平成18年新試短答公法系第1問解説

【問題】

適正手続の保障に関する次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例の要約として,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア. 刑事裁判において,起訴された犯罪事実のほかに,起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し,実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し,これに基づいて被告人を重く処罰することは,不告不理の原則に反し,憲法第31条に違反する。

イ. 憲法第31条の定める法定手続の保障は,直接には刑事手続に関するものであるが,行政手続についても同条の保障が及ぶと解すべき場合があり,その場合には行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えることが必要である。

ウ. 憲法第35条は同法第33条の場合を除外しているから,少なくとも現行犯の場合に関する限り,法律が司法官憲の発した令状によらずにその犯行の現場において捜索押収等をなし得べきことを規定したからといって,憲法第35条違反の問題を生じる余地はない。

エ. 法廷等の秩序維持に関する法律による制裁は従来の刑事的行政的処罰のいずれの範ちゅうにも属しないところの,同法によって設定された特殊の処罰であるが,その制裁は,通常の刑事裁判に関して憲法が要求する諸手続の範囲内において,これに準拠して科されるべきものである。

【解説】

アについて

「実質上これを処罰する趣旨」というのがポイントである。
余罪については起訴が無いにも関わらず、実質上余罪について審理して処罰するのであるから、不告不理に反するとされている。
よって、正しい。

正解:1

イについて

判例は、行政手続にも31条の保障が及ぶ場合があるとする一方で、
「同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。」
とする。
従って、「同条の保障が及ぶと解すべき場合」に、一般的に、「行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えることが必要である」としている本肢は誤りである。

正解:2

ウについて

最判昭和30・4・7参照。
判例を知らなくても、刑訴法220条の規定があることから、正しいと判断すべきである。
ただ、「余地はない」となっているため、誤りと判断したとしても、これは止むを得ないところだろう。

正解:1

エについて

判例は、「本法による制裁は従来の刑事的行政的処罰のいずれの範疇にも属しないところの、本法によつて設定された特殊の処罰である。そして本法は、裁判所または裁判官の面前その他直接に知ることができる場所における言動つまり現行犯的行為に対し裁判所または裁判官自体によつて適用されるものである。従つてこの場合は令状の発付、勾留理由の開示、訴追、弁護人依頼権等刑事裁判に関し憲法の要求する諸手続の範囲外にあるのみならず、またつねに証拠調を要求されていることもないのである。かような手続による処罰は事実や法律の問題が簡単明瞭であるためであり、これによつて被処罰者に関し憲法の保障する人権が侵害されるおそれがない。なお損われた裁判の威信の回復は迅速になされなければ十分実効を挙げ得ないから、かような手続は迅速性の要求にも適うものである。」とする。
よって、「憲法が要求する諸手続の範囲内」とする本肢は誤りである。

正解:2

全体について

アとイは基本的な知識に属する。
しかし、ウに関しては、「余地はない」との文言から、誤りと考えてしまっても無理はなく、
また、エの肢はやや細かい知識だといえる。
アからエのすべての正誤が合って初めて正解となることを考えると、全体としては難問であったと思う。

本問のような出題形式は旧試験では存在しなかった。
類似の形式として旧試験で存在していたものは、個数問題である。
個数問題の場合、偶然正解となるケースがかなりあったため、このような形式にしたものと思われる。
また、部分点があるという点も、旧試験にはなかった部分である。

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