平成18年度新試短答公法系第6問解説

【問題】

内閣は,A国との間で,相手国から引渡請求を受けた犯罪人を相互に引き渡す義務を課す犯罪人引渡条約を締結した。ところが,内閣が事後にその承認を国会に求めたところ,国会は,引渡義務の対象から自国民が除外されていないことを理由に,引渡義務の対象から自国民を除外するとの条項を付して,その犯罪人引渡条約を承認するとの議決をした。このような事態に関する次のアからカまでの各記述について,明らかに誤っているもの二つの組合せを,後記1から9までの中から選びなさい。

ア. 国会の条約承認手続において両院協議会の手続が認められていることからして,犯罪人引渡条約に新たな条項を付する決議は,国会に認められた権限である。

イ. 条約の締結に際して,内閣が事前に国会の承認を受けることは条約の成立要件であるから,この犯罪人引渡条約は,新たな条項の有無にかかわらず国内法上効力が認められない。

ウ. 新たな条項を付して承認するとの国会の議決は,内閣に対し,新たな条項を含んだ条約の締結交渉を政治的責務として課すことになる。

エ. 条約の内容を確定するのは,内閣の職務に属することであるから,国会が行うことができるのは承認か不承認に限られ,国会は犯罪人引渡条約に新たな条項を加えることは認められていない。

オ. 条約に国会の承認が必要なのは今日の民主国家には共通のことであり,内閣案のとおりに国会の承認を受けることができなかった犯罪人引渡条約は,結局は不承認を意味することになるから国内法としては無効と考えざるを得ない。

カ. 条約は国会の議決を必要とする一種の法律であるから,後法優先の原則により,新たな条項の付された条約は国内法として効力を持つことになる。

1. アとウ 2. イとエ 3. ウとオ 4. エとカ 5. アとエ 6. イとオ
7. ウとカ 8. アとオ 9. イとカ

【解説】

国会の条約修正権・事後承認を欠く場合の条約の国内法的効力についての問題である。
「明らかに誤っているもの」を選ぶのである。
従って、どの学説に立ったとしても、おかしいものを選ぶことになる。

まず、すぐにわかるのは、カの肢であろう。
条約は相手国との合意によらねばならない。
修正を肯定する説でも、内閣に新たな条約案について再交渉を求めるに過ぎないとされている。
よって、修正により当然に国内法的効力を認めるカの肢は明らかに誤りである。

そして、うまく問題文を作ってあって気付きにくいとは思うが、よく読むとイがおかしい。
「内閣が事前に国会の承認を受けることは条約の成立要件であるから」としているが、事後の承認でもよいのである。
従って、イは明らかに誤っている。

よって、正解は9となる。

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