平成18年度新試短答公法系第18問解説

【問題】

次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らし,それぞれ正しい場合に
は1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア. 刑事事件の証人尋問の際に,傍聴人が証人の状態を認識することができないような遮へい措
置を採っても,審理が公開されていることに変わりはないから,憲法第82条第1項及び第3
7条第1項に違反しない。

イ. 家庭裁判所は,遺産の分割に関する処分の審判において,その前提となる相続権,相続財産
等の権利関係の存否を審理判断することはできず,争いのない権利関係を前提として遺産の分
割を具体的に形成決定するなどの処分をなすのであるから,その審判を公開法廷において行わ
なくとも,憲法第82条第1項に違反しない。

ウ. 憲法第82条第1項は,裁判の公開を制度として保障することにより,国民に裁判を傍聴す
る権利を認め,その一環として傍聴した内容についてメモを取る権利も保障したものというべ
きであるから,裁判長は,特段の事情のない限り,傍聴人がメモを取ることを禁止してはなら
ない。

エ. 刑事事件の公判廷における写真撮影は,審判の秩序を乱し被告人その他訴訟関係人の正当な
利益を不当に害する結果を生ずる恐れがあるため,最高裁判所規則により,裁判長の許可を得
なければすることができないものと規定することは,憲法第21条に違反しない。

【解説】

アについて

平成12年の刑事訴訟法改正で、証人の遮蔽措置(157条の3)が導入された。
犯罪被害者保護の一環である。
この制度の下では、被告人・傍聴人が証人の様子を観察できない。
そこで、証人審問権(37条2項前段)や裁判の公開(37条1項、82条1項)に反しないかが問題となる。
この点、判例(平成17・4・14)は合憲と判断している。
弁護人は証人の様子を観察できること、傍聴人も、証言内容を聞くことは妨げられないこと、被告人が尋問することは可能であること、などが主な理由である。
よって、正しい。
なお、上記判例は、ビデオリンク方式(157条の4)についても、同様の理由で合憲と判断している。

イについて

最判昭和41・3・2についての出題である。
この判例を、「遺産の分割に関する処分の審判は非訟だから公開しなくていい」という感じでだけ覚えていると、間違える。
前提としての権利関係について、何ら家裁が判断できないのでは、審判などできない。
従って、家裁はこの点について判断しうる。
上記判例も、「家庭裁判所は、かかる前提たる法律関係につき当事者間に争があるときは、常に民事訴訟による判決の確定をまつてはじめて遺産分割の審判をなすべきものであるというのではなく、審判手続において右前提事項の存否を審理判断したうえで分割の処分を行うことは少しも差支えないというべきである。」とする。

そうなると、「非訟じゃなくなるのでは?」と思うかもしれない。
しかし、この審判における権利関係の判断には、既判力が生じない(後訴として通常訴訟を提起できる)。
すなわち、権利関係の確定がなされるわけではないから、やはり非訟なのである。

以上から、「前提となる相続権,相続財産等の権利関係の存否を審理判断することはできず」とする本肢は誤りである。

ウについて

レペタ事件判例についての出題である。
有名な判例なので、当然知っておくべきである。
判例は、メモを取る自由を、裁判の公開からではなく、知る権利から認めているから、誤りである。
そもそも、「裁判の公開を制度として保障することにより,国民に裁判を傍聴する権利を認め」というあたりで、おかしいと気付くと思う。
制度的保障からは、個人の主観的権利は出てこないからだ。

エについて

北海タイムス事件判例についての出題であり、正しい。
この最高裁判所規則とは、刑事訴訟法規則215条である。
ちなみに、「北海タイム『ズ』」ではなく、「北海タイム『ス』」が正しい。
今は廃刊し、「週刊札幌タイムス」となっているらしい。
HPもあるが、準備中である。

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