平成18年度新試短答公法系第15問解説

【問題】

地方公共団体において,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができる措置を執ることは,憲法第14条第1項に違反しないとした最高裁判所の判決(最高裁判所平成17年1月26日大法廷判決,民集59巻1号128頁)に関する次のアからエまでの各記述について,正しい
もの二つの組合せを,後記1から6までの中から選びなさい。

ア. この判決は,地方公共団体が,在留外国人を職員として採用する場合,その者について,どのような昇任の条件を定めるかは当該地方公共団体の裁量にゆだねられるから,その判断に裁量権の逸脱・濫用がない限り,違法の問題を生じないとした。

イ. この判決は,日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める「特別永住者」の公務就任権を制限する場合について,一般の在留外国人とは異なる取扱いが求められると解する余地を否定した。

ウ. 憲法が,在留外国人に対し一定の範囲で公務就任権を保障しているか否かについては争いがあるが,この判決は,これを否定する立場に立つことを明らかにしたものである。

エ. この判決は,当該地方公共団体の管理職の中に,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするものが含まれていることを前提としている。

1. アとイ  2. アとウ  3. アとエ  4. イとウ  5. イとエ  6. ウとエ

【解説】

外国人管理職任用事件最高裁判決についての問題である。

アについて

上記判例は、
「地方公務員法は,一般職の地方公務員(以下「職員」という。)に本邦に在留する外国人(以下「在留外国人」という。)を任命することができるかどうかについて明文の規定を置いていないが(同法19条1項参照),普通地方公共団体が,法による制限の下で,条例,人事委員会規則等の定めるところにより職員に在留外国人を任命することを禁止するものではない。普通地方公共団体は,職員に採用した在留外国人について,国籍を理由として,給与,勤務時間その他の勤務条件につき差別的取扱いをしてはならないものとされており(労働基準法3条,112条,地方公務員法58条3項),地方公務員法24条6項に基づく給与に関する条例で定められる昇格(給料表の上位の職務の級への変更)等も上記の勤務条件に含まれるものというべきである。しかし,上記の定めは,普通地方公共団体が職員に採用した在留外国人の処遇につき合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることまで許されないとするものではない。また,そのような取扱いは,合理的な理由に基づくものである限り,憲法14条1項に違反するものでもない。
 管理職への昇任は,昇格等を伴うのが通例であるから,在留外国人を職員に採用するに当たって管理職への昇任を前提としない条件の下でのみ就任を認めることとする場合には,そのように取り扱うことにつき合理的な理由が存在することが必要である。」
とする。
裁量権の逸脱、濫用の問題とはしていない。
よって、誤り。

イについて

上記判例は、
「普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である。」
とした上で、

「そして,この理は,前記の特別永住者についても異なるものではない。」としている。
何らの限定も付していないから、一般の在留外国人とは異なる取扱いが求められると解する余地を否定したということができる。
何らかの特別な取り扱いの余地を認めるのであれば、その点についての検討がなければおかしい。
本件は、まさに特別永住者についての事案だからである。

よって、正しい。

ウについて

上記判例は、14条や労働基準法3条の問題として検討し、在留外国人の公務就任権の保障の肯否については、触れていない。
よって、否定した立場を明らかにしたとする本肢は誤り。

なお、原審は、
「この我が国に在住する外国人が就任することのできる職種の公務員については、我が国に在住する外国人に対しても、これへの就任について、憲法第二二条第一項、第一四条第一項の各規定の保障が及ぶものというべきである」
とし、明示的に肯定している。

エについて

正しい。
上記判例は、これを「公権力行使等地方公務員」と表現している。

以上から、正解は5である。

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