍奮闘

そうなると、むやみな法曹人口急増の歯止めとしての最後の砦は、司法研修所ということになる。
先日、2回試験において、史上最多の落第者を出した。
これは、司法研修所の孤独な抵抗であるといえる。

法務省の方針と全く矛盾するようなやり方であるが、これが権力分立というものだろう(研修所は最高裁の所管である)。
しかし、あまりにやりすぎると、研修所を潰そうとする動きが加速しないかと心配している。

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