平成18年度新試短答公法系第14問解説

【問題】

憲法改正に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア. 国会が発議した憲法改正案は国民の承認を得なければならないが,憲法上は,必ず特別の国民投票が実施されなければならないわけではなく,例えば,参議院議員通常選挙の際に国民の投票を求めることも認められている。

イ. 憲法第96条第1項は,憲法改正が成立するためには国民投票において「その過半数の賛成」を必要とするとしているが,憲法改正の重要性や硬性憲法であることを重視する場合には,「その過半数の賛成」とは国民投票における有効投票の過半数を意味すると解すべきである。

ウ. 憲法改正権が制度化された制憲権であるという理解からすれば,制憲権が万能である以上,憲法改正には限界はなく,いかなる内容の改正もなし得るということになる。

エ. ポツダム宣言の受諾によって主権の所在が天皇から国民に移ったという,いわゆる八月革命説は,憲法改正には限界があるという立場を採りつつ日本国憲法の制定を正当化しようとするものである。

【解説】

アについて

正しい。
96条1項の「国会の定める選挙」とは、衆議院議員総選挙と参議院議員通常選挙を指すとされている。

イについて

「その」を有効投票総数と解するか、無効票も含めた投票者総数と解するかにつき争いがある。
憲法改正の重要性や硬性憲法であることを重視するならば、改正がされにくいような解釈を採ることになる。

この点、有効投票総数と解すると、例えば、賛成1000、反対800、無効票500などという場合にも、改正が可能である。
有効投票総数は1800であり、半数の900を賛成が上回るからである。
これに対し、投票者総数と解すると、投票者総数は2300であるから、半数は1150となる。
従って、賛成は半数を超えないから、改正はできない。
つまり、投票者総数と解する方が、改正がされにくいのである。

よって、憲法改正の重要性や硬性憲法であることを重視するなら、投票者総数と解することになる。
以上から、本肢は誤りである。

ウについて

正しいとも誤っているとも取れそうな肢である。
この問題が、「明らかに誤っているか」を訊いてきているのであれば、「明らかに誤ってはいない」と答えるのが正しい。
そのように考える学説があるからだ。

しかし、本問のように、正しいか誤っているかといわれると、微妙になる。
「制憲権が万能である以上・・・ことになる」との文言を、どう解釈するかである。
「制憲権が万能である以上、無限界説以外に考えようが無い」という意味で解釈すれば誤りとなる。
芦部説のような限界説も存在するからである。
他方、「制憲権が万能であると考えれば、改正無限界となることが理論的だ」という意味で解釈すれば、正しい。
万能な権利には、限界が無いと解されるからである。

本肢の場合、「・・・以上、・・・ことになる」という断定的な言い回しなので、前者の解釈をすべきだろう。
結論的には、誤りということになる。

エについて

日本国憲法は、明治憲法の改正という手続きにより行われた。
これを正当化する場合、天皇主権から国民主権への移行をどう説明するかが問題となる。
改正無限界説からは、何の支障も無い。
この説からは「なんでもあり」だからである。

他方、通説である改正限界説に立つ場合、主権の変更はどう考えても限界を超えている。
従って、改正は限界を超えた不当なものとなりそうである。
これを何とかしようとしたのが、八月革命説である。

この説は、明治憲法の改正により日本国憲法が制定されたとは考えない。
ポツダム宣言受諾により、「革命」が生じ、その時点で主権が国民に移り、その国民が日本国憲法を新たに作ったと考えるのである。
この説のネーミングにある「八月」とは、ポツダム宣言を受諾した1945年8月14日のことを指す。

以上から、本肢は正しい。

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