平成18年度新試短答公法系第16問解説

【問題】

天皇の権能に関する次の1から8までの各記述について,正しいと認められるものを二つ選びなさい。

1. 天皇の国事行為について,それが内閣の助言に基づいてなされた場合には,天皇が責任を問われることはないが,天皇の発案に基づき内閣の承認を受けてなされた場合には,天皇が国事行為の責任を問われることがある。

2. 天皇の権能は,一身に専属し,その国事に関する行為を他に委任することはできない。

3. 天皇は,内閣の助言と承認が不当なものであると判断した場合でも,その助言と承認を拒むことは一切認められていない。

4. 天皇は,憲法で列挙された国事に関する行為以外であっても,国政に関する権能を行使することが認められている場合がある。

5. 憲法が定める天皇の任命行為は,すべて内閣の助言と承認に基づいて行われる。

6. 天皇に衆議院の解散権があるとしても,それが内閣の助言と承認によって行われる以上,国会が天皇の政治責任を追及することは認められない。

7. 天皇による国会開会式の「おことば」を「儀式」に含めて理解する見解に立てば,その行為については内閣による助言と承認は要求されない。

8. 天皇に代わって摂政が置かれる場合は,摂政が自らの名で国事に関する行為を行い,その責任は摂政に帰属する。

【解説】

形式面について

旧試験にはなかった形式である。
選び方は28通りあるので、でたらめに選んでもほとんど当たらない。
こういう出題が技術的にできるなら、肢の組み合わせ問題は不要ではないかとも思うが。

1について

天皇は一切権限がない代わりに責任もない。
よって、誤りである。
憲法3条も、明文上「すべての行為」とし、例外を認めていない。

2について

臨時代行がある(4条2項)。
誤り。

3について

正しい。国民主権・象徴天皇制からの帰結である。
なお、質問行為は認められるとするのが、内閣法制局の見解である。

もし、仮に天皇が拒否したらどうなるか。
この点、憲法に何ら規定はないし、強制履行などありえない話である。
心身の故障に準じて摂政を立てるという見解もある。だが、無理があるだろう。
このことを挙げて、日本国憲法の象徴天皇制の実効性を疑問視する論者もいる。
天皇が自ら象徴として振舞う限度でのみ、象徴天皇制が維持されうるからである。

4について

誤り。4条1項。
なお、国会開会式での「おことば」等について、国事行為以外の公的行為の存在を認める見解がある。
しかし、これらの見解も、公的行為を「国政に関する権能」とは考えていない。

5について

個人的には正しいと思うが、正解は誤りである。
おそらく、6条の任命行為が「内閣の助言と承認に基づいて行われる」わけではないと言いたいのだろう。

まず、6条には、7条のような「助言と承認により」という文言が無い。
しかし、これは助言と承認が不要だということではない。
3条が「すべての行為」とする以上、例外を認めないのが通説である。
従って、6条の任命行為にも、内閣の助言と承認は必要である。
不要説は少数説なので、択一の知識としては、これで良いと思う。

では、何が誤りなのか。
正確なところはよくわからない。
だが、おそらく、作問者はシンプルに条文上「○○に基づいて」の○○の部分を訊きたかったのだろう。
そうすると、答えは、6条の場合、国会の指名であり、内閣の指名であるので、助言と承認じゃありませんよ。
だから間違いですよ、ということになる。

あるいは、実質的決定権の所在を聞いているつもりだったのかもしれない。
内閣総理大臣(最高裁長官)の任命は、内閣の助言と承認に基づいて(=実質的に決定されて)行われるのではなく、国会(内閣)の指名に基づいて(=実質的に決定されて)行われるのだ、
内閣の助言と承認は必要とされるとしても、形式的なものに過ぎないのだ。だから誤りだ。
こう言いたいのだろうか。

いずれにせよ、助言と承認の要否を聞かれていると思って、正しいと判断した人は、知識的には間違ってはいない。

6について

とにかく天皇は、法的にも政治的にも、国事行為について責任を問われることはない。
従って、正しい。

もちろん、事実上は、国会が天皇の政治責任を追及することはできる。
これを抑制する直接の制度はない。

7について

「儀式」に含めれば、国事行為ということになるから、助言と承認が必要になる。
よって、誤り。

8について

見ただけで誤りとわかると思う。

摂政は、「天皇の名で」国事行為を行う(5条)。
摂政が自らの名で行うのではない。
また、摂政も天皇と同様、国事行為につき何ら責任を負わない。

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