平成18年度新試短答公法系第21問解説

【問題】

国家賠償法第1条に関する次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例に照らし,そ
れぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア. 同一の地方公共団体に属する公務員による一連の職務行為の過程において他人に損害を生じ
させる事態が発生した場合,一連の行為のうちのいずれかに過失による違法行為があったので
なければ当該損害が生ずることはなかったと認められるときは,どの公務員のどのような違法
行為によるものかが特定されなくても,当該地方公共団体は,その不特定を理由として損害賠
償責任を免れることができない。

イ. 裁判官による争訟の裁判については,当該裁判官に事実認定や法律解釈の誤りがあったとし
ても,それは上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべきものであるから,国家賠償
法第1条第1項にいう違法な行為に当たるものとして争うことができるのは,そのような訴訟
法上の救済が及ばない瑕疵に限られる。

ウ. 国家賠償法第1条の「その職務を行うについて」に該当するためには,少なくとも公務員が
主観的に権限行使の意思をもってする場合であることを要するから,公務員が私利私欲を図る
意図をもって職権を濫用し,その結果他人に損害を与えたとしても,当該公務員個人の損害賠
償責任が生ずるにとどまり,国又は公共団体が賠償責任を負うことはない。

エ. 宅地建物取引業法は,宅地建物取引業者の不正な行為により個々の取引関係者が被る損害の
防止・救済を目的とするものではないから,当該業者に対する行政庁の監督処分権限の不行使
が著しく不合理と認められる場合でも,当該権限の不行使は国家賠償法第1条第1項の適用上
違法の評価を受けるものではない。

【解説】

アについて

最判昭57・4・1参照。正しい。

イについて

最判昭57・3・12参照
国会議員の名誉毀損と同様の規範を立てている。
上訴等の救済が及ばない場合という限定はしていない。
よって、誤りである。

ウについて

最判昭31・11・30参照
民法における外形標準説と同様の見解に立つ。
公務員に主観的な権限行使の意思があることを必要としていない。
むしろ、そのような見解を明確に排斥している。
よって、誤りである。

エについて

最判平元年・11・24参照
上記判例は、

「知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、右権限の不行使は、当該取引関係者に対する関係で国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受けるものではないといわなければならない。」

としている。
よって、誤りである。

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