平成18年度新試短答公法系第10問解説

【問題】

憲法第9条に関する次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例の要約として,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア. 憲法第9条は,我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではなく,憲法の平和主義は決して無防備,無抵抗を定めたものではない。

イ. 憲法第9条第2項がその保持を禁止した戦力とは,我が国が主体となってこれに指揮権,管理権を行使し得る戦力をいうものであり,外国の軍隊は,たとえそれが我が国に駐留するとしても,ここにいう戦力には該当しない。

ウ. 憲法第9条が侵略のための陸海空軍その他の戦力の保持を禁じていることは一見明白であるが,自衛のための軍隊その他の戦力の保持を禁じているか否かに関して憲法第9条第2項は一義的に明確な規定と解することはできない。

エ. 憲法第9条の宣明する国際平和主義,戦争の放棄,戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は,私法的な価値秩序とは本来関係のない公法的な性格を有する規範であるから,それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する作用を営むことはない。

【解説】

アとイについて

砂川事件最高裁判決についての肢である。
判決文を参照すれば判る通り、ほとんど同じ言い回しがある。
正しい。

なお、砂川事件判例は、行政協定についての国会承認の要否についても触れている。
あまり知られていないが、知っておきたい。
また、多くの補足意見、意見が付されており、むしろ、多数意見よりも文量が多いくらいである。
なかでも、田中、垂水裁判官の補足意見と小谷、奥野・高橋裁判官の意見は読む価値があると思う。

ウについて

この肢は、長沼事件控訴審判決の判示である。
よって、最高裁判所の判例の要約としては、誤りである。
控訴審判決の判文を読む場合、最後の「第六 自衛隊等違憲の主張について」の部分だけで十分である。
前半の森林法の部分は、読んでいて頭が痛くなるだろう。

なお、なぜ本肢のような判示がなされたかというと、控訴審が、
「憲法第八一条は、前記統治行為の属性を有する国家行為については原則として司法審査権の範囲外にあるが、前記の如く大前提、小前提ともに一義的なものと評価され得て一見極めて明白に違憲、違法と認められる場合には、裁判所はこの旨の判断をなし得るものであることを制度として認める規定であると解するのが相当である。」
とし、明白な違憲性の判断において、解釈の一義性を問題にしたからである。

エについて

百里基地訴訟最高裁判決の判示である。
この判旨は有名なので、すぐに正しいと判断できたと思う。

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