平成18年度新試短答公法系第4問解説

【問題】

憲法第27条の勤労の権利及び第28条の労働基本権に関する次のアからオまでの各記述について,最高裁判所の判例の要約として,正しいもの三つの組合せを,後記1から10までの中から選びなさい 。

ア. 憲法第27条の勤労の権利は,これを直接根拠として行政庁に対してその実現を求め得る具体的請求権であるとは解せないものの,立法府が勤労の機会を実質的に確保するため最低限度の立法をしないときには憲法第27条に基づいて立法不作為の違憲確認訴訟を提起できる。

イ. 労働組合の組合員に対する統制権は,労働者の団結権保障の一環として,憲法第28条の精神に由来するものであるが,労働組合が,公職選挙における統一候補を決定し,組合を挙げて選挙運動を推進している場合であっても,組合の方針に反して立候補した組合員を統制違反として処分することは,労働組合の統制権の限界を超えるものとして,違法といわなければならない。

ウ. 労働組合への加入強制の方式の一つとして採用されているユニオン・ショップ協定のうち,使用者とユニオン・ショップ協定を締結している組合(締結組合)以外の他の組合に加入している者や,締結組合から脱退・除名されたが他の組合に加入し又は新たな組合を結成した者について,使用者の解雇義務を定める部分は,労働者の組合選択の自由や他の組合の団結権を侵害するものであり,民法第90条の規定により無効と解すべきである。

エ. 憲法は,勤労者の団体行動権を保障しているが,勤労者の争議権の無制限な行使を許容するものではなく,労働争議において使用者側の自由意思をはく奪し又は極度に抑圧し,あるいはその財産に対する支配を阻止し,私有財産制度の基幹を揺るがすような行為をすることは許されない。いわゆる生産管理において,労働者が,権利者の意思を排除して企業経営の権能を行うときは,正当な争議行為とはいえない。

オ. 憲法第28条の趣旨からすると,正当な争議行為については,刑事責任を問われず,また,民事上の債務不履行ないし不法行為責任を免除されると解され,ストライキを行った場合,それが正当な争議行為であると認定されれば,当該ストライキ期間中の賃金についても使用者側に請求することができる。

1. アイウ  2. アイエ  3. アイオ  4. アウエ
5. アウオ  6. アエオ  7. イウエ  8. イウオ
9. イエオ  10. ウエオ

【解説】

まず、もっともわかりやすい肢は、オだろう。
「ノーワークノーペイの原則」からして、ストライキ期間中の賃金はもらえない。
よって、オの肢は誤りである。
そもそも、ストライキ中にも賃金がもらえるなら、いつまでもストライキし続ければ良いということになるだろう。
常識レベルで誤りと考えても、いいと思う。

そうすると、正しい肢を選ぶのであるから、オの含まれている3、5、6、8、9、10は正解にはなり得ない。

すなわち、
1.アイウ
2.アイエ
4.アウエ
7.イウエ
が残る。

また、判例は立法不作為に対する違憲確認訴訟という訴訟類型を認めていない。
現在のところ、立法不作為の違憲性は、国家賠償法上の違法性の判断の中でなされているにすぎない。
近時の在外選挙権の制限を違憲と判断した判例(全文PDFはこちら)も、違憲確認自体は認めていない。
従って、アは誤りと判断できるだろう。

よって、1、2、4は正解になり得ず、7だけが残る。
従って、7が正解となる。

なお、イは三井美唄炭鉱事件、ウは三井倉庫陸運事件(PDF)、エは山田鋼業吹田工場事件(PDF)の最高裁判例に関する肢である。
知らなかったという人は確認しておこう。

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